ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか   作:ラブコメは正義マン

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またもや短めですまない.....



特訓-2

繰り返されること三度。

ベルは、目の前で繰り広げられる攻防に、ただ目を奪われていた。

 

(すごい……アイズさんも……士郎も)

 

四度目の攻防。

士郎が踏み込んで、一気に間合いを詰める。

その速度は、ベルがこれまでに見た彼のどんな動きよりも速く、鋭い。

今のベルでは、目で追うだけで精一杯な速度。

だが──

 

キィン、と乾いた金属音が空気を裂く。

士郎が振り下ろした剣は、既にアイズによって弾かれていた。

 

(完全に見切ってる……)

 

それでも、アイズには届かない。

だが士郎は、それすら織り込み済みだったかのように、間髪入れずもう一本の剣を振るった。

 

(──でも、士郎も負けてない。

あの剣は、闇雲に振られてるんじゃない。一撃一撃が布石であり、必殺の……)

 

防御の隙を突いて放たれた士郎の一撃を、アイズは体を反らしてかわす。

双剣の間合いから完全に抜け出した彼女は、次の瞬間、流れるような動作で鞘を振り抜いた。

リーチの優位(アドバンテージ)を活かし、間合いの外から攻撃を仕掛ける。

 

(──さっきよりも数段速い!)

 

上、右、左、正面。

あらゆる角度から、苛烈な攻めが士郎へと襲いかかる。

振るわれる一撃一撃に、士郎も刃を重ね、わずかに軌道を逸らして捌いていく。

捌くこと数度。

数度それを凌いだ末、わずかに生まれた隙を突いて、士郎は反撃に剣を振るおうとした。

 

 

 

──だが、それはアイズが仕掛けた罠だった。

驚異的な速さで切り返された鞘が、誘い込まれた獲物を捉えにかかる。

しかし、間一髪その狙いに気づいた士郎は、すんでのところで踏みとどまり、距離を取った。

 

(あれが……技と駆け引き)

 

ベルは、アイズの言っていた言葉をようやく実感する。

僅かな間に目まぐるしく攻守が入れ替わる。

そこには、互いの狙いと、それを通すための技があった。

それを今、彼らは体現している。

まるで手本を示すかのように目の前で繰り広げられる戦いに、ベルが抱いたのは──

 

(凄いなぁ……)

 

──それは、純粋な憧憬だった。

自分のはるか先を行く二人。

視線は吸い込まれるように、その光景から目が離せない。

 

(僕もいつか、あんな風に──)

 

自身の理想を再認識したベルは、

この戦いのすべてを自分の糧にしようと必死に目に焼き付けていく。

 

永遠に続くかのようにも思えた攻防だが、決着は近い。

士郎の息は徐々に荒くなり、その額には汗がにじんでいる。

一方で、アイズの呼吸は乱れず、汗一つかいていなかった。

 

それは、覆しようのないステイタスの差だった。

恩恵を授かって九年。

アイズが築き上げたステイタスは、衛宮士郎をはるかに凌駕している。

ステイタスで劣る彼が対抗できるのはただ一点、技量のみ。

 

だが、それもまだ器は未完成だ。

今の士郎では、未来の自身の剣技を再現するには、圧倒的に経験が足りていない。

故に、この戦いの勝敗は明白。

七度の攻防の末、アイズの放った一撃が士郎の胴を捉え、戦いに幕が下りた。

 

 

 

 

 

***

──ダンジョン、中層。

 

(さて……どいつにするか)

 

ダンジョンの中層で、オッタルは思案していた。

その思考の中心にあるのは──ベル・クラネル。

彼にふさわしい試練を用意せよ、という主神の命を果たすべく、オッタルは一人、中層へと足を踏み入れていた。

そうして探索すること数十分、ついに目的のモンスターを発見する。

 

『ブモオォォォォォォ!!!』

 

──それは、ミノタウロス。

ベルがアイズと出会うきっかけとなったモンスターであり──トラウマ。

これを乗り越えずして、彼がレベルアップを果たすことはないだろう。

外敵を認識したミノタウロスは、オッタル目掛けて突進する。

だが、

 

「上々だな。お前に決めたぞ」

 

『ブモゥ!?』

 

ミノタウロスの突進を正面から受け止めたオッタルは、そのポテンシャルを見抜き、獰猛に笑った。

そして純粋な膂力だけで片角をへし折り、そのまま弾き飛ばす。

 

角を失ったミノタウロスが、悲鳴を上げて地面へ転がる。

その姿へ向けて、オッタルは背後に担いでいた一本の剣を放った。

 

「使いこなして見せろ」

 

『ヴゥオ!?』

 

突然の行動に、警戒していたミノタウロスは戸惑う。

だがオッタルには勝てないと悟ったのか、その言葉に従うように剣を手に取った。

それを見たオッタルは、自身も剣を取り出し、まるで稽古をつけるようにミノタウロスと打ち合いはじめた。

 

(これで、奴の試練の手筈は整った。あとは──)

 

オッタルの脳裏に浮かぶのは、ベル・クラネル、そしてもう一人──衛宮士郎。

彼が試練の邪魔にならぬようにしろ、という命もまた授かっていた。

 

(もう一体、モンスターを用意するには時間が足りんな……)

 

ミノタウロスを仕上げる必要がある以上、別のモンスターを用意する余裕はない。

よって、どうにかしてベルと士郎を引きはがす必要があった。

 

(少々面倒だが……あの御方の命とあらば仕方あるまい)

 

そうして思考を切り上げたオッタルは、再びミノタウロスへと意識を向けた。

 




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