ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか 作:ラブコメは正義マン
一体何リオンなんだ・・・
「ああ、具合は大丈夫だ。えーっと、君がここに運んでくれたのか?」
目の前の少女に声をかける。
状況から察するに、自分をここに寝かせてくれたのは彼女だろう。
「いえ、私は路地で倒れているあなたを見つけて、同僚を呼んだだけです。お礼ならそちらにお願いします。」
そう言って目をそらす少女。
どうやら俺は、路地で倒れていたところを保護してもらったらしい。
しかし、彼女はそれを認めない。気難しい性格である。
「それでも助けてくれたことには変わりないだろ。ありがとう」
「いえ、大したことはしていません」
それでもと感謝を伝えたが、彼女はうつむいてしまう。
どうやら中々に難しい性格をしているようだ。
どうしたもんかと考えていると……
「それで、あなたはなぜあんなところで倒れていたんですか? 見たところ、傷を負っている様子はありませんが」
強引に話題をそらされた。この話を続けたくはないらしい。
それにしても、路地で倒れていた……か。
どうやら俺は、あの実験中にどこかへ飛ばされてしまったらしい。
しかし、そんなことを言って信じてもらえるだろうか。
頭の心配をされるのがオチじゃないか?
そう考えた俺は、適当にごまかすことにした。
「すまん、実は俺もよく覚えていないんだ」
「なるほど。話したくはないと」
適当にごまかそうとした俺の嘘を、目の前の少女はすぐに見抜く。
同時に、その瞳に警戒の色が浮かぶ。
「次はない」と言わんばかりの眼圧だ。
どうやら、嘘をつくのは危険のようだ。
が、なんと説明をすればいいのか。
「魔術の実験をしてました」なんて話を信じる方がおかしいのだ。
むしろ、そんな奴がいたら心配するまである。
「次はありません。正直に答えてください。なぜ、あそこにいた」
そうこう考えている間にも、目の前の少女の眼光は鋭くなっていく。
どうやら、嘘をついている余裕はないようだ。
ええい、ままよ。
頭のおかしい奴だと思われる覚悟を決め、俺は正直に話すことにした──
「実は……魔術の実験をしていたんだ。そしたら、その途中で意識を失って……それからは覚えてない。気が付いたら、ここにいた」
──少しの沈黙。
俺の言葉を聞き、少女は黙り込む。
しかし、その瞳の警戒心は和らいだように感じる。
信じてもらえたのだろうか?
いや、しかし、こんな話を信じるわけが……いや、ないない。
きっと、あきれてしまって声も出ないだけだ。
今、頭の中で近くの病院を考えでもしているのだろう。
だが、次に彼女の口から出たのは、自身の予想とは違うものだった。
「魔術……あなたは、冒険者なのですか?」
「冒険者?」
あまり聞き馴染みのない単語に、少し驚いてしまう。
しかし、彼女の言う冒険者とは何だろうか。
またも問いが投げられる。
「冒険者ではない……のですね。では、あなたは一体……?」
そこまで聞いて、大切なことを思い出す。
そうだ。突然の状況で混乱して忘れていた。
助けてくれた相手に、こんなことを忘れていただなんて。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は衛宮士郎。ただの高校生だ。良ければ、君の名前を教えてくれないか?」
自己紹介が遅れてしまった罪悪感とともに、自分を助けてくれた少女に名前を聞く。
「こちらこそ、紹介が遅れました。私はリュー・リオンと申します。ここ、『豊穣の女主人』でスタッフをしています」
リュー・リオン。外国人なのだろうか。
「豊穣の女主人」とは、おそらく店の名前だろう。
もう一度、彼女を見る。
そして、ふと、少女の耳が長いことに気が付いた。
まるで、ファンタジーに出てくるエルフのようだ。
待てよ。ファンタジー?
まさか、と思い、もう一度窓の外を見る。
窓の外に見える通りを歩く人々。
しかし、よく見れば、その多くが武器を携え歩いていることに気づく。
冒険者という聞きなれない単語。
エルフのような少女、リュー・リオン。
並行世界。
俺は、そこまで考えて、ある一つの可能性に思い至る。
それを確認すべく、リューに声をかけた。
「悪い、少し聞きたいことがある」
「それはいいですが……なんですか?」
「この世界についてだ」
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それから俺は、リューに様々なことを教えてもらった。
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ここは迷宮都市オラリオ。
『
古代から神時代への転換期、神々はこの地に降り立ち、都市を築いた。
その後、神々はこの地にとどまり、自らの眷属に『
主神によって恩恵を与えられた眷属たちは、『
多くのファミリアは、ダンジョンのモンスターを討伐し、それによって収入を稼いでいる。
それが『冒険者』と呼ばれる存在であり、現在、オラリオには多くのファミリアと冒険者が住み、ダンジョンへ潜っている。________________________________________
「っと、こんなところか。」
リューの話から得た情報を書き込んだメモを見て、俺は思わず頭を抱えた。
薄々気づいていたことだが、俺は完全に違う世界へ迷い込んでしまったらしい。
「驚きました……まさか別世界から
一方で、リューも難しい顔をしていた。
俺の事情を全て説明したからだろう。
最初は俺の話に半信半疑だったが、実際に見せた投影魔術や文字、態度から、嘘を言っているわけではないと信用してくれたようだ。
「一先ず事情は理解しました。まだ疑問は残りますが、今のところは信じます。行く宛がないのならば、しばらくここに留まるのが良いでしょう」
少しして、リューが顔を上げて言った。
その顔にはもはや警戒は無く、純粋に俺を心配しているのが伝わる。
いや、しかし、
「助けてもらったのに、そこまで世話になるわけには……」
いかない、そこまで言いかけたところで、リューに遮られる。
「いいですか、シロウ。神々は『未知』に飢えています。異世界から来たヒューマンとなれば、誰もがあなたを放ってはおかないでしょう。そうなったとき、確実にろくな目には合いません」
神々に対し、ろくでもない奴と言い切るリュー。
その口ぶりが、「魔術師なんてろくでなしの集まり」と言っていた遠坂と少し似ていて、口元が緩んでしまう。
「いいですか、シロウ。このことは他の誰かに話してはいけません。少なくとも、本当に信頼に値する人物に出会うまでは。それまでは、口に出すこともやめておいた方がいいでしょう」
リューは続ける。
どうやら神々は、この世界の人間の嘘を見抜けるらしい。
違う世界から来た俺の嘘を見破れるかは定かではないが、先ほどリューに嘘を見抜かれたこともあり、どちらにせよ、この話をすること自体が良くない結果を招きかねない……ということか。
「分かった。この話は他ではしないことにする。」
「ええ、それが賢明でしょう。さて、そろそろミア母さんが帰ってきます。事情は私から話しますので、合わせてください。」
「ミア母さん?」
「この店の店主です。嘘をつくのは気が引けますが、事情を察して助けてくれるかと。」
と話していると、下の階でカランコロンとベルの音が鳴った。
「噂をすれば、帰ってきたようです。行きましょうか。」
そう言って、リューは立ち上がり部屋を出る。
俺も慌てて後に続いた。
それから少しして、俺たちはミア母さんと呼ばれる人物と話をした。
リューのでっち上げた話を聞いたミアは何か察したのか深くは聞かずただ一言、
「あんた、料理は得意かい?」
と、俺を見て言うのであった。
と,いうわけで二話でした
次回はついにベル君と士郎が出会う予定です