ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか   作:ラブコメは正義マン

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久々の更新です。
スマホからの更新なんでちょっと文の間とかに違和感あるかもしれません。


分断

──翌朝。朝、ヘスティアファミリアホーム

 

「これは……一体どういうことなんだい」

 

ほのかな灯りに照らされた室内で、ヘスティアは目を見開いていた。

視線の先にあるのは、卓上に並べられた二枚の紙。

そこには、先ほど更新したばかりの自らの眷属のステイタスが記されている。

中でも、ひときわ彼女の目を引いたのは──

 

「アビリティ──オールS……」

 

異常と呼ぶほかない成長速度で更新された、ベルのステイタス。

この一週間、彼が憧憬の対象であるアイズ・ヴァレンシュタインから訓練を受けていたことは、ヘスティアも把握している。

 

(とはいえ……ここまでアビリティが伸びるなんて、さすがに想定外だ……)

 

ヘスティアは思わず頭を抱え、その場にへたり込んだ。

アイズとの特訓が効果抜群なのは分かっていたが、ここまで急激に強くなるとは予想外だった。

眷属の成長を喜ぶ神としての想いと、乙女としての複雑な感情。

その狭間で、ヘスティアの心は揺れていた。

 

(それに比べて……士郎くんのアビリティは──)

 

ヘスティアは気を取り直し、もう一枚の紙へと視線を移した。

異常な成長を遂げるベルとは対照的に、士郎のアビリティはあまり伸びていない。

ベルと似た成長促進系のスキルを持っているはずなのに、魔力を除けば、その伸び幅は決して高いとは言えなかった。

 

(彼は既に多くの経験を積んでしまっている……だからこそ、か)

 

紙に示された数値とは裏腹に、彼の強さは疑いようもなく本物だった。

多くの冒険者は、アビリティの成長に技量が追いつかないものだ。

ところが士郎は、その逆を行く存在だった。

技量という点において、彼はすでに自らの到達点を知っていた。 にもかかわらず、それを再現するには、器の強度が圧倒的に足りていない。

 

(士郎君の成長には上層じゃ不十分……ってことかぁ……。 ベル君も強くなったし、近いうちに──)

 

──中層へ下りていく。 そんな考えが、ヘスティアの脳裏をよぎった。

すでにパーティーは三人一組(スリーマンセル)。

彼らなら、中層においても戦闘面で後れを取ることはない。 それに加え、優秀なサポーターも側についている。

唯一、懸念すべき点があるとすれば──

 

「ランクアップ……か」

 

ふと、ヘスティアの口からそんな言葉がこぼれた。

いかにアビリティが高かろうと、技量が優れていようと、彼らのレベルは一。

 

ギルドの基準では、中層へ下りるだけの器が伴っていないと判断されてしまう。

だが、それは裏を返せば、レベルさえ上がればいつでも中層へ進めるということでもあった。

 

その事実を裏づけるかのように、今朝から嫌な予感がヘスティアの胸の内に漂っている。

 

(ベル君……士郎君……大丈夫、だよね?)

 

ヘスティアは顔をあげ、バベルの方角を見やった。

その表情には、不安の色がにじんでいた。

 

 

 

 

 

***

──ダンジョン、九階層。

 

この場所では、冒険者とモンスターが昼夜を問わず戦い続けている。

それにもかかわらず、今日は異様なほど静まり返っていた。

 

普段なら嫌というほど湧き出るモンスターでさえ、気配すら見せない。

──まるで、何かに怯えているかのように。

 

(視られてる......?)

 

通路を歩きながら、ベルは何かを感じ取っていた。

オラリオでも時折感じる、甘く、絡みつくような視線。

それが、今日はひときわ濃くまとわりついている気がした。

 

「ベル様?どうしたんですか?」

 

「リリ......大丈夫。なんでもないよ」

 

「ならいいんですが......

ベル様、今日のダンジョンは少し異常です。

何があるか分かりません。

撤退も視野に入れるべきかと」

 

傍目には上の空に見えるベルの様子に、リリは警戒を強めつつ忠告を口にする。

 

「俺もリリに賛成だ。

今日のダンジョンは何かがおかしい」

 

リリに続き、士郎も撤退を進言する。

警戒を強める士郎の様子を見て、ベルはわずかに思案する。

 

「そっか......分かった。

今日のところは引き上げよう」

 

わずかな迷いを振り切り、撤退の決断を下した。

それでも、胸の奥にまとわりつく違和感だけは消えない。

まるで、どこか致命的な歪みが生じているかのように。

 

「あー......ベル。

悪いんだが、リリを連れて先に戻っててくれないか?」

 

ベルに撤退を促した士郎。

だが、自身はこの場に残るつもりでいた。

 

「士郎、なんで──」

 

「頼む」

 

ベルの問いは、言葉の途中で遮られる。
有無を言わせぬ視線が、ベルを貫く。

その表情は、ベルが今まで見たどの士郎よりも険しいものだった。

 

「──分かった。

士郎も気をつけて。リリ、行こう。」

 

「あの、士郎様?

一体何を......いえ、なんでもありません。

私達は先に戻りましょう」

 

リリも状況を理解しているわけではない。
だが、ただならぬ士郎の気配から何かを察し、指示に従うことを選ぶ。

 

そうして、ベルたちは踵を返す。
互いの姿が見えなくなる。

 

──それこそが、視線の主の狙いとも知らぬままに。

 

 

 

 

 

***

「いるんだろ。出てこい」

 

ベルたちを見送った後、虚空へと声を投げる。
ダンジョンに入ってからずっと、俺たちは視られていた。


重く、押し潰すような視線。

俺の呼びかけに応えるように、その主が姿を現す。


 

「お前は──」

 

 

オラリオの二大派閥。
その一角は、アイズの所属するロキ・ファミリアだ。

 

だが、そこに“最強”は存在しない。
真に最強がいるのは、もう一つの派閥。

 

ロキ・ファミリアと双璧をなす、もう一つの巨大戦力──フレイヤ・ファミリア。

 

そして、その頂点に立つ男。

都市最強。

オラリオ唯一のLv7。

 

 

 

 

「──猛者......オッタル」

 

姿を現したのは、巨漢の男だった。
その姿は初めて見る。


だが、その名だけはオラリオに来てから何度か耳にしていた。

そして、目の前に立つ存在から放たれる圧。


これまで対峙してきたどの強者とも質が違う。

第一級冒険者であるアイズと比べてもなお、次元が一段上にあるような“強さ”を感じさせる。

 

故に直感で理解した

──こいつが都市最強であると。

 

「わざわざ都市最強が俺たちになんの用だ。

なんで俺たちを狙う?」

 

だが、目的が分からない。

わざわざ尾行するような回りくどい手段を取る理由も見えない。

 

「俺の目的は衛宮士郎。貴様だ」

 

あっさりと、猛者はそう告げた。

だが、理解が追いつかない。
狙われる理由に心当たりがない。

 

「何を言って──」

 

『ブモォォォォォ!!』

 

ダンジョンに咆哮が響き渡る。

この階層で聞くには不釣り合いな、異質な声。

 

「今のは......」

 

「アレは奴に与えられた試練。

故に、貴様が戦うことは許さん」

 

試練?誰に?何の?

思考が組み上がるより先に、一つの結論だけが浮かび上がる。

 

「──ッ!」

 

一つの結論にたどり着き、反射的に身体が動いた。


すぐさまベルたちの後を追おうと駆け出す。


だがそれは、猛者によって阻まれる。

 

疑念は確信へと変わる。


こいつの狙いは、俺たちの分断だった。

 

「そこを退け、猛者」

 

「断る」

 

 

 

 

 

 

***

士郎と別れて数分後。


僕たちは、その行動の意味を考えていた。

 

「ベル様? 士郎様は一体……?」

 

「分からない。
でも、あんな士郎は初めて見た。
何か意味が──」

 

『ブモォォォォォ!!』

 

突如、ダンジョンを切り裂くような咆哮が響き渡る。


その声には聞き覚えがあった。


忘れるはずもない。


憧憬と出会った、あの日の記憶。


 

そして、トラウマ。

ソレが、再び姿を現す。

 

「ミノタウロス……!?」

 

警戒が最大限に引き上がる。


何故上層にミノタウロスがいるのか。
その理由は今はどうでもいい。


やるべきことは──

 

「リリッ! 逃げっ──」

 

逃げよう。


そう叫ぼうとして、声が喉で止まった。


ミノタウロスのすぐ側に、冒険者の姿が見えた。

酷く傷を負っている。


ミノタウロスは獰猛に笑い、力なく横たわる冒険者へと剣を振り上げ──

 

「うおぉぉぉぉっ!!」

 

「ベル様っ!?」

 

半ば反射的に身体が動いた。
全身の筋肉を総動員し、地を蹴る。

 

伸びたステイタスが唸りを上げる。


距離が一気に詰まる。

 

大剣が振り下ろされるより早く、冒険者の下へと滑り込むように辿り着いた。

ナイフを振るう。

 

「ハアァッ!!」

 

『ブモゥッ!?』

 

刃が大剣の軌道に割り込み、その一瞬の遅延が致命的な狂いを生む。


わずかに逸れた刃は、空を裂いて地面を抉った。

獲物を仕留め損ねたミノタウロスは、ゆっくりと顔を上げる。

 

「ファイアボルトッ!!」

 

続けざまに三連射。

左手から炎雷が爆ぜる。

 

巨体が僅かに後退する。

その一瞬の隙を逃さず、地面を蹴った。

冒険者を抱え上げ、その場から距離を取る。

 

「リリ、この人をお願い」

 

傷だらけの冒険者をリリに預ける。

出血はひどいけど、今すぐ手当てすればまだ助かるはずだ。

 

「でも、それじゃベル様は......」

 

煙が晴れる。

その向こうに立つミノタウロスは、未だ無傷。


僕の魔法じゃ、致命傷には届いていない。

それでも、その視線は確かに僕へと向いていた。

 

──これでいい。

負傷した冒険者を抱えながらじゃ、いずれ追いつかれる。

なら、今ここで引き離すしかない。

 

「僕が時間を稼ぐ。

大丈夫──信じて」

 

「──ッ、ベル様まで......

すぐに他の冒険者を呼んできます!

それまで持ちこたえて下さいねっ!!」

 

冒険者を担ぎ、リリの姿が遠ざかっていく。

その背中が見えなくなった瞬間、ほんの僅かな安堵が胸に落ちた。

 

『ブモォォォッ!』

 

雄叫び。

僕を敵と認識したミノタウロスが、地を揺らすように吠える。

 

身体に緊張が走る。

大丈夫だ。

時間を稼ぐだけなら、何とかなる。
倒す必要はない。足止めできればいい。

 

 

 

 

 

 

 

──違う。

 

ずっと感じている、まとわりつくような違和感。
再び上層に現れたミノタウロス。
そして、士郎がいない、このタイミング。

 

この出会いは、きっと偶然じゃない。
確かに告げている。
──これは試練だ。乗り越えてみせろ、と。

 

 

 

 

 

 

なら、答えは一つだ。

 

ナイフとバゼラードを構える。

恐怖を気合いで塗りつぶす。

そして一歩、踏み込んだ。


僕は今日──冒険をする。

 

 

 

 

 

 

 

「お前を──倒す」

 




分断の仕方雑だって?

......だってオッタル裏工作とか向いて無さそうなんだもん
それに半端なやつだとリリが看破しちゃいそうだし

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