ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか   作:ラブコメは正義マン

29 / 29
前話のブラウニーに反響をいただけて嬉しいです。

あとがきでは「フレイヤが半ば悪ふざけで付けた二つ名」と書きましたが、逆に言えば半分はフレイヤが士郎をそういう存在として見ている、ということでもあります。
実際ダンまちにブラウニーという妖精がいるか定かではありませんが、そういう妖精族がいたってことで...。

さて、今話はタイトル通りヴェルフ登場回です


ヴェルフ・クロッゾ

──翌日。バベル

 

祝賀会の翌日。

ベルの装備を整えるため、共にバベルを訪れていた。

行き交う冒険者の波を避けながら歩くことしばし。

やがて、ヘファイストス・ファミリアのテナントへと辿り着く。

 

「じゃあ、僕はあっちを探してくるね」

 

「ああ」

 

ベルの目的は防具だ。

前の戦いで以前の装備は失われてしまった。

 

この店を訪れたのはただの買い替えではない。

ベルは、以前の防具とその製作者をとても気に入っていた。

だからこそ、新たな装備を探しに真っ先にここへ来たのだろう。

 

(それにしても......すごい数だな)

 

ベルと一度別れ、テナントを一人歩く。

並べられた武器の数々。

流石はヘファイストス・ファミリアと言うべきか。

どれも一定以上の品質を備えている。

だが、その中でも。

 

「......あれは」

 

一振りの剣が目に留まった。

飾られていたのは店の端。

決して目立つ場所ではない。

それでも、不思議と意識に引っ掛かった。

 

自然と足がそちらへ向かう。

手を伸ばし、その剣を手に取った。

 

「──同調(トレース)開始(オン)

 

創造の理念。

基本となる骨子。

構成された材質。

制作に及ぶ技術。

武器の情報が脳裏へ流れ込んで来る。

 

「......なるほど」

 

解析を終える。

使い手のことが考えられた良い剣だ。

 

当然、この店の武器も似た傾向はある。

名を上げたい。

認められたい。

そんな鍛冶師達の野心が見て取れる。

 

その中でも、この剣は違う。

野心も当然こもっているが、本質はそこではない。

さらにその奥に、一つの理念が感じられた。

どうやらこの剣を打った鍛冶師は随分と頑固らしい。

 

俺としてはそういう姿勢は嫌いではなく、むしろ──

 

「だから、なんでったってあんな隅っこに──!」

 

そこまで考えたところで、視線が自然と上がった。

店の奥で赤髪の男と店員が口論しているのが聞こえてくる。

 

話の内容から察するに、その男は鍛冶師なのだろう。

不満を口にしているようだが、怒鳴っているというほどではない。

自分の作ったものに対する扱いに納得がいっていない、といった様子か。

 

「......士郎、どうしたの?」

 

背後からベルの声がした。

振り返ると、ベルが小走りでこちらへ戻ってきていた。

 

「あっちで少し揉めてるみたいでな。

ベルはお目当ての装備が見つかったのか?」

 

「それが全然......」

 

ベルがっくりと肩を下ろしてうなだれる。

 

「店員に聞いてみたらどうだ?

丁度、話も終わったみたいだし」

 

言い争いはいつの間にか終わっていた。

赤髪の男が、カウンターから離れるようにこちらへと歩いてくる。

 

「────────」

 

一瞬、目が合う。

その瞬間、男の動きがぴたりと止まった。

視線だけがこちらへと向けられている。

 

「ヴェルフ・クロッゾさんの防具って......もうないのかな」

 

──続くように、ベルが小さく零した。

視線がゆっくりとベルへ移る。

 

それから、視線が一度こちらへ戻り──再びベルへ。

男は少しの間、そのまま言葉を失ったように動かない。

だが、やがて何かを確かめるように息を吐いた後。

 

「──はっ、はははっ!」

 

高らかな笑い声が響いた。

ひとしきり笑ったあと、男は息を整えるように咳払いをした。

そしてこちらを見たまま、口を開く。

 

「──お前達、ヴェルフ・クロッゾの作品をお探しか?」

 

「はい......そうですけど──」

 

口元にはまだ笑みが残ったまま。

男は軽く肩を揺らしながら、手元の荷を持ち上げ──

 

「それならあるぜ──ここにな!」

 

そのまま俺達へ、堂々と突き出した。

 

 

 

***

 

「まさか噂のリトルルーキーが俺の防具を買ってくれてたなんてなぁ!」

 

店内の喧騒を抜け、三人はバベルの外へと場所を移した。

近くのベンチに腰を下ろしたところで、

赤髪の男──ヴェルフ・クロッゾはベルの肩を叩きながら続ける。

 

「リトルルーキー。

お前は二度も俺の防具を買いに来てくれた。

つまりもうお前は俺の顧客だ......違うか?」

 

その声色はどこかわざとらしく。

大袈裟に周囲に聞こえるように発せられたものだった。

 

「ええと......はい?」

 

ベルは突然の勢いに少し戸惑いながらも、こくりと頷いた。

だが、それを皮切りに周囲の気配がわずかに変わった。

僅かに悔しさを滲ませながら、その場から人が引いていく。

周囲の気配が完全に途切れ、その場には三人だけが残った。

 

「今のは......」

 

「ちょっとした縄張り争いみたいなもんだ。

気にしないでくれ」

 

──彼らを遠巻きに見ていたのは、いずれもヴェルフの同業である鍛冶師たちだった。

 

「それより、本題だが──俺と専属契約を結ぶ気はないか?

お前の武器でも防具でも、なんでも俺が作ってやる」

 

「──是非お願いします!」

 

あまりに迷いのない即答に、ヴェルフは一瞬だけ言葉を失った。

だが次の瞬間、堪えきれないとばかりに吹き出す。

ひとしきり笑った後、照れ隠しのように頬を掻いた。

 

「全く......鍛冶師冥利に尽きるってもんだ」

 

そう言って表情を戻したヴェルフは、不意に士郎へと視線を向けた。

そして、どこか惜しむような笑みで口を開く。

 

「これでお前も顧客だったら、文句なしだったんだがな」

 

「生憎剣は間に合ってるんでな。

けど、あれはいい剣だった」

 

「はっ、そりゃ残念だ。

ま、俺の剣を手に取ってくれただけでも十分だな」

 

士郎の忖度のない評価を受け、それ以上この話を続けることはなかった。

ヴェルフは一つ頷くと、改めてベルへ向き直る。

 

「それで、契約の件なんだが──その前に一つ、俺の頼みを聞いてくれないか?」

 

「頼み、ですか?」

 

「ああ」

 

ヴェルフは口の端を吊り上げた。

 

「俺を──お前らのパーティに入れてくれ」

 

 

***

 

──翌日。ダンジョン十一階層。

 

ヴェルフと専属契約の話を交わした翌日。

彼の依頼に応える形で、ベルたちは臨時のパーティとして十一階層へと足を運んでいた。

 

「悪いな、昨日の今日でこんな所まで付き合わせちまってよ」

 

「大丈夫ですよ。

それに、『鍛冶』のアビリティのためなら、僕も無関係じゃありませんし」

 

「......大事な話なら、リリにも一言通していただきたかったものですけど」

 

ヴェルフの依頼。

それは『鍛冶』のアビリティを取得するまでの間、臨時でパーティを組むというものだった。

対してリリは口を尖らせ、小さく不満を零す。

事前に説明がなかったことへの小さな抗議だ。

 

「そんな固いこと言うなよ、リリスケ?」

 

「ですから、リリスケって呼ばないでくださいっ!」

 

ヴェルフの軽口に、リリは即座に言い返す。

やり取りとしては軽いものだが、互いの噛み合いは絶妙にズレたまま。

 

「ごめんね、リリ。

でも僕、このヴェルフ・クロッゾさんの防具を気に入ってるんだ」

 

ベルが間に入り、仲裁するように言葉を添える。

だが、"クロッゾ"という単語を聞いた瞬間、リリの目の色が変わった。

動きが止まり、明らかな驚きが浮かぶ。

 

「──今、クロッゾと言いましたか!?

あの没落した魔剣鍛冶師の!?」

 

「「クロッゾ?」」

 

「お二人とも、知らないんですか!?」

 

その単語に聞き覚えの無いベルと士郎の声が重なる。

リリだけが、この場で唯一その単語の意味を理解していた。

信じられないものを見るようにヴェルフへ視線を向ける。

 

「......ま、その話はいいじゃねぇか。

それより──お出ましだ」

 

僅かに気まずそうな表情を浮かべた後。

ヴェルフはリリから視線を外し、剣を抜き構えた。

気配はすでに近く──地面からモンスターがぞろぞろと湧いて出る。

士郎、ベル、リリもそれに反応し、それぞれ戦闘態勢へ移った。

 

「......随分と数が多いな」

 

オーク、インプ、ハードアーマード。

湧き出す勢いは止まらず、気づけばベルたちを取り囲む形になっている。

 

「オークは任せろ。

アイツなら、俺の腕でも当てられる」

 

ヴェルフが一歩踏み出し、前方の群れを睨みつける。

その背後で、

 

「では、リリも微力ながら援護します。

ベル様と士郎様は向こう側をお願いします」

 

「うん、分かった」

 

「了解。そっちも、危なくなったらすぐに呼んでくれ」

 

バリスタを構えながら、リリが言葉を飛ばす。

その言葉に合わせるように、二人はそれぞれの方向へと動きを切り替えた。

そうして自身の敵を見定め──

 

「皆──行くよっ!」

 

その声と同時に、ベルが地を蹴った。

以前よりも明らかに鋭い踏み込み。

ランクアップによって得た身体能力がそのまま加速に変わる。

 

『ギェェッ!』

 

振るわれたナイフが急所を貫く。

インプは断末魔だけを残し、灰へと崩れ落ちた。

 

『──グギャア!!』

 

その隣で、士郎も同時に踏み出していた。

彼もまた、ランクアップによる身体能力の向上によって。

引き出される経験に身体が確かに追いつき始めていた。

 

だが、まだそれは完全な一致ではない。

彼がこれまで積み上げてきた動きの“到達点”には隔たりが残る。

それでも以前と比べれば、その差は明らかに縮まっていた。

 

戦局は二人を中心に傾いていく。

いや──そもそも、そこに天秤など存在していなかった。

この階層のモンスターなど、もはや彼らの障害にすらならない。

 

ベルが地を駆け、士郎が切り伏せる。

取り囲んでいた敵は、瞬く間にその数を減らしていった。

 

「こいつで、最後だぁっ!」

 

『──オ゛オ゛ッ!』

 

ヴェルフの大剣がオークを薙ぐ。

そして最後の一体が倒れ伏し、ダンジョンに静けさが戻る。

 

 

 

「やっぱ、パーティってのはいいもんだなぁ!

あれだけのモンスター相手にも、こうして連携できんだから!

しっかし──」

 

ヴェルフは大剣を肩に担ぎ直した。

戦闘の手応えに満足そうな笑みを浮かべながら、

不意に視線が士郎の手元へ向けられた。

 

「......すげぇな、その双剣!

一体、どこの鍛冶師の作品だ?」

 

あれだけのモンスターを相手にしながら、士郎の双剣は未だ健在だった。

もちろん、それを振るう士郎の技量も見事なものだ。

だが鍛冶師であるヴェルフにとって、

それほどの業物を前に興味を抱かない方が難しかった。

 

「ああ、これは──」

 

「インファイトドラゴンだぁっ!!逃げろっ!」

 

突如として響いた叫び声。

次の瞬間、数人の冒険者たちがこちらへ雪崩れ込むように駆けてくる。

 

その視線の先にいたのは、全身を琥珀色の鱗で覆った竜。

名を──小竜(インファント・ドラゴン)

希少種であり、竜種故の高い戦闘能力を持つ。

階層主のいない上層における事実上のボスモンスターと、冒険者の間では有名だった。

 

「──っ!リリッ!」

 

竜が現れたその方向。

そこは不幸にも、転がった魔石を回収していたリリの方角だ。

ベルは仲間の危機を視認するなり、魔法を放とうと即座に右手を構えた。

 

──だがそれよりも早く、動き出していた者がいた。

 

「──投影開始」

 

赤い鍛冶師は瞠目する。

先程まで目にしていた剣が音もなく崩れていく。

まるで、元々その場には存在していなかったように。

士郎の手には新たな弓が握られていた。

 

(剣が......消えた?

いや、違う──今度は弓だと?)

 

突如として現れた弓。

だが、放たれる矢などどこにも存在していない。

──否。

再び士郎の手元に剣が現れる。

 

(剣!?それで何を──)

 

言葉が続かなかった。

彼が弓へつがえたのは矢ではない。

一本の剣だ。

その刀身が細く、鋭く形を変えていく。

 

士郎を中心に魔力が渦を巻く。

収束していくそれは静かでありながら、確かな圧を伴っていた。

そして──

 

「──I am the bone of my sword(体は剣でできている)

 

一節の詠唱の後、弦が鳴った。

解き放たれた剣は風を裂き、一筋の光となって駆ける。

直後。

インファント・ドラゴンの身体が大きく揺らぐ。

 

『ギ─────』

 

断末魔さえ最後まで続かない。

急所を貫かれた竜はその場に崩れ落ち、巨体は灰となって崩壊していった。

 

「リリッ!」

 

「だ、大丈夫です! リリは無事です!」」

 

仲間の無事を確認したベルは、安堵と共に息を吐く。

周囲の冒険者たちからも緊張が解けた気配が広がっていった。

そんな中──

 

(......ありえねぇ)

 

鍛冶師としての常識が、その光景を理解することを拒んでいた。




毎度の事ながら、評価・感想・お気に入りいつもありがとうございます。

読み返していて改めて思ったのですが、ヴェルフの加入って4巻なんですよね。
おかげで出てくるまでに割と時間がかかりました。
ヴェルフは士郎を見て何を思うのか...

次回「贋作」です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

正義の味方と悪い魔法使い(作者:ヒフミくろねこ)(原作:魔法先生ネギま!)

本作は「ネギま!」と「Fate」シリーズによるクロスオーバー小説です。▼もともとは自ブログで公開していた作品ですが、現在ブログにアクセスできなくなってしまったため、こちらで改めて掲載することにしました。▼過去作のため、文章など至らない点もあるかと思いますが、初めての方も、以前お読みいただいた方も、お付き合いいただければ幸いです。


総合評価:4973/評価:8.68/連載:39話/更新日時:2026年04月18日(土) 23:40 小説情報

忍界の英雄はオラリオで英雄になるのか!!(作者:もるさっさ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

▼ 第四次忍界大戦が終わり世界が平和になったかと思ったが、人々は尾獣を求めて争い始めた。▼ナルトは争いの原因がなくなれば平和になると思い、尾獣を己の体に取り込み、六道仙人の術によって忍界から姿を消し、オラリオで冒険を始めるのだった。▼初めて小説を書きます。▼誤字脱字が多いと思いますが、楽しく読んででもらえるように頑張ります!!▼誹謗中傷はやめてください。


総合評価:1579/評価:7.55/連載:21話/更新日時:2026年04月27日(月) 20:09 小説情報

ダンジョンに炎柱がいるのは間違っているだろうか(作者:kursk)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

アストレア・レコードは、リューの成長のために必要とはいえ、あまりにも救いがない。とはいえ、最強オリ主を入れるのは何かが違う。正義の刀といえば、誰かほかにいないだろうか。そういえば、鬼滅の刃も正義が巡るという点では同じではないだろうか――。▼そんな思いつきでクロスさせてみました。▼※【要注意】ここに出てくる杏寿郎とアストレアは作者の妄想です。色々と解釈違いもあ…


総合評価:3405/評価:8.86/連載:20話/更新日時:2026年03月23日(月) 23:30 小説情報

勘違い戦士、ダンジョンを揺らす(作者:お粥のぶぶ漬け)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

シュタルクに転生したと勘違いした▼ダンまち世界に転生した名前だけシュタルクの一般人が修行の末逸般人になり旅ではなくダンジョンで冒険をする話▼


総合評価:3556/評価:7.11/連載:23話/更新日時:2026年01月16日(金) 01:15 小説情報

キングダムハーツ オラリオ ミィス(作者:小説好きー)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

キングダムハーツとダンまちのクロスオーバー


総合評価:2105/評価:9.08/連載:48話/更新日時:2026年05月30日(土) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>