ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか   作:ラブコメは正義マン

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今回三人称と士郎視点が入ります。

3話にしてやっとベル君登場です
ご期待ください


邂逅

 

豊穣の女主人。

迷宮都市オラリオの中でも屈指の人気を誇る酒場だ。

店内では神や冒険者を相手に、店員たちが必死に働いている。

中でも、ここ2週間ほどはいつにも増して忙しい。

その原因とは…

 

「唐揚げできましたー!!配膳お願いしまーす!」

 

何を隠そう、最近入った一人の人間(ヒューマン)、衛宮士郎が原因である。

 

 

 

 

 

「ここ最近は忙しすぎるニャー!!」

 

全ての客が帰り、静かになった店内でアーニャは叫んでいた。

 

「うるさいにゃー…。さっさと片づけを終わらせるにゃー…。」

 

その言葉に返事をするのはクロエ。

普段ならアーニャとともに騒いでいたであろうクロエは、今日はもう限界と言わんばかりに力なく後片付けをしていた。

 

「だって、人手が増えたのに仕事は楽になるどころか増えていく一方ニャ!!」

 

そういってアーニャは厨房の片付けをしている士郎を見る。

士郎はここで働くことを条件に、しばらくの間ここに泊めてもらうことになったのだ。

最初は人手が増えて仕事が楽になると思っていたアーニャ。

しかし、そうはならなかった。

士郎はあっという間にすべてのレシピを覚え、作れるようになっていたため、自然と厨房を任されるようになっていた。

その結果、客の回転率は上昇。

料理の提供スピードが一段と上がった以上、ウェイターとして働く彼女らの負担が増えるのは当然の結果であった。

 

「ていうか、なんでアイツは涼しい顔でずっと立っていられるのニャ!体力お化けなのニャ!ルノアもそう思うのニャ?」

「アーニャうるさい…… 。でも確かに、ずっと料理を作っているのに全くミスもないし正直少し恐ろしいわ…。」

 

クロエ同様疲れているルノア。いつもならば片づけをサボる彼女たちを叱るルノアであったが、ここ数日はその体力さえ残っていないようであった。

 

「リューが連れてきたのがあんな化け物だったとは思わなかったのニャ!」

 

散々な言われようである。

しかし、アーニャの言い分に共感できるのもまた事実のため、否定するものもまたいなかった。アーニャの愚痴は加速していく。

このままではずっと愚痴を聞き続けることになると考えたルノアは話題を変えることにした。

 

「そういえば、明日だっけ?ロキファミリアがうちに来るの。」

「そうだったかニャ?だったら明日は少し楽なのニャ!」

 

ロキファミリア。

女神ロキが運営するファミリアであり、現オラリオ最強派閥の一角である。

普段店で騒いでいるような冒険者たちも、彼らの前で下手を打つような真似はしない。よって、彼らが来店する日は、決まって客同士でのもめ事が起きないのである。(ロキが問題を起こさないとはいってない)

 

「ロキファミリア?」

 

厨房の片づけを終えたのか、士郎が顔を出す。

その表情には一切の苦が感じられない。

 

「お前、ロキファミリアも知らないのニャ!?」

「どんなところで暮らしていたのよ…。」

 

士郎の言葉にアーニャ達が反応する。

無理もない話だ。彼らの名声はこの都市のみならず、世界各地に轟いている。

それを知らないというのだから、もはや驚きを超えて恐怖である。

それに対し、苦笑いで返す士郎。

下手に自分の素性について明かしてはならないと約束したための行動であった。

 

「しょーがないニャ。教えてやるからこっちの片付けも手伝うのニャ。」

 

そういって士郎にモップを押し付けたアーニャ。

だが、もともとそのつもりでこちらへ来た士郎はモップを受け取り、片付けを開始する。

その様子を見て満足したアーニャは、ロキファミリアについて士郎へ教えるのだった。

 

 

 

 

 

そんなこんなで片付けも終わり、そろそろ帰ろうかという頃。

 

「ところで、さっきからうまそうなにおいがするのニャ!!」

 

アーニャの鼻は何かを感じ取っていた。

その言葉を聞いた士郎は厨房からある料理を持ってくる。

 

「実はミア母さんからみんなに賄いを頼まれててな。俺の国にある料理を再現してみた。」

 

そういって包みから取り出したのはハンバーガー。

養父である衛宮切嗣が好んでよく食していたものだった。

 

「これは…サンドイッチかにゃ?」

「似てるけど…少し違うわ。」

「なんだっていいのニャ!早くよこすのニャ!」

 

士郎が取り出したハンバーガーに集まる彼女たち。

包みをそれぞれ受け取り、一口。

こっちの世界の住人にとって、慣れない味付けだったがその表情はほころんでいた。

皆の表情を見て、成功を確信した士郎は残りのハンバーガーを持ってシルとリューの元へ向かう。

 

「あいつ…やっぱり侮れないのニャ…。」

 

そういってすでにハンバーガーを食べ終えていたアーニャ。

なんだかんだ愚痴を言っていたアーニャであったが、それは士郎を嫌っての言葉ではない。寧ろ、ともに働く仲間として信頼しているからこその態度である。

無論、それはアーニャに限った話ではなく。

衛宮士郎はすっかり豊穣の女主人に溶け込んでいたのであった──

 

 

 

 

 

 

──翌朝。

俺は開店の準備をしながら、昨日のことを思い返していた。

ロキファミリア。都市最強に数えられるファミリアとその主神ならば、元の世界について何か知っているかもしれない。

接触できる機会があればそれとなく聞いてみるのもいいかもしれないな。

なんてことを考えていると、何やら外でシルが話している声が聞こえてきた。

どうやら誰かと話をしているらしい。

盗み聞きするつもりはないが、少し気になってしまう。

ほどなくして、シルが店内に戻ってくる。そして、目が合った。

 

「どうかしましたか?士郎さん。そんなに見つめられると恥ずかしいですよ?」

「ああ、悪い。さっき外で話してただろ?それが少し気になってな。」

 

シル・フローヴァ。

豊穣の女主人で働くスタッフの一人だ。

最初は少し警戒されていた様子だったが、最近ではそれもなくなってきており、空いた時間で料理の練習を手伝ったりもしている。

そしてこれは余談だが、彼女の作る料理は俺の想像を超えて壊滅的であった。

 

「ああ、そのことですか。安心してください。少しお話していただけですので。」

 

そういって笑うシル。

普段から明るい彼女だが、今日はいつにも増して上機嫌のように見える。

何かいいことでもあったのだろうか。

 

「そうか。変なことに巻き込まれてなければいいんだ。」

「そこは、「本当に大丈夫か?危ない目に遭いそうになったら俺が助けてやる。」くらい言ってみるものですよ?士郎さん。」

 

今度はムッとした表情でこちらを見てくるシル。

どうやら心配してほしかったらしい。

ふと、その仕草をみて桜の事を思い出す。

俺が適当に返事をすると、桜もこのように拗ねて見せたりしたものだ。

少し懐かしく感じているとシルは俺が返事に困っていると思ったのか、

 

「なーんて、冗談です!実は看板娘としてまた一人お客さんを捕まえたのでした!これでお給金もアップです!」

 

と、種明かしをしてくれた。

どうやらどこかの冒険者がまた彼女の毒牙にひっかかってしまったらしい。

南無参。名も知らぬ冒険者よ。俺は同情することしかできなかった。

そのまま少しシルと話していると、

 

「あんたたちイ!いつまで話してるんだい!!」

 

階段を下りてきたミアから怒号が飛んできた。

マズイ、と思い仕事に戻ろうとしたが遅かった。

とんでもないスピードで俺の前に回り込んだミアは、拳を構えていた。

脳裏に走馬灯がよぎる。

ちらりと横を見ればすでにシルの姿はなく…いつの間にか店の前で宣伝に戻っていた。

「てへぺろっ。」と言わんばかりに舌を出しこっちを見ているシル。

俺が覚えているのはそこまで。

次の瞬間にはミアの拳骨が頭頂部に届いていた──

 

 

 

 

 

 

時は進み、現在の時刻は19時頃。

厨房で料理を作る俺と、それを運ぶリュー達。

豊穣の女主人は営業を開始し、今日も店内はにぎわっていた。

料理をカウンターまで運ぶついでに、店内を見回すと、シルが一人の人間(ヒューマン)の少年を案内しているのを見つける。

シルが今朝話していたのはあの少年だろうか。

真っ白な髪と赤い瞳が特徴的な少年は、このような場所に慣れていないのか、緊張した様子で席に座っていた。

そんなベルに気を遣ってか、ミアはベルの前に今俺が持ってきた本日のお勧めから適当に2、3品運んで行った。

最初はその量に呆気に取られている様子だったが、口にあったのか一口食べてからはおいしそうに食べ始めた。

自分が作ったものを笑顔で食べてもらうのはとても気持ちがいい。

俺はそれを見て満足し、厨房に戻ろうとすると

 

「ご予約のお客様のご来店ニャーー!!」

 

アーニャの声が店内に響いた。

アーニャの後ろには大勢の客。

先ほどまでにぎやかだった店内が少し静かになり、皆がその客を見ていた。

俺もそちらを見てみれば、その理由が分かった。

「強い。」と直感でそう判断できるほど、高レベルであろう冒険者たちがぞろぞろと来店する。間違いない、あれが

 

「ロキファミリア…。」

 

オラリオ最強の一角が来店する。

昨日アーニャに教えてもらった通り、強者たちの集まりだ。

その姿は聖杯戦争で召喚されたサーヴァントを思い出させる。

 

「士郎さん、ロキファミリアがいらっしゃいました。酒と、料理の用意をお願いします」

「ああ、任せてくれ。」

 

リューに声をかけられ、厨房に戻る。

もう少し見ていたい気持ちもあったが、それは料理と酒を用意してからだ。

 

 

 

 

 

ロキファミリアが来店してから数十分がたった頃、ファミリアの面々も酒が回ったのか上機嫌ではしゃぎだしている。

すでに料理の大半を作り終え、その様子を見ているとその主神と目が合った。

 

「母ちゃん、コイツ誰や?前来た時おったっけ?」

 

俺に興味を持ったのか、カウンターに来たロキはミアに声をかける。

 

「最近入った新人だよ。今日の料理もアイツがほとんど作ったのさ。」

「マジか!?自分、料理めっちゃうまいやん!ウチのファミリアとか興味あらへん?」

「うちのスタッフを勧誘してんじゃないよ。全く…。」

 

と、俺を話題に話し始めるロキとミア。

いい機会だ。

少し俺の世界について知っていることはないかそれとなく質問してみようかと考えていると、

 

「よっしゃあ!アイズ!そろそろあの話をみんなに披露してやろうぜ!」

 

狼人の男の声が響く。

大分酔っているらしいその男は上機嫌でトマト野郎とやらの話をしている。

どうやらアイズと呼ばれる人物が新米の冒険者を助けたらしいが、その返り血を浴びた冒険者に逃げられてしまったらしい。

なるほど。それでトマト野郎か。

だが、それは無理もない話である。

いつかの夜、ランサーに殺された時を思い出す。

誰だって死ぬのは怖い。

命を賭して戦う冒険者であっても、その恐怖からは逃げられないだろう。

ヒートアップした男は、ひとしきり話し続けた後、

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇんだよ!」

 

と、恐らくこれが言いたかったのだろう。話し終えて満足したのかその男はまた席に着いた。

 

「ベルさん!!」

 

同時に、カウンターに座っていた少年が店から出ていく。

名前はベルというらしい。

ベルを追いかけてシルとアイズと呼ばれていた少女が店を出た。

 

「ミア母ちゃんの店で大それたやっちゃなーー!!」

 

食い逃げか?そんなことをするような奴には見えなかったが。

というか、ミアがやばい。

入って間もないころ食い逃げをしようとした冒険者を見たことがあるが、それはもう怖い目にあわされていた。

その時を思い出し、ちらりとミアを見る。

しかし、予想に反してミアは静かだ。

ミアと目が合う。そして、その目線が店の外へと向く。

「お前がいけ。」ということだろう。

俺も続いて外に出た。

外ではシルとアイズが同じ方角をみて立ち止まっていた。

 

「シル、さっきの子はどっちに行った?」

 

シルに質問する。

そして、シルはオラリオの中心、バベルに指をさした。

バベルとはオラリオの中心にある塔だ。

そして、その地下には…

 

「分からないけど…ダンジョンだと思う。」

 

アイズが言う。

しかし、なぜこのタイミングなのだろうか。

その答えはアイズが知っていた。

 

「多分、ベートがさっき話してたのって彼の事。私たちのせいで傷つけてしまった。だから…」

 

つまり、そのショックで?

最悪の可能性が浮かんでしまう。

その言葉を聞いた俺の足はすぐさまバベルへと向かっていた。




やっと登場できましたベル君です(なお話すとは言っていない)

評価、感想非常に励みになってます。本当にありがとうございます。

次回はついに士郎がダンジョンへ足を踏み入れます。お楽しみに
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