ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか   作:ラブコメは正義マン

8 / 28
やっとこさ1章終了します



神の恩恵

 

──同日、夜。豊穣の女主人。

士郎君が自身の素性を包み隠さず話してくれた後、

ボクはベッドに腰を下ろしたまま、彼の話について考えこんでいた。

 

その内容はどれもにわかには信じがたいものだったが、

神であるボクには、彼が嘘を吐いていないことだけは、はっきりと分かる。

 

聖杯戦争。英霊(サーヴァント)。第二魔法。

どれも、聞いたことのない言葉だ。

 

当然、神だって全知全能って訳じゃない。

ダンジョンを筆頭に、こと下界においては、知らないことの方が多いくらいだ。

それでも──彼の話のどれもが、神々の間ですら聞いたことがないというのは、少し引っかかる。

 

それに、彼のいた世界というのは、こことあまりにも逸脱した世界だ。

第二魔法というものの詳細はよく分からないけれど、

人の身で世界を渡るなんて芸当が、本当に可能なのだろうか。

 

いや、仮にそれが可能だったとしても。

彼の話を聞く限り、彼らはその魔法を、完全に使いこなせていたわけじゃない。

 

──なら。

彼がこの世界に来たのには、彼自身も知らない“何か”が、まだ残っている。

それもきっと、こっちの世界──オラリオに。

 

「気の遠くなるような話だよ。全く」

 

視線を横へずらせば、自分の知らない英雄譚に目を輝かせているベル君の姿があった。

聖杯戦争とやらに喚ばれた英雄について、士郎君に次々と質問を浴びせている。

その光景は、まるで兄弟のようで、とても微笑ましい。

 

怒涛の質問に、笑顔で優しく返す士郎君。

一見すると、とてもやさしそうな笑顔だ。

けれど、ボクにはそれが、どこか危うく見えた。

 

──彼は、誰かを護るためなら、平気で無茶をしてしまう。

そのことを本人もきちんと自覚しているらしいが、

それでも、目の前の危機を見過ごせるような人間じゃない。

 

きっと、また同じようなことが起これば。

彼は迷わず、飛び出していくのだろう。

 

そうなったとき。

彼が──生き延びるためにも。

 

「士郎君。一つ提案があるんだが、いいかい?」

 

「提案?別に構わないぞ」

 

ボクは、神として。

そして、彼らを見守る者として──

 

「──ボクのファミリアに、入る気はないかい?」

 

 

 

 

***

俺が、ファミリアに?

 

思わず聞き返した俺に、ヘスティアは真っ直ぐな眼差しを向けたまま、静かに頷いた。

 

「そうだ。君はきっと、また同じようなことが起きたら――迷わず飛び出していく」

 

その言葉に、反論はできなかった。

たとえ相手がモンスターだろうと、たとえ場所がダンジョンだろうと。

目の前で誰かが危険に晒されていれば、俺はきっと同じ選択をする。

無言の肯定を視線で返すと、ヘスティアは小さく息を吐いて続けた。

 

「別にね、ダンジョンに潜れなんて言うつもりはないさ。ただ……君が心配なんだ」

その声音には、神としての命令でも、打算でもない。

ただ純粋な気遣いが滲んでいた。

 

「だから、君に力をあげたい。この世界で、生き抜くための力を」

 

──ああ、そうか。

これは勧誘なんかじゃない。

善意だ。それも、疑いようのないほど真っ直ぐな。

そんなもの、答えは最初から一つしかなかった。

 

「そんなの……むしろ、こっちからお願いしたいくらいだ。よろしく頼む、ヘスティア」

 

「……え? い、いいのかい?」

 

自分で言い出したくせに、目を丸くして固まるヘスティア。

さっきまでの神らしい威厳は、どこかへ消え失せていた。

 

「なんでヘスティアが驚くんだ?」

「だって! こんなにあっさり快諾されるとは思わなくて!もっとこう、有名なファミリアがいいのかなー……とか……」

 

語尾がどんどん小さくなり、肩まで落ちる。

急に自信をなくしていく様子が、正直少しだけ面白かった。

 

「何言ってるんだ」

 

俺は、はっきりと言葉にする。

 

「俺は今日、ヘスティアたちに助けられた。だから、その恩を返したい」

 

その言葉に、ヘスティアが顔を上げる。

潤んだ瞳に浮かぶのは、驚きと――微かな喜び。

 

「それに……二人じゃなかったら、この話もしてないさ」

 

ベルと、ヘスティア。

この二人だったからこそ、俺はここまで話したし、ここまで踏み込めた。

だから、もう一度。

今度は、はっきりと頼む。

 

「改めて、俺からも頼む。

──俺を、ヘスティア・ファミリアに入れてくれ」

 

 

 

 

***

ベッドの上で、上半身を晒したまま横たわる士郎。

その上に跨るのは、神ヘスティアだった。

知らない者が見れば、思わず誤解してしまいそうな光景だが、そこにやましい意図は一切ない。

 

これは、神が眷族に与える祝福――

神の恩恵(ファルナ)を刻むための、神聖な儀式なのだから。

 

「さて。これから恩恵を刻むよ。準備はいいかい?」

「ああ、どんとこいだ」

 

その返答を聞き、ヘスティアは小さく息を整える。

そして、自身の神の血(イコル)を、士郎の背へと静かに垂らした。

 

次の瞬間──

士郎の背中に、神聖文字(ヒエログリフ)が、淡く光を放ちながら浮かび上がる。

ヘスティアは、その一文字一文字を、確かめるように刻んでいった。

 

神の血(イコル)が、文字へと溶け込み、ゆっくりと定着していく。

やがて、光は静かに消えた。

 

「終わったよ。調子はどうだい?」

 

「ああ、問題ない」

 

「そっか……良かった」

 

恩恵を刻み終えたヘスティアは、安堵したように息を吐いた。

けれど、その表情はどこか浮かない。

 

「どうかしたか? ヘスティア」

 

士郎の問いかけに、彼女は一瞬、言葉を探すように視線を落とした。

 

「……すまない、士郎くん。君が正直に話してくれたのに、ボクは一つ、君に嘘を吐いていた」

 

その瞳には、後悔の色が滲んでいる。

 

「君のためだなんて言って、ボクは君に恩恵を与えた。誓って、それが嘘だったわけじゃない。でも……本当は、それだけじゃないんだ。もう半分は──」

 

「ベルのため。……だろ?」

 

士郎はそう言って、静かに視線をドアの方へ向けた。

恩恵を授けるにあたって、ベルには席を外してもらっている。

 

「……分かっていたのかい?」

 

「分かっていた、っていうより……勘だな」

 

士郎は静かに言い、少しだけ視線を伏せた。

 

「あの子も、俺に似てる。……正直、危なっかしい」

 

ふと、脳裏に過るのは、かつて対峙した“自分”。

アーチャーと刃を交えた、あの時の記憶。

 

(……アイツも、こんな気持ちだったんだろうか)

 

そんな考えが一瞬よぎる。

それでも、士郎は顔を上げ──

 

「だから、俺もベルの力になるさ。アイツがもっと強くなるまで──傍で支える」

 

はっきりと、その想いを口にした。

 

「……本当に、厄介で優しい人だね。君は」

 

その言葉に、ヘスティアは目を伏せて、微笑んだ。

 




やっと士郎に恩恵を与えることができました。
これで世界のルールに則って魔法を行使できるようになったのでデバフ解除です。

衛宮士郎

Lv.1

ステイタス

力:I 0
耐久:I 0
器用:I 0
敏捷:I 0
魔力:I 0

【魔法】
・投影魔術
詠唱文:〈投影開始(トレースオン)
精神力(マインド)を消費し、自身の世界にある武装を投影可能。
カテゴリ「剣」の武装を投影する際、消費精神力(マインド)低下。

・固有結界【無◾︎の◾︎◾︎】
器が耐えられないため、現在使用不可。

【スキル】
・【正義の味方】
誰かを護る戦闘時、全アビリティに高補正。
護る対象の人数に応じて、効果上昇。
また、意志の強さに比例し、精神異常を無効化。


以下、ヘスティアが士郎へと伝えていない副次効果

早熟する。
正義の味方を志す意志に比例し、
得られる経験値(エクセリア)に増加補正。



ステイタス上はLv1ですが、前の世界での経験があるため戦闘能力的にはこの世界のLv1になりたての冒険者よりもずっと強いです
その辺はおいおい描写していきます


次回、冒険者登録に行く士郎ですがとある女性と再会します
お楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。