ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか 作:ラブコメは正義マン
──同日、夜。豊穣の女主人。
士郎君が自身の素性を包み隠さず話してくれた後、
ボクはベッドに腰を下ろしたまま、彼の話について考えこんでいた。
その内容はどれもにわかには信じがたいものだったが、
神であるボクには、彼が嘘を吐いていないことだけは、はっきりと分かる。
聖杯戦争。英霊(サーヴァント)。第二魔法。
どれも、聞いたことのない言葉だ。
当然、神だって全知全能って訳じゃない。
ダンジョンを筆頭に、こと下界においては、知らないことの方が多いくらいだ。
それでも──彼の話のどれもが、神々の間ですら聞いたことがないというのは、少し引っかかる。
それに、彼のいた世界というのは、こことあまりにも逸脱した世界だ。
第二魔法というものの詳細はよく分からないけれど、
人の身で世界を渡るなんて芸当が、本当に可能なのだろうか。
いや、仮にそれが可能だったとしても。
彼の話を聞く限り、彼らはその魔法を、完全に使いこなせていたわけじゃない。
──なら。
彼がこの世界に来たのには、彼自身も知らない“何か”が、まだ残っている。
それもきっと、こっちの世界──オラリオに。
「気の遠くなるような話だよ。全く」
視線を横へずらせば、自分の知らない英雄譚に目を輝かせているベル君の姿があった。
聖杯戦争とやらに喚ばれた英雄について、士郎君に次々と質問を浴びせている。
その光景は、まるで兄弟のようで、とても微笑ましい。
怒涛の質問に、笑顔で優しく返す士郎君。
一見すると、とてもやさしそうな笑顔だ。
けれど、ボクにはそれが、どこか危うく見えた。
──彼は、誰かを護るためなら、平気で無茶をしてしまう。
そのことを本人もきちんと自覚しているらしいが、
それでも、目の前の危機を見過ごせるような人間じゃない。
きっと、また同じようなことが起これば。
彼は迷わず、飛び出していくのだろう。
そうなったとき。
彼が──生き延びるためにも。
「士郎君。一つ提案があるんだが、いいかい?」
「提案?別に構わないぞ」
ボクは、神として。
そして、彼らを見守る者として──
「──ボクのファミリアに、入る気はないかい?」
***
俺が、ファミリアに?
思わず聞き返した俺に、ヘスティアは真っ直ぐな眼差しを向けたまま、静かに頷いた。
「そうだ。君はきっと、また同じようなことが起きたら――迷わず飛び出していく」
その言葉に、反論はできなかった。
たとえ相手がモンスターだろうと、たとえ場所がダンジョンだろうと。
目の前で誰かが危険に晒されていれば、俺はきっと同じ選択をする。
無言の肯定を視線で返すと、ヘスティアは小さく息を吐いて続けた。
「別にね、ダンジョンに潜れなんて言うつもりはないさ。ただ……君が心配なんだ」
その声音には、神としての命令でも、打算でもない。
ただ純粋な気遣いが滲んでいた。
「だから、君に力をあげたい。この世界で、生き抜くための力を」
──ああ、そうか。
これは勧誘なんかじゃない。
善意だ。それも、疑いようのないほど真っ直ぐな。
そんなもの、答えは最初から一つしかなかった。
「そんなの……むしろ、こっちからお願いしたいくらいだ。よろしく頼む、ヘスティア」
「……え? い、いいのかい?」
自分で言い出したくせに、目を丸くして固まるヘスティア。
さっきまでの神らしい威厳は、どこかへ消え失せていた。
「なんでヘスティアが驚くんだ?」
「だって! こんなにあっさり快諾されるとは思わなくて!もっとこう、有名なファミリアがいいのかなー……とか……」
語尾がどんどん小さくなり、肩まで落ちる。
急に自信をなくしていく様子が、正直少しだけ面白かった。
「何言ってるんだ」
俺は、はっきりと言葉にする。
「俺は今日、ヘスティアたちに助けられた。だから、その恩を返したい」
その言葉に、ヘスティアが顔を上げる。
潤んだ瞳に浮かぶのは、驚きと――微かな喜び。
「それに……二人じゃなかったら、この話もしてないさ」
ベルと、ヘスティア。
この二人だったからこそ、俺はここまで話したし、ここまで踏み込めた。
だから、もう一度。
今度は、はっきりと頼む。
「改めて、俺からも頼む。
──俺を、ヘスティア・ファミリアに入れてくれ」
***
ベッドの上で、上半身を晒したまま横たわる士郎。
その上に跨るのは、神ヘスティアだった。
知らない者が見れば、思わず誤解してしまいそうな光景だが、そこにやましい意図は一切ない。
これは、神が眷族に与える祝福――
「さて。これから恩恵を刻むよ。準備はいいかい?」
「ああ、どんとこいだ」
その返答を聞き、ヘスティアは小さく息を整える。
そして、自身の
次の瞬間──
士郎の背中に、
ヘスティアは、その一文字一文字を、確かめるように刻んでいった。
やがて、光は静かに消えた。
「終わったよ。調子はどうだい?」
「ああ、問題ない」
「そっか……良かった」
恩恵を刻み終えたヘスティアは、安堵したように息を吐いた。
けれど、その表情はどこか浮かない。
「どうかしたか? ヘスティア」
士郎の問いかけに、彼女は一瞬、言葉を探すように視線を落とした。
「……すまない、士郎くん。君が正直に話してくれたのに、ボクは一つ、君に嘘を吐いていた」
その瞳には、後悔の色が滲んでいる。
「君のためだなんて言って、ボクは君に恩恵を与えた。誓って、それが嘘だったわけじゃない。でも……本当は、それだけじゃないんだ。もう半分は──」
「ベルのため。……だろ?」
士郎はそう言って、静かに視線をドアの方へ向けた。
恩恵を授けるにあたって、ベルには席を外してもらっている。
「……分かっていたのかい?」
「分かっていた、っていうより……勘だな」
士郎は静かに言い、少しだけ視線を伏せた。
「あの子も、俺に似てる。……正直、危なっかしい」
ふと、脳裏に過るのは、かつて対峙した“自分”。
アーチャーと刃を交えた、あの時の記憶。
(……アイツも、こんな気持ちだったんだろうか)
そんな考えが一瞬よぎる。
それでも、士郎は顔を上げ──
「だから、俺もベルの力になるさ。アイツがもっと強くなるまで──傍で支える」
はっきりと、その想いを口にした。
「……本当に、厄介で優しい人だね。君は」
その言葉に、ヘスティアは目を伏せて、微笑んだ。
やっと士郎に恩恵を与えることができました。
これで世界のルールに則って魔法を行使できるようになったのでデバフ解除です。
衛宮士郎
Lv.1
ステイタス
力:I 0
耐久:I 0
器用:I 0
敏捷:I 0
魔力:I 0
【魔法】
・投影魔術
詠唱文:〈
カテゴリ「剣」の武装を投影する際、消費
・固有結界【無◾︎の◾︎◾︎】
器が耐えられないため、現在使用不可。
【スキル】
・【正義の味方】
誰かを護る戦闘時、全アビリティに高補正。
護る対象の人数に応じて、効果上昇。
また、意志の強さに比例し、精神異常を無効化。
以下、ヘスティアが士郎へと伝えていない副次効果
※
早熟する。
正義の味方を志す意志に比例し、
得られる
ステイタス上はLv1ですが、前の世界での経験があるため戦闘能力的にはこの世界のLv1になりたての冒険者よりもずっと強いです
その辺はおいおい描写していきます
次回、冒険者登録に行く士郎ですがとある女性と再会します
お楽しみに