王・各国「ま、魔王ちゃん! 攻勢激しくしないで!」 魔王「うるさいですね……」ボコボコボコ
王・各国「あ、あぁ~ッ!」 ドピュドピュドピューッ! (血しぶき)
魔王「はい、今日の戦争は終わり。お疲れさまでした」
王・各国「うぅ……あ、ありがとうございました……」
数年前、念願の同盟国で結束したのだが、『人間ばかりの街で魔族を野放しにすると皆モグモグされるのでは』
という懸念の声があり、結果、魔王ちゃんが定期的に領土から騎士団をボコボコにしてくれるようになった。しかし魔王ちゃんはなんだか
人間のことがキライみたいで、いつもいつも不愛想に騎士団ボコボコして、命イタイイタイなのだった。
スルベリオ王国 そこは我ら祖先が周辺国家を武力行使を用いて併合を繰り返していき果てには大陸一の集合国家としての体を形成したものである。
堅苦しい王国暦から形成された経緯なんてものはそのあたりを歩く村民でも知っており、商人が売りつけてくるりんごの値段を瞬時には計算できる程度には
知識率も進んでいたそんなに対して珍しくもないところ。王都周辺ではさらに進んでいたが、今は置いておく。
しかし、ある日を堺に周辺国家に対して宣戦布告を行った存在が現れた。
その名は”魔王”今では子供ですら知らぬ者はいないとされており、討伐のために何度も各国から討伐隊を組まれ進軍するも度重なる敗北を重ねていき、戦果を得ることは多少あったとしても本命である魔王の首には届かず。
今では王国も各国の例に漏れず元々あった領土を大きく削られてしまっていた有様であった。
そんな各国からの焦りが物資の税の向上として戦火から離れた村民にも伝わってきており、剣術道場を営む我が両親の懐事情をも大きく切迫させていた。
私以外にも兄がいたが、小さなころから剣術の遊び相手として最適だった兄は騎士として志願し村から出ていった。それでも以前より口に入れられる料理は減っていたのは幼心の中で不満に思いながら周りもそうなのだからと当たり前のように受けとめていたのだ。
しかし、私はそれでも不満を口にすることはなかった。なぜなら、不満を漏らせば両親は申し訳なさそうに眉を歪めるのは目に見えていたし、なによりそんなことを理由として好敵手である奴の勝利に貢献するのは腹立たしいからであった。奴は日ごろから剣術の練習もせずに村の外に出ては川で釣りをしてきたり、森に踏み入っては食えそうな木の実を薄汚れた服に包んで私の元に持ってきた。
最初にあったときから奴はそうだった。両親から紹介という形で会ったのは良いが、適当に切られたと思わしき髪はお世辞にも清潔とは言えず。それでもどこか達観した様子であったし誰も見ていないところでは虚空を見やりニヤニヤとしていたりとあからさまに不気味な様子であり、なぜこのような奴を紹介したのはふと両親に問いかけたこともある。
それに対して両親は悲しそうに目を伏せて友人の形見だと語った。それで奴はいつも一人でいるのかと腑に落ちたがそれ以上は口に出すことはなかった。直感的にこれ以上家族が増えるということは両親にとっては大変なことなのだと感じたからだった。
そう感じてからは私も寛大な気持ちになって奴が剣術も出来るというものだから、試しに持ってきた食糧を景品にして先に一本取った方が食べられるということにしてみた。遊びのつもりだった。
結果は散々であった。奴に貸し出した木刀は私が両親の見よう見まねで振るう剣線をことごとく滑らせ、力を込めて振るったはずの木刀もすり抜ける。私にとっては奴の性格が滲み出た厭らしい剣技に対して怒りを覚えてしまいには最終的にはやたら滅多に木刀を振り回していた。そんな醜態に対しても奴はニヤニヤとするのをやめることはなく、私が汗だくで力尽きたところにゆっくりと歩み寄り無抵抗な首筋に木刀を突き付けてきた。あの日の屈辱は2度と忘れることはないだろう。だが、内心そんな奴との剣試合は褒めたたえるばかりの周囲の兄弟子達とは違い、得られる物は段違いであったのも事実である。
こうして暇を見つけては奴の元に赴き、今度は私の着ていた服や親から与えられた小遣い、些細な飯のあまりなどくれてやることにした。そんな奴の驚いたような表情は今でも思い出すことができる。
かくして剣ばかり振るっていた私たちはさらに互いを高め合うために、領土での御前試合に参加した。無論、順調に勝ち進み決勝では奴との対面することになる。
お互いに互いの勝利を確信していたが連戦後にほぼ互角の実力を持つ奴を最後に相手にすることになったときは私も冷や汗をかいたが、奴もやや引き攣った笑顔隠しきれずにいた。それを見て俄然やる気が湧いてきた最終的に剣を投げ捨てて奴を組み敷くことで私は奴の勝利を納めることができた。決着が着いた後、奴も屈辱からか表情を紅潮させて荒い息を吐いていたが、思い出したかのように「そこどいてよ」と口にされたことで慌てて奴の手を取り起き上がらせた。そこからは騎士団に勧誘を受けて2人で入団することになったが地獄のような扱きであったことだけは忘れない。
そうして入団してから度重なる魔物討伐や他の騎士団との連携を評価されたことで、騎士団長として推薦を受けるにあたったが私は断るつもりであった。元々、剣を振るってきただけの人間が多くの人命を預かるなんて責務にそうそう耐えられるはずもない。私はただ剣を振るうことが出来れば良かったのが本音であり、奴も副団長として打診されていたようだが同じ考えだと思い、2人だけの酒の席でつい不満をこぼしてしまったのだ。
そうすると奴はいつもの表情を酒気で赤らめさせながらうんうんとうなづいていたが、話が終わると唐突に立ち上がり私がいかに騎士団長としての適正があるかを驚いて体を反らしていた私の両肩を掴み、鼻先まで近づけたことで奴の瞳に奴よりさらに紅潮した情けない私の顔が見えた……。私はつい説き伏せられたことに対して怒りを覚えていただけ。そう、だったはず。
「面倒なことは私がやろう」という奴の言葉は酒の席だけではなかったようであり、副団長として奴はいつもニヤニヤと貴族様や他騎士団とも対話をしていたのは覚えているが、奴が何を話していたかまでは覚えていない。私はただひたすらに剣を振る姿が綺麗と奴に言われたからではない。己の自尊心に誓ってそういうことはない。だが、そんなことを数年も続けているとついに魔物の襲撃が同盟国付近まで近づいてきていたことが騎士団の情報網に引っかかったようだ。そこで騎士団長として出陣する前に王から呼び出しを受けることになり謁見へ臨む。そこで言い渡されたのは勇者として同盟国に赴くようにとのであり、なんら特別な能力もなくただ体だけが大きくなり鎧も特注でなければ入らない程であったが人に自慢できる要素はそれと磨いてきた剣術ぐらいであった。
しかしながら王はそれでも良いらしく、出向の補佐として先に壁際で控えていた宮廷魔導士たる彼女を紹介された。何でも彼女は王国きっての秀才であり、魔物知識に関しても遅れをとることはないとか。そんなことを最もらしく私はうなづきながら聞いていたが、結局は演出のためかと思いながら魔導士・騎士団精鋭と共に国を出ることとなった。
・・・そこに副団長はいなかった。私は再三奴にも一緒に来るように言いつけた。だが今では互いの目線は私が見降ろすだけで全身が見えるほど背丈の違いはあるが確固たる意志を持った奴をうなづかせることは出来ず。奴は最もらしく私のためだとか、国が腐るとか色々理由をつけていたようだが結局奴は私と共に来ることはなかった。結果がすべてだった。
そうして同盟国に駆け付けた我々は最もらしく口上を並べ立てて敵に突貫を繰り返していた。しかしながら損失は多少あれど、その都度その国の精鋭が同士として協力を申し出てきておりすでに多国籍軍勢として魔物の集団をはねのける程であったのだ。魔導士たる彼女もよく働いてくれた。口下手である私を演出するかのように演説の際には光を加えたり、民衆を集めるよう騎士に指示を出していたりと副団長ほどではないが普段から頼れる存在ではあったのだ。そうして民衆の熱望や騎士団としての期待に後押しされた我々には最早敵はいなかった。
ついに魔物の集団も追い詰められたのか、一点攻勢として攻め寄せてくるというのは私も場数を踏んできた分かっていた。だが、敵の目標は膨れ上がった我々ではなく、我が王国を目指して一心不乱に突き進んでいることに気が付いたのは魔導士たる彼女が焦りを隠さずに騎士団本部に駆け込んできてからであった。
そこからは追って追いつきを繰り返しながら他国に足止めを依頼する、無論、少しでも時間を稼いでくれれば奴らを私の剣の錆にしてやるつもりであった。それを出来るとも今までの魔物どもを切り伏せてきた実感としても確信していた。だが、騎士団は進むにつれて徐々に分解を進めていった。なぜなら経路にある同盟国に関しても無傷というわけには行かず、踏み荒らされたり被害に遭う自国の民を放置などできるわけもなく、いつか合流を約束して我がスルベリオ王国騎士団は我武者羅に突き進んでいく。王都近郊まで近づくころには最早多国籍軍は崩壊しており、我がスルベリオ王国騎士団のみとなっていた。そしてようやく追いつき王都まで一部入り込んでいた魔物どもを切り伏せて血濡れとなった鎧を纏い、死に物狂いで突っ込んでくる首筋に銀閃を走らせる。その直後断末魔を上げる間もなく”魔王”の体は灰となり、その場に崩れ落ちた。
長きに渡った闘争であったが私は王城に入り込んだとされる”魔王”を討つことにようやく成功した。案外、剣を振るうだけだったので勇者とは簡単なものなのだなと拍子抜けもしたが。
警備していた騎士団や女官などの遺骸をなるべく踏まぬようにしながらそのままの格好で私はどうにか謁見場のもとへ参じた。王は蒼白となりながら、私を褒めたたえており、辺りも戦果を誇るように勝どきを挙げている。だが、そこでも私は副団長の姿を探していたが、どこにも見当たらない。王国騎士団として近衛騎士団の中にでも紛れているのかと思い集団を見やるも一部は恐ろしい物を見たかのようにしており、またある者は何かに懺悔するように頭を垂れたまま動かない。事情を聴こうにも辺りは騒然としており、中々副団長の居場所を聞くことは出来なかったが、「私は疲れている。後は副団長に仕事に任せるから呼んでくれ」と近くにいた騎士に声を掛けた途端に辺りはさっきまでの喧騒は噓のように静まり返った。
……。私はその直感で彼らにとって不都合なことが何か起きたのかと感じたが、冷静さを取り繕ってもう一度口ごもり周囲に目を見やる騎士の肩に手を置いた。大袈裟な声を上げながら苦痛と共に「外にいる」と叫ぶ彼女を押しやり手の形で肩部分が手の形に凹んだ鎧ごと転がっていったが最早目に入らない。そうするとしきりに周囲がなにやら並びたてているようだが、なにも聞こえない。今までの闘争に付いてきた魔導士たる彼女ですら知らなかったと泣き叫ぶが今更知らぬも何もないだろうと私は謁見場から窓を開きバルコニーに出る。そこではなにやら騎士が急いで突き立てていたナニかを降ろそうとしていたが、邪魔と思いつい蹴りを入れると紙のようにバルコニーから悲鳴を上げて落ちていった。そんな柔い鎧なぞ使っているからだと私は改めて串刺しのように突きささっていた人物を見やる。
いつもの通りのニヤニヤとした表情をなりを潜めて虚ろな表情でバルコニー下を見下ろしていた。奴め、私を見降ろすなどとはいつからそんな卑怯な真似をするようになったのだと彼女が落ちることのないように優しく串を地面から引き抜き、彼女を手繰り寄せる。長かった黒髪は無惨に切り取られており、私がくれてやった髪留めもそこにはない。そうして横たえてやった後、彼女の肺まで血が溜まっていたのだろう。ゴポゴポと血泡を口から吐出しているではないか。全く、地で溺れるとは器用なことをすると思いながら顔を近寄せて口腔内に溜まった血だまりを吸い取った後、地へ吐き捨てるを繰り返していると微かばかりに意識を取り戻したではないか。
そうだ、早く起き上がっていつものように私と剣試合をしようではないか。魔王ですら歯ごたえがなかった、最早この王国だけでなく、各国でも私たちを超えるものはいないだろう。さぁ、早く……。
「これでお前が一番だ」
見て!魔王ちゃんが踊っているよ
かわいいね
みんなが魔王ちゃんを敵視するので精神を病んでしまいました
お前のせいです
あ~あ
ちなみにプレゼントBOXから引き出された副団長は
あらかじめ夢枕にたった人物の神託を信じて待機していた団長と涙ながらに更地になった王国を脱出するわけです。2人とも無職で可哀想。