遺言を語ろう!!   作:苦肉の味

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「来る、奴がまた来るに決まっている!???」

「落ち着いてください魔王様!!どうか気をお静めに・・・」

「ふざけるなッ!!貴様らがいくら束になったとしても奴の足止めすら出来ないくせに
何を抜かすかッ!!」

「・・・ッツ!!それはそうですが、いくらなんでも側近である妖雪様も失い、四天王の補充もままならぬなかでそれは・・・!??」

「黙れっ、黙れっ!!!貴様も奴の仲間なのか!??我の側に近寄るなぁ!!??」


「魔王討伐RTA 300年17時間24分42秒」

 オラぁまた死んじまっただぁ!!はい、というわけで今回こそはヴァルハラ到達のために周回を続けていきたい思います。前回の私は王国が誇る”勇者”こと人間ミサイルとして魔王の城に着弾したまではよかったのですが、当たり所が悪かったみたいで魔王城で会議中だった所に最強と言われていた四天王と共に大破してしまいました。

 

王国から賜った貴重な装備も壊れてしまったのでこれにはさすがの私も反省が必要でしたね。まぁ、相手の戦力も削れたし”魔王”ちゃんの呆然とした顔を見れたからヨシ!!うひょ~!!泣き顔たまんねぇ!!信頼していた部下を唐突に失うってねぇねぇどんな気持ち??と以前聞いた時に狂ったかのように泣き叫びながら辺りの魔族もろとも爆散させられたこともありました。許せマオウ・・・また今度だとその前の周回でも伝えていたからついトラウマが想起させられたんですかね。しらんけど。

 

 と上記のような某卑劣様よりかは手ぬるい方法で魔王ちゃんのメンタルを限界まで削り倒し、一番理想的な個体値でヴァルハラ到達を目指してめでたく300年経ちました。私としてはもう少し続けても良かったのですが、どうやら今回の周回では魔王ちゃんもおかしくなってしまったのか地・空・海など全種族を用いて戦争を仕掛けているようです。どいつのライヒかなにか?電撃戦なんて聞いてないんデスケド??おかげでポコポコ同盟国が堕ちかけているようです。

 

 これにはさすがの匠も苦笑い。王国民も不安よな、転生者動きます。と大口叩いてみたのは良いけれど今生に生まれたマイボディはクリクリお目目と可愛らしいおてて そこらのガキに突っかかってみても鼻で笑われるような幼女スタイルです。どうなってんだ!!オラッ!!担当者呼んで来い!!と鼻息あらくしてもフンスフンスと足踏みをしている幼女しかそこにはいません・・・。しかしながら、ボディは貧弱でも才能はどうだろうか?

なんと驚くことに魔力の才能は魔導学生にも劣るレベルで火花を出せればいい程度。

筋力も語ったように成長したとしても並み程度のものしか見込めないでしょうかね。

 

 ・・・今リセットって思った? 残念! 転生者ちゃんでした!と助六寿司にも劣らない美貌値が安易なやり直しをためらわせます。しかもそれに加えて生活環境が最高にも近いからです。今のところ私が住んでいるところは王国から大分離れた山間にある村で家族構成は病弱で死にかけの母と治療費を稼ぐために無謀ともいえる冒険業を営む自転車操業の使い手の父、子供は私以外姉妹などもなし。

 

 ここでせっかちな皆さんは才能0でも家族がまともではないのか、実は秘められた能力があるんじゃないのか、くそゲーヤンケとおっしゃるかもしれません。ご明察の通り私には周回経験があります。よって、今まで対峙してきた魔王ちゃんの能力値や性格はもちろん、お気に入りの武器や好きな食べ物、重用している部下まで一通り網羅しています。

・・・まぁ、その武器は3代目辺りでへし折ったし、食べ物は7代目辺りで部下に扮して毒を盛った際にトラウマになったみたいで食べることはなくなり、好きな部下もめでたく先代の私と共に爆散したから今はいないはずですね。

 

 とまぁ、相手の手札を潰し続けてきたうえに進んで嫌なことをやり続けたおかげでようやく勝機が見えてきました。ガハハハッ勝ったな!!と笑い声を響かせて今回はここまで。

 

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 はい、今緊急でカメラを回していますと落ち着いてるのか焦っているのかどっちなんじゃい!!と言われるかもしれませんが、重大事故が発生いたしました。

 

 ・・・なんと両親が治療のため友人を頼るべく都会に出てきてみたのは良いもの剣術に長けていると言われる友人(道場師範)といざこざが発生したみたいで死合となってしまったみたいですね。詳しい経緯までは分かりませんが、どうやらパッパは冒険稼業の中で一際ヤバイ呪物を持って帰ってきてしまったみたいでそれを友人に売ろうとしたらその呪物に操られてしまったみたいです。あれよあれよと斬り合いにハッテン♂しお互いに血汗を流して最後にパッパは妻を頼むを言い残してこと切れたようです。(あれっ、私は??)

経験値的にも旨味なパッパのその潤沢な経験値をいつもらおうかと吟味してたら友人(師範)に横取りされてしまいました。パッパ・・・おまえと戦いたかった・・・。(涙)このままここにいてもしょうがないので人込みの中から経験値泥棒を睨みつけた後、徒歩でトホホと仕方なく自宅へと戻ります。

 

 さらに泣きっ面に蜂ということでその悲報を聞いたマッマも後を追うように外へ出かけたきり戻らなくなってしまいました・・・。お前ら育児放棄すなッ☝️と渾身の魂の叫びを轟かせたところで今回はここまで。

 

 

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 そうだ、私にいい考えがある!ということで今回は時間が少し進んで極貧生活が確定し、外に出ては川で魚釣りをしたり、森に踏み入っては食えそうな果実をモギモギフルーツした場面からお送りします。

 

 心無い方はもしかしたら、少女が許可なく魚釣り・森に入れるわけないだろと正論パンチをかましてくるかもしれません。ですが、ご安心ください。12代目はそんな浅はかな野望を打ち砕きます。このボディは確かに貧弱かつ、最近はお手入れもできていないのでその美貌も翳りも見えていますがこれは敢えてこうしています。こうすることで、お助けユニットを召喚することができるからですね。

 

 そのお助けユニットの名は”騎士ちゃん”と言い、両親は元騎士であったみたいですが今は地元でとある道場の師範をしているようです。

・・・聡明な皆さんならこの娘が何者かはお気づきですね?パッパを小間切れにした憎きあん畜生(逆恨み)ではありますが娘を差し向けてまで流石に私をミンチにすることはないでしょう。そもそも、王国で禁止されている呪物を持ち込んだパッパが10-0で悪いですし、醜聞を恐れて私を亡き者にしようとしても時すでにお寿司。ある程度噂は広まるもので、師範が友人を亡き者にしたという事実は湾曲されて伝わってしまっています。良識ある成人は無論、師範に肩入れしていますが騎士という元々は優遇されていた位を捨ててまで地元に貢献すべく帰ってきた者を快く受け入れることができない足引っ張りはそこそこいます。

 

 何より、一番肝心なのは師範が聖人ではないことですね。遠方では魔族が押し寄せてきて徐々に他の国が堕ちはじめ流通も滞り荒みつつある環境の中でいかに友人と殺し合いをしたとしても約束は守れたら守るぐらいの心意気は持っているようです。仮にここでお節介心を出されて私の身元引受などになられでもしたら、その辺の子供とは違う思考回路や仕草など親を失った少女とはいえ、不信に思われてしまうでしょう。それがいつ魔女狩りにハッテン♂するかも分かりません。なので私としては放っておいてほしいが、あちらも約束(母はいなくなったのでせめてもの代わり)を守る意思があるが故に無視はできない。しかしかと言って安易にモヤモヤとしたこの状況の中で、下手に師範が私に接触してくれば更なる噂が噂を呼び、道場のみならず、自身らの家族まで崩壊することになるでしょう。そこで師範が周囲の批判なども斬り捨てるほどの聖人ではないことがスーッと効いてきます。自身が友人の娘の様子を見に行くのははばかられるそんな中、唯一私に接触してもおかしくない同じ年ごろの娘がいた。

 

 それがこの今目の前で息をぜぇぜぇと切らせて仰向けになって倒れている騎士ちゃんですね。この娘が一緒にいるおかげで、町の住民からの信頼値もある程度低値ではありますが、唾を吐かれない程度には良くて悪人にも手を出すと面倒くさい師範が出てくるということで未だに清い身体でいることが許されています。そもそも、元♂ですが、女の子は女の子同士で男の子は男の子どうしで恋愛すればいいと思うのという教えを教祖様もおっしゃっており、心は♂身体は♀なので私は今のところ♀が対象です(断言)

それはさておき、この年頃にしては剣筋も良く両親が元騎士、町の師範という戦うために生まれてきたような生き物としては可愛らしい娘で、頑張って師範の剣筋を似せようとしていたのも初々しさも感じられました。

 

 そしてそこで、私に天啓が降ってきました。そうだ、この娘を私の経験値にしようと。そうと決まれば善は急げというわけで、この娘を私のサンドバッグにすべくニヤニヤと煽ることでなんだァ?てめェ……と彼女のやる気を促します。さらになにかと疎いこの娘は知らないみたいですが、噂で門下生が減りつつある道場での食い扶持も減っているようです。その証拠に彼女と試合をする前ではいつも腹をぐるぐる鳴らしてこちらがとった魚や果物を物欲しそうに見つめてきています。それを試合の後のご褒美として景品にすることでより彼女が剣術にのめり込むように調整していきましょう。えっ?別にわざわざ光源時計画を企てなくても良いだろ、ほかの経験値稼ぎなんていくらでもあるだろって?

 ・・・決して彼女が道場から持ってきたご飯が美味しかったとか、人と一緒に食べるのは久しぶりだったとか他意はありません。ここだけの話ですが騎士ちゃんこのご時世にしてはそこそこおもちが大きい。栄養がそこにある(断言)走者のやる気にもつながるのでアンタのことなんて好きじゃないんだからねッ(赤面)と休憩時間をかなり過ぎましたが、いまだに走者は仰向けになった山脈を見つめていますね。これはガバではありません。心の栄養補給です。そんなわけで、彼女に上下関係を叩き込むべくいつもニヤニヤすることで不敵な笑みを忘れないように表情練習したところで今回はここまで。

 

 

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 圧倒的じゃないか、わが軍はとしみじみとしたところで今回は時間を飛ばして騎士ちゃんが団長になったところからお送りします。色々あったので経緯は省略しますが、騎士ちゃんはあれから大いに成長し、今では私の背丈を悠々と超えており、その背丈は食育されたおかげか通常の騎士よりもはるかに高い位置からいつも見降ろされます。また剣術面においても、全身金属鎧の癖に機敏に動き回り大剣を振り回しながら試合中でも相手の鎧をぶち壊す姿はハッキリ言って魔族より恐ろしいですね。なんだこのゴリラ!?私との試合?無論私は負けてませんとも。私は柔よく剛を制すの精神でグネグネと動き回った上で相手の鎧の隙間に剣を差し込んだり、相手の足元を狙ってバランスを崩させたりとかしてます。

 

・・・えぇ、はい。負けてないだけで、今のところ泥仕合になりがちというのが正しいですかね。騎士ちゃんは誰から学んだのか知りませんけど、力押しだけでなく、叩き割った地面の破片を相手にぶつけるよう計算していたり、大声を相手の耳元で叫ぶことでひるませたりとか蛮族のような動きをしたかと思えば器用に大剣を回したり

その剛腕だけでなく、培った戦闘の知性みたいなものを存分に披露してきます。対して私も意地ですべての剣筋に対応して受け流したり、よけたりしているので決着が中々つきません。さらに言うと、並みの騎士では最早相手にならずにいつもカコーンと振り上げられた大剣によって空き缶のように鎧を纏った相手が吹っ飛んでいくので試合中、騎士ちゃんも不満顔を隠せていません。鎧の修理代もただじゃないんだぞ、オラァァン!!??

 

 正直、いつも私の試合の時だけ笑顔で剣をブンブン振っているから、あからさまに回りの団員から距離を取られているのに気づいていないの可愛いね(笑)団長が団員を遠ざけて良いわけねぇだろ、いい加減にしろ(憤怒)と怒るも「お前がいるなら別に良いだろう」と決め顔で言ってます。けれどこの女未だに書類の整理も覚えないし金を出させている貴族の顔も忘れてやがるのでいつも私が対応せざる負えません。まぁ、それを補って余るほどの経験値の塊となってくれたので、私としては雑事は喜んでやります。殿?靴も温めておきますか?えっ?髪留めをくれるって?そんなものより経験値を寄越せ 後、これは魔力が上がりそうだから特別に付けておきましょう(照れ)

 

 あとはいつ騎士ちゃんから経験値を頂戴して魔王を討伐しに行くかを決める必要があります。主力がいなくなっても王国防衛ができるように他騎士団や弱みを握った貴族どもの背中を蹴っている最中なのでじきに同盟国とも連携して私の勇者としての経験を活かして魔王討伐を成し遂げてこの周回でめでたくヴァルハラ行きのチケットを手に入れることができるでしょう。ザ・エンドってね。・・・一番の問題はどうやったら生まれ落ちたこの化け物から経験値を頂戴できるのかを考えなければいけないのところで騎士ちゃんが部屋に乗り込んできたので今回はここまで。

 

 

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 逃亡者は処分される 直ちに戦線に戻れ!!と督戦隊ばりに声を張り上げているところからお送りいたします。ということで今回は魔王ちゃんが王国へとこれで最後と言わんばかりに残存勢力をまとめて攻勢を仕掛けているところからです。今現在騎士ちゃん達率いる主力も不在で、とある理由から他騎士団の上層部もまともに使えない状態。一端の副団長ではかろうじて近くの騎士団を統制することはできますが、それ以上は叶わず逃亡者まで出る始末です。王都の壁際まで魔族が攻め押し寄せてますから逃げ場なんてねぇんだよと言いたいですけどね。なんで私だけしか城門を守ってねぇんだ!?命、命、命、敵前逃亡とか騎士として恥ずかしくないのか?

 

 ・・・違います。これは決してガバではありません。それだけは伝えたかった。そもそも王国主力部隊として騎士ちゃんと共に前線へ行くルートもありましたが、肝心な経験値を稼ぐことは実はまだできていません。そのまま前線へ行ってしまった場合、敵と殴り合う前に騎士ちゃんと勝つまで試合をする羽目になり周囲の同盟軍や騎士団からの信頼値が底を突き抜けてしまうでしょう。そうなると周囲からの暗殺リスクが大いに跳ね上がり、討伐どころの話ではありません。かと言って王国内で経験値を稼ごうにも相手となり得る近衛騎士団並びに他騎士団も正直言って雑魚♡雑魚♡ッという感じで経験値をろくにくれません。大きいのは立場と態度だけじゃないか・・・。

 

 そんな死中に活を求めるという感じで私に更なる天啓が降りてきました。そうだ、万が一の場合に経験値稼ぐ相手として残しておいた最後の四天王がいるじゃないか!?とオリジナルチャートを思い出すことに成功したので落ちそうな城門はさっさと捨てて、王都内にあるひときわ大きい魔力の元へ駆けつけます。ここで聡明な方は、四天王なんだから魔王ちゃんの近くにいるだろ、四天王だけを呼び寄せるなんて無理だろと上げ足を取ろうとされるかもしれませんが名探偵ばりにもったい付けて語りましょう。

 

 最後の四天王でもある妖血姫ですが、この娘は戦闘能力というよりかは前回爆散した妖雪姫よりかは弱く使ってくる魔法も闇系列であり、装備さえあれば全然平気へっちゃらです。しかしながら、それでもただの雑魚♡というわけでなく、一番厄介なのはその名の通り相手の血があれば相手を魅了させることができるようです。

 

 その能力によって敵陣に潜り込み、相手の懐から獅子身中の虫として大活躍させるのが本来の運用方法だったのでしょうね。だって現に今私の目の前で乙している姿で妖血姫が転がっています。それで能力を用いて私のことを戦略兵器として利用しようとでも思っていたのでしょうが、だったらさっきのオレのセリフは聞いてるだろ。このワタシには一切の攻撃は通用しないと言い放つことで絶望の表情を見せてこと切れました。死んだんじゃないのぉ?(マイクロビキニ料理人) おぉ^すっごい経験値(小並感)!!これで当初予定していたよりかは少ないですが、経験値もたまりましたので魔王ちゃん征伐に向かう!臆病者はついてこなくていい!と言い放ちたいところですが、ここでアクシデントが発生しました。

 

 ・・・妖血姫 お前だったのか。いつも王の愛人として抱かれていたのは。というわけで、青くなったり赤くなったりと信号機のようにコロコロ変わる王の顔を見やりわりい、おれ死んだ!!となったところで今回はここまで。

 

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 スルベリオ王国 地理的にも天然の自然要塞に囲まれており幾度なく戦火に晒られようとも、城壁の内側に敵を入れることも終ぞなかったと言われており、それは王族だけでなく騎士団にとっても誇りある栄光として語り継がれていた。

 

 その栄光は脆く崩れ落ちようとしている。城壁の外では魔族が上りかけておりどうにか取りついた敵を叩き落そうと一般騎士が応戦するも上から有翼の魔族に叩き落されて、今しがた落とした魔族と同じように血の染みと化した。今、起こっているのは開国以降初めての地獄であった。すでに一部では城壁を崩されており、市民街だけでなく貴族街にも魔族が浸透を始めており、武器を持たない市民はなすすべもなく貪りつくされていく。貴族もどうにか抵抗をしようとして控えさせていた護衛や騎士団から引っ張ってきた精鋭を用いたとしても数には勝てず、屋敷ごと暴力の波に押しつぶされた。今この王国内で比較的安全と言える場所は最早騎士が詰めていた王城しか残されていない。

 

 どこで間違えたのか、当初騎士団の主力と言える騎士団を魔王討伐のために送り出し、魔導士から送られてくる連戦連勝、同盟国とも合流し大陸軍としても他覇権国家と勝るとも劣らない陣容になっていたことに慢心していたことなのか。魔族の軍勢が瓦解を始めて逃走を始めたと聞いて、さらなる追撃を指示したことか、実はそれが最後の抵抗として魔王自ら矢じりとして軍勢の先頭に立ち狂気的に他の国家にも目を向けず、スルベリオ王国だけは堕とさんと侵攻を進めてきたことか。最早この謁見場に集っているのは魔族により数を多く減らした近衛騎士団や大臣並びに運よく生き残った女中、外交官など圧倒的に武官は不足していた。

 

 頼みの綱でもある出向中の騎士団もどうにか侵攻している魔族軍勢を追いかけていると報告があったが、隣国領に入ったと報告があった時点で、もう助からないと錯乱した貴族により通信機器が破壊されて以来音信不通となった。諸侯にも魔族侵攻時点で連絡を入れていたが、救援は望むことは難しいだろう、なにせ王都が襲撃されているということは自身らの領地でも多大なる被害を受けている最中でもあり、救援を出す上層部が存命であるかどうかですら定かではないからだ。

 

 そのような絶望的な戦況の中で、謁見場ではさらなる地獄開かれていた。王が隣に控えていた近衛騎士にとある騎士の処刑を命じた。その人物は”勇者”として出向した騎士の部下であり、他騎士団や一部の貴族からは食わせ者として認識されていた。先ほどのことであるが彼女はあろうことか、命じていた魔族への対応を途中で無視したのか血まみれのまま謁見場に入り込んできただけでなく、抜剣し上層部の暗黙の了解となっていた公妾をその手にかけたのだ。当初は驚きを隠せぬまま逃げ惑う公妾であったが、ついに覚悟を決めたのか宮廷魔導士なぞ歯牙にもかけないほどの魔力を開放させて辺りに破壊をもたらしながら、騎士へと勝負を仕掛けた。しかしながら、本職には勝てないというのか騎士はあっさりと魔法に対処すると踊る様に剣戟を公妾に浴びせかけた。そのまますぐに決着がつき、騎士は何かをやり遂げたような表情で地に伏せた相手にとどめを刺した。開戦当初からいつも何かを企んでいるような笑みを浮かべながら貴族に支援をねだる姿や所属騎士団の地位向上のために周囲に成果を喧伝していたりといつも冷酷無比、暗躍をしているという人物と思われていたが、流石の彼女もこの死を間近にしたことで錯乱したのか、そう周囲が慄きながら少しでも距離を取ろうと彼女と遺骸となった公妾を見やっているとその身体が灰のように消え去っていくではないか。

 

 ・・・それが物語るのは地に伏せた女こそが、獅子身中の虫であり我々を死に追いやっている魔族の一員ともいえる動かぬ証拠でもあった。しかしながら、これも運命とも言うのか。王が謁見場に入ってきたのだ。

そして見やるのは抜剣をしたまま入室してきた王に驚きを隠せない騎士、そして公妾が身につけていた衣類と人型に盛られた灰を見つめこらえきれない感情をたたえながら王が命じたのは騎士の処刑であった。

 

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 率直に言えば失敗したという後悔が心中をよぎった。まさか、王が相手が魔族と分かったうえで囲い込み愛をはぐくんでいたとは思わなかったというのが所感である。しかも相手も王が殺されることがないように謁見場には魔族が入り込むことができないよう情報統制していたというのだから噴飯ものだろう。最初から人と魔族が分かり合えるのであれば、なぜこの戦いが始まった当初から働きかけなかったのか。私は涙ながらに妖血姫との愛を語る王に対して呆れ以外の感情を持つことできなかった。7世の王はあれほど魔族を分かり合うことができないと親族に言い含めていたにも関わらず、結局はその時子供であった彼は聞き入れていなかったのだ。まぁ、勇者を魔法で打ち出すという私のイカレた案を採用するだけあって、周囲からも元々理解は得られていなかったかもしれないが。

 

 しかしながら、これで今回は終わりだろう。ようやく魔王討伐にこぎ着けたというのに、この愛の殉教者であるイカレは私に対して周りの騎士に処刑を命じてきたのだ。ここで命乞いなど王にしてもしょうがないだろう、王命は守られなけば王が王であることはできない。それは今までの血筋が許さない。何より、問題なのは今私は余裕そうに見せてはいるが先ほどの戦闘だけでなく不眠不休で今まで使えない他騎士団の代わりに魔族を屠っていたのだ。さらに駄目押しで妖血姫との戦闘で魔力をすべて使い切っている。これで少しでも休めれば手に入れた経験値を用いて謁見場を血の海にしても良いだろうが、それも時間がない。解決すべく手段も方法もなく、詰みであった。

 

 どうにか時間を稼ごうと今までの場面を目撃していた抜剣したままにじり寄る近衛騎士たちに口を開くが、どうやら騎士たちは一部は罪悪感で足が震えており、懺悔の言葉をつぶやきながらこちらの剣を振り上げている。他には自身がこれから行う残虐な行為に高揚しているのか顔面を紅潮させて息を荒く吐く騎士など正常である人物は残されていないようだ。これもまともな騎士はすべて団長が楽になるように我が騎士団に入れるように優先的に働きかけて引き抜いてきたせいか、それともまともな騎士は他者を守るべくすでに血の染みとなってしまったのかぼんやりとした頭でそれは始まった。

 

 殴る、蹴るならまだ可愛いものだが、唾を吐きかける、髪を切る、髪留めを取ろうとする。

おっと、つい髪留めを触ってきた騎士の眼をえぐってしまった。だが、おかげで髪留めは取り戻すことはできたが、さらなる暴虐が加速してしまったようで一通り終わった後には意識は混濁し、罪人と同じようにバルコニーへ引きずり出された後は杭に括り付けられた。それで、多くの魔族の屠った者を晒すことで魔族への命乞いでもしようというのだろうか。あらら、もぬけの殻になった城門から魔族が侵入して来ているのが見えたが最早何も言う事はない。(殿下風)

 

 それから数時間か経ち、私はまだ生きている。だが、最早遠のく意識の中を虚ろに漂っているだけであり死は間近であるのは繰り返してきた経験から良く分かっていた。さっさととどめを刺せよと騎士や王に言いたいが、下手に喋ろうとしても出てくるのは血泡だけであり、誰も聞くものもいないので何も言わずにいたのだ。そしてついに身体が浮く感覚が身を襲い、終わりに思い出していたのは”勇者”として出向していった彼女のことである。彼女は私を一緒に連れて行こうとあれこれ語っていたが、私としてはこの周で終わることを直感していたのもあり、どうにか彼女が今後騎士団長として楽が出来るように王国内での騎士団の立場を向上、確保しておく必要があったのだ。そのために今まで色々とやってきたがやはり慣れないことはするものではないというのも本音であった。しかしながら、この結局使わずになりそうな莫大な経験値をどうしてくれようか。このまま捨てるのももったいないなぁと思っていると唐突な浮遊感から地に降り立つ感覚、というか地に寝かせられているのだろうか。そのまま、口付けをされ始めたのも認識し、身の毛がよだつ感覚に襲われる。ふざけるな、死に行くものに欲情する猿がいるのかとどうにか動かぬ体で罵倒だけでも浴びせてくれようかと口の中で血混じりの泡を攪拌していると、聞こえてきたのはいつも自信に満ちあふれていた彼女の声は何処へ行ったのか情けなく震えて繰り返される「死ぬな」「私を一人にしないでくれ」などと幼少期以来聞かなかった彼女の泣き言であった。

 

 どうやら魔王は討伐されたようで、薄れつつ見える視力上では彼女は見える外傷もなく私を抱きすくめている。あぁ、そうか。やってくれたのか、押し付けてしまったのかと胸中に罪悪感がよぎるが、それ以上に自身が手塩にかけて育てたような彼女は今や我が国だけでなく他同盟国からも英雄扱いとしてさらなる栄光が待ち受けているのはずだ。なら、今まで持っていた騎士どもや王への呆れや失望なぞ捨てて、彼女へと祝いの言葉を贈ることで私も悔いなく終わることができるだろう。現に今片足どころか半身ヴァルハラに突っ込んでいるのだから。というか他者が魔王を倒してもいいのかとは思ったが、彼女は私に勝つことに固執していたようだし、ここで愛を囁くのもあの王を想起させて不快ではあるのでここは彼女の未練がなくなるように死力を振り絞って祝いの言葉を贈る。

          

 「これでお前が一番だ」そう抱きすくめられたまま彼女の耳元で囁くと大きく眼を見開いた後、決壊したかのように彼女の両目から涙がこぼれ落ちて行った。よし、気持ちよく話せたな。そしてようやく私の息の根も止まったのでここでタイマーストップ。大戦お疲れ様でした。

 

 

               「魔王討伐RTA 300年17時間24分42秒」

 




転生者に与えられた使命とは各々いかなる手段を用いても”魔王”を撃滅すること

それが達成されるまではその身が朽ち果てたとしても

志は心と共に回り続ける。転生者の終わりはヴァルハラにあるのだ。
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