呪い廻る呪術師 黒猫に憑りついた天邪鬼 便利なウオッチなどもおりません。
存分に生きてください。これまでお憑かれさまでした
怖いねぇ~~~(黄猿感)
私が先ほどまでいた静寂な森は今や呪われた地へと姿を変えており、木々に実る果実は人の首へと姿を変えてケタケタと笑いながら地へと落ちていき肉感的な音を辺りに響かせる。幼少期から嫌でも見慣れてしまった赤い液体は潰れてしまった首からとめどなく零れておりまるて生き血を求めているかのようにあっという間に消えて木々へと失った分の水分を補給させていく。さらに壊れた祠の周囲からは何かを封じていたのか歓喜の悲鳴を上げながら怪異共は我先にと祠に手を伸ばそうとしており、後わずかでも手を伸ばせば私の冷や汗で滲んだ薄い衣類を手繰り寄せて私もあの首達と同じようになってしまうのだろうか。今までにないほどの恐怖に苛まれ、ここに肝試しに行こうといった友人たち・・・。この森が呪われた地に変わる前に上手い具合に逃げ出した非情な友人たちを今すぐにでも追いかけてしまいたい。しかし、私はそれでもここを動かないでいた。いや、
「お疲れ様、これで終わりよ」 「お疲れじゃ!!褒めて遣わす!!」
そう木々より高い位置から声がしたかと思えば、辺りにぼんやりと赤い光源が降り始める。今度は水分どころかかなりの熱を秘めているようで、次々に集う怪異共にあたる直後からその身を焼き焦がすと同時に周囲にどぶを煮出したようなさらに腐った異臭が立ち込める。先ほどまで願っていた逃げ出したいという気持ちはまだ残ってはいるが実際に行動には移すことはしなかった。この尊い命には代えられない。いつの間にか張られていた結界の外に出れば私もあの怪異共と同じように黒焦げになってしまうだろうから。冗談じゃない、いくらなんでも日焼けには限度があるんだぞとどこか他人事のような思考で目の前の惨事を見やる。ここまで私がとぼけた思考をしているのは私が度を越した吞気な性格をしているとかそういうわけではない。彼女がここにいるからだ。
「どう?貴女も反省したら二度と肝試しなんてしないこと。馬鹿げたことをするなら協力関係とは言え貴女以外の協力者を探しても良いんだけど」
「おぉ・・・儂以外に知り合いもほとんどおらんかったのに成長したのぉ(涙)」
いつの間にか木々の天辺近くにいた彼女は唐突に目の前に現れた人物に驚き、目を点にした私に呆れながら目の前に降り立っていた。地に足を付いた彼女は他愛ないように燃崩れた祠をスス汚れなど一つもない白足袋の下に履いた下駄で蹴り飛ばしている。
「お前あの祠壊したんか!?(遺言)」
「さすが”魔王”を焼き払った女。祟りも気にしないとか、もう全部あいつ一人でいいんじゃないかの」
罰当たりなどとそんな次元ではないが、彼女はそれが許される。なぜなら家が神社だったから流れで私が所属しているその辺の神社なんぞではなく彼女は大社に勤めているのだ。しかも彼女は神人と言い、私が何時間もかけて儀式をした上でようやくその怪異を除霊できるか分からない程度の善戦を期待するものとは違い、簡単な祈りを捧げることで神格からお力を借りて力を振るうことができる人達のことだ。その中でもいつ頃から巫女をやっているから分からない程長く巫女をしており、彼女を知らない巫女はほとんどいないほどだろう。今回も呪われた地を祓うために遣わされたと帰り道に彼女の夕飯を作るべく一緒にスーパーに立ち寄った最中ビールを何本もカゴに入れていくことで非力な私の腕が悲鳴を上げ始めていたが師匠は非情にもそんなことお構いもなく語ってくれた。
「ビール!ビール!冷えてるかの!!!宴の始まりだ!!(宴おばさん)」
そんな彼女と初めて出会ったのはこの日と同じようにうだるような暑さを避けて夜のこと。両親の教育や巫女学校を卒業した後、新米巫女になり立てで動きだした怪異を祓うために善処したのは良いが、うっかりその付近の祠まで壊してしまい途方に暮れていたところたまたま近くを通りかかった彼女から声をかけて貰い隠蔽してもらったという情けない出会いだった。そして今回も友人をどうにか止めようとあの手この手を試したが、結局は強行されてしまった催しに熱心に口出しをしていた私はあれよあれよと肝試し大会に巻き込まれてしまい、終いにはこの壊れかけた祠をゴールとした可愛らしくもおバカな友人たちは私が止める間もなく手で触れてしまいその祠は長い年月に経験した風化という自然現象よりも確かなダメージを受けてあっという間崩壊した。その直後に崩壊したところから怪異を呼び寄せてしまい、私が事前に用意しておいた儀式を用いてどうにか彼女達を逃がしたところで神人たる師匠が来てくれて事なきを得た。その代わり私はさらに彼女に恩を受けることになり、頭が押さえつけられたように上がる機会は早々なくなってしまっていた。
「ははぁ。お主達のせいか。祠を壊しおって。おかげで儂まで祓われてしまったではないか。いい加減にせえよ(憤怒)」
そこまで地位も立場も違い、能力なども並みのポンコツ巫女な私ではあるがなぜ師匠は私のような小物に目を掛けているのか。そう不思議に思う巫女時代の友もいる。これには深い事情があり、師匠との契約とも言えるのだろうが実は私は能力や血筋などで囲われているわけでも青田買いをされているわけでもない。ただ、囮として見込まれたからその時が来るまで死なない程度に鍛えられているだけなのだ。理由は師匠の友人を助けたいだとかで話せば長くなるのだが、師匠はかつてとある因習村で生まれ育ったと聞いている。そこでは同じように生まれ育った子供たちがたくさんおり、薄い本と同じように手籠めにされていたとか、生け贄にされていたとかそんなことは本だけの物。実際はちゃんと食事も出されていたし、学校にも問題なく通っていたそうだ。じゃあ何が問題なのか、実際に何をさせられるのかと言われると師匠に尋ねてみても彼女はいつものような理路整然とした理論を並べる癖に実際には行動しないと理論家じみた面もあるそのよく回る口を閉ざしてしまうのだ。
「相変わらずそのくーるふぇいすをしておいてお喋り癖は治ってないのかの。まぁ、可愛らしいからモーマンタイ!!」
これに関しては信頼値が足りていない私が悪いとでも言うのか、ここまで巻き込んでおいてだんまりかと詰め寄りたいところではあるが、ここで育成放棄でもされたら私はあえなく怪異の餌になってしまうだろう。恥ずかしながら私は私のことを一番よく知っている。この非力な巫女では怪異に一人で立ち向かうとか、仲間を集めて対処するなぞ社に所属していても消耗率が激しい業界では毒蟻が人間を嚙み殺すと期待の低い話であり、運が良ければ死なずに住む世界で生き延びたければ藁にも縋るように高名な師匠を頼るしかない。今も喫煙がもたらす副流煙の有害作用をテレビに映る医師が語る中、私が作ったツマミを肴にして何本も開けたビール缶を握りつぶしながら自身の高説を垂れている女の生活能力までは神様の力をもってしても引き上げることはできなかったようだ。そんな彼女の醜態も私が助かるためなら甘んじて受け入れよう。そう神様のように寛大な心持ちで新たにツマミを差し入れて私も席につき遅めの夕食を一緒に頂く。これが訓練や仕事がない時のここ数年も変わらない日常だった。変わることはないだろうとその時の私が愚かにもそう思っていたのだ。
「えっ、祓われてしまったけどここから入れる保険があるのか???」
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夜遅くになり、儀式を執り行った疲労感や友人たちを怪我一つなく救い出せたという安堵からか食事を済ませると早々に寝入ってしまった弟子を見て私は雑音を流していたテレビをそっと消した。もう時間は丑三つ時をとうに過ぎており真夜中を超えた辺りで窓の外を見ても街灯の少ないこのあたりでは暗闇は晴れることはなかった。そして寝入る弟子を布団へ運ぶと何回も寝泊まりしていたからかいつの間にか用意されていた布団を隣に敷いて私も布団へ潜り込む。その薄暗くなった部屋では静寂とも言える闇が支配していた。その中で私はいつものように酒でようやくぼやけた身体から睡魔を引き出し無理やり瞼を閉じて眠気を待った。しかしながら、今夜はいつものように眠ることが出来ないでいた。理由はすぐに思い当たったが、それは考えるまでもない。嫉妬だったのだろう。肝試しの後、人払いの結界が解けた後泣きながら友を助けるべく戻ってきた弟子の友人たち、そして不貞腐れながらも笑顔で受け入れた弟子の姿。私は大人げなくも確かな友情を演出していた彼女達を羨ましがり、どうして私はそうあれなかったのかと後悔が押し寄せていつも眠りを妨げるのだ。
「おっ、ついに儂もヴァルハラへ向かう時がきた様じゃなぁ…。お別れの時間がやってまいりました。では達者でな…。その寝る前の酒癖は身体に悪いから直すんじゃぞ!!(成仏)」
それはうだるような暑い夏の日。私は落ちこぼれとして日々怪異退治として高名な両親の指導を受けており、ついに我慢できずに家を飛び出したのは良いものの狭い村の中では逃げ場なぞたかが知れている。その中でも両親の眼を欺くにはよほど意外性のある場所か知っていてもすぐには来れない場所にでも逃げ込むしかないだろう。そう考えると行く場所はすでに決まっていた。同じ巫女ではあるが私よりも遥かに能力を用いるのも長けており、両親からもあの娘を参考にしろと渋々言わしめるあの娘のところだ。
あの娘は私の家とは違う神社を住まいとしており、いつものようにそこの鳥居に腰掛けながらそ曇一つない空を汗一つ欠かずに暇そうに仰いでいた。階段を上り切り、鳥居の下まで来た私は危ないよだとか怪我するよとか呼びかけた。しかし本当のところは友人を心配するのもそうだが、神をも畏れぬ所業に私まで怒られないかヒヤヒヤしていたり、そのようなことはすべきではないと私なりに考えて彼女を制止していたがどこ吹く風か彼女は私の存在に気がつくとぴょんと飛び降りて目の前に降り立った。鈍臭い私はそれに驚いて背中から階段を転げ落ちそうになるが、ケラケラと笑いながら機敏な動きで彼女は私の背中を支えてくれて幸いにも怪我無く済んだのは良いが、驚かされた仕返しに頬を膨らませて不満顔を見せるとさらに笑いながら私の両頬をつつかれあえなく口の中の空気は吐出された。そして終いには彼女はゲラゲラと笑いだし、釣られて私も笑い出す。そんな巫女とか能力とか細かい事を気にせず対等に接し合える親友だったのだ。
そしていつもと同じように私は社宅の縁側で彼女にクドクドと怒られだけではモチベーションが上がらないだとか、成長を阻害されているとか両親だけでなく、村の村民の愚痴を彼女にぶちまけていた。心中では訓練の時間の邪魔じゃないかとか仕事とか大丈夫だろうかと思っていたがそれを口に出すことはしなかったし彼女に甘えていたのだろう。私たちは親友であるのだからと思うのと同時に優秀な彼女の時間を独り占めにしているという薄暗い感情が私をとぐろをまかせる要因でもあったと今では自省している。だが、彼女はそんな浅はかな私に対しても咎めることはせず、楽しそうにいつも私の話を聞いてくれていたしちゃんと相槌をうったりとそれに気を良くした私の口は詞を飽きもせず紡いでいた。・・・そう、彼女の目の前で紡いでしまったのだ。
「はぁ、こんな村無くなっちゃば良いのにな。」
「おっ!?ついにこのクソ村燃やして良いのか!?これから毎日村を焼こうぜ!!」
夜両親に叩きおこされて、寝ぼけ眼で外に飛び出した。山間にある神社から見えたのはいつもの暗闇に閉ざした静寂な村々などではない。そこは昼間のように明るく映し出されており、下々からは楽しそうな声が聞こえてくる。しかしその声の中には誰のものかもしれない悲鳴も混じっており、さらに楽しそうに聞こえる声は何重にも重ねられた性別も分からない声で幾度も遊び相手を探しているようだ。
火の中 火の中 こちらへおいで アナタはだあれ ワタシはク○ク○ ○尺様 逃げなきゃ 逃げなきゃ つかまえろ アナタはだあれ ワタシはコ○○バコ オニサン
血の気が引いたどころではない。あの怪異共は村民を捕まえては火の中に放り込みそれを遊戯として成立させているのだ。しかも、それはただの怪異共などではない。背は壁を遥かに超えているものもいれば、遠目でわからないが姿がぼやけているもの。また、なにやら箱のようなものをもった村民が手当たり次第に斧を振り回していたりとどこぞで姿形を聞いたことがあるようなものも見受けられる。そう、まさしく百鬼夜行とも言える惨事であったのだ。この世のものとは思えない光景に言葉を失っていた私であったが、両親や逃げ延びてきた長老たちから肩を激しく揺さぶられて激しく問いただされたのだ。
「お前、あの娘に何を願った!?」「いやだいやだ死にたくない死にたくない」「誰か助けてぇ!!!」「だからあれほどあの依代に近づけるなと言っただろう!?」「お前がしっかり管理していなかっただろうが、俺だけのせいにするなよ!!!」「あんたなんて生むんじゃなかった!?」「あの依代の遊び相手には適任だと決めたのは長老だろう!!」「イヤイヤイヤイヤ!!!」「助けはまだ来ないのか!!!」「無理だ!!怪異が道をふさいでる!!!??」「ほかの戦える奴らはどうした!?」「とっくの昔に火の中だよっ!!!」
「みーつけたぁ」
「はぁ、何やっとんじゃこいつら。遊んでやればさっさと祓えるのに・・・。」
その声が聞こえた瞬間、噓のように辺りは静まり返った。誰もが口を開くことができない。
それは恐怖という根源たる感情であり、口を開くことで注目をされたくないという生存への渇望でもあった。それは楽しげに人々の隙間を縫ってカランカランと下駄の音を立ててながら震えがおさまらない私のもとへ近寄ってくる。
一歩近づく。時には杖で叩いてきた長老が悲鳴を上げながら燃えた。
一歩近づく。私に対して嫌がらせをしてきた忌々しい教師が燃えた。
一歩近づく。私を前に付き飛ばそうとした両親が燃えた。
・・・私も燃やされるのか。そう直感した私は喉が裂けんばかりに叫んだのだ。
「来るな化け物!!!どっかいけぇえええ!!!!!」
「・・・。これが倦怠期ってやつかの?いや、まさか、儂が見えてないとかないじゃろうし、友達って思ってたのって儂だけってコト・・・!?」
そう叫んだ途端に辺りの火は噓のように消えて、ここまで届いていた不快な笑い声なども消えていた。そして私以外に立つ人物は目の前にいる怪異のみ。しかし、それは意外そうにケラケラと笑うとゆっくりと私に背を向けて神社の階段を降りていく。その背中から目をそらすことなぞできるわけもない。そしてそれは鳥居をくぐろうとしたその姿は一瞬瞬きをした際に消えた。どこに行ったのか、見えていたはずなのにと辺りを見渡そうとした瞬間後ろから耳元で囁かれた。
「つーかまえぇた」
「は~。まったく、呪殺も即死もない。ただの物理攻撃とは・・・。ム○オンぐらいは持って来いと言いたいわ。」
そう言われて振り返ると人の頭なぞ容易に嚙み砕くことが出来そうな歯を見せながら大きく口を開いており、すでに怪異は私の額ほどまで開いていた。「ヒッ・・・あっ・・・あぁあぁ…ッ。」
言葉にもならないというのはそういうことなのだと認識し、口が閉じるその瞬間。私の身体は激しく燃えだした。
「ギャアアアアアアアァャャヤアッヤヤアあ!!!」「イダイダイタイイダイイタダイ!!!!!」「アヅイヨォオオオオオオ!!!!」
「底知れぬ絶望の淵に沈めっ!!トラップカード 聖なるバリ○ ミ○ーフォース!!」「ガッチャ!!楽しいデュエルだったぜ!!またな!!」
聞くに堪えぬ悲鳴が目の前の怪異から発せられているのは分かる。しかし、それをもたらしているのは誰なのか。言うまでもなくこの場にいるのは私と怪異だけで他は燃えカスになってしまっている。苦しんでいるのは怪異だけで消去法から言えば私だ。だが、なぜ私は痛くもないし熱くもないのか。それを知るのは恐らく彼女だろう。だが、聞こえた彼女の声は別れを告げていた。私はこの力とともに親友を失ってしまったのだと認識し、止まらぬ涙と共に朝日を迎えたのであった。
「I got you・・・私はあなたを捕まえた・・・ね。その代償として貴女は・・・あぁぁッ・・・。」
「さて、そろそろ儂も”魔王”を探さんとなぁ。今回あ奴らにも遊び場を提供したから探すのにも協力してくれるじゃろう。ではな、巫女娘よっ!!また会える日を楽しみにしておるぞ!!」
ネクスト転生者ヒント!!
もう”魔王”祓われてる!!!
なお、巫女ちゃんは主人公気質で覚醒すれば何とでもなっただけです。
特段、転生者が手を貸したとかはありません。一応、巫女ちゃんのステータスを見て余裕で対処できそうだから見物していただけです。村が燃えたのも怪異共に切れた神様のお仕置きみたいなものです。知らないって幸せですよね。
そんなわけで怪異共と魔王探しも飽きたので後方腕組育成者面して巫女ちゃんの怪異退治を見学していたらめでたく今回の件で魔王も祓われました。そしてついにヴァルハラ行きを伸ばすのも限界となり巫女ちゃんが寝入るのを見届けて悪霊は旅経ちました。めでたし、めでたし。
力ある怪異の声は常人には聞こえぬ
獲物にしか聞こえさせぬ。
なぜなら、その方が楽しいからだ。