日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。   作:wakaba1890

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日本国 召喚獣管理省 関東庁 庁官:上坂 貞時。

ーーーー...コンコン

 

「....入りたまえ」

 

関東庁本棟最上階、庁官室の扉をノックして一拍した後、扉の向こうから通る中低音の声が通る。

 

「....失礼します。召喚獣総合事案即応科 科長 才亮 勝馬です。」

 

いつもとは異なり、ジャケットの前ボタンを閉じてワイシャツもネクタイも上まで締めた才亮は通礼をこなした。

 

「うん...」

 

積み上がった書類に隠れた彼は大量の書類を捌きながら、ジェスチャーで才亮へ着席するよう促した。

 

が、才亮はいつも通り立ったまま、彼を待つ。

 

「.....よし。5分...で済まないか。」

 

一旦キリの良いところで作業を中断した彼は立ち上がって、才亮の表情から話の重要度を測った。

 

「はい。今回は本間寺での召喚式の召喚主、少女Aとその召喚獣の身元引き受けの件で、上申したく参りました。」

 

「その件は龍泉寺へ決まるという話では?」

 

才亮の独自の情報網と今朝上がった報告書からも、その線で事が運ぶようになっていた。

 

「いえ、信用と権威性に問題があるかと」

 

「....何?才亮科長が適切な関係性を築けなかった事からか?」

 

空気がピリつく、貞時庁官のスタイリッシュな白い羽毛を纏ったフクロウ型召喚獣シャープが才亮をギロリと見つめる。

 

「それも関連します。」

 

「スゥ......権威性に関しては?」

 

「これからも龍泉寺へ龍型が集中し続ければ、日本国が彼らを扱いきれなくなります。」

 

「......君もどうせ知っているだろうが、龍泉寺は本間寺などとは全く異なる。公でなくとも宮内庁からの認可も降りている。その代価とは言わんが、龍泉寺が蓄積している龍への知識体系も知るべき者は知っている。その関係性と同一視して良いか?」

 

才亮の個人的な関係性と非公式での日本国と龍泉寺との関係性が同じく、危うい関係性であるか明文化して聞いた。

 

「場合によっては」

 

かなり慎重に選んだ言葉だったが、この金髪の男はひょうひょうとそう答える。

 

「......スゥゥゥ、少し屋上で話そう。ここでは必要な酸素が足りん。」

 

張り詰めた空気で胃がキリキリと軋む中、貞時庁官は長い長い息を吐いて立ち上がり、屋上へと向かった。

 

10階建ての本棟の屋上には、強く風が吹きやれる。

 

風向きへ顔を向けると、彼の金色の髪は陽の光に当てられながら前髪オールバックになり、これからする話の重要度など何のそのと心地良さそうに目を閉じて、風に身を任せる。

 

「.....スゥゥ...?」

 

強風のせいでライターに火がつかない貞時庁官はタバコを咥えながら、彼へ箱からタバコを差し出す。

 

「...どうも...っ」

 

「ん.....おっ...君のは調子が良いね。」

 

タバコを受け取り自分のライターで火をつけ、手で風を避けて貞時庁官にも火をつける

 

「スゥゥ...ふぅ...庁官。やめたのでは?」

 

「スゥ...吸ってから聞くかね。それ」

 

「吸う前にクラっとくるのが、至高でしょう?」

 

「かはははっ....そうだったね。」

 

「「.....」」

 

ヤニかす同士の会話が弾み一旦は互いに黙ってタバコを堪能した後に、貞時庁官から切り出される。

「.....他に案があるんだろう?」

 

「えぇ、龍型召喚獣ツキヨノは関東庁が引き受けましょう」

 

「ブハッ....ゴホッ....はぁ.....龍を公にするつもりか?」

 

むせた彼は呼吸を整えながら、金髪の男に当然起こる事態を確認する。

 

「はい。出回っている映像や警視庁の公式発表からも、市民は興味を辞めない。」

 

「......」

 

貞時は押し黙った。

 

事実、独立系のSNSは公共の福祉に反しない限り検閲はされない。そして、人が持つ興味や関心自体は決してそれらに準じない。

 

「今回の本間寺も、龍への知識不足から通報遅延の余地を産ませてしまいました。なれば、あらかじめ龍への基礎知識を知らせ、正しく恐れさせるべきかと。」

 

「......関東庁のみならず、召喚獣管理省がそれを率先すると....」

 

いつだって開拓者は矢面に立たされる。才亮はその最前線に貞時庁官と召喚獣管理省の大臣、事務次官を立たせるつもりであり、そうとなれば彼らがその時だけでなく良くも悪くも一生歴史に名を残す事となるのは確定していた。

 

「はい。」

 

「っ....勘弁してほしいね。」

 

「「......」」

 

強風は次第にその勢いを減退させ、屋上に吹く風は鳴りをひそめる。

 

「.....龍型召喚獣を公表して、次は神格を公表する気か?その時は、龍泉寺どころではない。宮内庁と相対する事になる。さすれば、日本国が割れ、西側諸国がそこに付け入る。」

 

「......」

 

最悪の中の最悪の事態へ繋がる可能性がある行為と改めて理解した才亮は、アジア連盟が確立される前、西側諸国によって行われた植民地の凄惨な惨状が日本国で起きる世界線が見え、噛筋が筋張る。

そして、才亮は一度ゆっくりと瞬きをして、かねてからの考えを言う。

 

「....元来、日本人は自然と召喚獣を同一視し信仰してきました。先人たちが克服してきた地震や津波、噴火などの天災に恨みを持つのは神格への恨みとなり、払いきれない代償が降りかかるのを直感的に理解している。」

 

神道の原始である自然信仰は、神格のみならず日本国とアジアの繁栄に寄与し続けてきた召喚獣と同じであり、日本人はそのボーダーラインを理解していると才亮は言う。

 

「...神格と龍は別かね」

 

「えぇ、人はまだその領域に行ってない。かと」

 

「人は召喚獣よりも未熟である点は賛成しよう。事実、召喚獣の進化速度は人を遥かに上回る....まぁ、君は別か。」

 

才亮の腕に巻きつく寄生型召喚獣イッタンモンメンを見つめる。

 

「......」

 

「.....まぁ良い。検査はパスしているなら、それは私の仕事ではない。」

 

彼は表情を変えずにただ黙り、それに見かねた貞時庁官は目線を切り、肉眼では見えない関東庁から東に行った先にある居を見据える。

 

「「.....」」

 

再び強風が吹きやられ、金髪オールバックの彼は静かに、風吹きとは比例しない雲ひとつない青空を見上げる。

 

「....誰しもが神格になり得ます。」

 

そして、その下で陽の光を一身に受けた金髪の男は古事記から引用した言葉を空へと呟く。

 

「....知り過ぎだよ。君は、本当・・ーーーーー」

 

貞時庁官は彼の方を振り返らずに、陽の暖かさを帯びた金色の風へ呟いた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー( ^ω^ ) < それからどしたの

 

 

 

 

 

決着が着き、屋上から下り庁官室前の待合場を通ると、関東庁召喚獣総合病院 院長の西条が足を組んで座っていた。

 

「やぁやぁ....奇遇だね。」

 

こちらの姿が目に入り、陽気な感じで手を振ってきた。

 

「....あぁ」

 

「勝馬くーん....庁官となーに話てたのっ?」

 

軽く相槌をしてそのまま通り過ぎようと彼女に背を向けたが、彼女は彼を呼び止めた。

 

「話?俺は屋上でタバコ休憩してただけだぜ。じゃあな、西条。」

 

「ふーん....」

 

体を軽く半身にして顔だけそっちに向けて、それだけいってその場から離れようとするとまたも、彼女の声が彼の背中を艶かしく伝う。

 

「そういうことにし・て・あ・げ・る。」

 

「っ.....,,西条 麻衣)

 

今度は振り返らずそのまま立ち去り、才亮は彼女の名前を心中に呟いた。

 

そして、数日後、約束の二週間という期限を数日余した頃、日本国が運営する全寮制一貫学校への転入が決まり、月葉が即応科棟から巣立つ時が来た。

 

「ふふっ...似合ってますよ」

 

「っ....ありがと」

 

新品のランドセルと汐留にやってもらった三つ編みを褒められた彼女は、年相応に気恥ずかしそうにしていた。

 

「ツキヨノは関東庁に来ればいつでも会える。召喚獣カリキュラムの時はここで学ベるよう手配しておく。」

 

「.....っ」

 

見送りくらいはと才亮は一応の確認として月葉にそういうと、彼女は彼に駆け寄ってしゃがむように指示する。

 

「...?」

 

「....チュ..その、勝馬も色々ありがと」

 

「!...ふっ、あぁ...何でもない時でも遊びに来い。」

 

頬にチューをされた才亮は優しい顔でそう言って月葉の頭を撫でた。

 

「う...うんっ!....」

 

彼の優しさに嬉しさと暖かさを滲ませながら、月葉は笑顔で頷いた。

 

「今度美味しいスイーツ食べ行きましょう。汐留さんたちも一緒に、才亮さんの奢りで」

 

「!....ふっ...」

 

時雨は彼女の目線の高さにしゃがんでそう言うと、才亮は微笑んで首肯した。

 

「っ...うん。楽しみにしてる。みんな.....行ってきます!」

 

「....おう」

 

『クゥー』

 

「うぅ...いつの間にこんな大きくなって....」

 

「....会ってから一週間経ってないですよ」

 

関東庁から飛び立った月葉は、今生の別れでもないのに感傷的になっている彼女らを背に、阻めるものは何もない真っさらな道へ進んだ。

 

 

 

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