日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
昨日の一件から翌日、関東庁召喚獣総合病院にて、寄生型と半寄生型への毎月の健康診断も兼ねて、昨日吹き飛ばされたはずの左腕の検査も行った。
「...はぁーい、流石しょうちゃん。流石の再生力、心身ともに健康ね。それ以外はになるけどー」
「.....」
西条は相変わらずの調子のままに、イッタンモンメンでがんじがらめになっている彼の右腕を一瞥する。
「白鳥は大丈夫か?」
「全部元通り!ってわけにはいかないけど、しょうちゃんが加減したのもあって順調に回復してるから、今月中には退院できるかな。」
「スゥ....そういえばツキヨノとは少しばかり入れ違いの急な出張だったな。まだ会ってないのか?」
関東庁ではもう日常の風景となりつつある、のんびりとお空をお散歩しているツキヨノが映る窓を後ろに才亮は安堵の溜め息を吐き、まくっていたシャツを元に戻しながらそう聞く。
「もーっ、ほんと!出張切ってすぐにでも会いたかったぁーん」
彼女はそれを聞くと間髪入れずにきもい動きをしながらタワワな胸を靡かせていた。
「...シェイプシフターはどうだ?」
彼は感触を確かめるように左手をワシワシと強張らせ、ジャケットを羽織りながら一通りの検査を行った彼女にさりげなく聞いてみる。
「うーん、すこーし変異してるけど新種ではないのん、ザンネーン...」
「そうか」
デフォルメされた表情で腕を組んでコミカルにそういう彼女に、彼は呆気ない相槌を打った。
「んんー?一体、どんな手を使って関東庁に留めたのかなー?」
「俺は何もしてない。龍の下では誰しもが悪事を働けないってだけだ。」
外の窓ガラスに映る、無月の鬱憤を晴らすように天へと昇るツキヨノを背にした才亮は病棟を出た。
「.....」
ガタンっとドアが閉まり、西条は笑顔を崩さずに窓の外に映るツキヨノを見つめた。
( ^ω^ )<それからどしたの
関東庁即応科棟2階にて、珍しくフルメンバー揃ってのブリーフィングが始まった。
「ーーーー・・今回は潜入作戦になる。茨城県笠間市にある採石場の地下。今日夜に行われる召喚獣の賭け闘技場のトーナメントにおいて、賞品となっている召喚獣の卵の回収だ。」
ホワイトボードに隠し撮りらしき賞品の卵の写真が貼られる。
「それって警察の領分では...」
「その辺りはまぁ、大人の事情ですよ」
「うむ」
「なっ!はぐらかさないでくださいー」
「責任分散ですよ。領分としては警察や公安ですが、今回は潜入して二方面から奪還するという別のリスクを伴うものなので、失敗した際の責任分割みたいなもんです。それと協調ってところですか」
遠回しの子供扱いと捉えた時雨は不満げに頬を膨らませて腕をぐるぐるとしていると、からかいを鞘に納めて汐留が説明した。
「なるほどー、バランス管理ですか」
手柄が一方の組織に相対的に偏りすぎると、警察、召喚獣管理省、公安、他組織とのパワーバランスが歪み、共同作戦の際に変な摩擦になりかねないといった事情があると理解した。
「まぁ、そこでトーナメントに参加するのは....・・ーーーー」
大体の作戦内容と流れを説明し終えた彼らは、才亮の家へと向かった。
ぬるっと才亮の家?に到着すると、そこは召喚獣管理省・関東庁から徒歩10分程の位置にある1階がコンビニの築数年のマンションで303号室が彼が契約している部屋であった。
「へぇ...こんなところに住んでるんですね....」
キッチンは異様に綺麗で洗い物はなく食器類も綺麗に整頓されていた。また、グレーのソファーには脱ぎっぱなしになっているワイシャツ、最新ゴシップ雑誌、飲み切ったペットボトルが置かれており、この辺りの生活感から言ってはなんだが人間味を感じていた。
「住んではないな」
「ん、じゃここって....」
「....まぁ、物置部屋みたいな物ですよ」
妙な言い方に不法侵入を疑った時雨であったが、汐留がフォローした。
「来たことあるんですか?」
「...まぁ、何回か」
「ん、それって...」
「各々この中から選んでくれ」
はぐらかすような汐留から何かを感じ取った時雨は口走りそうになるが、才亮がウォークインクローゼットを開き、彼女らを残して洗面所の方へと向かった。
「わぁー、すごい!色々ありますねー!」
クローゼットの中には、普通のOL服から作業服、ナース服、コスプレ衣装、学生服、警備員の制服など中々の品揃えであった。
「ん、これとかどうですか?」
「んー...ちょっと警官くさいですね」
手慣れた様子で革ジャンを取り出し、壁張りの鏡の前で時雨に合わせてみるが彼女の童顔と革ジャンのミスマッチさは変装感が漏れてしまっていた。
「そうですか、似合うと思いますが」
「っ...汐留さんの方が似合うと思います!」
しゅんとした汐留に時雨は燻んだ赤の革ジャンを彼女へ渡す。
「!...これ良いですね。これにします。」
その後、1ウィンドウショッピングくらいの時間を要し、各々の変装が固まった。
「わー、結構良さげですね。」
ほかほか気分になっている時雨の格好としては、どっからか見つけた渋い金ネックレスに、白いTシャツに黒タイツの上に、ビビットピンクのファー、黄色のヒールとチェーン付きの金色のメガネと言った容態であった。
一方で汐留は、燻んだ赤の革ジャンとドレッドがついたニット帽にジーパン、サンダルに付け髭と全体的にレゲェと葉っぱ好きの男になった。
「んん?...あれ、おかしいですね。個々の色はよかったんですが....」
もちろん汐留も一緒に選んだつもりであったが、最終的な様態ははっきり言って趣味の悪い成金ババァのようなファッションになってしまっていた。
「....そろそろ良いか....ぁ」
「どうですか?これなら私だって分かりませんよぉ!」
「....ツゥ」
自信満々にそういう時雨を前に才亮は頭を抱えながら、直々に他の服を適当に見繕った。
「...むっ、遺憾ながらめっちゃ良いですね。」
時雨は最終的に英国のロックバンドがプリントされたロンTに、短パンと黒縁の伊達メガネ、そして黒髪ボブのウィッグと元の時雨とは別人で、こういう世界線もあったのかと感心していた。
「...よし、着替え終わったか」
適当に服と小道具を渡し自分の変装衣装もスパッと選んで、再度洗面台の方に行って帰ってきた才亮の様態としては、髪染めとワックスで黒髪のオールバックに、前を開いた白グレーの繋ぎに黒シャツ、安全靴と言った具合であった。
キリッとした目つきが表出し整った顔立ちを前面に押し出しており、服装はともかくとして本命デートでの風貌を垣間見た。
「なんか、気合い入ってますね...」
「っ.....いつも、それにすればいいのに」
意外とノリノリだったのかと思いながらやっぱりイケメンだなぁーと思っている時雨のよそに、何度か見たことのある汐留は彼の顔を見れずにいた。