日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
ーーーー茨城県笠間市 採掘場跡、違法地下召喚獣闘技場。
ーーーーズンズンズンズっ!ズンズンズンズンズっ!
アップテンポの重低音が鳴り響き、ガンガンに稼働している空調でも冷えない熱気が会場内を渦巻く。
地下闘技場は急造で作られた様子はなく、カジノとナイトクラブがヘドロに混じったような独自の空気が息巻いていた。
「あの!」
ーーーーズンズンズンズっ!
「...ん?」
会場内の心臓に響く爆音音楽に、既に始まっているトーナメント戦が盛り上がりも相まって隣にいても声が届きにくかった。
ーーーーズンズンズンズっ!ズンズンズンズっ!
『『『うぉぉぉぉぉぉーー!』』』
「あの!!」
「....」
見かねた才亮はザルザルの身体検査を抜けて持ってきたピアス型のイヤホンを渡して、耳につけろとジェスチャーをした。
「ありがとうございます...あの、私たちはいつまで待機なんですか?」
「優勝すれば俺たちの出る幕はないが、出る時は合図する。」
「じゃ、じゃあ!あれ食べに行っても良いですか?!」
彼の腕をちょこんと掴んで、時雨は地下闘技場名物!と書かれたターキーレッグを指差す。
「あぁ、試合始まるまでには帰ってこい。あと...知らない人にはついて行くなよ。」
「っ...わかってますよ!」
彼女を見送った才亮はフリードリンクを取りにバーのようになっているカウンターへと向かった。
「烏龍茶一つ。」
「はいはーい!」
「どうも」
黒曜犬系の召喚獣コスプレをしている際どい店員からドリンクを受け取ると、カウンター近くの立ちテーブルにドリンクを置いて、周辺視野から会場内を見渡した。
(綺麗過ぎる...ちょっとやりすぎだな。)
リス型召喚獣ヨクバリスがゴミを回収してはゴミ箱に入れており、カジノ大阪やカジノ横浜のように会場内はゴミ一つ落ちておらず、喫煙ブースと禁煙ブースが分かれており公共ギャンブル施設と変わり映えがなかった。
「っ...ぅ...ふぅ...んん...」
「ぅ...なぁ、個室行こうぜ?」
「えぇ...試合は見ないの?」
「いいよ、そんなの。チケットも貰いもんだし」
「....」
「おにーさん一人?」
まぁ、ソファー席やカウンターのすぐ側でいちゃついてる奴等を除けばになるが、と烏龍茶でかき消せれない情事に目をつぶっていると、横から目に悪い白ギャルが現れた。
「連れがいる。」
「ほんとかなー、もしかして結婚してる?」
周りにそれらしい人がいないことから、白ギャルはタワワで露見している乳房を揺らし上目遣いで才亮を見つめる。
「連れならあそこにいるメガネボブの....」
「へぇ、あんな感じの人がいいんだー、そっかぁ...」
浮いているわけではないが、こういうはっちゃけている女性が多い中での清楚系の大人しめ女はすぐに見つけられ、白ギャルは自分の系統がタイプでないことに少し残念がっていた。
「....」
「...えっと、何、そんな見つめちゃって...」
普段は金髪の前髪で隠れているキリッとした涼しい瞳で彼女を見つめると、ただ一人の女性として見つめられている状況からウブに照れていた。
(....こいつどっかで見たような)
「っ...あのお連れさん、めっちゃナンパされてるけど」
何か引っかかっていた彼の無言見つめに耐えきれずに目を逸らした白ギャルは、逸らした先でめちゃくちゃナンパされていた時雨の方へ気を逸らした。
「ん?....野郎...っ」
才亮はそれを確認すると持っていたコップを置いて早歩きでその方向へと向かった。
「えー!本当に彼氏いないの?メガネで隠されてるけど、こんな綺麗な顔しているのに」
「うぇ..本当ですか?ぐへへへ」
メガネを取られて真っ直ぐに見つめられ褒められた彼女は頬を緩ませ、ゲスな笑い方になっていた。
「...千尋。行くぞ。」
「ぁっ...す、すみません!」
「.....あ、はい。」
茶髪のホストっぽい男は黒い狼にあっという間に連れられていった大人しめのロック女子見送った。
「お前な、仕事中にナンパに引っかかるなよ...」
「うっ...すみません、っぁぐ...なかなか経験がないもので」
正論に諭されて時雨は申し訳なさそうにしながら、2本目のターキーレッグにかぶりついていた。
「そういや女子高ー女子大だったか」
「はい、兄に騙されて...」
「そ、そうか...」
面倒事が起きそうな属性を聞いた彼は心中お察しつつ話を切り、有料席の方へと向かった。
「お飲み物お持ちしましょうか?」
有料席に着くと制服をびっしり着たスタッフがすぐに駆けつけてきた。
「マンゴーラッシーで!」
「承知しました。彼氏さんはどうします?」
「烏龍茶で」
「かしこまりましたー!」
「「.....」」
そこそこ高い席なためか合法のコンサートと同等のおもてなしを受けていたが、微妙な空気が二人に流れていた。
「...な、なんでカップルシートなんですか?」
「...自由行動にしておけんからな」
「っ...グゥ」
目を若干細めてソフトな言い方でそう言うと、時雨はグゥの音を呟いた。
「あっ、そろそろ始まりますね。」
そうこうしていると、会場が暗転し歓声が鳴り響く。
『お待たせしました!優勝商品は召喚獣の卵!!』
実況司会者がナレーションをすると、実況席に置かれている卵が入っているアクリルケースをレースクィーンのようなギャルが空へと掲げて歓声がブーストされる。
『面倒な御託は無しに...天下一召喚獣バトル第10回1回戦の試合はー!青コーナー....今回初出場!ネズミ型召喚獣キコリぃぃぃ!vs 闘技場戦績10戦9勝1分熊型召喚獣ハレツぅぅぅ!!』
スポットライトを浴びながら登場口から主と一緒に現れたのは、今試合オッズ1.2の体長4mはあるであろう熊型召喚獣、それに相対するのは硬質化した木の幹を持った体長1.2m程度のビーバーのような見た目をしたネズミ型召喚獣(オッズ100.0)。
両者見合って、天井の電灯の上にて気だるそうに寝ている猫型召喚獣センコウの尻尾から火花が落ち、戦いの火蓋は切って落とされた。
『レディーっ!....ファイ!!!』
『....レッ..』
『....っ....シッ....』
一発で終わらそうと全身を縮ませて突進をしようとしていたハレツは構えた瞬間に、少し頑丈なだけの木の幹に鳩尾を撃ち抜かれ、キコリは木の幹を肩に乗せながらゆっくりとドレッドの主の方へと戻っていった。
ーーーーカンカンカンッ!!
「「「うぉぉぉぉぉぉっー!!」」」
目の前の出来事が現実が会場内に浸透すると、初戦からの番狂わせに会場中が熱狂した。
「ウッソだろ!?100倍払い戻しじゃん!!」
「ぁ....単勝信者....あぅ...」
「「....」」
別の勝者と敗者らが一喜一憂している中、才亮と時雨はそのパフォーマンスに引き気味だった。
一方、当事者の主も同様であった。
「ちょっと、やりすぎですよ」
「何?こんなのウォーミングアップにもならんぞ。ビィー」
汐留がシゲモチさんで無理やり化けている武田に苦言を呈すが、本来のキコリからは見られない眉毛を釣り上げた生意気な態度で返した。
「てか、普通に喋りすぎです。語尾につけても誤魔化せれませんよ、もっとなりきって下さい。」
「ビィビィ〜」
「はい。は一回でいいんですよ。」
当初、才亮が懸念していた汐留と武田とのコンビネーションへの問題は特になさそうであった。