日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
人里離れた山脈の麓、古くは村の象徴でもあった白い巨石は炎のように波打っている毛並みの召喚獣によってひび割れずして凹みが刻まれていた。
ーーーーズゥン!!ズゥン!!
一体何回目だろうか
ーーーーズゥン!!ズゥン!!ズン!!
初めの召喚主から教わった正拳突き。
死してからも何千何万と一日も欠かさずに織を重ね拳は銀幕の旗へと成った。
それから、野生の召喚獣と戦い続けた末に神格の使徒へと辿り着いた。
『...近頃騒がしいと思えば、猿か』
『....』
銀翼を背負った四足の鳥型召喚獣は鳥居の前で俺に相対した。
『....』
その鳥型召喚獣は長い首をクイっと寄せて、来いよ。と挑発してきた。
『....キィ!!..っ』
『遅いな、前に来た男は一度も背を取られんかったぞ』
初撃の上段蹴りはヒラリとかわされ、背中に伝う銀の羽毛が骨の髄まで冷やす。
『っ...!!』
一瞬緊張した体を脱力し、踵上げをクチバシへと突き上げるが確かに当たっているはずなのに掴みようのない打感しか得られない。
『....まだ格が足りんな。眠れ』
『ぅ...っ....』
クチバシの奥から香る呼気が耳に浸透し、成す術もなく深い眠りについた。
主が亡くなって野良になってから久しく味わっていなかった、じんわりと暖かい囲炉裏の前で主に撫でられながら眠りこけるあの時間に沈んだ。
(俺も主と一緒に....)
『....っ!!』
その最中、終わらせたい思いを吐露すると、暖かい思い出から目が覚めてしまった。
ーーーー次戦やりたくば、東の都から北東へ行った所にある卵を持ってこい。
鳥型召喚獣は日向の当たる青い芝生の上で羽毛を毛繕いしながらそう言って、鳥型の分体と俺を東の都へとテレポートさせた。
初めて見る都会のコンクリートジャングルに圧倒されながら、人間に化けれる鳥型分体と共にトーナメントとやらに参加したが、初戦と次戦もウォーミングアップにもならない召喚獣ばかりであったが、次戦はそこそこ楽しめそうであった。
『....準々決勝、こちらも初参加ながら一発KO連発!猿型召喚獣ゴウキ vs 土竜型召喚獣ロックブラスト、レディー...ファイ!!』
『....キィ!!』
『...っ...』
右ストレートでワンパンし纏っている岩ごと吹き飛ばし散らし、裸になったロックブラストはひょこっと起き上がって地面に潜り込んだ。
ーーーーヒュン...ズン!!
『....っ!...キィ..』
カウンター狙いで相手の出方を待っていると、背後から高速で発射された岩がゴウキに衝突する。
ーーーードズンっ!!
発射方向を見ると飛散した岩は再形成され、砲を背負った四足ゴーレムと化しており、ゴウキは潰しに向かうが横からもう一体の岩ゴーレムの拳が振り下ろされる。
『....っ!...?!』
ゴウキは避けきれずに受け地面に数メートルのクレーターができ、二足ゴーレムはゴウキの拳をガッチリとホールドする。そして、その隙に地面に潜っていたロックブラストが踏ん張っているゴウキの足を地面に引き込んだ。
ーーーヒュンッ!!
そのタイミングを狙っていた砲を背負ったゴーレムからライフル型に加工された岩弾がゴウキへと着弾し、衝撃で土煙が舞う。
ーーー勝負ありかぁ....
ーーーまぁ、運営側くさいしな
理不尽な三方向からの終戦モードになっていたが、土煙が晴れた先には膝をついた二足ゴーレムと右腕を押さえながら地面へと逃げるロックブラストのみであった。
ーーーはっ?!ゴウキどこいった?!
ーーーえ?消えた??
ーーー上だ!!
消えた猿型召喚獣に動揺が走ったが、当人は天井の電灯にしがみ付いており、ゴング係の猫型召喚獣センコウは眠りを邪魔された事に対し威嚇していた。
『...っ!!』
『....!!』
高さを確保したゴウキは、重さ故に地上でウニョウニョしている二足ゴーレムを無視して、四足ゴーレムへと飛び蹴りを喰らわせ粉砕した。
『...ンキィ!!....!』
ーーーズシンっ..
すかさず飛び散った岩をフィールドに出来た穴ぼこに埋め、愚直に突進してきた二足ゴーレムのくるぶしに岩を投げつけて転ばせた。
『....!』
『....キィ』
呑気に起きあがろうとしている二足ゴーレムの方へ歩き、おそらく駆動するためのコアとなっている中心点を踏み砕く。
残り一つの穴ぼこの方へとゆっくりと歩みを進めると、白旗を持ったロックブラストが現れゴングが鳴った。
ーーーーーーカンカンカン!!
『勝者はゴウキ!!勝者はゴウキです!!』
猿型召喚獣ゴウキは黒が混じり始めた赤い毛並みをたなびかせ、あったまってきた体の熱を持て余しながら、すれ違った木の幹を肩に担いだ召喚獣を一瞥した。