日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
長い、長い山道の途中、道着を着たジジィの背中が遠のく
『....待ってよ....早いって...』
『なぁ...なんで無視すんだよ...』
何度話しかけても振り返ろうともしない。
『....いや...待ってくれ!』
ジジィは山頂のその先へと進み続ける、追いかけようとするが途中で躓き地面についてしまう。
野良の頃、群れから追い出され寒さに凍え、飢えていた時に助けてくれた事、あの時に飲んだ粥の味は一生忘れられない。
生き抜くために武のみならず、川釣りの仕方や山菜の見分け方、保存食の作り方、薬の調合方法、人間社会の事、召喚獣の事と、キリがない程多くのことを教えてくれた。
『....俺を置いて...行くな..』
どれだけ感謝しても足りない。
まだ、何一つ返せてない。
どうやったら..俺は...どうしたら良いんだ....
『....頼む...』
それでも這いずりながら手を伸ばすが、ジジィは何か呟き真っ白い方へと行ってしまう。そして、もう声は届かないのだと伸ばした手が土付く。
『・・・....ッ...!』
目が覚めると真っ白い天井が目に入り、体を起こそうとするが体の節々と芯が痛み軟い布団に戻る。
『......キィ(また一人か)』
なんとなく召喚主役をしていた鳥型分体が近くにいない事を察し、結局何も得られなかった自分に嫌気が指し目を瞑ろうとする。
「....よぉ!生きてるかー」
が、記憶に新しいキコリのお面を被った男が顔を覗き込んできた。
『っ...??』
「かかっ、そういう顔もするんやな」
フレーメン状態の猫のようなあっけらかんとした顔になっているゴウキに、お面を外して朗らかに笑った顔を向けた。
「ここは関東庁の召喚獣病院じゃ、丸二日寝とったぞ」
『...ンキィ(そんな経ってたのか)』
「とて、元は白繁の召喚獣とはな。世間は狭いのぉ」
『!...っ...』
身元調査ファイルを取り出しそういうと、ゴウキは間接的に主の知り合いであることに驚き起きあったが胸元の鈍痛に諌められる。
「よいよい...無理に起き上がるな。」
『っ....キィ』
優しく嗜めてきた彼の温かい手に懐かしさを覚えながら、ゴウキは再度体を寝かせた。
「まぁ、ここからが本題じゃが、お主の選択肢としては二つある。一つは和歌山管轄の管理官の監視下にはなるが、山に戻って修行しても良い。」
『.....』
今回のことで鳥居の向こうには行けなさそうなのは分かっていたため、今更あの日々に戻っても仕方ないと言葉を詰まらす。
「して、もう一つは、即応科に来て一緒に召喚獣と戦...を取り締まる。」
管理官としての宣誓文に沿っていない単語が出そうになった所で、病室外の汐留から圧がかかり正式な言い方へと修正した。
『...っ!』
ゴウキは目を大きくかっ開いて彼のニヤけ面を見つめる。
ーーーゴウキ。お前は俺と出会ったんだ。だから、俺がいなくなっても、いつか必ず...
「一緒にくるか?」
『....ンキィ。』
彼が差し出した右拳に、ゴウキは迷うことなく左拳を突き合わせる。
出会って間もなくとも、長い長い道のりの武の道に通じ合っているもの同士、新たに契約が結ばれ、淡い光に包まれ武田の右腕に新たな召喚印が刻まれた。