日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
一方、校庭では才亮らは分裂しても全く衰えない犬型の緑白い火炎咆哮に耐えながら、群集型達による引っ付いたり突進してきたりなどの嫌がらせ攻撃を受けていた。
『ーーーー・・グガぁぁあ!!』
「.....っ」
「野郎...キリがねぇ」
捕縛弾や破裂弾、痺れ弾、毒弾などを使って2、30匹は殺すなり行動不能に出来ていたが、見分けがつかない潜んでいるリーダー個体がそれらを学習して弾を投げようとすると距離をとって空中で蜘蛛の子散らしてくるなどして、数を減らせずにいた。
「ボスっ、このままでは」
「あぁ....召喚陣を受け流し先も計算してやがる。」
玄道は緑鱗を分離してライオットシールドにし背中の緑鱗を開放して排熱をしながら、犬型が火炎の咆哮を受け流して焼き跡の角度を計算して召喚陣を着実に拡張しているのを共有した。
「....一度、俺が...!」
ーーーーキュッ
玄道の負担が大きくなるが群集型を積極的に狩りながら、召喚陣の拡張補修を妨害する方へと舵を切ろうとした中、足元からゴムの円盤と接触する良い音に閃く。
「玄道。火炎咆哮を誘発し、クールダウンの間に足場になってくれ」
「了解...っ!」
玄道は即答し、緑鱗のライオットシールドを自身に纏い直し緑盾を大きめに補修して、犬型の方へと一直線に向かう。
『ガルゥ....ぐがぁぁぁー!』
単調でつまらないといった様子で犬型は向かってきた半端な緑色の召喚獣もどきに緑白炎咆哮を吐く。
「....っ」
緑鱗の総量はそのままに立った高校生一人を覆えるくらいに盾を拡張したため、縁目から焼き焦がれ落ちていく、盾越しでも踏ん張っている背中と足腰周りに熱が滞留し体力を着実に奪う。
「....スゥ...っ!」
が、体力バカである玄道は裕に持ち堪えて地面に盾を振り下ろす。
『?....っ』
間合いに入ってるでもなく何もないところに盾を振り下ろし、しまいには盾を傾斜に構えた玄道に、犬型は困惑していると玄道の8m弱ほど後ろから金髪の男が呼び動作なしにロケットスタートして、玄道の盾を足場に放物線を描いて飛躍した。
『!?』
ーーーーパリンッ!!
犬型の頭上と通過した金髪の男は一階のガラス窓を割って建物内へと入っていった。
『....っ....グッ...ガァっ』
ライオットシールドを立てて、排熱を優先させている玄道へトドメを刺す。か意味のわからないアクションを起こした得体の知れない金髪へ咆哮を放つか逡巡した後、室内で蒸し焼きにしてやろうと犬型は火炎袋のクールダウンを待たずして火炎咆哮を放とうとするが、体に伝う水に一抹に怯む。
「....スゥ」
校庭全体にスプリンクラーが撒かれ、排熱が加速した言動は立ち上がって再び緑鱗をフルアーマーに緑盾を両腕に装着した。
「...凶悪な面だな。ソークドドッグは失敗したか」
校舎の上からも暑さ対策用の水が撒かれ、犬型が首から上に纏っていた緑白炎は消火し三つ目の頭蓋骨が露わになる。
『.....っ...ガァっ..』
「ぬんっ!!」
『...がぅつ!!』
コケにされたのを理解した犬型は咬筋を目一杯に広げて金髪の男を噛み砕こうとするが、玄道の緑盾が後ろ足の付け根にめり込む。
ーーーーシンッ...
『....ッ!』
「っ....見えてるな」
才亮は間合いに入った首の付け根目掛けて白銀の槍を射抜くが、犬型は玄道の攻撃を敢えて流さずにして彼の攻撃を避けて距離をとった。
『...ガァあ』
『『『ピィィ!!』』』
右後ろ足がぶらーんと力なくなっている中、犬型が撃てないはずの火炎咆哮の構えをとるとスプリ
ンクラーの水で動きが鈍化していた群集型の一部が犬型の口の中へと飲み込まれていった。
「っ...させるかよ!」
『『ピギィっ!!』』
携帯槍を犬型の方へ投擲し一直線に犬型の方へと向かうが、群集型が肉壁となって僅かに軌道を外れた。
『....ガルゥ...?!』
そして、群集型の影に隠れていた犬型の後ろ脚はほぼ完治した直後、前触れもなく周囲を見渡しさらに後ろへと下がる。
「...!」
「ボス。あいつ...」
犬型の行動意図から才亮らは犬型の飼い主の登場に警戒するが、それは杞憂になった。
『...才亮さん。犬型の目を食...潰しました。』
「了解した。時雨、屋上から遠距離援護を頼む。」
『了解です!』
クゥさん辺りがゴースト型も混じっている犬型の目を食ったであろうと連絡を貰い、電話先の弓の心得もある彼女に指示を与えた。
「ホットドックから、ソークドドック、で、今ではこの様か....飼い主にも見捨てられたらしいな」
『っ...ガルゥゥゥ...』
追い詰められキレッキレだった犬型の頭は、目の前にいるであろう金髪の男の挑発で怒りに沸騰し、打開策を考える余地を奪う。
「.....」
玄道は両腕に装着した緑盾を突き合わせ火花を散らしながら犬型に詰め寄る。
ーーーーヒュー....ドゴォンン!!
「かかっ!スパークリングにゃぁ丁度良かったのぉ」
『キキィ!』
そして、生まれてこの方一緒に育ってきたかのように、息ぴったりのハメ技でボロ雑巾にされた百獣の王であるライオン型は屋上から彼らと一緒に落下してきた。
「武田。こいつは捕縛...」
分かってはいると思うが、才亮は犬型に顔を向けながら感度ビンビンになっている武田へ討伐しないように念を押そうとすると、空からずぶ濡れになりながら辛うじて飛んでいた群集型召喚の死体の雨が降り注ぐ。
「っ....ん」
水たまりに力無く落ちて、泥に浸かった群集型の死体が足に伝うと、その横で辛うじて這いずり回りながら犬型の火炎咆哮の焼き跡を補修している群集型に目がいった。
そして、才亮は自決した群集型が召喚陣に落ち切った所で犬型の耳の動きがピタリと止まり、肉はなくとも口角を上げた犬型を逃さなかった。
「玄道っ!!」
「む...っ!!」
才亮の呼びかけに玄道は盾を傾斜に構え、彼はそれを足場に空中を飛んだ。
「...シッ!!」
『ぁ....っ....ぁ.....』
咆哮を上げようとしている犬型の上空で踏み込めない分全身を反り捻って、剥き出しの頭蓋に槍を振り下ろした。
ーーーービピュンっ
それは着弾することはなく、ビームライフルのような音と共に白銀の槍は跡形もなく揮発した。
「....一手、遅かったか」
金髪の前髪がオールバックに落下しながら、校舎に通じた円形の貫通跡を後頭部にその光線の先を見ると、美大落ちから生まれた高射砲のような姿勢をした地上竜型召喚獣アハトンが召喚されていた。
『...カッ...ッッ....カハッ!?』
『『『ピィィィー!』』』
そして、アハトンの背骨にそびえ立つステゴサウルスのような背板に静電気が走り、再度発射しようと充電をしていると、ゴウキから開口していた顎に前蹴上げを喰らってひっくり返りそうになる
が、校舎内で温存していた群集型がせっせと持ち直す。
『....!』
「ぬ...火炎が回復したか」
場がアハトンに気が取られている中、武田は完全に犬型骨格の視界外から犬型の足の付け根へと黒矢を放つが、校舎に控えていた群集型を喰らい、加えてスプリンクラーが切れて火炎袋が復活した事でゴースト型の目が復活しスルッと避けられてしまう。
ーーーー.....ッ
「っ!!」
ーーーーギィィンン!!
黒矢で体制を整える時間を稼ごうと弓を絞った武田の耳裏に冷たい空気が通い、脊髄反射で居合いを放つとその当人は校舎の壁へと吹き飛ぶ。
『....キリィ』
湿気った土が舞った先には、壁を足場にしている真っ白い四つ足のカマキリのような見た目をした昆虫型ツジギリが鋭く設計された刃をX字にして研いでいた。
「....二刀流かっ!!」
野生的な直感が鈍っていればお陀仏だった武田はそんなことよりも、久しく相手にしてこなかった剣術に振り切った召喚獣に武者震いと口角のギアが上がる。
「(これが住宅街へ向かったら)....スゥ」
校舎に通じた円形の貫通跡を背に玄道はゴウキに追尾されながらも、攻撃を蛇のように体を捻って素早く避けている地上竜型召喚獣アハトンへと向かう。
『...ガルルルゥゥゥ』
一方、部分的にゴースト型であろう目が復活した犬型は緑白の炎を首上に纏い、喉元に火花を散らして金髪の男ににじり寄る。
『手段は問わない。群集型への牽制は最小限に、グラウンドの召喚陣の軸を壊せ。』
『りょーかいです!』
しかし、当の金髪男は特に調子を変えるでもなく、右腕に巻かれた白い布を圧縮し枝分かれさせ、腕から肩にかけて彼の右半身から枯れ木が生えているように隆起させつつ汐留達に連絡を通達していた。
ーーーーピッ
「さて、相手してやるから来いよ。ノーマルドッグ。」
『っ...グカァァァァ!!』
盾役を欠き、完全回復した自分を前にして平常運転の男に挑発的な呼び名を呼ばれ、乗ってやろうと最大火力の緑白い火炎咆哮を放つ。
『....グルルル』
犬型は対象を消し炭にしたときに現れる淡い緑白の硝煙で包まれるその方へゆっくりと歩む。
「....単調だな。調教がなってない」
しかし、その硝煙から現れたのは右半身から生える白い枯れ木のようなモノから光子を放出し、涼しい顔をしている金髪の男であった。
『...っ....ガルっ...?!』
飼い主のアイツと同等かそれ以上に得体の知れない金髪男を前に、距離をとって火炎袋のクールダウンを図るが、何かに体のコアを引っ張られて金髪男の枯れ木へと一瞬で引き寄せられる。
「歯食いしばれや」
ーーーーズギョォォンっ!!
『っ...ラァ"っ"?!!』
上反った腹部に男の右手を添えられると、体の内側から衝撃が爆裂してコア組織がスプラッター映画のようになり、神経を締められた魚のように体を伸ばし切り地面に突っ伏して悶絶する。
(ラッシュ状態になっている武田はともかく...時雨は遠距離援護を任せておきたい。)
無防備になっている犬型へとゆっくりと歩みながら、屋上から黒矢に深淵を帯びさせて着実にグラウンドの召喚陣と補助召喚陣を抉り取っているのを確認し、才亮は犬型への最終決定とグラウンド内の状況も同時に整理する。
ーーービピュンっ
戦域は離れている所でも、半端に溜めたプラズマ波を牽制に玄道らへと発射している音から、そちらへ意識が行く。
(....高射砲竜プラズマが住宅地へ直撃...はなんとしても防ぎたい。玄道も持って三発か)
学校周辺の避難は完了しているにせよ、プラズマ波の範囲を正確に測れていない中でそれは防ぐ必要があり、玄道の消耗具合的にそれを空へ反射できる回数は限られていた。
(瀕死だが、何を隠し持っているかわからんな....)
そして、決断は固まった。
「....っ」
ーーーーーズギョン。
『ぁ...ッ....』
才亮は息が絶え絶えになっている犬型の心臓部に優しく手を当てると、鈍く重低な音と共に犬型の命は尽きた。
「.....スゥ」
自身の体に芳醇な経験値が巡り流れる感覚に息を吐き、地上竜型召喚獣アハトンへと向かった。
『カッ....カカカカカっ!!!』
ーーービピュンっ
「....ぬんっ!!」
火炎咆哮よりも一点集中に圧縮されたプラズマ波は緑盾越しであっても容赦なく熱と振動を貫通する。しかし、玄道は表層の緑鱗を回転させてその熱振動を逆手に、最小限のコストで空へと受け流す。
『キィっ....っ!!』
アハトンを追尾して打たせないようにしていたゴウキは全方向から群集型のゾンビ特攻に苦戦していた。
「ゴウキっ、そいつらは吸収系だ!距離を取れ!」
ゴウキの動きが少しずつ鈍くなっている事から、玄道は背中と太もものかたびらを開けて排熱しながらそう伝える。
『キィ...っ...』
わかってはいても倒しても倒しても絶えず噛みつき、突進、蹴飛ばし、毛飛ばしを行なって来ており、中には仲間の死体を食って力とスピードを帯びてじわじわと効かせてくる攻撃までしてくる個体もおり、ジリ貧であった。
『っ!!』
『『『ピギィー!』』』
ゴウキは地面に両手をめり込ませて、竜巻旋風脚で距離を取らせようとするがリーダー個体らしき者が号令を出して一斉に距離を取ったため、倒せた群集型は10匹にも満たなかった。
『『ギィィ!!』』
『....ぅ...!』
そして、またも飽和攻撃が再開しエネルギーの吸収とこれまでの戦闘蓄積から背中に鈍い突進を喰らって膝をつく。
体力の弱った動物に群がる蚊のように容赦なくゴウキを群集型のふわふわな毛で覆われる。
『.....っ』
視界が歪み、冬眠する前の抗えない眠気に溺れそうになり、意識が朦朧とする中で、ふわふわな毛に光が差し込む。
そして、光が浸透し僅かに見える向こうから、金色の糸が自身の体を引き上げた。
『っぷ...ゴクッ...』
未だに慣れない苦いお茶にスポーツドリンクの味が混じった回復薬を飲まされ、意識が戻ってくる。
「動けるようになったら加勢してくれ」
そういうと彼は怒れる蜂型のように容赦なく飲み込もうとしてくる群集型の方へと歩んでいく。
『『『ピギィぃぃー!!』』』
「.....」
彼は何の抵抗もなく群集型に飲み込まれて行くが、蠢いていた個体たちはピタリと動きを止める。
『『『ギィィィ?!』』』
「玄道っ!」
次の瞬間、イッタンモンメンの糸が棘のようになって群集型一つ一つを串刺し、金髪の男は間髪入れずにアハトンの方へと向かい、絶賛プラズマ波を空へと受け流している緑鱗の盾を持つ男の名前を呼ぶ。
『カァァァァ!!』
「...っぅ!」
返事はなくとも名前を呼ばれただけで2秒ほど稼げ。と理解した玄道は、プラズマ波を受けながら2歩前に前進する。
『っァァァァァァ!!!』
アハトンは彼が前進してきた事から、こちらに反射させようとしていると考え許容量をオーバーしてプラズマ波を強化発出した。
「....っ...あ”あ”!!」
流しきれない熱振動が全身の筋繊維を焼き切ってもなお、負けない漢はイかれた根性で更に前進する。
『ァァァァァァア!』
「...うしっ!!」
背中の背板がオーバーヒートして焦げ付いても尚、緑鱗の盾を背負う漢へプラズマ波を更に強めると、ニンゲンの掛け声と共に開いていた口が閉じられ僧帽筋に埋もれた首が空へと向けられる。
『ッ?!』
ーーービュゥンっ!!
行き場を失ったプラズマ波は閉じられた口の中で暴発し、アハトンの上半身は爆散した。
「....流石に無茶するな、玄道。」
2秒の間にアハトンの後ろに回り、糸でアハトンと校舎を繋ぎ中間地点で糸を捻り巻いてアハトンの首をへし折った才亮は玄道へ駆け寄って回復薬を浴びせながら、期待以上に無茶した言動に敬服していた。
「スゥ...はぁ....任せられたからな」
一部皮膚に張り付いているウロコノムシの緑鱗を外す中でも、彼は曇天だった筈の空に光が差し込み照らされている惚れた漢の顔を見上げる。