日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
一方、武田とカマキリ型の召喚獣との戦いは白熱していた。
「...シッ!!」
ーーーキンッ
『リィ....!!』
距離を詰めて袈裟斬りをした刀はカマキリ型の両刃に阻まれ、そのまま羽を展開したカマキリ型は校舎の壁へと武田を打ち付けようとする。
「っ..ぅ、ぬんっ!!」
『っ...キリィ』
武田は壁に迫る前に、空中で体勢を変えて壁を足場にしてカマキリ型の交差させた刃を切り上げ、蛹のような甲殻を纏っていた口元を寸断した。
『....リィィ!』
カマキリ型は怯むことなく更に接近して、首を前傾させて露わになった言葉の通じない口で武田の首を喰らおうとする。
「....がぁっむ!!」
『っ..リ"ィ"?!』
「うむ、不味い!虫型はやっぱりまずい!」
武田はカマキリ型の頭と体の付け根に喰らうと、怯んで後ずさったカマキリ型を前にして黄色い液体をこぼしながら笑顔で論評していた。
「.....ぁ、獣だ。」
屋上からそれを見ていた時雨はそのイかれた有様に思わず弓を絞り直した。
『....リィ..っ!!』
「....っ」
カマキリ型は再び羽を広げて俊敏に間合いをつめて鎌を振り下ろすが、刀を振るわずに悠に見切られた。
『....っ!!』
再び後ろに引くと、カマキリ型は地面に垂れ落ちる出血をモノともせずに、前傾姿勢になり刃を外側に捻り直角にジグザグに飛んで彼へと飛ぶ。
「.....スゥゥゥ」
武田は初めから目で追うのを辞め、ゆっくりと目を閉じて長く息を吐く。
ーーーーーッ....ブン....ブンっ
空中から、地面スレスレから側面から的を絞らせずに高速で接近してくる羽根の音を感じる。
ーーーーーブンッ...
間合いにして4m。彼は一ミリも動かず待つ。
ーーーーブンッ!
頬に前進する向かい風を感じるが、動かず。
黄色い血液の苦い匂いが鼻腔に通るが、動かない。
ーーーーー...ビュンッ
そして、仕留められる間合いに入ったカマキリ型はライフル弾のように回転しながら、彼の垂れた前髪1束に到達した。
ーーーーー....ィ...ン
その時、彼の居合いが抜かれカマキリ型と交差するようにすれ違う。
「.....武人、討ち取り申し候」
ーーーー...ドサッ
刀を鞘に収め、カマキリ型は袈裟斬り両断されて地面に倒れた。
「....っ」
周囲の警戒を弱めずとも見入ってしまっていた時雨は武田の武人としての振る舞いに息を呑んでいた。
「...っ!」
そうこうしていると未だ校舎内を徘徊していたり、空中で指揮者無し下で指示待ちをしている群集型を除いて、グラウンド内の召喚獣は皆討伐したため、才亮は時雨にこっちに降りてこいとジェスチャーをする。
「はぁーい!今きまーす!!」
「.....」
大声でそう応対した時雨に才亮は「無線で相槌しろや。」といった様子で側頭部を指で掻く。
「よっ...と、クゥさん?」
『.....』
普通に屋上からグラウンドに降りようとしている時雨だったが、向かいの校舎の時計台の方をじっと見つめていた。
「....ん」
その方を見ると、数秒間は何もいなかったがうっすらと体長30cm程の犬型が現れて、空へと口を開けていた。
「ぁ...才亮さんっ!!!」
突然現れたそれに時雨は大声で彼の名前を呼んで時計塔の方を指差す。
『『『ピギィー!!』』』
その間にも、校舎や曇天の空に残っていた群集型が空中の整列して異様な召喚陣の紋様を型取る。
「....ほぉ」
武田はそれを見て、当たらんだろうと思いながら犬型へ黒矢を射抜きつつ、さらなる強き召喚獣の召喚に期待した不敵な笑顔を浮かべる。
「ボス。指示を」
「....」
無理やり起き上がって体勢を整えた玄道は才亮にそう聞くが、彼は特に調子を変えることなくこの距離とタイムリミットでは群集型を狩って召喚陣の発動を防げず、おそらく限りなくゴースト型に近いである犬型を倒すのも厳しいと淡々と切れる手札を厳選する。
『ガぉぉぉぉんっ!!』
犬型の咆哮によって召喚陣の枠に入っている犬型、カマキリ型、地上竜型、そしていくつかの群集型が生贄となって召喚陣が発動し、役目を終えた群集型はバタバタと地面へ堕落した所で、咬筋を強張らせながら才亮は決断した。
『汐留、今だ。』
『了解。』
何らかの形で召喚陣を完成させると思っていた才亮は温存させていた汐留へ合図を送った。
「....オラァっ!!」
屋上からアメフトボールの形に圧縮したシゲモチさんを空中に展開した召喚陣下とグラウンドの中心点へと投げる。
『....っ!!』
「....!」
そして中心点に到達したと同時に才亮が糸をシゲモチさんに接続すると、シゲモチさんは立体的な互いに交差した二つの召喚陣の形に展開する。
ーーーーギギッ....ギギギギギギ...
すると、空中の召喚陣は文字化けのように輪郭が乱れ始め、奇音のような生理的に嫌悪感を覚える音割れが鳴り響く。
そして、立体召喚陣になっているシゲモチさんを巻き添えに収縮を開始した。
「...汐留さんっ、シゲモチさんが!!」
このままではマズイと思い、時雨は向かいの屋上にいる汐留の方へと深淵で移動して勝手に進んでいる何かへどうすべきかを聞く。
「....時雨さん。時間切れです。」
ーーーーー...キィン
しかし、汐留は力なく両腕を下ろして、歪み始めた空間に飲み込まれていくシゲモチさんを見送ると、不気味な金切り音と共にまるで初めから何もなかったように空中召喚陣は歪に晴れた蒼い空に消えてしまった。
「っ....どげんつもりちょっとか”っ”!!」
堪らず時雨はグラウンドに行って才亮に詰め寄る。
「....っ」
表情は変えずにいつもの涼しい顔でただ彼女の詰問に押し黙る。
「おい...」
「!....っ...あれ?」
『?』
まだ熱傷が癒えていない玄道が彼女を諌めようとすると、傷病人相手に少し冷えた時雨は玄道の方を見ると、少し小ぶりのシゲモチさんが包帯になって玄道の背中にひっついて熱傷を治癒していた。
「....あの、時雨さん?シゲモチさんは一ミリでも元体が残ってれば、他のスライムを吸収して元に戻れるんですよ。」
「....へ?」
「.....」
才亮の胸ぐらを掴みながら時雨は間の抜けた声を出して、彼の方を向くと彼は気まずそうに目を逸らした。