日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月8日午後22:10 召喚獣管理省 関東庁 即応科棟屋上。
「...あ?」
夜の駐勤にて、事案報告書に目を通しているととある段に思わず声が出てしまった。
内容としては、実は犬型の目を食らったのはメガネエロガキの召喚獣であるトンボ型召喚獣のお陰であったそうで、それに気づいたクゥさんが時雨に目配せして汐留に伝え、彼女が先生らと合流したそいつを止めに行ったせいで時雨が屋上で一人で援護する羽目になっていた。
また、それら前の経緯として、半ゴースト型でもあったトンボ型は透明になって糸くらいに細くなったシゲモチを繋いで学校の外まで言って道を作り、その道を膨らませてトンネルのようにして迅速に避難できたらしい。
「...温存出来たにせよ、結果論だな。」
現場についてはじめに見た生贄召喚から、いかなる方法を持ってしても召喚をさせるのはわかっていたため、鼻から召喚陣の召喚を無理やり機能不全にする手札として汐留とシゲモチを温存させておきたかったが、想定していた方法ではなかった。
「....ふぅ」
『ふるふぅー...』
一日に起きたとは思えない厚い報告書を読み終え一息ついていると、テラツバメの頬羽毛が顔に密着する。
「...っと、おい。さっき食ったばっかだろ。操法科に叱られるの俺なんだが....」
ツキヨノといいテラツバメもうまい肉を焼いてくれる金色の人と認識されてしまい、自分が駐勤の時は毎度催促されるようになってしまっていた。
『ふぅ...』
「...わぁーったよ。おかわりは一回までな」
『フゥっ!』
逆立っていた羽毛が萎んで、わかりやすくしょんぼりしたテラツバメに彼は渋々骨付き肉を取りに、空になった魔法瓶を持って給湯室へと向かう。
「....っと、賞味期限ギリギリ...あいつ謎に持ってるな...」
自分の甘さが幾らか誤魔化され、彼は重なっていたウッシー肉を取り出して洗い場に置き、白湯を魔法瓶の中に入れる。
その待ち時間にふと冷蔵庫に貼られたシゲモチさんが大食い大会でぶっちぎり優勝した時の写真が目に入る。
ーーーーー『...!』
壊れた召喚陣に飲み込まれていく中、立体展開したシゲモチが即応科のメンバーたちに心の中でいつものグッドサインをした気がしたのを思い出す。
「.....」
時雨に詰め寄られた時、何も言い返せなかったのは、それがシゲモチを犠牲にするしかなかった状況にしてしまった自分への怒りと同じだったからであった。
シゲモチの分体は影分身のようなモノで、一は全であって全は一であるため、それこそどっかのピンク魔神なんとかのような元体を全て消滅させないと倒せない召喚獣であった。
しかし、それでも同じシゲモチに自分の不甲斐なさを背負わせてしまい、確かに死....
「....ん」
気持ちの整理をしていると、召喚陣に飲み込まれる前に、シゲモチに繋いだ糸を切った理由を思い出した。
「....それだと...」
先まで内省に耽っていた脳のリソースはフルスロットルにそれに関するあらゆる可能性に巡り巡る。
ーーーーー飼い主はどこだ?
ーーーーー飼い主に見捨てられたか
妙に犬型の反応が良かった飼い主という単語に、一つの可能性に行き着く。
仮に、あの召喚陣がリバースしてあっちの世界にシゲモチが....
「.....マズイな」
最悪の想定に口を抑えている彼の側で、魔法瓶から溢れ切った白湯が洗い場の肉に流れ落ちる。
ーーーー?歴????年 2i月19-6日 293 : 1*23 地獄の山脈地帯。
召喚獣らの慟哭に包まれた獄炎の火山地帯の麓にて、罪人たちが壁にひたすら頭を打ちつけて赤黒く染まっている壁へ向かって、トレンチコートのような軍服を着た男が口を開く。
『...制圧するのに、苦労したもんだ。』
側には数十体の召喚獣の死体が転がり落ちており、それらを足蹴にゆっくりと壁に磔にされている薄緑のスライムへと向かう。
『....!』
『どれどれ少し拝借と....ほぅ、ほぉ...』
敵意をむき出しに刺々しく変化するが、男は構わずスライムに碇を刺して、それに連なっている短剣を自分の頭に刺して20年弱の彼方の情報がなだれ込むが、指揮者のように手を振るいながら悠然とそれを堪能する。
『....こいつらが召喚獣管理官というやつか。』
最新の記憶まで到達し、寸前で見ていた黒髪ロングの長身女と金髪男の顔を脳裏に焼き付けた。