日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
「ーーー・・こっ...こっ...こやつがどうなっても良いんかぁ?!」
初めに挨拶に行ったその時と同じ村長の家屋へと行くと、わかりやすく追い詰められた村長さんは村人の息子を人質にしていた。
「....はぁ」
才亮はため息をついて、素直に手を上げる。
「初めからそうしちょればぁ良いんじゃ...」
無難な手段が思い通りにうまく行ったと村長は満足そうな様子で、男の子の首に突き立てていた箸を収める。
「....」
「むっ!?手のひらもみせんかい!!」
しかし、村長に右の手のひらだけ拳状にしていたのを指摘される。
「良いのか?」
「あぁん?この子供がどうなっても良いのかぁ?!」
「はいはい。」
煽っている訳ではなく再度当の本人に聞き、どうしてもといった様子だったため右の手の平を開けた。
「っ...ぁ...ぅ?!」
そして、開けると随分前から村長の首に括り付けられていた才亮の糸が、村長の首を天井へと吊り、男の子に再度突き立てられていた箸が地面へと刺さる。
「かはっ....た、助け..」
「いや、手を上げるのに手いっぱいでな」
金髪男は目をゆっくりと閉じてアヘ顔抜きの降参ポーズを踊る。
「..わぁ...た!ぜんぅ..言ブゥ!!...っ」
ーーーードンっ
昨晩に楽しんだ首締めプレイで記憶に新しい失神する前の、グラッと視界が揺れる感覚が通り、乳首くらいはあった気骨は簡単に陥没し、畳に叩きつけられた。
ーーーーピピぴっ...バぁぁぁぁあん!!
「....?....!」
そして、そのタイミングで黒グローブの爆発音と衝撃が空から響き渡り、村長の家屋を揺らして、掛け軸の側のギターがずり落ちる。
ーーーーガラッ
また、間も無くして一仕事終えたらしき時雨が村長の家へと入ってくる。
「....」
「....スゥ」
顔を伏せ何も言わずに才亮へと歩みを進める。
「やれぇっ!!」
「....シッ!!」
「...っ!!」
無言で入ってきた時点で大体を察していた彼は村長の号令と共に時雨の上段蹴りを受ける。
ーーーードォンっ!!
「....っぅ...(なんつぅ重さっ....本当に生身かよ)」
才亮は踏ん張らずに建物の外へと吹き飛ばされ、衝撃を背後に流しながら正体し、寄生型に迫る威力を出しても平然としている彼女の方へ向く。
「....っ...!」
時雨は猫のように地面スレスレの前傾姿勢でジクザクに接近し、彼の受け手を蹴り上げると彼の腹部から顎までがガラ空きになる。
「....っ?!」
「....ぃ!」
焦っている才亮の余裕のない顔と洗脳されていても時雨の潜在意識から滲み出る一本取ったと確信した時のニヤケ面が表出する。
「...?!」
「...そういう所だ。時雨。」
すると地面に噛んだ右ストレートを振りかぶった彼女の体はピタリと止まり、一転していつもの冷え切った涼しい顔に戻った彼は右手に握りつぶした子トカゲを持ちながら彼女の甘さを説いた。
「くそっ..つい、今朝までは全部うまく言ってたのに...このままでは..」
「おい」
初めに会った時から彼の糸でマーキングされているのに気づいていない村長はギターを抱えて山林の方へと這いずっていたが、黒のスラックスと革靴が目の前に現れ、低く冷たい声が行手を阻む。
「...ひぃっ?!」
「お前、まさか逃げようとしてないよな?」
見上げるとそれは金髪の管理官で、背後からは洗脳が解けていない村人と元受刑者らが遅れてこちらに走ってきていたが、マトリの女が鳥型召喚獣ブラッドホークに乗った応援の管理官らに制圧され始めていた。
「....こ、降参です。」
観念した村長は両手を上げた。
「両手も見せて、トカゲの洗脳も解けよ」
「は、はい....」
『ヒィ...』
肩に巻きつけていたトカゲに指示をすると、後ろの方でのどんぱちが止みヘリコプターの音が遅れてやってくる。
「っ...洗いざらい話せ」
麻薬取締局に村長が渡される可能性を懸念し、短絡に尋問を始める。
「っ...元はと言えば、数年前に、あやつに流通を任せられ、わしは焙煎方法と加工方法教えられて...」
「待て、あやつって誰だ?」
固有名詞でも呼び名でもなんでもそれさえ掴めれば、部下が疑似洗脳させただけのリスクに見合うリターンはあったと言え、襟を掴んで詰問する。
「っ...そいつは..花屋と呼ばれ...ぐっ...ぁ...やめ...ぅ....」
全部言おうとした時に、村長の口からカルミアの花が咲くと共に息絶えてしまった。
「....スゥ」
ひぐらしが鳴り響く中、ヘリコプターの着陸に煽られた夜風が頬を伝って、服にかかり夏の夜風に気化した日本酒の匂いが嫌に眉間に染みた。
ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月10日午前01:10 召喚獣管理省 関東庁 即応科棟屋上。
「....スゥ」
麻薬取締局への引き継ぎを終わらせて即応科棟に帰った才亮は夜の駐勤に入り、イノクサ村では結局飲まず食わずだったため白湯で体を整えていた。
「.....」
『....スゥ...スゥ』
流石に操法科に叱られいつものテラツバメは暫く夜の出動禁止され、別のテラツバメが側で自身の羽毛に顔を埋めながら居眠りしており、今夜の即応科棟の屋上はしんみりとした静かさに沈んでいた。
ーーーープルっ
そんな中、ゴツい携帯から連絡が入る。
「もしもし」
『俺だ。お前が送ってくれたやつを解析した。』
連絡主は杉山で電話の向こうでは、彼は何重にもギミックが重なった封筒に入っていた調査資料とルーズリーフに書かれた異様な紋様が刻印された陣を照らし合わせていた。
「....それで、できるのか?」
『あぁ、条件をクリアすれば...ヒトガタを召喚できる可能性が高い。』
「っ....わかった。」
右手の拳を強く握りしめて、昂る闘争心を押し殺して鎮めながら静かに了解する。
「.....才亮。本当にやるんだな?」
杉山は側の毛布で寝ているケロンボノの甲羅に手を当てながら、最後の確認をする。
「あぁ....明日、午前5時37分にヒトガタの討伐を決行する。」
才亮は武田が置いてった鉄アレイを手のひらサイズに握り潰し、月夜に鬱滞していた想いを内に煮え滾らせる。