日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。   作:wakaba1890

58 / 59
海底開発場。

ーーーー国史・近代史 第3章抜粋。

 

日本の広大なEEZには豊富な海底資源が眠っている。

 

エネルギー源となるメタンハイドレートは、確認済みの量で日本の天然ガス消費量の約10年分、潜在的には100年分以上の埋蔵量があるとされる。

 

またハイテク産業に不可欠なレアメタルやレアアースも数十〜数千年分の規模で存在している。

 

皇歴2685年。召喚獣工学と現代技術の融合で、日本国は早くから深海からの安全で低コストな採掘技術を確立している。

 

1900年代からその多くが自動化と召喚獣との融合によって、食料自給に続いてエネルギーにおいても自給体制が確立され、アジア連盟加盟国内での飢饉、凍死は名実ともに過去の物となった。

 

 

ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月10日 午前10:40 小笠原諸島 海底実験開発場。

 

海面から差し込む陽の光が、海底ドームに差し込む。

 

シャボン玉のような弾力性を持った海底ドームの側には、魚型召喚獣リュウグウが遊泳し、積荷を乗せたネッシーのような召喚獣がそれを避けるように海面へと上昇していく。

 

海底ドーム内では、掘削に適した召喚獣が岩を砕き、その残骸をドローンが横へはけさせてベルトコンベアに乗せて透過装置を通って自動仕分けが為される。

また一方では、海底ボーリングから掘削された土や岩を圧縮してブロック状に積み上げていき、目標地点まで自動掘削される大型の装置があり、その近くには海底神社、作業員の住居、食堂、売店、郵便局、召喚獣診療所、研究室などがあり、海底ドーム内は一つの街となって回っていた。

 

「ーーー・・わぁーお....アトランティスみたいです」

 

海面から差し込む光とそれに照らされながら遊泳している蛇型や魚型、そして群集で一つの生き物のように泳いでいる原生生物と、それらをドーム内から見た時雨はその幻想的な景色にかつての古代文明を想起した。

 

「っ...ちょっと不吉な例えですね...っふぅ」

 

嫌な例えに、若干深海恐怖症が顕になりそうだった汐留は酔い止め代わりのコーラを飲んだ。

 

「うむ、ドームの事故はゼロではないからな、あり得ん話ではない」博士

 

「....ちょっと、勘弁してもらえます?」

 

「む、ははぁっ!すまんかったな。」

 

「....取り敢えず確認は取れた。後はキャタピラに乗って行くぞ」

 

責任者の人と世間話で少々花咲かせていた才亮はキーを持って、移動用の乗り物や、掘削道具、召喚獣を管理しているところへと向かった。

 

「....」

 

「...汐留さん。大丈夫ですか?」

 

その道中、海底ドーム越しの海中の景色を楽しんでいた時雨はサングラス越しに一点を見つめて縮こまっている汐留に声をかける

 

「...えぇ、そんな長くなければ大丈夫です。」

「飴玉くうか?」

「あ、どうも...」

 

ここにくるまでの船酔いに乗り物酔いが重なりしんどそうだった汐留だったが、彼からもらった板状の飴で精神的な回復をしていた。

 

「!...私ももらっていいです?」

「ほい」

「うぅーん、不思議な味」

 

口に含むと下の上でスッと雪のように溶けている不思議な口溶けに、鼻を鳴らしていた。

 

「む、それは冬にしか売ってないのでは?」

「あー、確か冷蔵庫にずっとあったやつだ」

「ん...そうか」

 

髭を蓄えた教授は季節外れのお菓子を疑問に思うが、彼にはぐらかされてしまう。

 

「それより、時雨さんは昨日洗脳されかけたと聞きましたがそっちの方が大丈夫なんですか?」

 

「はい大丈夫ですよ!癒着する前に才亮さんが取ってくれましたし、西条さんからも特に問題ないって言われました!」

 

バクバク食いまくっていた加工済みのイノクサ入りの食事と、イモリ型の幼体が相まって疑似洗脳にかかった彼女であったが、彼の糸で繊細に取り出されて特に後遺症などは残らずに済んでいた。

 

「むっ、洗脳?!即応科は過酷じゃな....洗脳されている時はどういう感じなんか?」

「んー...そうですね....」

「あんた海洋火山学者だろ、そんなのに興味あるのか?」

 

前のめりになっている彼に記憶に新しくもぼやけたあの感覚を思い出そうとするのを、才亮が間に挟まる。

 

「実際に体験しとる人に会うのは初めてじゃからな」

 

洗脳や催眠、成り代わり関連は対処法と、それに関連する召喚獣を持っている人への牽制として義務教育で周知されているが、大体それ関係の事案が起きると各執行機関が総出になって封殺してくるため、ニュースでの報道はあれども被害者保護のためそれ以上の情報は関係者以外には届かないようになっていた。

 

「...疑似洗脳でも、友達がゲームしているのを横で見ている感じ...ですかね」

 

「意識はあったのか...」

 

ーーーーーそういうところだぞ。

 

「まぁ....はい」

 

あんまり嫌な感じと言うわけではなさそうであったが、物憂げな様子の才亮がそういうと彼に言われた言葉を思い出し時雨は少し苦い顔を浮かべた。

 

「....あ、あそこですかね。」

 

そうこうしていると、ドローンを肉壁にして封鎖線を作っている洞窟が目に入った。

 

ーーーーゴォォォォ

 

洞窟は直径10m弱で、入り口付近では海底の冷たい空気と肌が焼ける熱の混じった風が出入りしており、大型召喚獣のイビキのような音を奏でていた。

 

「.....あの、一人は見張りでこっちに残った方が」

「ドローンがいるから必要ない。俺が先頭で後方に汐留。時雨達は俺らの間に」

 

「うぅ...了解」

「うむ!」

 

がっつりビビっていた時雨は入り口で見張りを名乗り出ようとしたが、金髪の鬼上司に一蹴された。

 

「....スゥ」

 

洞窟の中へ入っていくと、湿気も相まって一気に空気が冷える。白い息が出て、さらなる別世界へと向かっていくのを体感していた。

 

「こっちであってるんですか?どんどん寒くなりますけど...」

 

「あぁ、合ってる。」

 

ドローンがサーチした3Dフロアマップには、今回の調査対象の海底火山への道筋と現在地点のズレは確認されなかった。

 

「火山にもよるが、噴火直前は活動が急に鈍化するもののある。今回はその類だろう」

 

普通であれば進めば進む程、気温が上がるはずではあったが、学者が言うには割と危険な状態であるのは間違いなかった。

 

「うぇ?え、やばくないですか?」

 

「あぁ、だろうな」

「まぁ、そうですね。」

 

そんな噴火寸前の海底火山にわざわざ行くのは危険が危ないと皆一致していた。

 

「火山口のセンサーが反応したら、直ぐに退却すればいい。じゃが、やばいのはやばいな」

 

博士が退避するタイミングについて話すが、気休めであった。

 

「と、とにかく!早く行きましょう!」

 

「っと...おいっ...あんま急かす..?」

 

ーーーゴトンっ

 

時雨が才亮を急かすようにしてそういうと、彼の足元に人工的な物が当たる。

 

「....っ..なんですかそれ?!アトランティスの!」

「いや...ドローンの残骸だ。」

 

歴史的な発見をしたのではないかと時雨は半分期待してそう聞くが、ついさっき見た物であり、熱によって胴体部分が半分溶けていた。

 

「...召喚獣の仕業ですかね。」

『!....??』

 

シゲモチさんがそれを触診するが、どっちかわからん。といった反応を見せる。

 

「む...溶岩で溶けているな。近づきすぎたんだろう。」

「ふぅ....」

 

『...ビャッ!!』

 

「ひぃい?!」

「っと....大丈夫ですか?」

 

博士の分析に時雨はホッとするが、壁から何かが伸びて顔を横切り汐留に寄りかかる。

 

「っ...スゥ...なんだチソポアナゴですか...」

 

汐留の顔を見て一度気を落ち着かせて、まるっきり無害な見た目がっつりチソポな召喚獣チソポアナゴに安堵した。

 

「む....こんな所を住処にするとは、海底ドームの影響か」

 

『....ッ...ッ』

 

「わぁ...っと、」

 

博士がボソボソとその違和感を呟いていると、溶岩を甲羅にしているカニ型の群が彼らの足元を通って洞窟外へと逃げていく。

 

「ドローンが数台帰ってきてないとは聞いてましたが...」

 

「何かいるな」

 

「っ!」

 

汐留が事前に頭に入れていた情報を復唱すると、才亮の中では想定済みで携帯槍を取り出して奥へと進む。

 

ーーーービュゥゥゥ

目的地の海底火山があるフロアの前に到着すると、頬を啄む冷気が体温を奪う。

 

「っ....」

「「「!」」」

 

入る前に才亮は無言で口に指を当てるジェスチャーをして、彼らもそれに同意した。

 

『....ッ...ガルルルル....ッ...ガルルルル』

 

そこには海底火山の火口にすっぽり収まるように、刺々しい甲羅を背負った体長8m程の亀型召喚獣が爆睡していた。

 

(!....亀型召喚獣ヒエカクか)

 

ーーー亀型召喚獣ヒエカク

体長は5mから12m程、溶岩の中で孵化する関係で溶岩で出来た甲羅を背負っている。

基本は10体前後の群れで動き、社会性がある。

性格は大人しい者が多いが、個体差がある。

普段は深海の底で活動している。自分の深温度が下がりすぎた場合、地上に上がって日向ごっこして体温を上げている。

 

(計測するから援護頼む)

 

(了解、汐留は周囲を、時雨は亀型の向こう側を見てこい)

 

((了解))

 

博士が掠れ声でそう言うと才亮は彼女らに指示をした。

 

(クゥさんは出てこれますか?)

(いえ、寒い所には出たがりません。)

 

((.....))

 

汐留は時雨にすれ違い様にそう聞くと、あまりに猫型召喚獣らしい返答に、汐留と才亮はまじかよという顔を時雨にむけた。

 

(...!)

 

そうこうしていると手早く進めていた博士が彼に手招きをする。

 

(...本来なら数日前に噴火する筈だったが、亀型の影響で延滞してる。)

 

腕に装着している測定器から亀型の側の火口にセンター線を差し込み、メモリを確認した博士は淡々と分析を述べる。

 

(つまり、こいつが退けば噴火するのか?)

(直ぐにでも噴火する可能性が高い。)

(わかった。汐留、時雨。退却....)

 

霜に焦がれた彼の切迫性に、才亮は亀型を放ってこの場を後にする方向へ舵を取る。

 

ーーーーツルッ

 

「わっ....」

「...っ」

 

すると、彼に釣られて立ち上がった博士は火口付近の亀型の冷気で結露した地面に足を滑らせた所、すぐ側にいた才亮にお姫様抱っこされて事なきを得

 

ーーーー....コンッ

 

『....グァ...グゥ....ッ!!』

 

事なきを得られず、博士が転んだ際に蹴り上げた小石が亀型の頭に着弾し、眠い目を擦りながら起きた亀型は目の前の髭もじゃをお姫様抱っこした金髪男と目が合った。

 

『...こちら即応科科長才亮。火山噴火の兆候が見られるため、避難を』

『...えぁ...はい、了解しました。』

 

『....っ...!!ゴガァァァァ!!!』

 

端的に海底開発責任者に連絡を完了させると、盛大な咆哮が洞窟内に地響く。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。