日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
「・・っ!....野郎、心配無用だったな...」
その様子を見ていた才亮介は口角を上げていると四足頭がレーザーを打とうとしている所で、ゆっくりと四足頭に背を向ける。
『っ?!...ピッ...ピッィィ』
意味不明な行動に困惑しながらもそれを挑発を受け取った四足頭は、長く溜めて光線を放つが、大きく開けた口は一線に閉じて行き場を失った熱量は四足頭の中で爆散した。
ーーーーバァぁぁぁぁん!!
「....スゥ....時間掛け過ぎたな」
スライムのような透過性に手こずり糸が透過して起点を作れなかったが、立ち回りで糸を張り巡らせて布を再形成した事で、ようやく自爆させられたという根気のいる算段がうまく機能し、爆炎を背に、才亮はタバコを一服ふかして糸の中から黒い木目のバットを取り出す。
「よし、やるか。」
才亮はバットを肩に担ぎ、思惑が一切見えない複眼が頭中に蠢くヒトガタへと向かった。
ーーーーーーーーーーーー
タイトル:蝿の王。
結界内の召喚獣を倒し終えた武田、玄道、才亮らは複眼が頭中に蠢くヒトガタを円となって囲う。
「「「.....」」」
『......』
互いに睨み合う中、先に口を開いたのは、かの方であった
『たかがスライムの裏切りから、ここまで来るとは...これだから準国民は』
「「っ!」」
明らかに話とか通じない見た目をしていながら、英国紳士のような落ち着いた声音でソレがヒトガタであると確信付ける単語が並べられ才亮らは目を開く。
『まぁいい。大体見させてもらった....それで..』
「あんだそのマント、コスプレか?」
「....プッ..くっ...」
がっつり話の途中だったヒトガタに武田がずっと気になってた事を聞くと、玄道が少し噴き出してしまった。
『.....シィィ』
「.....」
愚弄と受け取ったヒトガタが戦闘モードに入ると、ソレを感じた武田は深く脱力し重心を下げて刀の頭に触れるか触れないかの位置に右手を置く。
「「....」」
それを見た玄道と才亮は静かに武田の間合いから数歩下がる。
『.....』
ヒトガタはその意図を理解して、マントを全身に纏ったまま意識を髪を結った人間へと集中する。
森の中は静寂に包まれ、原生生物の虫音が僅かに聞こえる。
そして、場が空になったその一途に彼の最速の居合いが放たれた。
ーーーーーー...シンっ
ーーーーブォンっ
「....っ!」
光学エンジンのような機動音と共に居合いを受け切られた彼の顔には、張り裂けそうな笑みが破顔していた。
『私に....二つ抜かせたか』
居合いを受け切ったそれは、全身を包んでいたマントから現れた深赤のビームサーベルであった。
まずは武田の居合いに初撃の場を与えるため、がその居合いを受ける。
「...ぬんっ!!」
「..ッシュ!!」
武田の力と拮抗している中で、背面の火口からマグマを噴出しながら玄道のダイアの盾がヒトガタの複眼へと振るわれ、反対に糸でピンチ済みのヒトガタへと糸を巻き取る勢いで加速しながら黒バットをフルスイングする。
「「っ?!」」
しかし、2本腕と思われたヒトガタのマントからは、もう2本の腕が現れて赤く染まったビームサーベルが彼らの盾と黒バットを優に受け切った。
『私は近接の方が得意なのだよ。』
「ッ!!」
ーーーードォォォン!!
ヒトガタは複眼をぎょろぎょろと動かしながらそう言って、背中の4枚羽の推進力で勢いをつけて玄道をビームサーベル越しに吹き飛ばし、均衡点をずらされ体勢が僅かにブレた才亮へビームサーベルを突き刺す。
「.....っ!!」
『...む』
赤い閃光が虹彩に焼きつく間際、ヒトガタにマーキングした糸を引っ張り距離を取ると同時に、軌道を上反らせて紙一重でかわす。
『....どうする、人間っ』
間合いには武田とヒトガタの2体だけとなり、フリーになった2本のビームサーベルが一刀塞がっている武田へと円のように回転して焼き切ろうと向かう。
「...っ!!」
引けば、すぐに拮抗している2本のビームサーベルが向かってくる。仮にそれをいなしても、深紅の剣壁がこちらを消し炭にする。
(....何かっ..何かないか!!)
思考が巡り、これまでの戦闘経験から打破できる何かを索引する。
(....でかいな)
ふと、ヒトガタの視座が高いことに気づき、向かっては倒れ、考え研鑽し、また向かっていき負け続けていた昔の記憶が蘇る。
ーーーー力を持ってしては、近づけん
毎度毎度、子供相手に禅問答的な遠回しで、イラつくジジィの言葉を思い出す。
「..っ...ーー」
深紅の剣壁が前にはねた髪を焼くと、踏ん張っていた足腰はしなだれ刀を落とすように体が地に溶ける。
『..ッ?!』
「.....ーー」
交差していた深紅の剣は背に透過し、髪を結った男はヒトガタの懐に入り、境界線がなくなった彼は地面に落下し指に触れるだけであった刀を逆真向にヒトガタをなぞる。
ーーーーー....ン
指と指が触れるか触れないかのような音が反響すると、紫色の血飛沫が真っ向に沿って噴出する。
『....ァ..?!...!!』
追撃で真向斬りを喰らうが、同時に背の四枚羽で空へと飛び上がったため左足を持ってかれるだけで済んだ。
空へと昇りながら、体内の蛆虫で深部に達しかけた開口してはらわたに埋め尽くす。
「...ふんっ!!」
『...っ!?』
ーーーーパキっ...パキパキパキッ!!
すると、離れ行く大地から燃え盛るダイアモンドの鉱脈が段々に生成され、上昇速度に追い上げて迫り来る。
『....っ...!..(金虫は森林に隠れたか)』
ダイアモンド鉱脈の生成軌道から右に避けて、蛆虫を接着剤に開口しているはらわたを2本の腕で接着させようとしていると、黒矢が目前で突如迫り来て残った2本腕からビームサーベルを抜き、黒矢を弾く。
ーーーーパキっ...パキパキパキッ!!
そして、既に生えているダイアモンド鉱脈から分岐して新たな鉱脈が生成されて、またしてもヒトガタへと向かう。
『っ...!?』
しかし、黒矢を弾いた腕から胴体へと伸びて緊縛した金髪の糸が、ヒトガタを空から遠ざける。
『...金っ..髪ぅぅぅ!!』
首輪を繋がれた召喚獣と自らを重ねたヒトガタは重厚で早い盾男よりも、自らよりも剣に愛された男よりも、初めに潰すべきであった金髪男の方へと猛進し、赤外線センサーで丸見えのその男へとビームサーベルを回転させる。
『!..?!』
「....っ」
武田以外であればタイマンで負けるわけがないと、その通りに逃げようとした金髪男をブルドーザーのように切り焼いて消し炭にしたが、その見覚えのある感触に気づくと黒矢が背後から放たれた。
『...!』
「....っ」
その方向を向くと、向こうの森林の暗闇から心底舐め腐った顔で、あにしてんだ?かかってこいよ。といった手招きをする金髪と目があう。
『....っ!!』
はらわたはまだ完治しておらず、蛆虫の組織液が垂れ流れ切られた右脚に染みる。股部分にもそれらが垂れて無様な状態の中、舐めていた人間相手に舐め腐られ自分と金髪への怒りに一色に染められた。
その瞬間。
ーーーーー....ン
もつれた空間に一本の線が通る音と共に、右半身の腕が2本、そして四枚羽が2枚切り落とされた。
「.....スゥゥゥ」
遅れてその方を向くと、ヒトガタ頭上から草木をすり抜けたのにも関わらず、葉一つついていない髪を結った男が空中で屈むように居合いの構えをしていた。
『っ..!!!』
殺される。
絶対に殺しに来ない寄生傀儡召喚獣ら、反乱者、闘技場の戦士など、ここ100年程戦ってきた者らには感じてこなかった、首筋を静かに、そして感じ取る間もなく伝う冷たい死が胸内をよぎる。
目の前の纏う空気が変幻しつつある男か、こいつらの頭脳である金髪か、盾男かわからないが、そう確信したヒトガタは空へと上昇する。
『!!!』
「...ふんっ!!」
ーーーーパキっ...パキパキパキッ!!
左足を切り落とされつつも、空へ昇り続けるがダイアモンド鉱脈は結界内を埋め尽くすかのような勢いで、糸に繋がれ滑空範囲が狭まり続けるヒトガタを追尾する。
『...っ..ぅ!!』
背が昇りゆく朝陽に焼かれ、反対に朝陽に照らされ輝くダイアモンド鉱脈を駆け上げってくる死がヒトガタへとロックオンする。
(やはり..アレを!...しかし、その持ち札を見せれば国民ではいられなくなる)
蠢く複眼の内にあるモノで画策するが、どちらに転んでも死と同等であると判断がつかない。
ーーーーヒュン
『....っ...ぅ!』
そんなのお構いなしに、武田は鉱脈が分岐する際に落ちたダイアの欠片を刀の峰で振るって、ヒトガタへと飛ばす。
『...んぅ!..』
やむおえないと複眼奥に潜むソレに力を込めると、残った二羽がつっかえて落下し始める。
「...おいおい、逃げるのか?寂しいじゃねぇか」
『...金髪ぅぅぅっ!!!』
背には金髪男がおり、イッタンモンメンと共にヒトガタを羽交い締めにして、ヒトガタは断末魔を叫ぶ。
(..っぅ、こいつを引き剥がさなければっ...発動が!!)
ーーーーーブぉぉぉんん!!
身動きができず、焦りだけが募りながら死が待つダイアモンド鉱脈へ落下していると、噴出音が頭上へと駆け上がる。
『...っ!!』
ヒトガタの頭上にはダイアモンド装甲を纏った人型の物体が背面火口の推進力で加速し空高く飛び上がり、ヒトガタめがけて猛進する。
「....ぬんっ!!」
ーーーーーズドゥゥゥん!!
日出ずる太陽を背に、燃え盛るダイアモンドの盾は複眼蠢くヒトガタの頭をかち割った。