日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
『貴殿の力を、私に、民に尽くしてほしい。』
肥溜めで生まれ、そこのお山の大将として死んだように生きていた私に、あの方は手を差し伸ばした。
『....全てを持って、完遂します。ヒャッキヤオウ様。』
全てを許し、慈しみと底なしの愛に溢れた...あの深淵な瞳に声に...
初めからそうなることが決まっていたかのように
私は永遠の忠誠を誓った。
『ーーーー・・....っ』
「さて、話をしよう。」
視界が歪み、強く白い光に複眼の髄がズキズキと痛む中、低くともよく通る声に起こされる。
『....っ!!』
ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月11日午前6:59 関東庁 即応科棟 地下3階 特定尋問室。
『....』
「.....」
マジックミラーの向こうでは、杉山、伏見、玄道らが重層捕縛されて一ミリも動けないようにされているヒトガタと才亮との様子を見つめていた。
「...もう10分も緘黙してる。時間稼ぎかいな」
「ここは特注だから、ソレはない」
伏見はヒトガタを囲っている子招き人形が機能しているのを確認し、逃げる見込みがない状況下で何かを待っているかのようなヒトガタを訝しむが、わたあめみたいな二つ足の召喚獣とケロンボノが戯れあっているのをそのままに杉山はそれを否定する。
「「.....」」
そんなに関わりがあるわけでもなく、玄道も無口な方なため友達の友達と一緒になった時の気まずい空気が流れ、たまらず玄道に話を振る。
「ところで、武田とシェイプは何してるんだ?」
「.....道場で...ビームサーベルの感触を確かめている。シェイプは朝日を浴びに...」
杉山がそう聞くと、玄道は男梅のような渋い顔をしてそういった。
「あ?」
「ふっ、相変わらずだな...」
杉山が思わずそう聞き返すと、伏見はいかにも召喚獣らしいシェイプといつも通りの武田に一種の安心感を覚えた。
ーーーー半寄生でよかったじゃない。子供ができた時に安心して抱き上げられるし
「....」
「...一体化したか」
そして、杉山はふと神妙な面持ちをしている玄道が目に入り、彼は右腕の手首あたりを手鏡しており、進化の代償に浸っていた。
「あぁ...これで俺も晴れて寄生型だ。」
よく見ると腕の甲にも緑鱗が侵食しており、所々黄緑色のダイアモンドの光が反射し、いかなる時も彼を照らし続ける。
「・・...これは何だ?」
そして、尋問室内では先までの沈黙がなかったかのように、才亮が頭をかち割った時ヒトガタから出てきた、いくつもの星のようなものが公転しているビー玉サイズの勾玉?をヒトガタに見せる。
『っ..』
ほんの一瞬だが、僅かに焦りが空気に漏れる。
「お前を捕縛した際、反応炉クラスの予備周波数を感知した。あの状況から打開できるモノとしてあげられるのは自爆か....」
『....っ』
複眼が蠢き表情が見えずとも、糸を通して手に取るように一瞬緩んだ心情の機微が伝わる。
「いや、無いな。使用後の物理的な反動であれば迷わず使っていた。なれば....より実際的に、そう...名誉が失墜する、か」
その勾玉を指で軽はずみに弾きながら、答えへと近づく。
『.....』
振る舞いや妙に挑発や煽りに慣れていない様子、ダサいマント、それでいて実戦的に洗練された剣術から、この世界にも似たような概念と合致する。
「....貴族階級だったが、没落し、その剣術で成り上がり今の地位についた。その名誉が失墜するとすれば、敵前逃亡。よって、これは帰還石か」
『.....』
「使ってみろ」
完全に言い当てられてしまい一瞬頭がフリーズしたヒトガタに、才亮は手遊びに用していたその石をヒトガタの複眼の隙間へとコイントスする。
『!....っ....ぬぅ』
予想だもしない行動だったが、ヒトガタは迷わず自分に戻ってきた石にイメージを流した。しかし、生殺与奪のスイッチを握られている中ではそれは起動しなかった。
「イメージ。そうか....向こうの世界の場所、それも正確な座標とイメージを一心にして固めなければ発動しないのか」
『......ふっ....はははははっ!!』
彼の手のひらの上で全て筒抜けになりつつある、あるいは既になっている可能性を理解し、ヒトガ
タは憑き物が取れたかのように笑い出す。
『聖戦は来たる。』
「....っ!」
その単語に才亮は目を見開き、初めてヒトガタは彼の心を乱した。
そして、それはマジックミラー越しの彼らにも伝わっていた。
「...聖戦?....!...伏見?」
「....召喚式での事案は2、3年に数回あるかないか、それが今年に入ってから既に18件も起きている。......まさか」
杉山はおとぎ話でしか聞かないその文言に、なぜサイボーグ才亮が動揺しているのかがわからなかったが、伏見は血の気を引き、嫌に腑に落ちたソレに思わず口を手で覆った。
「.....お前」
『幾千のヒトガタ召喚を持って、この世界をヒャッキヤオウ様に!!』
ーーーーパァァァン!!
ヒトガタの複眼蠢く頭は内側から蛆虫らが破裂し、特定尋問室中に紫色の血と臓物が爆散した。
あとがき
ーー即応科の体裁
伏見と杉山ら公安が独自調査している中で、偶然ヒトガタと遭遇。
彼らから応援の連絡をもらいテラツバメで出動し戦闘、捕縛したものの止むなく自害してしまった。
後処理を完了後、統合情報機関に報告。
聖戦の話も伝えたが、一方通行のためどういった反応をしたかは才亮らは知らない。
ーー即応科の体裁
伏見と杉山ら公安が独自調査している中で、偶然ヒトガタと遭遇。
彼らから応援の連絡をもらいテラツバメで出動し戦闘、捕縛したものの止むなく自害してしまった。
後処理を完了後、統合情報機関に報告。
聖戦の話も伝えたが、一方通行のためどういった反応をしたかは才亮らは知らない。