日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月12日午後 18 : 30 築地ドーム。
珍天堂ファルコンズと巨人との試合は、一回から乱打線が繰り広げられて互いの先発ピッチャーは一回から降板。早くも5-7と波乱の幕開けとなっていた。
「....っ、小林の満塁ホームラン見たかったぜ」
毎度のようにサブウェェイのサンドイッチを手提げに、シーズンシートに座った黒髪の男は乱打線を見損ねたのを紛らわすかのように2口で生ハムアンドマスカルポーネを平らげた。
「....ははっ、見れちゃった僕は代償として今年分の運を使い切ったかもね。」
ーーーー日本特務機関 NTK 諜報員。針先 椎(ハリサキ シイ)
隣のダボダボのキューブのドット絵が記されたファルコンズのパーカーを着ている童顔の男は、隣の男にそう呟く。
「しばらくは台湾辺りのセーフハウスでゆっくりしろや」
「えー、嫌だよ。」
才亮は彼にポテトを差し出しながらそういうが、彼は指に粉つくからいらないとそれを断る。
「....英賀氏はお前がどこの人間か勘付き始めている。」
「えーどうやって会ったの?丸裸にされなかった?」
長く入り込んでいても数回くらいしか会った事がない彼は、あまり名前を聞かなかった彼が普通に会えた事に驚いていた。
「正面玄関から」
「はははっ、一人で?相変わらず無茶苦茶だね。」
珍天堂ファルコンズの二塁打も重なって上機嫌な彼は、才亮の大胆さに笑みが弾ける。
「利用価値はあるが、読めないな。利銭に近い、あいつは....」
一度、相対しただけであったが、情報を引き渡すタイミング、隙間を通すような駆け引き、暴力の魅せ方といい京都の妖怪ジジィを彷彿とさせた。
「....僕もどこまで彼女が何を知っているか知らないからなー、匂いは似ているよね。」
嫌な名前に無表情に戻り、声音はいつもの調子で淡々と意見を述べる。
「それよか、大元の目星はついてんのか?」
「尻尾を掴んだけど、まだ写しきれてない。」
「同業か?」
「大元は僕らが対峙した相手。関わってるヤーさんは末端。」
「.....スゥゥゥ、まずは末端からか。」
ただのヤクザ同士の縄張り争いではないのは分かりきっていたが、その先の深淵がどこまで続いているのかは、彼の次の返答次第だった。
「その辺は...ここじゃ言えないし、言える...あぁー...いては限られる」
ポタージュコーン菓子を袋を下向きにして、落ちてくるカスを口に放り込む。
「他にもか...」
「うん。どんな組合いか、"手"を使ってるか知らないけど、こっちの時間がそんなに残ってないのは確か」
「.....」
帽子を深く被り直し、才亮はおそらくかなり深くまで根を張っているネットワークに顔を曇らせる。
「.....わかった。12時にセーフハウスで」
堪らず才亮は立ち上がって、短く約束をして彼と別れた。
「.....うん。バイバーイ」
珍天堂ファルコンズの猛攻は止まらず、2回の表、ワンナウトも取れずに野手登板まで見えて来た所から、針先の別れの言葉は後引くことになる。
ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月13日午前 5:30 立川市 才亮自宅マンションA
「.....」
約束の時間はとうに過ぎてしまい、朝日が登り始めた頃。
「....!」
朝日の逆光を背に、羽は焼かれ、足はぶらりと折られて辛うじて飛んでいる焦茶色の体長30cm程の鳥型召喚獣がこちらに向かってきていた。
『...ピ...ィ...』
「おいっ....っぅ」
イッタンモンメンを伸ばして回収し回復薬を飲ませようとするが、役目を果たした鳥型は静かに息を引き取った。
そして、鳥型のクチバシから円筒の紙が落ちて、彼の手のひらに落ちる。
「確かに...受け取ったぞ。針先。」
受け取った紙の中身を開き、それを確認した彼はその紙を握り締めた。
ーーーーひとみ
血で殴り書かれていたそれは、各省庁が総力を上げて血眼になって探し続けている人身売買組織を指す通称であった。