日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月13日 19 : 30 町田ギーオンスタジアム
改修中の開閉式ドーム型スタジアムにて、糸の終着点の方へと歩みを進める。
「.....」
天然芝のグラウンドのキックオフ地点にて、アッパー系のノリで踊っているパリピマイマイを肩に乗せたスカートの短い焼けた健康的な肌をしているJKと相対する。
(また、こいつか....)
個体によって妨害周波数帯が異なる厄介なパリピマイマイを一瞥していると、無言に耐えかねた黒ギャルJKが口をひらく。
「どうやって、わかったの?あーし、これまでバレた事なんてないのに」
「ソロ行動するギャルなんか居るわけないだろ。」
「ぷっ...はははははっ、はぁ....それもそうだねー、ウケる。」
彼の最もな意見に黒ギャルは腹を押さえて空を見上げて笑う。
「あんた、有名だよ。幹部も倒して、着実にあーしらに迫ってきてるし、こっちに引き込もうって奴もいるくらいだし、そん時はあーしのペットになる?」
「しょんべんくせぇガキなんざ御免だな」
黒ギャルJKはペラペラとそう話し、最後にマゾ大興奮な事を言ってはみるが、ドS大王の彼の足切りにも及ばなかった。
「っ....うっわ、ライン超えてるねー、それ....いいや、みんな。やっちゃって」
「...っ」
ーーーードガァッ!
彼女が合図を出すと、才亮が立つ人工芝の中から砂が盛り上がり砂岩を形成して、恐竜のような形を形成する。
「....紹介するね。」
「っ...」
そして、彼の足下の地面からは無数のネズミ型召喚獣が彼にまとわりつく。
「ブンチングンタイと、サンドロックちゃん。」
「そして、上からこちらを見下ろすのは、スナイプスコーピオンくん。」
ーーーーヒュンっ
「...!...っぅ..(野郎っ、意識外から)」
バスガイドのような調子で彼女がそういうと、スタジアムの屋根の淵に控えていた虫型召喚獣スナイプスコーピオンの毒針が彼の右肩に貫通し、引き抜こうとすると即効で心臓の脈拍が早くなり、視界が歪み始める。
「アァーン、できれば味方同士で殺し合うのが見たかったけどー、それはまた他の管理官でたのしもーっと」
(...ツゥ、神経毒か...)
右半身が痺れ始めて、呼吸が荒くなり始める。
『『『チィっ...!』』』
『....グァァ!!』
「...っ...クッ..ぁ!!」
構わずブンチングンタイが彼を熱殺蜂球のように押し固めるようにして纏わりつき、動きを制限し、サンドロックは大きく頭蓋の岩を振りかぶって彼を地面に叩き潰す。
ブンチンらの血漿が肺に入り、口内は鉄の味一色になる。
右腕で受けた衝撃は流し切れず、神経毒で痛みが鈍化していても肋骨や脊髄、右肩は粉砕して筋肉にそれらの欠片がスクランブルエッグしているのが分かった。
「...ぁ...っ!」
それでもイッタンモンメンで体を無理やり動かして、天然芝上を引きずりながらその場から離れて、立ち上がる。
「ウゥーん、健気だねぇ。でも、そこも射程範囲だよぉん」
ーーーーヒュンッ
「....っはぁ!....ヒュゥ...」
頬に手を当ててキモい声を出している黒ギャルJKは安全圏内から、銃のポーズを彼に向けるとスナイプスコーピオンの毒針が彼の左胸を貫通して突き刺さり、肺の中が毒で満たされ空気が体外に漏れる中、彼は膝をついた。
血管や血液が壊死し始め、首筋にドス黒い血線が侵食して白目が紫色に染まる。
「っ...あ"ぁ"っ!」
肩甲骨は背に表出し酸素に焼かれ、右脚は糸で辛うじて形を保っている中、右腕に巻き付けた携帯槍を柱に立ち上がろうとするが、二足に変化し両腕が砂岩で歪に補強されたサンドロックの両拳が彼に降り注ぐ。
『グァぁ!!グァァァ!!グヌァァア!!!』
「ごめんねー、ベルドさんを殺した人だしん、念入りにねぇー」
無慈悲に鳴り響く地響きと肉がミンチにされていく音を傍ら、サンドロックのミンチ音に合わせて動画をとりながら踊り始める。
「....ウゥー、えん!...ふぅ、いやぁー、あの弱男くんの方がもっと骨があったよぉ?まぁスナちゃんの毒でおじゃんだったけどねー」
7秒の動画を撮り終えた彼女は、一通り終わったそうなサンドロックを引かせてクレーターの中心でヤムチャっている彼の方へとゆっくり向かう。
「っ....ぁ...」
「フゥゥんんっ...本当はこのまま、イケメンが苦しみながら死ぬのを眺めながらオナニーしたィィんっ!」
首から上は手加減してねと言いつけ通りに、ボロボロになった金髪イケメンを見下ろした彼女はお腹の辺りを押さえて悶えながら、スカートの中へと手を伸ばそうとするが、体を仰け反らせてそれを自制する。
「ま、あの人に会わせないとだから、とりま魅了してから仮死状態にするね。」
月明かりを後ろ手に深さ1メートル強はありそうなクレーターへと足を踏み入れ、手をパンっと合掌して心を整えてから、彼女は彼の無防備で綺麗な顔に顔を近づけると、どうにか意識を保っていた彼の口から辛くも言葉が聞こえた。
「...ぇ....き」
「え?」
顔を近づけても聞こえず、耳を彼の口元へと寄せた。
ーーーー召喚獣の進化は、刀の精錬のようにより固く、しなやかに、そして鋭く強固に洗練される事に例えられるが、それは本質ではない。
より過酷な環境下で、今まで相対した事のない、強き召喚獣へ対抗し、喰らうためにーーー
ーーーー適応する事が進化の本質である。
「.....甘ぇな、メスガキ」
「ぎゃぶっ?!」
クレーターの陰影に隠れて適応した彼は黒ギャルのくるくる髪を掴んで地面に叩き潰した。
「...スゥ...神経毒は久しかったからなぁ....良い経験値稼ぎになった。」
月夜を背に、右肩になびくイッタンモンメンから真っ白い蒸気を発しながら、彼女をクレーター底に磔にした彼は立ち上がって肩を回す。
「かはぁ...っ...サンドロック"っ"!!」
『グァアアア!!!』
「....ドラァ」
ーーーーズバァァァァアン!!!
黒ギャルの強制命令にサンドロックは彼女ごと彼に台パン岩石封じを振るうが、右肩から木の幹のように生えて連なった右拳が隙だらけのサンドロックの腹に放たれ、内側から爆散した。
「....スゥゥ」
ーーーーヒュンッ
白い蒸気で首上が見えぬ中、彼がクレーターを登って天然芝に降り立つと、スナイプスコーピオンの毒針が彼の顔面に直撃する。
「!...ブンチ.....っ?!」
直撃して蒸気越しに彼の頭を貫いていたのが見えた彼女は、ブンチンを呼んで逃げるまでの時間稼ぎをしようとしたが、発出された毒針の風圧で蒸気が晴れるとそれは信じ難いものであった。
「....にぃ....っ...シッ!!」
口から頬へと貫通してもなお1m程の毒針を噛み締めて、受け止めていた彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべて逆刃になっている銛のような毒針を抜いて、スナイプスコーピオンへと槍投げした。
『...ッ?!...ッ..ゥ...』
ーーーーズゴォォォン
意味不明な状況に硬直していたスナイプスコーピオンは、放たれた毒針に対応できず、仰け反った状態で串刺しとなって、観客席に落下して行った。
「...はぁ?!!」
スナイプスコーピオンが落ちた音を聞き、黒ギャルJKはものの10秒で手持ちの召喚獣が制圧されたのを理解できずにいた。
「ふぅ....とりあえず、洗いざらい話聞かしてくれ」
それでもドS大王は待ってくれない。
「...いやっ、私未成年だよ!女だし、子供だよ!」
尋問の気配を感じたギャルは奥歯ガタガタさせながら、失禁して恐怖に満ち満ちていた。
「あぁ....そして、テロリストだ。」
「っ....わかったっ!なんでも話すから、顔はやめてぇぇ!!」
重質量のサンドロックを爆散した彼の右手が彼女の顔面を覆おうとすると、彼女は即座に陥落した。
「なら聞くが、あの人って誰だ?」
「..ぁ..いや..まだ、何も......は...ぁ....!!!!」
じっくりと尋問を始めようとした瞬間、ちょうど真上に来ていた月の光に当てられ、彼女は急速に老い始めた。
「っ...おい、待っ.....」
しわくちゃになり始めているギャルの体を掴もうとしたが、ほとんど実体がなくなって行き既に血色は失い、そして、スタジアム全体が光り輝き初めて、粒子同士が軋み合った地鳴りが鳴り響く。
ーーー.....ギィィィィイイイン!!!
「.....っ!!!」
捕縛していたネズミ型召喚獣ブンチングンタイを連れて、スタジアム外へと糸を伸ばし急速に巻き上げて脱出すると、荘厳な光線と共にスタジアムは消し炭となった。
「.....」
地鳴りが治ったスタジアム跡へと歩き、残った赤き灰を掴むとそれは夜風に乗って、月夜に溶けていった。