日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
『侵略っ侵略っ侵略!侵略っ、侵略っ、侵略!....キュルルンハート』
「「「ウェイっ!!!」」」
収容人数5000人、新生教団管理のアリーナは本格的な夏の暑さを先取りしていた。
『地球の皆さん、降伏しなさーい!!』
「「「イエぇぇいー!!」」」
ステージ上では緑トカゲっぽい感じの衣装を着た快活そうなスポーティな女、ギリシャ神話とかでいそうな金髪ロングで青い瞳をした女、そいてグレイ星人のようなメイクファッションをした女が歌って踊って乱舞していた。
はっぴやはちまきを着て、セルライト棒を振り回している幅広い年代のフアン達の中、見知った女と男が慟哭する。
「あぁずちゃあああん!!がわぁいすぎるぅぅ!!!」
「......っ」
侵略済というハチマキを巻き、ピンク色のはっぴを着ている時雨は泣きながら絶叫しており、言動の方は同じハチマキとピンク色のセルライト棒を降りながら静かに泣いており、感動して、自分の娘の成長を感じて泣いているみたいになっていた。
「.....」
そして、それをステージ下の端っこで見ていた才亮は嘘だろって感じで、見てはいけないものを見てしまったと口を開けて呆気らかんとしていた。
そして、サビの転調を終えたあたりで、またもや珍妙な光景が始まる。
『はぁーーーい!!それではーリアル投げ銭ターいむっ!!!』
「「「いえぇぇぇいい!!」」」
神輿のように会場を一周するようにして、中に浮いた半径数メートルほどの透明なボウルが玉入れ合戦のように3点方式の匂いがする擬似紙幣を投げ入れられる。
「.....嘘だろ」
世俗に離れていたつもりはなかったが、見ない間に日本の変態性は独自の発展をしていた。
ーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月14日 8 : 00 関東庁 即応科棟屋上
スタジアムが丸ごと消し炭になり、公安と共に夜通し情報整理と後片付けをして、彼らへの引き継ぎが終わった朝。
「.....」
即応科屋上にて、弔いが終わった針先の鳥型召喚獣の形見である蒼い羽を手に、ぼんやりと朝日を眺めていた。
『てら?』
「.....」
『ア?....ァ??』
しばらく干渉に浸っていた彼であったが、日光浴をしていたテラツバメにご飯くれる人だっ!と顔を覗かれて、なんやそれぇ?と首を120度くらい曲げてにじり寄ってくる。
「っ...なんでもねぇよ。」
『...てらぁ!』
「いや、さっき朝飯に納豆4パックも食ったろ。お前」
テラツバメのもふぷにの頬袋を撫でると、また飯が食えると思ったテラツバメのアグレッションは強まる。
「ふっ....わぁーったよ。」
彼はそれを諌めながらイッタンモンメンで優しく包んだ蒼い羽を胸ポケットにしまった。
ーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月14日 8 : 55 関東庁 即応科棟 内務室
ーーーードンっ
「....セーフっ、危ない危ない」
即応科棟の内務室のドアが勢いよく開かれると、そこから現れたのは髪型はバッチリとセットされているもののネクタイを半分しか締めていない時雨であった。
「珍しくギリギリでしたね。何かいいことでもあったんですか?」
「えぇー、それはもう。沼娘のライブ映像とドキュメンタリーが最高すぎてもう!....っと、お客さんですか?」
内務室のソファーで、珍しくネクタイを上まで閉めている才亮と蝿みたいなでかいサングラスと帽子をつけた女性、そして黒い帽子を深く被ったラフな格好の男性らと眼が合う。
「彼女も即応科隊員なので、変装はもう大丈夫です。」
「あ、はい...わかりました....っ」
「え....ええぇぇっ?!」
ーーーーカランッ
時雨のピッチが上がるとともに、卵のアクリルケースを拭いていた玄道の掃除用具が地面に落ちる。
「あの、申し遅れました。沼娘のリーダーをやってます。プレアデスこと向井 あんずです。今日は、明後日の一周年記念ライブについて、即応科様にお願いしたく参りました。」
ーーーー皇歴2684年 (西暦2024年) 5月14日 14 : 55 千葉支部
「ーー・・フロント企業へのブールだけでは誤魔化しが効かなくなってきたな」
「ハムからの監視も厳しくなってきている。蛇まがいからプロジェクトを引き受けたのはまずかったのでは?」
「我々の根幹を成すものだ、僥倖にリスクはつきものである。」
真っ白いクッションが敷き詰められた部屋の中で、翼の生えたゆるキャラっぽいぬいぐるみを中央に、白い装束を着たモノたちら数人が胡座をかいて、手元の資料を索引しながら話し合いを重ねる。
「うむ、それに立ち入り時期はこちらが決められるにして、どこの支部を明け渡すかになるが、いかがかな?」
「関東圏を外れればブラフだと気付かれる。拡張工事を行なった所を重点に狙って来るだろうな。」
「....まぁ、それは後に考えるにして、余剰利益と寄付金の余剰はどうする?やはり金融へ向かうか?」
本来の議題とは離れた所で、若いオールバックメガネが本題へと戻す。
「金融へ向けるにしても、社会的に許された事業を中軸にした事業が必要となる。それでは本来の教団の存在意義から離れるな。」
「まず金融業への要件を満たすには、年輪が浅い。厳しいな」
「余剰利益は株式や債券投資で良いのでは?」
「うーむ、それが無難ではあるな。良い案が浮かぶまでそこでブールさせるにして、寄付金だな....」
官僚的な冷え切った議論から、規模的に最も扱いに困っている寄付金の余剰資金を使い方へと議題が移る。
「既に、政府が大衆食堂に公営住宅と社会福祉の面ではやり尽くしているからのぉ...強いてこちらが食い込めたのは社会的な繋がりを補填する支部内を街にする程度で、本殿の補修、拡張も町民で人件費もかかっていない。教えが神道にかよっているために、寄付金は降り積もるばかり」
あくまでこの国ありきで成り立っている組織である点から、髭を蓄えた坊主はその恩恵を悩ましくも思う。
「やはりそちらをなんとかせねば....国税からの資料請求も増え、専門チームまで組成され始めている。留保し続ければ本筋も危うくなる。」
「したら....利益は生まずとも、目立たずに陰ながら影響力を広め高められるものならば、何かないか?」
「芸能か?広告宣伝は直接勧誘も規制されている。金の行き場がこちらだと分かれば解散請求も見えるぞ」
髭坊主が転換した視点で話してみるが、それから連想されたものはリスキーであるとオールバックメガネがそういう。
『僕から提案があるんだけど、鈴木さんの義理息子さんって確か...』
一向に妥当な案が生まれない中、翼の生えたぬいぐるみが口を開き会議は進む。