日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。   作:wakaba1890

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意外な一面。

ーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 7月14日 21 : 50 千葉県 稲毛市 沼娘事務所。

 

「・・では、一旦の前夜祭成功と、明日の一周年記念ライブの成功を予祝して、かんぱーい!」

 

「「「かんぱーい!!」」」

 

撤収作業が完了し、明日もライブが控えている事ながら沼娘の事務所雑居ビルにてゆるい食事会が開かれた。

 

「うぅ...私、明日の記念ライブっ、死ねるかもしれません....ヒック...」

 

「えぇ!?いや、大丈夫?死なないでぇー時雨ちゃん」

 

「はいぃぃ、生きますぅ!!」

 

「....あれぇ...お酒入ってないはずなんですが」

 

最推しであるリーダーのあんずによしよしされた時雨はさらにテンションをおかしくしており、汐留はノンアルであるはずの彼女の飲み物を飲んで確かめていた。

 

そして、汐留にたしなめられている所で、手が空いたあんずが乾杯グラスを置いてぼんやりと外の景色を見ている才亮の方へと向かう。

 

「....お口に合いませんでしたか?」

 

「ん...あー...こいつの制約でな」

 

明日も控えているため控えめなケータリングになっていたため、その辺の心配をしていたが、警戒癖を右腕のイッタンモンメンのせいにした。

 

「あっ...すみません。不躾を....」

 

「それより、ああいうのは初めてだったが、アイドルっていうのは素晴らしいものだとわかった。」

 

「!...それは、本当に...何よりです。けど、できればこういう機会じゃなければですね。」

気遣いが加速する前に、今日のライブの感想を率直に述べると彼女はアイドル冥利に尽きる彼の感想に嬉しさを滲ませるが、明日の不安が後ろ髪を引いてぎこちない笑顔が出てしまう。

 

「...あぁ....素晴らしい。素晴らしい。」

 

「え?あれ...もしもーし、だ、大丈夫ですか?!」

 

どう返そうか視線を流すと、同じくライブの感想を語っていた玄道目に入り、スポーティなトカゲ衣装を着ていた女を前にして涙を流しながら素晴らしいロボットになっていた。

 

「玄道さん。奥さんから電話です。」

 

「...っ!?...し、失礼する。」

 

ーーーーバタンっ

 

見かねた汐留はこちらから奥さんにかけた電話を渡すと、正気に戻って廊下へと出て行った。

 

「....」

 

「...ふふっ、才亮さんのグループは面白い人ばかりですね。」

 

まぁ、たまにはこういうのもいいかと、才亮は普段無理を通して貢献している玄道を見送ると、あんずが笑みをこぼす。

 

「あぁ....本当にな」

 

ーーーーー『hahahaha...ったく、相変わらず上手いな。』

 

これまでの戦友たちの顔が思い浮かび、今頃、田舎の沿岸部でまったりしているであろう最も玄道に近いその人を懐かしく思う。

 

「!...あんずの方はどうなんだ?」

 

「はい。私のグループも面白い人ばかりです。」

 

少し警戒の解けた顔をじっと見られているのに気づいた彼は彼女へと投げかけると、しみじみと周りの人の良さを噛み締めていた。

 

「本当...このまま、ずっと...」

 

そして、考えずにいられない明日への不安にこれからの活動が最悪終わってしまう可能性を想像し、顔が暗くなっていく。

 

「当日はライブ中も半径数メートル内に汐留が付いているから、当日は安心していい。俺も上からずっと見張ってる。それに熱狂的なファンがあんずさん達を見護ってるしな。」

 

「!...はい。」

 

ティラミスをデカ器でよそって大口で頬に詰めている時雨。そして彼女の頬もにゅっといじっている汐留、そして、奥さんに何を言われたのか肩を落として戻ってきた玄道らを指差すと、あんずの明るさは確かに戻った。

 

「っ!...頼もしいです!」

「汐留さんーっ!!」

 

「っと...はい。任せてください。こんな可愛い子達は、誰にも傷つけさせません。」

 

「汐留サマー!」

「メッっどい....」

 

彼の会話が聞こえていた他メンバーは、目を若干ハートにさせながらメロさMAXの汐留に抱きついていた。

 

そうして、メロい空気で事務所内が満たされている中、外の空気を吸いに屋上へと向かった。

 

ーーーギィ

 

丘の上にあるのもあってか、そこは海岸線に見える船舶の光がネオンのようになって海面反射している様子が一望できる場所だった。

 

「...あ、どうも」

 

そして、そこにはその景色をアテに缶コーヒーとタバコを喫食していたマネージャーがいた。

 

「...失礼...スゥゥ」

 

ポケットからタバコを取り出し、火をつけながら喫煙スペースへと進み、灰を落としながら彼の隣で立ち止まって深く煙を吸う。

 

「!...わかば吸ってるんですね。重くないんですか?」

 

「ん、あぁ....これ以外吸った気にならなくてな」

 

ジジィしか吸ってないであろうその銘柄に、マネージャーは思わず聞くが彼はそういえばとそう答える。

 

「...ぁ、召喚獣の..」

 

タバコを握る右手にがんじがら目にされた白い布が月の灯りに照らされ、彼は大体を察する。

 

「ん...気になるか?」

 

「!...いえ、とんでもない...」

 

タバコを咥えて、右手をフリーにして彼へと手の甲を見せるが、大人特有の距離感を保った。

 

そして、才亮は今一度深く煙を吸ってから全権を持っている彼へと聞けなかったことを聞く。

 

「それよか...記念ライブは中止しないのか?今日ので十分皆を楽しませられたと思うが」

 

「!...彼女たちとファンの安全を考えたら、才亮さんのいう通りです。」

 

「.....(資金繰りは順調でメジャーデビューすら必要がない。配信業や自身のチャンネルでの広告収益も鰻登り、自己資本で回って沼娘という経済圏を独自に確立してる故に、上場する必要性もない。なんでそんな綱渡りを....いや、やはりそもそも...)」

 

だったらなぜと聞きそうになるが、その前になぜ中止しないのか、そして彼女らの異常な人気について考えを巡らせる。

 

「才亮さん。あの子たちの人気の高さをちょっと疑ってるでしょ?」

 

「.....」

 

クリティカルに言い当てられた彼は、閉心にすっと警戒を高める刀を抜く。

 

「活動歴の浅さからも疑われても仕方ない。けど、沼娘は警察に怒られながら始まった路上ライブを原点に、十人でいっぱいになるようなライブハウス、そして、路上ライブやチラシ配り、SNSでの活動で少しづつファンを増やしていって、今ではキャパ5000人を満杯にできるようになった。それは短くとも最善を尽くして、目の前のフアンを楽しませようと人事を尽くした結果だと思っている。....うぅ...くぅ...感慨深いってもんじゃないよ....っ」

 

決壊したこれまでの苦労と思いからマネージャーは息切れ切れにして、目元を押さえる。

 

「....多くの人の生きる糧になっているのか」

 

なるべく彼を見ないようにして、才亮は水平線へと続く海面に映る星々から日々の生活を精一杯生きて社会を支えて踏ん張っているフアン達へと思いを馳せる。

 

「あぁ、僕もその一人だよ。そう、あれは....僕が美容外科の医者に婚約者を奪われて、憔悴してた時...」

 

ーーーー皇歴2683年 (西暦2023年) 12月24日 23 : 55 新宿駅東口近辺。

 

ーーーーうーん、召喚獣もジメッててパッとしないし華がないよねー。ごめんね敏朗さん。ほら行こっ風羽さん!

ーーーーん、終わった?ヘリポートまで一瞬だから、捕まっててね。

 

婚約して一年が経った頃、仕事も軌道に乗って部下も育ち自走し始めた所で、彼女との結婚式へ向かうのを伝えたかったあの日、待ち合わせにいたのは大型の鷹のような鳥型召喚獣に乗ったイケメン医者が現れて颯爽と彼女を連れ去っていった。

 

「....っ....ぁ...」

 

僕はしばらく放心状態で、待ち合わせ場所のベンチでうなだれていた。

 

「わぁー...雪じゃん」

「ホワイトクリスマスだね。」

「冷たっ...早く家帰ろー」

「こたつでぬくりたいぃ」

 

雪が降り始めて、街ゆくカップル達は色めき立つ。

 

「....はぁ...っ」

 

これ以上ここにいたら変な気を起こすかもしれないと、左手に映る召喚印をさすって用意していた花束を近くのゴミ箱へと捨てた。

 

「!....あ、あのっ、これ....いらないんですか?」

 

千鳥足で駅へと向かう途中、サンタの格好をした若い女性から声をかけられゴミ箱に捨てたはずの花束を差し出される。

 

「...いや、それはもう良いんだ。好きにしてくれ」

 

花屋の人から一つ一つの花言葉を教えられてそれを交えた正式な結婚の文言を考えていたが、もうすでに絶望の底に沈んでしまって思い出せない。

 

「....ならっ、これ...返す形になりますが...スカビオサの花で、あっあんまり意味が良くなかったような...」

 

綺麗な形を保っていた花を取り出して、彼へと渡そうとするがその花言葉は抱え込んでいそうな彼には相応しくないと、引っ込めようとする。

 

「....再出発...っ」

 

全てを失ったという花言葉と同時に、新たな場所へと再出発するという意味もあるその花言葉を呟くと、逆光でよく見えていなかった彼女の蒼い瞳へと導かれる。

 

「!...良ければ今度ライブするので、来てください。ドリンク付きなので実質500円です!」

 

「....ぁ」

 

なんとか前向きな意味もあったと一安心した彼女は片手に持っていたチラシを渡し、金色の髪は月夜に照らされ、そこから覗く太陽のような笑顔に僕は命を救われた。

 

「・・そこから、将来資金と親族からの援助で事務所ごとアイドルグループを買収して、経営から運営体質まで一から組み直し、何よりフアンたちのお陰でここまで来れた。フアンたちのためにも、何があっても彼女たちのアイドル活動を止めてはならない。」

 

「....っ」

 

彼の様(さま)に自分にも通じている部分があると、彼はアイドル活動へのイメージを改めた。

 

「....まぁ、即応科さんにはそのための負担をかけ過ぎてしまってるから、とまで偉そうに言えないけどね...ははは...」

 

「民を護り、民を生かし、民に尽くす。我々も鈴木さんも同じ道で繋がってる。だから、護るのは当然だ。」

 

夜空を照らす星々と星空が映る海面を背に、彼はまっすぐにマネージャーに向かって至誠たる言葉を紡ぐ。

 

「っ....ははは、この歳になると涙腺がね...」

 

「あぁ....嫌になるなーーー

 

彼の背中をさすりながら、才亮は夜空に洗浄されてしまう主流煙を吐く。

 

ーーーー本当に。」

 

 

 

 

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