ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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100 〈幼馴染(?)同盟〉

 100話も続いたのは皆様読んでくださったおかげです。

 本当に感謝しています。BIG LOVEです。

 返信は出来ていませんがいつも感想楽しんで読んでいます。

 中には「全部バレて〜ら」と思うような感想もあり、みんな鋭いなぁと思いながら書いてます。

 100話に合わせて74.5話を出そうと思ったんですが、残念ながら全く筆が進まず。出せたら活動報告やXでお知らせしますが、気長に待っていただけると幸いです。

 

 これからもドマゾをよろしくお願いします。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 時は遡る。

 

 フェンナがセラフィーヌと共に診察している午前の時間。

 

【星天】ホーム、アリアの部屋にマリアンヌは足を運んでいた。

 

「こうやって、面と向かって話すのは初めてですね」

「そだね。いつもは師匠に任せちゃうし……あ、これどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 差し出されたミルクティーを飲むマリアンヌ。

 

 喉を潤してから、彼女は口を開いた。

 

「……本日訪れたのは、他でもないフィンさんについてです」

「……へえ、フィンの?」

 

 室内の空気が張り詰める。

 

 アリアの発する圧が、幾万倍にも膨れ上がった。

 

【聖剣】を手にした【勇者】としての格に、幼少期より優れた人物より師事を受け世界を旅して経験を積み重ねた彼女は最早世界最強の一人として数えられている。接近戦・遠距離戦・ギミック仕込みのモンスター戦までなんでもござれ。

 マリアンヌは聖女の中でも破壊力に優れているが、アリアとの相性は最悪と言っていい。

 もしもアリアがこの場でマリアンヌを殺すつもりならば、瞬きの刹那で首が刎ね飛ばされているだろう。

 

「フィンの、なにかな?」

 

 目の笑っていない笑顔で問われたマリアンヌは、特に動揺した様子も見せずに平然と答える。

 

「結論から申しますが、フィンさんとの関係を深めるにあたり協力しませんか?」

「協力? あはは、変なこと言うね。後から入ってきた癖にさぁ……」

「私からすれば、アリアさんこそ後から入って来た女ですよ。五年間共に過ごして、我々は金等級冒険者パーティー【払暁】になりました。なんでもない少年だったフィンさんと、なんでもない神官だった私。元々強かった二人を除いて、最も同じ立場だったのは私ですから」

「…………」

 

 マリアンヌの反論にアリアは笑みを消して無表情になった。

 

 それは彼女にとって触れてほしくない部分だからだ。

 

 アリアからすれば、フィンは自分を追いかけてきてくれるスパダリ幼馴染。

 

 自分が特別だという自覚があり、その特別でいてもいいんだと、特別なままでも置いていかないと宣言し強くなり続けてくれたフィンへの感情は筆舌にし難い。好きと表現すれば陳腐すぎて、愛だと言えば安っぽい。

 アリアにとってのフィンとは、彼女の全てでもあるのだ。

 世界のために戦う理由の半分はフィンが担っているのだから、語るまでもない。

 

 それでも、フィンとアリアは決して同じではない。

 

 アリアにとってフィンが特別であっても、フィンはアリアほど特別ではないのだ。

 

「かといって、私が最も有利かと言われれば、否です」

「……ほぇ?」

「考えても見てください。フィンさんの女性の好みを」

 

 アリアはほわわんと頭の中にフィンの好みを思い浮かべる。

 

 王都に帰還してから何度かデートに誘っているものの、未だベッドへ連れ込むことには成功していない。性行に導きたいのは山々だが、フィン側のガードが堅いのと、アリアが初心の生娘なので特になにも考えていないボディタッチは出来ても意図的な誘導が出来ていないことが原因だった。

 

「フィンの好み……私?」

「思い上がらないでください」

「ひどっ! なんかマリアンヌちゃん口悪くない?」

「うふふ、私、聖女ですので」

「うわぁ……」

 

 先ほどまでの怒気をすっかり引っ込めたアリアは、口を尖らせて不満気に訊ねる。

 

「それじゃあフィンの好みってなんなのさ」

「……大人です」

「は?」

「ですから、大人の女性です」

 

 苦々しくつぶやかれた言葉。

 呆然とするアリアを放ってマリアンヌは淡々と言葉を紡ぐ。

 

「フィンさんは恐らくですが、お姉さん的な人が好みでしょう」

「お、お姉さん……?」

「──なぜそう考えたのか。消去法ですが、まず、私はない。一度も女として見られた記憶がありません」

「急にとんでもないこと言い出すね……」

「そして次に、アストレア。あの人も女として見られてはいないでしょう」

「もしかしてすごい人のこと嫌いだったりする?」

「客観的な事実です。私がどう思っているのかではありません」

「本当かなぁ……」

 

 アリアのジト目を気にしないように咳払いしつつ、根拠を述べていく。

 

「アリーシャさんも違うでしょう。年齢は我々の何倍も上ですが、お姉さんらしくはない」

「ああ、それは確かに……ちょっと待って。じゃあ、私は?」

「当然対象外です。当たり前です」

「……ま、まあ、所詮マリアンヌちゃんの主観だもんね。ふふん。見よ、このボディを! 出るところは出て引っ込むところは引っ込んでる! フィンにおっぱい押し付けた時もあるくらいだよ? マリアンヌちゃんと一緒にされちゃ困るなぁ。うっふ〜ん♡ ね、どうどう? できるかな、マリアンヌちゃんに」

「もぐぞ」

「ウワァっ! ブラック聖女だ!」

 

 本気の目で睨まれたアリアは一瞬で胸を抱きながら座る。

 自称悩殺ポーズを見せられたマリアンヌは青筋を浮かべているが、その程度で我を失ったりはしない。

 

「ふんっ! なにが女らしいボディですか! うちではカルラが一緒にお風呂に入ってるのに全く関係が進展してないんですよ!」

「……あ、あばばばっ!! それやめて! 脳が壊れるっ!!」

「なんなら貴族令嬢に告白された上で【払暁】があるからお断りだ、なんて言ってるんですよ!? そんな【払暁】一番のエロボディで悩殺できてないのに貴女に勝ち目なんかあるわけないでしょうがっ!!」

「あ、あぎゃああああっ!!」

 

 ビターン!!

【勇者】撃沈。

 調子に乗って煽ろうとした結果、事実を大量に並べられ好きな男が自分より魅力的な女と一緒に風呂に入っている事実を再認識させられ、脳が破壊されて死んだ。

 

 泡を吹いて倒れたアリアのことを全く心配する様子もないまま話は進む。

 

「ふーっ、ふーっ……! いいですかアリアさん。現状、勝ち目があるのはカルラやそちらの【魔弓の射手】、そしてヴァシリさんです。我々は一歩どころか数十歩離されていると思った方がよろしい立場にある」

「ぶくぶく……」

「だからこそ、我々は手を取り合える。そう思ったのです」

 

 方や、幼馴染として五年間共に過ごした女。

 方や、同じ立場で手と手を取り合って這い上がってきた女。

 そして今や他の女に埋もれつつある自覚がある、酸いも甘いも味わい尽くした女達だ。

 

「いいですか? カルラやヴァシリさんに勝つためには、我々単独では不可能です。まずは、それを認めるべきです」

「あ、あ、あ、あ、……し、師匠……ねと……寝取られた……師匠に……」

「(まず寝てませんよね)……そうさせないために、今、手を取り合いましょう。我々の利害は一致している。違いますか?」

「……………………」

 

 泡を吹いていたアリアが立ち上がり、自分で淹れてきたミルクティーをグビッと飲んだ。

 

「……うん、その通り。私達は不利かもしれない。フィンの腕とか背中とかに飛びついたりしてるけど、全然えっちなボディタッチされないし」

「身体付き、年齢から来る余裕で私たちに勝ち目はありません。ならばどうするか? フィンさんの好みを捻じ曲げる──それ以外に手段はない」

 

 マリアンヌは鞄からいくつかの紙を取り出して、机に並べた。

 

「私達には同い年という条件があります。貴女が最初の幼馴染ならば、私は第二の幼馴染とも言える。この共通点を利用し、フィンさんの性癖を幼馴染へと矯正する……! こうすることで、私達二人だけが勝者になれる!」

「お、おおお……! で、でも、私はフィンを他の女と共有したくないかも……」

「私とて、本音を言えば私だけを愛してほしい。他人の鞘に納めないでほしい。そう思う気持ちはありますが──そんなものを優先して取り逃がすなんて、愚の骨頂……!!」

「う、……それはまあ、確かに……」

「非常に、ひじょ〜に、誠心苦しいですが! アリアさんは幼馴染繋がりでセーフ! そう思うことにしました!」

 

 聖女による堂々としたハーレム許容宣言。

 もしもこの発言をエクトル枢機卿が聞けばありとあらゆる手段で隠蔽を目論むだろう。聖女相手に言って聞かせるなど出来ないが、だからと言ってマリアンヌの『清楚なイメージ』を崩すわけにはいかないのだ。

 

 なお、冒険者や世間ではハーレムパーティー扱いされているが、そのヘイトは全てフィンに向いているので枢機卿的にはそこまで問題ではなかったりする。

 

「私達一人では、フィンさんを振り向かせることはできないかもしれない。でも、二人なら……?」

「……ぐ、ぐぬぬ……」

「どうしますか? 私は覚悟を示しました。あとは、アリアさん次第です」

 

 アリアの心はひどく荒れている。

 

 マリアンヌの指摘事項は正しい。

 何度もデートに誘っているがフィンとの関係は進まないし、強引にしようと思った時もやんわりと拒否されてショックを受けたのは忘れられない。

 

 それに加えて、妙に距離感の近い女が多いこともアリアを焦らせる。

 

 王都に帰還して以降、フィンを狙っている女の多さには驚愕せざるを得ない。

 

 パーティーメンバーは勿論、女冒険者の間でも密かに人気でギルド員からも熱い視線を受けていることがしばしば。直接手を出したりすることはないが、油断すれば貰ってやるぞと言わんばかりの囲いを受けている。

 

 気がついていないのは本人だけだ。

 

 このまま、フィンが知らない女と結ばれてしまったら……

 

 いや、それどころか、周りの女と結ばれたらどうしよう。

 

 幼馴染で、一緒に育った過去があるのに、それを押し除けて別の女に奪われたらそれは、自分が女として魅力がないことに他ならないのではないか?

 

(うっ、ううっ、ほげぇっ!! し、師匠……やっぱり師匠? 師匠に寝取られる? 負ける!?)

 

 アリアが最も警戒しているのは、己が師であるヴァシリ・ヴァルバロッサだ。

 

 身体は勿論のこと顔もよく、フィンのことはよく知っている。

 風呂に一緒に入って身体を洗ったり、胃袋を掴んでいたり、何よりお姉さん的立場(※母のようなもの)でもある。

 

(負ける……そうだ、このままじゃ、負けるんだ)

 

 冷静に考えて。

 アリアがフィンと結ばれる可能性は、限りなく低い。

 同居を断られたこと、デートで進展しないこと、同じパーティーではないこと……考えれば考えるほど理由が浮き彫りになる。

 

 そしてそれは、マリアンヌも同様だ。

 

(負けたくない。負けるくらいなら、誰かに取られるくらいなら、いっそ……)

 

 フィンの嫌がることはしたくない。

 だから、フィンが嫌がらない範囲で、マリアンヌと協力する。男を共有するなど吐き気がする行為だが、それでも、負けるくらいなら、奪われるくらいならば。

 

 マリアンヌも同じだ。

 彼女もまた、同じ葛藤を抱え、一足先に飲み込んだ。

 

 その理由にはアリアと違い『恐らく知らない女と出来ている』と言う【払暁】内での疑惑があったからなのだが、これは彼女も知る由もないことだ。

 

「……わかった。私も一緒に協力させて、マリアンヌちゃん」

「! ……よろしいのですね? 抜け駆けは許しません。私が勝っても、貴女が勝っても、必ず共有する。裏切りは許さない。……本当に、よいのですね?」

「うん。だって、負けたくないもん」

 

 マイナスではないプラスの決意。

 

 負けたくない。

 勝つために足掻く。

 五年前、フィンと再会するためなのだと奮起した、あの日と同じ決意。

 

「フィンと会うために頑張った。会えた。じゃあ後は、幼馴染らしく結婚するだけ。そうだよね?」

 

 ギラリと瞳を燃え上がらせる。

 男の奪い合いをするなんて醜い行為だと思っていたが、そうしなければ負けると言うならアリアは容赦しない。【勇者】らしく、己が使命を叶えるために足掻けばいいのだ。

 

「協力しよう、マリアンヌちゃん。フィンに選ばれるために、フィンに見てもらうために」

「……ありがとうございます。これで私にも勝ちの目が見えた」

「ふふっ。〈幼馴染同盟〉だね」

「〈幼馴染同盟〉……なるほど、いい名前です」

 

 二人は握手を交わす。

 

 ここに、〈幼馴染同盟〉が結ばれた。

 

 ────全てはフィンと結婚するために。

 

「それでは、まずは我々の親睦を深めるためにも……ショッピングは如何ですか?」

「いいね! 香水とかオススメあるよ?」

「香水……私も、いい店があります。教団運営で、聖女割が効くんですよ」

「聖女って割引効くんだ……」

「その分たくさん救ってますから罰は当たりません」

 

 そうして二人は街に繰り出した。

 

 その先で、渦中の人物に出会うとは知らずに。

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