ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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103 【特務騎士】フェンナ・リンデ⑤

「では確認ですが。まず、この胃腸用ポーションは毎日一本朝に飲んでください。胃腸の働きを促進して胃液から守る膜を付ける効果があります。切開などの外科手術をしていないので具体的な症状は不明ですが、腸の方も閉塞や過敏すぎる際に働きを抑える効果があります。そして以前のような出血を伴う症状が出た際は迷わずこちら、上級ポーションを飲んですぐに神殿に来てください。私の名前を使って構いませんので遠慮はせずに。万が一調べられても健康診断だと診察内容を改竄しておきますから心配なさらなくても大丈夫です」

「なにからなんまで世話になる……」

 

 いや、本当に頭が上がらない。

 

 ポーションを見繕って貰う所から名前の使用許可まで至れり尽くせりだ。

 

 今は彼女の名前を使ってポーション屋にあった応接室を借り、そこで解説を受けている。

 

 ここまでしてもらって本当に大丈夫か?

 実は美人局だったりしないのか?

 し、しかし……フェンナはセラさんの護衛。

 セラさんがそのようなことをするだろうか?

 ──否、断じて否。

 彼女が俺を嵌めようとするか?

 ありえないな。

 ま、ハメられたいとは思いますが笑

 

 このクソちんぽ野郎!!!!!!!!!!

 

 セラさんをハメるなんて……そんなことしていいわけねえだろ!!!

 

 あの人は女神であり神であり天使であり聖女であり、俺の欲望を満たし続けてくれた素晴らしい女性なんだ!

 

 そんな人がァッ!!

 俺とハメハメするわけがねぇっ!!

 

『本当にそうか?』

 

 なっ!!?

 

 き、貴様は……闇の俺!?

 

『したいんじゃないか? スケベを……』

 

 そりゃしたいが……

 

『したいのか……』

 

 したいけど、しない。

 これこそが人を人たらしめる理性であり、俺がこの世で最も尊いと思っているものだ。俺にだって理性はある。頭の中ではおかしい様子であっても、決して現実には反映されていないだろう。

 アリシアさんはもうほら、事故みたいなものだから。

 普通に考えて他人の感情がわかる方がヤバくない?

 世界の摂理に反してるだろ。

 

『そうかな……そうかも……』

 

 所詮お前は闇の俺。

 俺とお前が相反することなどありえないのだ。

 わかったらとっとと失せな! 俺は俺の闇だって受け入れてやる。闇と光のどちらも持ち合わせているが、それでも光に傾くのが人間だろうがよ。

 

『フィンさん……』

 

 闇のマリアンヌ……

 何度も言ってるじゃないか。

 俺は、君のことを受け入れるって。どこにも行かないでくれって。今更疑うのか? 俺の愛を。

 

『まあ……結構受け入れ難い種類の愛なので……』

 

 どこが?

 三年間ずっと俺のことを理解してくれている脳内闇人格をそれでも愛そう……この愛の何がおかしいんだ……!?

 

『全部です』

 

「それと、急に身体が痙攣したのは正直とても心配なので今すぐにでも診察に来て欲しいのですが」

「あー……あれはそう、ちょっと身体が驚いただけだから問題ない。心配いらないさ」

「そうはいきません。いいですか、素人の『まあこれくらいはいいか』と言う考えがどれだけ重大な病に繋がっているか──」

 

 あ、ごめんなさいごめんなさい無知ですみません!

 

 ヒイイッ眈々と叱られてる!

 大人のお姉さんに叱られてる!

 こ、これはこれでっ最高だ! アリシアさんみたいに俺のことを理解してる訳でもなく、最近あんまりなかったシンプルな説教! おほおっそうですぅ! 俺はダメな男なんですぅ! ああんっ縛ってぇ〜! 叩いてぇ〜! めちゃくちゃにしてえええっ!!

 

「──フィン殿の立場は非常に難しいものですから、私が一般論を言ったところでどうしようもないとわかっています。それでも、万が一があります。何かあってからでは遅いんです……」

「フェンナ……」

 

 そう語るフェンナの瞳には、悲痛な色が浮かんでいた。

 

 ……きっと、彼女の人生にも色んな出来事があったんだろう。

 

 語りたくもない何かが。

 俺の人生でも、何度か分岐点があった。

 例えば、アリアに轢かれた時。

 俺があの時アリアに畏れを抱き距離をとっていれば、人生は大きく変わっていた。

 例えば、師匠の修行を受けている時。

 偶然俺がマゾだっただけで、全身の骨という骨を折られ続けて正気を保てていたのは奇跡と言っても過言じゃない。そこらのプロが行う拷問より酷い所業だ。俺がマゾだったから耐えられたが、マゾじゃなかったら耐えられなかっただろう。

 

 俺が今こうしてここにいるのは偶然の産物でしかない。

 

「……忠告、感謝する。ありがとう、フェンナ」

「……未熟な同業者からの、余計な一言かもしれませんよ」

「まさか。この数時間で君の理解は少し進んだ。──俺は君を信じるよ、フェンナ」

 

 そう告げると、彼女は目を見開き、うっと呻いた。

 

「ん、あー、その……フィン殿。誰にでも言っているのでしょうが、あまりその、信じるとか、面と向かって言うべきではありません」

「なぜだ? 言葉にしないと伝わらないだろう」

「そ、それはそうなんですが……とにかく、いけません。大切な人にだけ言うべきです」

「なら問題ないな。フェンナはもう赤の他人じゃないし」

「な、な、な……んんっ!! いけませんよ! 神官を惑わして!」

 

 なんのこと?

 信じてると言うことがなぜ惑わすという結果に繋がるんだ……?

 

「それに……私のような汚れた女には、その信頼は、似合いません。どうか、セラフィーヌ様やマリアンヌ様にお届けください」

「少なくとも、俺の前にいる女は汚れてなんていないみたいだが」

「…………私は神官である前に騎士です。手を汚したこともあれば、汚されたこともある。あなたの周りにいる女性とは、違うから……」

 

 ……????

 

 闇マリ、闇の聖女的にはどういう解釈する?

 

『ふむ……ニュアンスとしては人を殺したことがあり、女として汚されたことがある。そういう意味でしょう。具体的に言えばハニートラップを仕掛けたか、陵辱された過去などがあるのでは?』

 

 ハニートラップか……

 でもセラさんとマリアンヌは同じ派閥だよな。

 枢機卿とやらが一番上にいるっぽいし、わざわざフェンナを使い潰してでも俺にハニトラ仕掛けてくるか?

 

 薄い気がする。

 それに、フェンナからはそういう悪意は感じない。

 長年悪意に晒されてきたから俺は敏感なんだ。

 あ、セラさんに開発されたお尻と同じくね笑

 

『今ここでフィンさんのお尻を刺激したら、どうなると思います?』

 

 ヒイいいぃぃっ!!?

 

 な、なんてことを思いつくんだ……! あ、悪魔! 闇の聖女!!

 

 そんなことをされたら、俺は女性と話している最中に突然オホ声で喘ぎながらトコロテンを撒き散らす激キモ生命体になってしまう!!

 闇のマリアンヌっ!

 頼むっなんでもするから今はやめてくれっ!

 

『いや、されたらされたで気持ちいいだろうなと思ってる人にそんなこと言われても……』

 

 あ、うん、ですよね。

 

『嫌だと本心で思っている相手にするから良いのであって、やって欲しいと思ってる人にするのは別に……』

 

 えっ、じゃあいつも俺を罵倒したりするのは……。

 

『あ、あれは…………別に、楽しくなんかないですよ。嫌々やってます。当たり前じゃないですか。なんでそんなことを楽しむんですか? バカらしい……』

 

 うっ……ひ、ヒック、ご、ごめんマリアンヌ……

 俺は、闇のマリアンヌが苦しんでいたのに一人だけ喜んで……本当にごめん……。

 

 もう俺、闇のマリアンヌに嫌な思いさせないから。

 誓うよ。もう二度と、闇のマリアンヌに罵ってくれとか、ダル絡みしない。

 

『あっ……え、ええっと、いや、嫌って言うのは言葉の綾で……本当に嫌なわけじゃないんですよ。その、確かに最初は嫌でしたけど、やってる内になんだか楽しいとも思えるようになって、そうじゃなかったらさっさと宿主変えてますし……使徒だって、また選定し直してますし……フィ、フィンさんのことを嫌いだとは思ってませんから。ね?』

 

 や、闇マリぃ……!

 

 やっぱり闇マリは俺の魂の妻なんだ。

 

 最近アリシアさんとカルラに肉体が浮気しててごめんな。

 

 でも、安心して欲しい。

 やっぱり俺の魂の妻は闇のマリアンヌなんだ。

 

『…………浮気者』

 

 あひいいぃぃっ!!!

 

 んほおおおおおぉおおおおぉぉっ!!!!!??!

 

 トコロテン出ちゃうううううっ!!!??!?

 出るでるっなんか出ちゃうううううぅっっ!!!?!?

 

「お゛ぉ゛っ!」

「!!!!?!?!?!」

「……すまん、なんでもない。少し、刺激がな」

「そ、そうですか……」

「……フェンナ。俺は、君の過去を何も知らない。優しくて、綺麗で、気高い騎士であり、他人を慈しむ神官であるフェンナしか」

 

 そう言いながら、彼女の手をそっと握る。

 

 その手は少し、震えていた。

 

「あ…………」

「……俺ばかりが救われるのもおかしな話だ。俺に相談することで、フェンナの心の重しが少しでも取れるのなら、そうしてやりたい。どうだ?」

 

 じっとフェンナの瞳を見つめる。

 

 彼女の瞳は揺れ動く。

 あー、とか、え、とか、そんなことを言いながらぐるぐる回った瞳は、やがて諦めたように真っ直ぐに見返してくる。

 

「…………でも、私は……」

「…………俺は冒険者だぞ? そこらの男より、度量は深いつもりなんだがな」

「う……で、でも……それでも、こんな、穢れた女なんて……」

「……金等級冒険者としてソロで受けた依頼には、救援依頼なんてものも多くある。心を壊してしまった女性も、見たことがあるんだ。男の俺を見ただけで半狂乱になって、おかしくなってしまう人もいた。だから、フェンナがどうしても言いたくないのなら無理強いはしない。それでも、覚えておいて欲しいんだ。フェンナがどれだけ己を卑下しても、受け入れる男はいるんだってことを」

「…………フィン殿……」

 

 お尻の穴がじんじんしている。

 

「…………ずるい……」

「……えっ」

「そんな、そんなこと、言われたら……縋りたくなってしまう……」

 

 目に涙を浮かべたフェンナ。

 

 彼女はそのままギュッと俺の手を握り返す。

 

 手の震えは収まっていない。

 

「…………いいんですか……? 私、思い込みが激しくて、トラウマもあるし、めんどくさいって左遷されてきたんですよ……?」

「それがなんだ。フェンナは、俺のことを本気で心配してくれた。ここまでしてくれたんだ。俺だって何かしてやりたいんだよ」

「っ、そ、そんなのっ、そんなこと、言われたら……っ」

 

 彼女は口を固く結んだ。

 

 何かを堪えるように俯いてしまったフェンナの手は離れない。

 

「…………聞いて、くれますか? 穢れた私の、話を……」

「ああ。聞いた上で言ってやる。フェンナは穢れてなんかいないって。もし本当にそうだとしても、こう言ってやるさ。『それでも俺は君がいい』ってな」

「う、うぅ……うぅ〜〜……!!」

 

 背中に手を回し、ポンポンと軽く叩いてから撫でる。

 

 ギュッと彼女の頭を抱きしめれば、胸元を彼女が掴み返してきた。

 

 ────闇のマリアンヌ……

 

 一つ、一つだけ叶えてほしい願いがあるんだ……

 

 どうか、聞いてくれないだろうか?

 

『なんですか、女の敵』

 

 この、トコロテン……

 その、えっとですね……

 消してくれませんか……?

 

『……私に、お掃除しろと? こんな汚らしいものを?』

 

 はいィッ!!

 そうです闇のマリアンヌ!

 俺の不潔で栄養満点のトコロテンお掃除してほしいのぉっ!

 そうじゃないと匂いでバレるからぁ! フェンナが正気になった後やばいからぁっ!!

 

『…………このままだと…………チッ、し、仕方ありませんね……んっ……』

 

 エッッッッッッッ!!!!?!??

 

 エエェっ!!!?!?

 

 エッエッ!!?

 

 オォッ!!!?!?

 

『人語で喋りなさい、それと黙りなさい……!』

 

 うほおおおおっ!!?

 闇マリ、闇マリがついに魂だけじゃなく肉体の妻に!?

 このぬるりとした感触は間違いなくっ!! どういうこと!? 何が起きてるの!?

 

『いいからその尖兵を慰めてなさい! このドマゾっ!』

 

 はいっわかりました!

 フィン・ドマゾ・デビュラ、フェンナを慰めます!

 

 背中を摩るたび、フェンナは肩を震わせる。

 

 まだ何にも聞いてないんだが、よっぽど酷い目にあったんだろうな。

 

 そうじゃなきゃ俺が受け入れるって宣言しただけでこんな風になるわけもない。

 

 なあに、俺は寝取られでも興奮できる男だ。

 安心してくれ、フェンナ。

 俺は決して君を穢らわしいなんて言ったりしないよ。

 

 世界で一番穢らわしいのはどう考えても俺だから……。

 

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