ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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112 アリーシャ、無惨

 一度帰宅するように言いつけられたアリーシャは、下手に首を突っ込んで姉の逆鱗を踏み締め死にたくはなかったので大人しく【星天】ホームの自室でのんびり休憩していた。

 

 まだ昼ということもあり自由行動しても特に問題はなかったが、姉の一件がどうなるか気になる。流石のアストレアも暴れて王都を崩壊させるようなことはしないだろう……多分……きっと……おそらく。

 

 帝王学をふんわりとしか学んでいないアリーシャでも全体の利益を考えられるのだから、長年人間社会に溶け込んでいるアストレアがわからないはずがない。

 

(問題は、姉さんが社会に縛られない埒外の存在だってことだよね〜……)

 

 暴れた場合どうなるか、想像もつかない。

 王都にいる特級戦力が抑えにかかったとして、どうなる?

 間違いなく王都は滅び、人間社会の中央部分が空白になる。そこに空き巣を仕掛けた国が空白地帯であり個人同士の戦争が行われている戦地で虐殺され戦力を低下させ、更にその弱った国を対象に他国が侵略を始め──瞬く間に大陸全土を巻き込む大戦争に発展しかねない。

 

 冒険者ギルドや列強国が保有する戦力は強大だが、理性なき万象には逆らえない。

 

 アストレアがやろうと思えば、ここから大陸の国という国の首都を一撃で破壊できるのだ。

 

(そんなのが暴れたら大陸全土から討伐依頼が入るじゃんね。うーん、流石に実の姉が賞金首認定されるのはちょっと……)

 

 かといって、アストレアにどうにか上手く収める方法は思いつかない。

 

 そも、彼女が何を掴んだのかすらわからないのだ。

 なんか気分で急に精神的に弱っちゃいましたならば笑い話で済むが、フィンのとんでもない秘密を知ってしまい誰にも話せずに弱っているとなると話は変わる。

 

(……うん。どう考えてもお兄さんが台風の目すぎ♡ いい加減にして♡)

 

 世間では、美人に囲まれてハーレムを楽しんでる寄生虫との呼び声もあるフィン。

 

 だがその実態は貴族に恐れられる金等級冒険者であり、それなりに生き残った銅等級以上の冒険者ならばそのおかしさを理解できてしまう怪物であり、【天聖】の教え子にして【勇者】の幼馴染で盾役唯一の金等級冒険者。

 

 嫉妬や流言により一定以上の権力者や強者しか評価していないのだから、他コミュニティとの繋がりが殆どないフィンの自己評価が向上しないのも仕方ないことだ。

 

 冒険者全体の学の無さも悪い方向に作用している。

 地元で負け知らずの輩がハーレムの女を奪おうとしたり、田舎で優秀だったがフィンの実力を見抜けない程度の雑魚が喧嘩を売ったり、正義感からフィンのハーレムを壊して救うんだと言ってしまうような愚か者がいたり……

 

(……う、うーん。人のこと言えないけど、バカだなぁ……)

 

 フィンを舐め腐っていた時が自分にもあるので大きな声では言えないが、もっとフィンは己の功績や実力を見せびらかし周知させるべきなのだ。

 

 だが、しない。

 本人は己が周りと比べて劣ると自覚している上にこれ以上強くなれないだろうと冷静に受け止めているから。盾役として人類の頂点に位置するフィンでも、ここから先の領域に踏み込もうとすれば、人智を超えた何かが必要になる。

 

 アストレアの風のように、アリアの聖剣のように、ヴァシリの知識のように、マリアンヌの聖撃のように、カルラの剣戟のように。

 

 フィンにはそれがない。

 ないことを理解し、嫉妬し、羨んだ上で「ないならないなりにどうにかする」のがフィンだ。

 

(…………私が目指すべきはアリシア姉さん。アストレア姉さんの後は歩けない)

 

 ないならないなりにどうにかする。

 その教えはアリーシャにも受け継がれ、王都で地道に積み上げ続ける彼女の支えになっている。

 

(歯痒いなぁ。私がアストレア姉さんと同じくらい強かったら、お兄さんのこと放っておかないのに)

 

 自分が全盛期を迎えるのは今から百年以上後の話だ。

 そうなった時、フィンはもうこの世にいない。

 自分の見て欲しい姿を見てもらえることは絶対にあり得ないとわかっているからこそ、アリーシャは今を大事にしている。

 頑張らないと、未来も今も失ってしまうから。

 

「……あーあ。もう少し早く、出てこれればよかったのに」

 

 唇を尖らせて不満を口にする。

 アリーシャはわかっている。

 自分がフィンにとって取るに足らない一人だと。

 心優しく、誠実で、自分のようなエルフの相手をしてくれているのはアストレアの妹だからだと。そうでなければ【星天】にも入れなかったし王都で暮らすことも出来ず、あの日さっさと追い返されていただろう。

 

 今の自分がここに居られるのは、決してアリーシャ個人の資質によるものではない。

 

 あくまでハイエルフの王女にしてアストレアの妹だからなのだ。

 

 そんなことを考えていると、コンコン、と扉がノックされる。

 

「はぁい♡ どなた?」

「私よ、アリーシャ」

「あはっ、アリシア姉さん♡ どうしたの? お兄さんは?」

「ちょっと用事が出来たのよ。フィンくんには先に行ってもらったわ」

「ふぅん……そっか♡ 何の用?」

 

(……なんか、殺気立ってる?)

 

 アリシアの瞳には決意のようなものが漲っていた。

 悲痛でありながら、しかし強く決して折れることのない意志。

 言うならば、漆黒の意志とでも呼ぶべきか。

 そんな恐ろしさすら感じるような空気を身に纏った長姉にやや警戒心を抱きつつ、アリーシャは用件を問いた。

 

「……単刀直入に言う。アリーシャ、あなた、フィンくんの心を救う覚悟はある?」

「へ? 心?」

「そうよ。あの子の心を救うために動ける?」

「ん〜……うん♡ いいよ♡」

 

 具体的な内容を口にしないあたり、外で公言するには憚られる内容だと判断。

 

 これは頷かなければこの場で置き去りだと理解したアリーシャは頷いた。

 

「よくわかんないけど、お兄さんの抱えてる問題をどうにかするってことでしょ? いいよそれくらい、世話になっちゃったし。それに、お兄さんが私に恩義をもってくれたら少しくらいは恩返しになるもんね。うんうん、いいよ。助けたいな♡」

 

 どの道、フィンが居なければ帰されていた可能性もあるのだ。

 いや、そもそも預言を考慮すればフィンが居ないとこの場にいなかったどころか家族全員を失い己も陵辱の限りを尽くされていただろう。それを考慮すれば、フィンのために数十年使う程度のこと、何の問題もない。

 

 そういう運命的な屁理屈を抜きにしても、アリーシャはフィンのことを気に入っている。

 

 己の弱さを痛感して弱っている時に「俺たちは持たざるものだけど頑張っていこうな。お前のこと嫌いじゃないよ」と言ってきたヒトの英雄。

 

 気に入らないわけもない。

 

(このまま過ごしてもお兄さんのために動けるタイミングなんてないし、いい機会じゃん。姉さん達には悪いけどぉ……私も、攻めちゃおっかな♡)

 

「そう…………アリーシャは、それでいいのね」

「うん♡ お兄さんのためだもん♡」

 

 それに、姉がわざわざ自分も協力要請してくるのだから強さや立場を必要とするものでもないだろう。

 

 冒険者としての何かを必要とされているわけではない。

 では、一体何が求められている?

 フィンの心を解決するための何か。

 男の人の心を解決するための何か。

 

(えへへへっ♡ えっちなことでも何でも、してあげちゃうよ〜ん♡)

 

 アリーシャとて、フィンによって間接的に救われた身。

 

 これまでは姉を含む他の女達の色が強すぎて藪蛇を恐れていたアリーシャ。だが、その藪蛇に姉が共に対処してくれると言うなら話は別。話の流れ的にカルラやアストレアも同時に巻き込むのだろう。

 

 そして逆説的に、以前あの民家から出てきたアリシアとフィンの関係というのは……

 

(人にはあんまり言えない秘密♡ あーあ、やっぱり姉さんえっちなことしてたんだ♡ 妹の想い人に手ぇ出しちゃったんだ♡)

 

「……なによ。言いたいことがあるなら言いなさい、今のうちに」

「え〜? アストレア姉さん、怒るし悲しむなって」

「フッ……安心なさい、アリーシャ。きっとあの子も気にいるわ」

「…………姉さん、犯罪に手を染めてたりはしないよね」

「そんなことしたらヴァシリに殺されるわよ……」

「あはっ♡ 姉さんに殺されるかおばさんに殺されるかだね♡」

「はぁ……ま、そこまでは心配しなくていいわ。失敗したら王都が滅ぶかもしれないけど、なんとかするから」

 

 その発言に嘘はない。

 つまり、大博打。

 これ以上秘密にしていられないと判断して話すのだなとわかるものの、どうしてそれをアストレアに悟られたのか? アリーシャはそれが気になった。

 

(…………アストレア姉さんの悩みって結局なんなんだろ? 本当に姉さん達の関係を見抜いたのかな?)

 

「特に荷物は持たなくていいから、とりあえずいきましょうか」

「あ、うん」

 

 そう言って、アリーシャはアリシアの後ろについていく。

 

(まあ、とりあえず……アストレア姉さんが暴発しないように気をつけなきゃね。今の生活が崩壊してほしくないし、姉が賞金首になるのも嫌だもん)

 

 考えながら、アリシアの後ろ姿を見る。

 腰に見慣れない、鞭のようなものを着けていた。

 

 

 

 

 

 ────

 ──

 ────

 

 

 

 

 

「──来てもらってすまないな、アリーシャ」

「うふふ♡ お兄さんのためだもん♡」

 

 例の民家についた時、すでにフィンは出迎えの用意を終えていた。

 

 勝手知ったる我が家のように戸棚からハーブティーを取り出し、アリシア好みの濃さで調節。アリーシャには好みを聞いたのにアリシアには何も聞かないあたり、結構蜜月を重ねているなと思った。

 

「おいし♡ お兄さんが淹れてくれたからいつもより美味しいかも♡」

「そうか? こんなものでよければいつでも淹れてやるが」

「ほんと? さすがお兄さん、大好き♡」

「はは、俺も好きな相手にしかやらんぞ」

「……えへへ。んもー、照れちゃうなぁ」

 

 世間話のように愛を囁くアリーシャと、それを軽く受け流すフィン。

 そんな二人の会話を無言で聴いていたアリシアが、重い口を開いた。

 

「喉は潤ったでしょう。そろそろ本題に入らせてもらうわ」

「え〜? もうちょっとイチャイチャしてちゃダメ?」

「ダメ。アストレアが来る前に進めて(・・・)おきたいもの」

 

 そう言って、アリシアは腰元に携えていた鞭を取り出す。

 

「……? それは……なに?」

「……もういいのか?」

「ええ。始めるわ。そっちの方がフィンくんも嬉しいでしょう?」

「アリーシャとの会話は愉しい(・・・)んだがなぁ……」

「……そ、そうね。そうだったわね」

 

 アリーシャの疑問を置き去りに、二人はわかるようでわからない会話を交わす。

 

 フィンが立ち上がる。

 アリシアも立ち上がる。

 つられて、アリーシャも立ち上がった。

 

「よっと……」

「わ!! えっち!?」

「ん?」

「え、あ、うーんと。……い、いきなり脱ぐなんて、えっちなんだから♡」

「アリーシャ……あんた、ガッツリ見てるでしょ」

「う…………」

 

 いきなり上半身裸になったフィンに驚き顔を両手で覆いつつ、アリーシャは指の隙間からその裸体を凝視する。

 

 えっちだ──そう思ったのも束の間、その肉体に刻まれた傷の多さに息を呑む。

 

 火傷、裂傷、刺し傷、切り傷、身体の半ばまで到達するような深い切断の痕や腕や肩で接続し直したかのような色の肌。歴戦の勇士どころではない。これほどの傷を身体に刻みながら、生きている奇跡そのもの。

 

「お、お兄さん……な、え……」

 

 何を言えばいいのかわからなくなったアリーシャは口まごつかせる。

 

 そんな彼女の様子に苦笑しながら、フィンは言う。

 

「見苦しいものを見せてすまない。これから起きることも含めて、アリーシャには悪いと思う。だが、アリシアさんと一緒にこうすると決めたんだ。覚悟はできた。君も、腹を括ってほしい」

「え? え、えッ? なんで脱ぐの? わァッ!! ちょっとお兄さん!? ねえ出てる! 見えてるよっ! えっちとかそういう話じゃないよ!?」

「いいえ、これでいいのよアリーシャ……」

「いいわけないよ!?」

 

 ムードもへったくれもなく全裸になったフィン。

 当たり前だが、初めて見るフィンフィンにアリーシャは釘付けになった。

 

(え、うわっ、うわうわっ……う、腕と同じくらいある!? デッッッ……あ、あんなの……死んじゃうよ……)

 

「さあ、アリーシャ。こっちへ来なさい」

「え、へ、へうっ、ええっ!?」

 

 抵抗しようにも、妙に強い力で長姉に肩を掴まれ前に歩み寄る。

 

 どんどん近づくフィンの裸体。

 もうすっかり目を覆うことはせずにじっくり鼻息荒く見始めたアリーシャ。ドキドキと胸が高鳴り、興奮か混乱かわからない感情で胸が埋め尽くされ、頭の中には色欲が渦巻き始める。

 

「これから、フィンくんと『えっち』をするわ」

「や、やっぱり、してたんだ……えっち……!」

「そうよ。やむを得ない事情で、流れでね……これからあなたも仲間入りするの」

「う、うえぇっ、アリシア姉さん、なんか、怖いよ……?」

 

 ニコリ。

 アリシアは、冷たい笑顔で微笑む。

 

「怖いことなんて何もないわ。これからあなたも、フィンくんのことを知るんだから」

「う、わぁ……! えっちなこと言ってる……!」

「く、くくく……生意気エルフが素を見せて俺の裸を見ているっ! 興奮してきたッ!」

「黙れ豚人っ! 誰が喋っていいと言ったのかしらッ!?」

「おひいいいいぃぃイィっ!!?」

「────…………え?」

 

 アリーシャの目の前でフィンが痙攣する。

 

 目にも止まらぬ速さで振るわれた何かが彼を穿った!

 

 毒か薬でも盛られたのかと一瞬考えたアリーシャ。

 しかし、そんな妹の杞憂を吹き飛ばすように、アリシアは続ける。

 

「叩かれて喜んでんじゃないわよ気持ち悪いっ! ヴァシリがあんたを見たらどう思うのかしらねぇっ!! アリアに言ってやりましょうか!? あなたの幼馴染は『鞭で叩かれて罵られて悦ぶドマゾ』だって!!」

「お、おほおおおおおっ!!? あんぎゃあああああ!!! ほ、ほ、ほほ〜〜!!」

「え、え、え、え、…………え?」

 

 ヒュンピッ!

 シュピッ!

 音の速度を超える鞭がフィンの肌を裂き、叩き、傷つける。出血を伴う痛みに喘ぐフィンを見て、アリーシャは思考を停止させた。

 

「ふーっ、ふーっ……さ、アリーシャ。あんたも一緒に握って、ホラ」

「あ、ああ? え、何、これ……何が、起きて……なんで姉さんが、お兄さんを……?」

「そう、手を開いて。いいわね、柄を握りしめて、あとは遠心力で振りかぶるだけ。大丈夫、扱いは難しくないから。鞭で大事なのはいかにして鋭い痛みを与えるか。見なさい、アリーシャ」

「う? うん?」

 

 アリーシャはいつの間にか鞭を持たされ、その手を背中側からアリシアに握られていた。

 

 そして言われるがままフィンの方を見れば、そこには倒れ込み痙攣し悦びに浸っている哀れな男の姿が……

 

「フィンくんはね、マゾなの。叩かれて、罵られて、傷ついて喜んじゃう……どうしようもないマゾヒスト、名付けてドマゾよ」

「ど、マゾ……?」

「そう……ドマゾ。アリーシャ、鞭で叩いてあげなさい」

「え、えっ? でも、うえっ?」

「ほら、行くわよ。3、2、1……」

「あっあっ、ああっ?」

「おっおおっ!? うほほほっ!! 躊躇いがちな一撃たまらんっっ!!」

 

 ──ぺちん……。

 優しい一撃。

 力の篭っていない打点に、しかしそれでもフィンは悦んだ。

 

「うわっきも……ん゛ん゛っ! いい調子ね、アリーシャ。もう一回、今度はあんただけの手で」

「──……」

「グオオッ!?」

 

 ──ぺちっ……。

 先ほどよりも、ほんの少しだけ力の入った一振り。

 フィンの声が、喜びの咆哮が響き渡る。

 

(──お兄さんが裸で、お兄さんが倒れて、お兄さんが鞭で叩かれて、喜んで、姉さんが、あえ、でも、今は私が、お兄さんを、でも、あれ? なんで、こんなことしてるんだっけ……)

 

「……あ、そっか。お兄さんの心を救うんだよね」

 

 ぺちっ。

 

「おほおっ!」

 

 ペシっ。

 

「ははぁっ!?」

 

 ベシッ。

 

「うもももっ!?」

 

 べちっ。

 

「ひょひいいい!!」

 

 ベチンッ!

 

「ぎゃひいいいっ!!」

 

 アリーシャの瞳からは光が消え失せている。

 手の震えは治らず、表情は凍りつき、顔は青褪めエルフにしても血の気がなさすぎる有様。

 

「あ、は、は、あは、あはっ、あははっ……あはっ? あははっ、あははははっ!」

「(うわっ……こ、壊れた?)」

「あはははっ! お兄さん、何してるの? なんでこんなことになってるの? おかし〜♡ 笑える♡ ──夢なら覚めて。なにか悪いことした? あっそっか、全部か。私、悪い子だったんだ……」

「(……ああ、アンタもフィンくんに理想を抱いてたのね。かわいそうに。恨むなら、……ドマゾのフィンくんを恨みなさい)」

 

 泣きながら笑うアリーシャを憐れみつつ、アリシアは妹の手から鞭を取った。

 

「さ、アリーシャ。フィンくんは見ての通り、マゾなの。でもそれを誰にも言わないで、十年以上鬱屈した日々を過ごしていたわ。その反動で、ここまで極まったマゾになってしまったの」

「…………どうするの。こんなの、姉さんに言えるわけ……」

「いいえ、言うわ。なし崩し的に巻き込む。冷静さを取り戻させず、混乱したままえっちに巻き込むのよ」

 

 長姉の捻り出した姦計に、アリーシャは戦慄する。

 

「考える暇も与えない。フィンくんのマゾヒストっぷりをこれでもかと見せつけて、アストレアの思考を停止させて現実を受け入れさせる! これしか、私達が生き残れる道はない……! 協力してくれるわね、アリーシャ」

 

 差し出された鞭。

 期待の目で見る長姉、ふざけた姿勢で真剣な瞳のフィンに挟まれ、アリーシャは──鞭を手に取った。

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