なあ闇のマリアンヌ、一つ聞きたいことがあるんだけどさ。
『なんですか種馬』
マゾッいや普通に俺えっち上手いんじゃね?
これまでの戦績を考えて見てほしいんだが、アリシアにカルラにアリーシャにアストレア。全員初めてなのにフィンフィンでおひんおひん言ってるじゃん。
これはもう、俺には天性のエロセンスがあるんじゃないか?
『はぁ……本当にあなたは魂まで童貞ですね』
た、たた魂まで童貞!!
それは俺の魂がマゾに染まり切っているからなのか? それとも俺という人間がどんな経験を経て成長したとしても童貞特有の気持ち悪さがあるってことか?
『どちらもですが、女を数人啼かせた程度でイキるところです』
う、うごごごごっ!
しょ、しょうがないだろ調子に乗っても!
だってさァッ、俺が逆立ちしたって勝てないえっちでずっとずっと手ェ出したいと思いながらも理性で必死に考えないようにし続けて来た女達がさァッあんな風に乱れたらそんなんもう耐えられるわけねーじゃん!
調子にだって乗るだろ!
俺の十九年間で一度も満たされてない欲望が怒涛の勢いで満たされてイク! イキっても仕方ないだろこんなのは!
「…………内臓吐き出すかと思った……」
「だ、大丈夫か? 水あるぞ」
「ちょうだい」
青い顔で水を飲むアストレア。
その身体には本来着用していた衣服はなく、代わりに湿り気のあるブランケットに身を包んでいた。
「んくっ……はあぁ、フィン、あんた、鬼畜すぎ。こっちは初めてだってのに好き放題やってくれちゃって……」
「すまん」
やっぱりこう、姉妹だから似てる部分もあるっていうか……
そのホラ、なんだ。
昂って来ると、ついついアリシアを相手にしてる感覚でスイッチ入っちゃって……なんかそれで悦んでたしまあいいかなって……ヤバかったらやめようと思ったけどアリシアもアストレアもアリーシャもみんなどことなく受けが本命っぽい雰囲気あるから、こう……
口が裂けても言えない言い訳を頭の中で並べつつ、唇を尖らせるアストレアに平謝り。
「……ま、いいけど。正直、夢みたいな気分よ」
「夢?」
「ええ。あんたに受け入れられるなんて思ってなかった。一番嫌われてるとすら考えてたわよ」
「俺がアストレアを嫌うわけないだろ」
「…………り、理由を一応聞かせてくれる?」
「そりゃあ勿論、俺がアストレアのことを好きだからだ」
なにせ俺に対して厳しく接してくれたのだ、感謝こそすれど嫌うなどそんなことする筈もない。
アストレアの厳しさは俺の強さをシビアに鍛え、俺の性癖を的確に刺激し続けた。
時に罵倒で、時に嘲笑で、時に誤射で……
マリアンヌは優しく清らかで可愛らしさで俺を癒してくれたが、師匠の殴打から解き放たれてしまった俺の被虐趣味を最も満たしてくれたのは間違いなくアストレアとカルラだ。
……いや、流石にカルラかな。
カルラが俺の身体斬った回数、アストレアの比じゃないし。
恐らくカルラ>>(超えられない壁)>モンスター>アストレア……くらいの差がある。
カルラはあの豊満ボディで俺を見下してくれたのがたまらんのよな。
それと比べてアストレアは普通だ。
わざわざ意識するまでもないというエルフの王女特有のナチュラルさが最高だった。
「アリシア、アストレア、アリーシャ。それぞれ個性の違う三姉妹が縛り上げ身動きの取れない俺を取り囲んで思い思いの暴言を吐き捨てながら個性豊かな方法で俺を虐げる。アリシアは鞭、アストレアは風、アリーシャは……言葉攻め? 今となってはそんな選択肢すら出てくる。俺の気持ち悪い性癖に伴う欲望を叶えてくれる人を嫌う理由はないさ」
「……………………」
ああっ考えるだけで胸がドキドキする!
まさか妄想の中でフルコースの一品にしていたハイエルフ三姉妹による徹底凌辱が現実で起きるかもしれないだなんて、俺はなんて恵まれているんだ!
世界中探したってここまで幸せな体験を出来る男はいない。
断言できる、たとえ王族でもこんな贅沢は出来ない。
「どうだアストレア、納得できたか? 俺がお前を嫌うわけがないってことを」
「……あー……そうね……。いっぺん死にたいわ」
「!?」
や、闇のマリアンヌヘルプッ!
『はいはい、今度はなんですか』
闇のマリアンヌはベッドに堂々と寝転がった。
……まあいいや。
なんでアストレアは急に死にたくなったんだ?
理由がサッパリわからん。アリシアは俺のマゾ開示をしてもドン引きするだけだったのに……
『ふむ…………憧れは理解から最も遠い感情である、ということですよ』
ほォ。
なんとなくわかる気がする。
憧れってのは、自分の想像する姿を他人に押し付けることだ。きっとあの人ならばこうしてくれる、あの人ならばこんな風に……自分の欲求を満たしてくれる理想的な人なんだと思い込むこと、それこそが憧れ。
でもおかしくね?
それって俺が想像してたより気持ち悪くて嫌だったってことだろ。
それは正しい感情だろうけど憧れとは関係ないんじゃないか?
『はぁ…………我が使徒、あなたは本当にダメな子です。いいですか? あの日、信徒に襲撃を受け地獄の如き責め苦を受けながら必死に抗ったあなたはこのエルフからすれば英雄なのです。オリジナルも、カルラも、皆そのように感じている。その本質がドマゾの変態だとは知らずに』
ああ……そういう受け取り方してるのか。
なるほど、理解は出来た。
つまり、俺のことを過剰に評価してたんだ。
やっぱりそんなことじゃねーかと思ってたんだよ。アストレアはあの日以降『替えはある~』『田舎に帰りなさい~』的なことを言ってこなくなった。仲間として認めてくれたんだろう。
でもそれは違う。
あの日乗り越えられたのは俺の力じゃない。
どう考えてもマリアンヌが覚醒したからだ。
どういう原理なのかは一切不明だが、モンスターを一撃で消し飛ばす【聖撃】。
あれが無ければそのうち俺は死んで他の三人に矛先が向けられていた。
俺のやったことなんて何一つ大したことじゃない。
仲間を護るために盾になった。
それに、その働きだって完璧じゃない。
パーティーの三人
合同で組んでいたメンバーは限られた生存者を残して死んだ。
その生存者も冒険者は引退してしまった。
とてもじゃないが、誇れたもんじゃない。
仲間を助ける。
それは、盾役の義務だ。
それしか出来ないんだから出来て当然なんだ。
それに、俺はマゾだ。
苦痛が悦びに感じられる。
あくまで趣味だが、仕事をする上で感じてしまうのなら仕方ないと割り切っている。今こうしてプライベートで愉しんでいるのも仕事と関係がないからだ。そうやって徹底的に盾役としてプロになろうとして、これだってのに。
『ふふ……羨ましいですか? 憎たらしいですか? 我が使徒、どれだけ努力しても届かない現実が、不愉快で仕方ありませんか?』
もちろん不愉快だ。
だけどそれはそれで気持ちいいし、そういうもんだろ。
『…………あの、私が言うのもなんだけど、頭大丈夫?』
ムッそなた何奴だ?
闇のマリアンヌと声が違うんだけど。
『エッ。ん゛っんんっ、どうしました? 私は私ですよ』
あっ闇マリだ。
いや、急に知らん女の声に聞こえたからビックリしたんだよ。
流石の俺も知らない女の声を頭の中で作り出せるほどおかしくないし。
……あれっ、これまで何度か俺の知らないことを闇マリが話すことが結構あった気が
『ん゛ん゛っ!! う゛う゛ん゛ッ!! そ、それよりフィンさん。アストレアさんが困っていますよ』
うーん、つってもなぁ……
ここまで来たらもう俺に出来ることは何もない。
闇マリに聞いた話だと俺に憧れを持ってたって言いたいんだろ?
そんなわけねーじゃんとしか思えないんだが、仮にそうだったとして、ここからどうにかする手段なんてあるわけもない。
受け入れられなかったら……俺はもう、消えるしかないだろう。
【払暁】は解散。
いや、俺が追い出される形になる。
アリシアやアリーシャも俺みたいな役立たずを追いかけてくることはないだろうし、カルラもそうだ。そしていずれは俺みたいな中途半端な男じゃないイケメン優男が現れて……おほっほぉ! 寝取られ妄想たまんないのぉ!
『やっぱり死んでおいた方が良かったかもしれないですね』
んひいいいいぃいぃっ!?
「…………ハァ~……フィンのそれ、演技でも何でもないんでしょ」
「演技でここまでやれる奴に見えるか?」
「ううん。あんたの本音に見える」
ガリガリと頭を掻いてアストレアは続ける。
「……私はどうすればいいの?」
「えっ……これまで通りでいいんだが」
「でも、その、罵倒されたりすると気持ちいいんでしょ」
「それは、そうだ」
「…………してあげた方がいいの?」
「してもらえるなら、うむ。ああ、でも日常生活に支障が出るようなのは止めて欲しい」
「ンな過激なことするわけないでしょ!」
えぇ~。
アストレアに四肢切断されてそのまま凌辱される妄想とかしてたのに……
『ヒェッ……』
「……なんとなくロクでもないこと考えてるのはわかんのよ」
「はは、いや、まさか。どうだ、俺を凌辱とか」
「するわけないでしょ! あんたは私をどんな鬼畜女だと思ってるわけ!?」
「叱り方までアリシアと一緒だなぁ」
「はっ……あ・ん・た・ねぇ~!! 姉さんと一緒ってなに!? 姉妹で比べるとか最っ低だから!!」
「あたっ、あいてて、むほほっすまん」
「喜ぶか謝るかどっちかにしろ!」
ベシベシアストレアに叩かれる。
顔を真っ赤にしたエルフ、むふふたまらんっ。
「ああもうっ、ホント最悪! 姉さんと比べるとかっ、このっ、このっ!」
「ハハハ、姉妹揃ってするのも楽しみにしてるぞ」
「え、エロガキぃ~……!!」
もちろん丼には俺がなる。
姉妹は仲良く俺のことを甚振ってくれればそれでいい。
美人エルフ三姉妹による責め苦、ハァッハァッ、興奮する。考えるだけでフィンフィンがビンビンになるッ!
『黙れ』
「…………」
「……え、いや、なに無言で……フィン……」
視線はある一ヶ所に向けられている。
「…………あんたさぁ……あんなにしたのに? まだ元気なの? 覚えたてのガキって、こういうことを言うのね」
「うほっ」
「……フゥン。ふぅ~~ん……あ、そう。して欲しいんだ?」
「おおっ!? そ、そうだっ! アストレア、頼む……!」
『なっ……こ、この森人ッ、なんて理解力……!?』
先程までとはうってかわり、アストレアはニヤニヤとした笑みを浮かべて俺を挑発する。
ぐおおっ、まさかッ、まさかとは思うがッ!!?
長女の攻めもしっかりやりながら受けが本質の部分。
三女のガッツリ責めだが相手のして欲しいことを読み取り焦らしたりする高度なテク。
アストレアは────アリシアとアリーシャ、二人の性質を併せ持つ……!?
「ほらほら、どうなの? どうして欲しいの?」
「お、おごごっ! かわいがってほしいのぉ!!」
「そうなんだ? へぇ、こっちは可愛くないのにかわいらしいこと言うじゃない」
な、なんてすごいんだ……!
アリーシャの責めテクにアリシアの受け!?
そんなッ、そんなのありえないっ!
存在して良いのかッそんなとんでもない強さが!?
「あんたがそこまで言うなら、やってあげましょうか……?」
「ぶ、ぶぶひいいいいっ!! お願いしますううぅぅっ!!」
「あは……あはははっ! いいわ、やってあげようじゃないの! 散々かわいがってくれたお礼にぐちゃぐちゃにしてあげるわよ! 姉さんに負けてらんないわッ! 負けてたまるもんですかァッ!!」
そう言いながら立ち上がり美しい裸体を晒すアストレアの頬には、一筋の涙が流れていた。