ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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122 【超滅】③

 

「おれ達【超滅】の戦い方は、基本的にバフデバフ……つまり相手に弱体・妨害効果を与えて、自分達に強化を施す。これで確実に相手を削ってく戦い方だ」

 

 そう言いながらアニカが拳をぐっと握る。

 

 カトリーナが指を振れば拳が輝き、ミューズが楽器を鳴らせば輝きが増す。

 

「おれは主にヘイト管理……まあ、半分盾役、半分アタッカーって感じだ。わかるだろ?」

「わかる。つまり、純粋に攻撃に集中するのはドレイクだな?」

「状況にもよるけど、足はアタシの方が速いからねぇ」

 

 手元でダガーをチャカチャカ弄びながらドレイクが言う。

 

 金等級冒険者パーティー【超滅】。

 俺達【払暁】は〈不浄領域〉での活動を主としギルドからの依頼にもそれなりに応えてはいるが、彼女ら【超滅】は真逆のスタイル。遺跡探索を主とし、ギルドからの依頼を受けることはほぼないそうだ。

 

 ゆえに、〈深淵の森〉攻略に当たってこれから先必要となるのは彼女らとの連携になる。

 

 一人増えればそれだけ戦いの組み立てが変わる。

 

 ま、〈深淵の森〉だとぶっちゃけ関係ないんだけどさ。

 

 俺が受けて仲間が殺す。

 基本戦略はこれしかない。

 てか、これ以上がない。

 俺は受けれて数手に過ぎず、その間に巨豚人を倒してくれないと死ぬ。だから仲間達も全力で攻撃するし、戦闘を終えたらすぐに場所を移動している。

 

 ただ、この強化・弱体幅がどれくらいあるのか。

 

 それを知らないことには何んとも出来ない──ということで、今日は俺が【超滅】にお邪魔して確かめることになったのだ。

 

 まあ待ってくれ。

 闇のマリアンヌ、君も『どうして盾役の替えの利く雑魚が試金石になってるんですか?』と言いたいんだろう。

 

『いえ、別に……』

 

 そうだろうそうだろう。

 だが俺はこう見えて他人に合わせることがそこそこうまい。

 そりゃあさ、アストレアほどうまくはないしカルラみたいに剣の一振りで雲を晴らすなんて芸当は出来ないんだけど、金等級冒険者平均レベル程度は出せるからね。

 

 そうじゃなきゃ【払暁】で盾なんてやってらんないし。

 

 それに加えて俺自身の能力をしっかり数値化しているのもある。

 

 学はないが、己の戦闘の分析はする。

 師匠に出来ないと死ぬよと叩き込まれたもんね。

 痛みや損傷を数値化し、ダメージとする。

 ズタボロだった未熟者時代に必死こいて作り上げたんだ。

 いやあ、保管場所が無かったからセリナに無理言って預かってもらったりしてたんだよな。ギルドの勝手に資料持ち出して家で教えてくれたりして、本当に頭が上がらん。

 

 話が逸れたが、つまり俺は能力を数値化して管理しているので増減がわかりやすいのだ。

 

 ゆえに俺が選ばれた、というわけだ。

 

「俺との相性も悪くなさそうだが……その、ばふでばふ? は、俺にも問題なく効くのか?」

「恐らくは。やってみても?」

 

 頷いて手を差し出す。

 どういう条件でやってるのかはまだ聞いてない。

 手札を聞くには距離があるからな。

 こういうのはもっと密接な関係になってからだ。

 

「……スーッ……はぁ~……で、では、失礼します」

「おいおい、なに緊張してんだよ~」

「お、男の人に慣れてないんですよっ!」

 

 妙にぎこちない様子で手を伸ばしたカトリーナをアニカが茶化す。

 

「…………ん……これ……ぁ、ん……」

「……お、おい。デビュラ、なんかしてんのか?」

「何もしてないぞ」

 

 エッあのっなんか手を繋いでるだけで急に喘ぎだしたんですけど。

 

 マリアンヌ……!?

 これは一体……!?

 

『──これは、これは……懐かしい気配だと思ったが、貴様か、同士ルルクス』

 

 !!!?!?!?!?

 

 だっ誰だ貴様!

 闇のマリアンヌではないなッ!

 ええいっ姿を現せ悪魔め! 俺には闇のマリアンヌの加護があるんだぞ!

 

『は? 闇のマリ……? いや、ここにいるのはどう考えても』

『──やはり、あなたでしたか』

 

 ムッ闇マリ!

 なんか俺の頭の中に知らん女の声が響いてんだけど?

 同居人増えた感じ? それならそれでいいんだけど、ちゃんと挨拶くらい徹底させてよね。

 

『は? ん? ……おい、ルルクス。こやつ、何を言っておるのだ』

『こういう人なんですよ。愉快な方でしょう?』

『ゆ、愉快……? いや、こやつ、頭が』

『──【聖撃】』

 

「があああぁっ!!?」

「!!!?!?!?!?」

「は!? ちょ、ちょっとなんだい!?」

「──っ!? あ、ああっ、ごごごめんなさい! えっと、強化幅が、失敗しちゃったみたいで……?」

 

 ほっほげえええええ!!

 頭割れちゃううううぅっ!!?

 頭の中で闇マリのおもらし【聖撃】放たれて頭おかしくなっちゃうううううう!!?!? アッアッアッ出るっなんか出ちゃうっっ出ちゃいけないモノお腹の奥からせり上がってくる!!?

 

『もうおかしいから大丈夫ですよ。これ以上おかしくなるとすれば、逆に良くなるんじゃないですかね』

 

 おいっ闇マリ!

 流石に頭ぶっ壊れるかと思うレベルの痛みを発生させといて無言は怒るぞ。あとさっきの奴に関してもちゃんと説明しろ。別に増えるのは構わん。あの声の持ち主、相当なドエス(ぢから)を持っていると見た。

 俺のドマゾ調査指標がビンビンだ。

 俺の身の回りにあまりいないタイプの女王様だろうね。

 そう、言わば年と経験を重ね尊大で偉大になったシャルロットのような……

 

『……すみません。フィンさんを救うために、放つしかなかったのです。今の私では、あれくらいしなければ、あなたの助けになれず……申し訳ありません……』

 

 あ……。

 ま、まあまあ闇マリ。

 俺もちょっと、言いすぎたからさ。

 だからその泣きそうな顔やめて? 罪悪感凄いから。俺も悪かったよ。闇マリに八つ当たりみたいなことしちゃってごめんな。

 

「お、おいっ! カトリーナ、おまえなにした!?」

「す、すみませんすみませんっ!! えと、その、強化するときに、男の人だし、すごい身体してるから、どこまでやれるか気になって……」

「お、お前……協力してくれる人にやることじゃねーだろ!」

「ご、ごめんなさいっ!!」

 

 んぅ?

 いや、多分これ普通に闇マリの脳内【聖撃】が原因だと思うけど。

 言われて見れば、確かにほんのり右腕がじんわり痛いか……?

 

「大丈夫だ。少し驚いたが……これくらいなら、なんの問題もない」

 

 痛いが問題ないな。

 ちょっとヒビ入ってるかもしれんが、ポーション一つでどうとでもなる。なんなら放置しても問題ない。

 

「いやいや、ちょっと見せろって」

 

 そう言いながらアニカが俺の右腕の鎧を脱がせる。

 おお、しっかり男向け装備の外し方も知ってるんだな。

 女性用と男性用で割と仕様が違うパターン多いから、それを知ってるってことはつまり……男の影アリ!?

 

 そ、そんなっ!?

 出会った時から既に男を知っている……!!!?

 こ、これまでにないパターン!

 緊急招集、闇人格!

 あとついでにさっきのとんでもねえドサド(ぢから)のねーちゃん!

 

『あの人は短期なのでもう帰りましたよ』

 

 短期ってなに?

 俺の頭の中に出てくる人格って短期とかあるんだ。

 ちょっとよくわかんなくなってきたな。

 長屋の経営でもしてんのか?

 

『まあ……そんな感じです。ちなみに今の住人は私一人ですよ』

 

 本当か?

 なんかたまに闇カルラとか闇アストレアとか出てくるけど、あれは……?

 

『あれは……短期です』

 

 そうなんだ……。

 じゃあなんだ、普段は闇マリは一人でいるんだな。

 そりゃあ寂しくて俺に絡んで来ちゃうか笑

 

『チッ、思い上がるなよ』

 

「ぐおっ!!?」

「うわっ!? や、やっぱり痛いんじゃねえか! 無理すんなよ!」

「ち、違う。今のはその……思ってたよりキタだけだ」

「それを痛いって言うんだよ!」

 

 ひんひんっ怒られちゃった。

 

 これはいかんな、【払暁】と【星天】二つのパーティーを代表して来ていると言うのに。

 

 闇のマリアンヌ、仕事の時間だ。

 おふざけはここまでにしておこう。

 

「はー……おいおい、あんた、どういうキャラしてんだよ。意味わからん。鈍感系かと思ったけど、もしかして結構面白い奴なのか?」

「む。そういう評価をされたことはないが……」

「……だよなぁ。寡黙な仕事人、って感じだもんなぁ……あ、これ使ってくれよ。カトリーナが悪かったな」

「……では、ありがたく。それとこちらも重ねて言うが、気にしなくていい。実戦で使うためにあらゆる手を尽くして準備するのは当然だ」

「はぁー……真面目だなぁ」

「そうじゃなきゃ、生き残れないんだ。俺は凡人だから」

 

 ポーションを腕にぶっかけて、鎧を付け直す。

 

「カトリーナ。どれくらいの強化幅なら問題ないか、掴めたか?」

「…………」

「……カトリーナ?」

「えっ、あ、は、はい。つかめ、ました……」

「ったく、おいおいカトリーナ。大丈夫か~? いくらデビュラがかっこいいからってのぼせんなよ?」

「そ、そんなんじゃありません!」

 

 ぷんぷん顔真っ赤にして怒ってる。

 なんか、マリアンヌ味を感じる……。

 やっぱり俺、こういう女の子が好きなんだろな。アリアもそうだし、マリアンヌもそう。ほんわか出来る女の子が好きっていうか……。

 

『……?? 森人は?』

 

 アリシアさん?

 

 …………。

 

 えー……。

 

 ……へへっ。

 ふふっ、うへへっ。

 

『……きも』

 

 な、なんだようっ!

 だめかよっ口にすんのも恥ずかしいんだよこっちは!

 初めて捧げた女を特別に見て何が悪いんじゃ!

 

『その割に他の女にも手を出してるじゃないですか……』

 

 ウッ!!

 そ、それを言われると辛い……。

 で、でもだってさァ! 何回も言うけど、仕方ないじゃん!

 逆に闇のマリアンヌが俺と同じ立場だったらどうする!? この状況で無数のイケメン最強スタイルの男に『某も混ぜて欲しい』って言われて拒否れる!?

 

『……………………わ、私は、一途よ』

 

 ほらァッ語るに落ちた!

 どうせ闇マリも手ェ出されることを許すって! 間違いない! 闇のマリアンヌを一番理解してるのは俺なんだぞ。そんな俺が断言するんだから間違いないんだ!

 

『え、ええいっ! 黙れ魂童貞が! 私だって本気出せば×××や××××くらい!』

 

 な、なにっ!?

 そ、そこまでしちゃうのか……!?

 してくれちゃうのか、闇のマリアンヌ!?

 

『あっ……、わ、忘れろ。忘れなさいっ!!』

 

 うぐおおおおおお頭がッ頭が割れるッ!!

 

「……お、おい。なんか怒ってね? カトリーナお前、堅物っぽいんだから色目使うなよ……」

「つつつ使ってませんよ! うう……テイア様ぁ……変なことしないでくださいよ……」

「…………まァ確かにイイ男だけど、まさかアンタがここまで男慣れしてないとはねぇ」

「…………フッ」

 

 

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