ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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154 聖女対策会議

 そういえば闇マリ、一つ聞いておきたいんだけど。

 

『なんですか?』

 

 くるくる膝を抱えて空中で回転する邪神。

 かわいいのだが、服装がマリアンヌの私服をそのまま流用している所為でスカートがひらひら舞い下着がチラチラ見えている。

 

 く、くそっ!

 なんてあくどい罠なんだ!

 俺がマリアンヌのことを大切に思っていることを理解していてなおその姿! スカート丈がオリジナルより短いし明らかに見せつけている。とても神とは思えない。月の女神ではなく淫欲の女神またはドエスの女神ではないだろうか。

 

『……えいっ』

 

 !!!!?!?!?!?!?

 

 す、スケベすぎるでござる!!?!?

 マリアンヌの顔と身体でえっちなことするんじゃねぇ!

 

『我が使徒が無礼なこと言うからです』

 

 無礼……?

 いや、自分の巫女の姿借りて自分の使徒を誑かしてえっちなことしてるしどう考えてもまともな神様ではないのは歴然じゃん。

 だからこれは無礼とか失礼じゃなくただの事実ね笑

 

『────【聖撃】』

 

 ホッほげええええぇええぇぇ!!!??!?

 ハァッハァッハァッハァッ……!!

 く、くく、やるな闇マリ……!

 だが俺は金等級冒険者の盾役。

 何度も何度も同じ攻撃を喰らい続けて耐性が付かないわけがない。痛みには敏感だが鈍いのだ。乗り越えた! 女神さまの一撃を耐えられるようになったんだ!

 ウオオオオオッ、今こそ叛逆の時!

 勃ちあがれ!

 今日こそチ○負けさせてやるッッ!!

 

『フィ、フィンさん……私のこと、そんな目で見てたんですか……?』

 

 ア!!!!!!!!!!!!!

 

「────というわけで、異教調査に二人の聖女がやってくる。おそらく狙いは……」

「……フィンくんね?」

「このタイミングだ。そうとしか思えないだろう?」

 

 師匠が疲労を滲ませつつも告げる。

 ううん……隠してるけど師匠、これかなりキテるんじゃないか。

 昔も一回あったな。

 ていうか俺が弟子入りして直後はこんな感じで、それからも暫く調子が悪い状態が続いてた記憶がある。いつの間にか普段の師匠になっていたのだが、調子が悪いんじゃないかと思ったのは後年になってからだ。

 

 あんときはなんで調子が悪かったのかもどうして治ったのかもわからなかった。

 

 当然今もわからない。

 だが、放置はしておけないので後で部屋に突撃して聞くつもりだ。

 俺も大人になったんだ。

 師匠の気持ちくらい助けてやりたい。

 

『えっと…………その、本当に心の底から黒森人のことを思って言うけど、我が使徒は何もしない方がいいわよ?』

 

 それって、俺は何をしても意味が無くて価値がないってこと?

 

『いやそこまでは……とにかく、あの黒森人の心を悩ませてるのは我が使徒なの。時間が解決してくれるわ』

 

 ……??

 いや、普通に俺が原因なら俺がどうにかするべきだろ。

 時間が解決してくれるのは悲しみくらいで、師匠は今疲れてる。

 それは悲しみじゃあない。

 疲れを取り除かなきゃいけない、違うか?

 

『…………これ、私のせいになるのね……』

 

「…………女神さまはなんと?」

「ええと……私のせいだと言っている」

「だろうねぇ……」

 

 ヴァシリは苦笑した。

 

「ふむ……女神様から見ても二人の聖女は危ういのか?」

 

 カルラが訊ねる。

 どうなんだ、闇マリ。

 

『脅威などありませんよ。あの邪神の尖兵、その使徒。ふふ、この手で陵辱し、屈服させ、あいつの目の前で×××してやるのが待ち遠しい……!』

 

「あー……脅威ではないそうだ」

「であるか……ならば、フィンの安全は確保できるということで相違ないか?」

『相違ないわ』

「相違ないらしい」

「……なんか、思ってたより話通じるのな」

 

 アニカがボソッと呟く。

 もちろん聞こえているので闇マリは回転を止め、ニコリと彼女に向かって微笑んだ。アニカには見えていないが隣のカトリーナは何らかの方法で闇マリのことを捉えてるようで、死んだ目で会釈している。

 

 それを見て闇マリも満足そうだ。

 結局カトリーナも以前俺の所に来た短期さんの使徒でマゾなんだよな?

 ううむ、これはやはり……親しみ持てるよね。

 同じ性癖で同じ境遇。

 認めたくないものだが、俺はマゾでありサド。

 どちらの性質も併せ持つ以上、おそらく彼女も同じだ。

 つまり互いに責めと受けを交互に味わうことが出来る。

 サドマゾ車懸かりの陣にござる!

 

「知っての通り、カルラやアストレア、マリアンヌには親しみを抱いてるようだしな。確かに邪神かもしれないが、俺にとっては女神様だ。もっと俺を介して話をしてくれると嬉しい」

「お、おう。……いいのかそれで……?」

 

 闇マリが認知される。

 これほど嬉しいことはない。

 いつだって彼女は俺の傍に寄り添ってくれたんだ。

 文字通り俺にとっては女神様。

 邪神的な部分も合わせて女神様なんだ。

 

「もちろん。みんな仲良くなってくれることを望んでるぞ」

「…………それ、デビュラが言ってるんだよな? 言わせてるんじゃないよな?」

「俺の意志だが、篭絡されてることは否定しない」

「ええぇ…………」

 

 アニカが引いたように呟く。

 ドレイクも呆れた顔だ。

 

「仕方ないだろ? 俺は女神様がいないと生きていけないんだから」

「アッ、そ、そうだな、うん、そうだよな、俺が悪かった。この話題は止めにしようぜ!」

「そうさね! それより肝心の聖女に対してはどうするんだい!?」

 

 あ、心がチクチクする。

 二人の美人に遠回しに黙ってろと言われてしまった。

 幾ら俺がバカでもそれくらいはわかる。

 うっ、うふっ、おほほっ、アニカとドレイクの二人も俺のことを軽んじてくれるのか!? 姉御肌のドレイクは『お前みたいな木偶の坊はいらないんだよ!』と言いながら尻と棒を踏みにじり、本気で蔑んでくれるに違いない! そしてアニカは俺と同じ農民出身だが数多の遺物を扱いその能力を引き上げることが出来る。つまり、師匠も知らないような道具でアニカにもフィンフィンを生やし穿つことだって可能なんじゃないか!?

 

 ま、まさか……!!

 実現するのかッ!?

 前後責めが……!?

 

「聖女に関しては……王都で迎え撃つしかないかな。ここまでやってくるのなら問題ないけど、素行の悪さに関してはこちらも把握している。彼女を放置しておけば王都が壊滅するよ」

「……なんでそんな奴が聖女扱いされてんのよ」

「施しだけでは宗教を掲げていけないのさ」

 

 心なしか先程よりも暗い雰囲気の師匠が言う。

 

「彼女らの目的はフィンと女神様だ。ここで宣言しておく。私は、フィンを害そうとするのならば教団と敵対することも厭わない」

「師匠……」

「……これまで、フィンのことを粗雑に扱って来た。誰に何と言われようと、私はフィンを置き去りにした上に、王都での活動も支援しなかった。更に言えば君の命を代償に生きている事実は曲がらない。だから、決めた。これから先の人生、フィンが死ぬまで、フィンが死んでからも残った子孫たちの味方になると」

 

 場の空気が沈黙する。

 

「……いいのか? 俺は、アリアと違うんだぞ」

 

 所詮邪神に憑りつかれているだけの死なない盾。

 不死身戦法を手に入れたことで格段の性能は向上しているが、世界を敵に回してもなお手中に収めておきたい存在ではない筈だ。

 

「それに女神様のこともある。さっきも言った通り、どう考えても邪神には違いないんだ。もし本腰を入れて討伐しに来て、神が襲ってきたら……俺は守り切れる気がしない。情けなくてすまない。でも、嘘は吐きたくないんだ」

 

 闇マリより強大な存在が来たら俺なんて一瞬で消し炭になる。

 死なないのならいくらでも盾になるが、人間が一人盾になった程度で守れるような存在じゃない。そうなったら俺は、皆が死んだ世界で一人、消し炭のまま漂うのだろう。

 死んでも死にきれない。

 悔やんでも悔やみきれない。

 俺自身が塵になり、死んでないだけのナニカに成り果てることは構わない。

 

 何よりも怖いのは、仲間が傷付くことだから。

 

 だが、師匠は気にも留めずに即答する。

 

「そうかもしれないな。私も、女神様に太刀打ちできる気がしないよ」

「…………」

「だが構わない。フィンの為に死ねるのなら、それはそれで……善いことだと思う」

「縁起でもない。俺のためなんて、やめてくれ」

「フィンは私達の為に傷付くことも厭わないだろう? それと一緒さ。私も、愛弟子が大事で、大切で、守りたいんだ。……今更、信じてもらえないかもしれないが」

「いや、それは信じるよ。だからこそやめて欲しいんだが」

「…………じゃあ、やめない」

「なんだそれ……」

 

 不貞腐れたような表情で師匠は言った。

 

「……私達【払暁】も同じです。というか、カルラさんとアストレアさんはともかく、私は逃げられませんし」

「巫女、だったかしら。……まあ、無理はしないでよ」

「はい。アストレアさん、ありがとうございます」

 

 両目の下に隈を作った二人が笑い合う。

 しかしその笑みにはどこか無理をしてる感が否めなかった。

 

「【超滅】としては逃げ出したいところだが、ウチも無関係じゃねーしなぁ。デビュラが発見されたついでにカトリーナが巻き込まれる可能性もゼロじゃねーし、賛成するぜ」

「……なら決まりだ。我々は聖女達が牙を剝いて来た際撃滅する方針で行く」

 

 師匠は瞑目してから、少し考えてから目を見開いた。

 

「フィン。君は一人じゃない。私達も大事に想っている。どうか、自分のことを慈しむことを考えて欲しい」

 

 貴重な盾役だもんな。

 不死身の盾役となったからには今後もますます活躍できる。

 大丈夫だ、師匠。

 生活も良くなったし人間関係はぐちゃぐちゃだけど性生活は充実した。正直言って、めちゃくちゃ幸せな日々を過ごしている。俺は十分自分の欲望に従って生きているよ。

 

「わかった。検討する」

「検討ではなく善処して欲しいんだが……」

「わかった。善処する」

「……筋金いりだなこりゃ」

 

 アニカの呆れた声が響いた。




カクヨムコンテストでプロ作家部門の特別賞とコミカライズ賞を受賞しました。
ドMの書籍化企画進行中です。
おそらく漫画にもなります。
正気か?
かわいい女の子が嘆く表情を見せる横で真顔のままんほおおおおっとか言ってるフィンのことがイラスト・漫画で見られるのは流石にアツいのでこれからもよろしくお願いします。
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