ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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159 深淵の森歩き

 闇マリの力が最も濃い場所。

 そんな場所は一つしかないということで、服を着替えて冷静になったアリーシャにエヴァンジェリンが謝罪してから俺たちは祠へと移動した。

 

 深淵の森のモンスター問題に関しては闇マリが干渉してこないように出来るらしい。

 正直、立派な邪神だと思う。

 モンスターの出入りが操作できるならもっと早くして欲しかったが、本体のある祠に一度近付いたからこそ出来るようになったとかなんとか。

 ちゃんとした邪神にしてしまったのは俺達だった。

 やはり普通に邪神ではないだろうか。

 裁かれてしかるべきなのではと思わなくもない。

 

『我が使徒? 無礼ですよ』

 

 でもさァ闇マリ……

 流石にモンスターを操作出来るのは邪神以外の何者でもないでしょ。

 

 ハッ……!?

 ま、待てよ。

 深淵の森の支配者は闇マリ。

 深淵の森の巨豚人にはよくお世話になっていた。

 これはつまり……俺も闇のマリアンヌ、初めての合法SMプレイだったのではないか? 巨豚人は闇のマリアンヌが生み出して操ることができる。俺は巨豚人に槍で貫かれ達する。アリシアさんに捧げた抜き差し童貞はやはり闇のマリアンヌに奪われていたのかもしれない。

 

『今ここで百体くらいで囲んで我が使徒だけ徹底的に痛めつけてあげましょうか』

 

 なにっ!?

 そ、そんなっ!?

 守るべき仲間の前で、それもまだ俺の本性が露見していないみんなの前で、そんな辱めを……ッ!! マリアンヌ!! 俺がなぶられるところ見てて!! アァッイクッイクでござる! 巨豚人の槍太くて硬いよぉ!!

 

 ガサッ……

 

 音に振り向くと、そこには見慣れた巨豚人が。

 

 しかしその手に槍はなく、なんか戸惑った表情な気がしなくもない。

 

「ッ!? フィンさ──」

「……いや、多分大丈夫だ」

 

 各々が警戒する中で、巨豚人はなんかよくわからないが困惑した表情のまま、俺に会釈した。

 

「…………なぁデビュラ。なんかお前挨拶されてね?」

「気のせいだろう」

「いや、明らかにお前のこと見てから頭下げてたんだけど」

「気のせいだろう」

 

 巨豚人、俺はお前に親しみなんて持たないからな。

 確かに闇のマリアンヌと関わりがあるのかもしれないが、俺は人間でお前はモンスター。いやまぁ俺も厳密には人間じゃないのかもしれないが、お前たちと違い理性があり師匠の手で教育を受けている。

 それに何度も何度も苦しめられてきた。

 巨豚人は快楽なき時代の俺にとっての天使にしてヴィーナス、鞭の代わりに槍で俺を苦しめてくれた大恩ある存在だが、だからと言って仲間だと認識されるのは我慢ならん……!

 

 あ、どっか行った。

 なんだったんだ……?

 闇マリ、何がしたかったんだ今の。

 

『この森で死んだ個体はまた私の胎内に戻り生まれ直すので、あれはあなたのことを知っている個体ですよ』

 

 闇マリってさりげなくとんでもないこと言うよね。

 じゃあなんすか、この森でモンスター討伐しても意味がないってことですか。

 

『魔が拡散するので悪いことばかりではありません。微々たるものですが、世界が魔に染まる時刻を数秒早めるでしょう』

 

 …………?

 

 すまない、俺にも理解できるように説明してくれ。

 

 バカな俺の疑問に答えたのは闇マリではなく、彼女を討ちに来たエヴァンジェリンだった。

 

「うふふ。簡単に言えば、ルルクス様の生み出す魔は緩やかに広がっているのですが、この森に出没する魔物を討てばその分魔が討伐者に分配され世に拡散していくのですよ。そちらの巫女はもちろん、あなたのお仲間達にも宿り、それは力になっておりますわ」

「……なるほど。つまり、強くなるとは」

「そういうことになります」

 

 当たり前のように俺達の会話を聞いているエヴァンジェリンだが、不思議なことではない。

 

 かつて闇マリをも打ちまかし散々に犯して民にまで下げ渡し徹底的に屈辱を与えた女神の使徒だ。それも数千年前から生きている長寿の人でもある。それくらいできてもおかしくない。

 しかし、闇マリってやっぱり酷い目に遭ってんだな。

 そう思うと邪神になってしまう理由も頷ける。

 でも邪神の部分だけじゃなく、カルラやアストレアに親しみを抱く部分も残っているのだ。それだけの目に遭っても闇に染まり切らないのは紛れもなく闇マリの美しいところと言える。

 

 というか、そういう部分を早々に理解してたから俺も特に問題視してなかったんだが。

 

 ね、闇マリ。

 

『…………ふんっ』

 

 かわい〜。

 マリアンヌの姿で頬膨らませてふわふわ漂うとか可愛いじゃん。

 そういや、なんでマリアンヌの姿なんだ?

 いい加減元に戻ってもいいと思うが……

 

『その必要はないわ。すでにこの姿で今は定着しているし、我が使徒も親しみを持っているでしょう。ルルクスだろうが闇のマリアンヌだろうが、私は私としてここに在る。あなたの女神であり、邪神である。それにもう、元の姿なんて思い出せないしね』

 

 …………そっか。

 取り戻したいか?

 

『いいえ。……ありがとう、我が使徒』

 

「……ま、待てよ。それってつまり、経験値は……」

「けいけんち?」

「あ゛。い、いや! なんでもない! 気にしないでくれ!」

 

 アニカは青褪めた顔でブンブン首を振った。

 

 アニカもまぁちょっと不思議な娘だよなぁ。

 俺と同じ農民出身で、俺と違って教育とかは受けられなかったらしいが、それにしては随分賢いんだ。可憐な見た目と裏腹に口調は男勝りだが、だからと言って男装しているとかでもない。単にそういうものなんだろうと受け入れたが、なんか驚かれたしな。

 

 竿役特有の心の広さとか言われたが、結局どういう意味なんだ?

 

「ちなみに魔が身体に宿って何か悪影響はあるのか?」

「強いて言えば、死後モンスターに転じやすいことでしょうか。卓越した能力を持つ生き物が魔に転じた際は強力な存在になりやすく、そちらのハイエルフの姉妹などは死後有望ですわね」

「へぇ、二人ともそうなのか。俺と一緒だな」

 

 俺の死後はすでに闇マリに高い値段で買われてるらしいし、死んだ後も一緒にいれるのは非常に嬉しい。死んでも離さないとはまさにこのこと。アリシアさんもアストレアも俺がこの世界から消え去るその瞬間まで一緒にいてもらう。

 

「え……い、いや、ちょっと待ってください。フィンさん、それは一体、どういう……」

「……ああ、言ってなかったか。実は女神様に以前、死後の魂を好きに扱わせてもらうと報告を受けているんだ。どうやら、死んでも楽にはなれんらしい」

 

 楽になる必要もないけどね。

 むしろ死んで快楽が終わらないなんて最高としか言いようがない。

 死後何千年と永遠に苦しみながら漂うなんて素敵だ……!

 俺という自我が喪失するまで痛めつけられたい!

 オギャアオギャッ!

 闇マリママ〜!

 ママの胎内でゴロゴロしたいオギャッ!!

 

「……ええと…………ルルクス様も随分、好みが変わりましたのね……?」

 

 俺の発言の後全員が絶句していたが、エヴァンジェリンはなんというか、何を言えばいいかわからないと言いたげな表情だった。

 

「女神様もそちらの神に散々穢された経緯がある。一度歪んでしまった器は、二度と元には戻らないんだ」

「そういう話ではないのですが……」

「案外、俺と女神様は似たもの同士かもしれんぞおぼふっ!」

 

 ぐああああぁぁああぁぁっ頭の中に【聖撃】がァッ!!

 

 わ、割れちゃいそうだ、頭ッ!!

 

「え、ええと…………先を急ぎましょうか……」

「え、ええっ! それがいいですね!」

 

 話を強引に打ち切るエヴァンジェリンとカトリーナ。

 俺の発言後、瞳の色を失ったマリアンヌは頼れなかった。

 俺の発言後、我を失って脳に【聖撃】を乱射する闇マリも頼れなかった。

 

 アリーシャを犯そうとしたことは決して許せないが、それもなんだか事情がありそうな様子だった。あの時のエヴァンジェリンの表情は見たことがある。モンスターの苗床にされた女性の中で、気丈な者が、耐えてしまった時の表情だった。

 

 ああなるとな、結構厳しいんだ。

 正気なんだけど正気じゃないっていうか……防衛本能が働いて身体は快楽を求めるようになってるし、本人の意思とは関係なく発情もする。無事に地元に戻っても、まぁ、村の男に共有されて喜ぶようになっちゃうとかはよくある話なんだ。

 

 長い苦痛に苛まれながらも正気でいる。

 これがどれだけ苦しいか、想像に難くない。

 きっと彼女も似たようなモノなのだろう。

 

 元々闇マリの使徒だって言うならエッチなんてしてなかっただろうし。

 してた?

 

『するわけないでしょ、不潔な……』

 

 お、おう。

 そうだな。

 

 ……とにかく、俺はエヴァンジェリンを敵だと思ってはいるが、話を聞く価値もあると思っている。

 

 俺だけじゃ意味はないかもしれん。

 だがここにはマリアンヌがいる。

 彼女ならば聖女として培ってきた政治力を遺憾なく発揮してくれるだろう。そしてあとは王都から引き上げてきた師匠達に報告し対策を練れば万全だ。

 

 頼りにしてるぜ、マリアンヌ。

 

「えぇっと……だ、大丈夫? ほら、元気出して? お兄さんそんなヤワじゃないから」

「…………わた、私たちの、せいで、フィンさんは……死んだあとすらも、苦しめられて……」

「ま、まあまあ。うーんと、えっと…………」

 

 マリアンヌを励ましていたアリーシャが困った表情で俺を見た。

 

 ……頼りにしてるぜ、マリアンヌ。

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