深淵の森を歩くことおよそ三十分程度。
闇のマリアンヌの本体がある祠に到着した。
俺とマリアンヌ、あとカトリーナとミューズは来たことがあるが他のメンバーは初めて訪れる場所だ。邪神とは言え神様のいる場所だし神秘的と言いたいところなのだが、巨豚人の蔓延る森に鎮座する邪神の祠である。
どう考えても神秘的とは言えない。
「へぇ。これが祠……」
一方、アニカは興味津々といった様子。
「これに女神様は封印されていたらしい。居心地は悪いそうだ」
「まぁ、どう見ても小せえもんな。デビュラは祠ぶっ壊したのか?」
「いや、そんなことはしていないが……壊すまでもなく普通に現れたぞ」
「それはそれで怖ぇな……」
封印されてた割には当たり前のように使徒作ったり魔を拡散したりと色々やっているので、やはりそこは神の力というべきか。
なんとなく両手を合わせて拝んでいるアニカに場の空気がほんのり和らいだタイミングで、エヴァンジェリンが口を開いた。
「……ここにずっと封じられていたのですね」
そう言いながら、彼女は祠に手をかざす。
何かしようとしているわけでもなく、ただ単純に、その掌でそっと触れた。
元々は闇のマリアンヌの使徒だったエヴァンジェリン。
恐らく皆目麗しい女子同士、キャッキャウフフ、胸おっき~もうエッチやめてよといった具合に素敵な日々を過ごしていたのだろう。そんな中現れた侵略者ことちん○の女神エスペランサによって彼女は文字通り寝取られ、その絶望と屈辱に血涙を流しながら闇のマリアンヌもまた凌辱を受け……ウッ、ウウッ、くそっ、許せねぇぞエスペランサ!
闇のマリアンヌ(闇のマリアンヌじゃない)がエッチな目に遭うなど、絶対に認めん!!
あの絶技も過去に磨かれたものなんだ!
ううっ、胸が苦しいッ!
そんな過去があっただなんて悲しすぎるッ!
でも悔しい、気持ち良くて感じてしまう。
舌の動きがまるで別の生き物みたいに絡みつくの凄すぎて俺も練習して出来るようになった。
ジュルルルズゾッ!
啜る!
闇マリにはやめろって言われるけど。
男ができるのは気持ち悪い、変な顔するな、殺すぞとの評価を頂いている。
「当たり前でしょ……」
あ、顕現した。
場の空気が重くなる。
だが前の様に攻撃的になっているわけでもないので、これが彼女の本体と言うか、神の持つ風格というものなんだろう。威圧しようと思っていなくてもいるだけで圧を発せられる、正に人智を超えた存在だ。
「改めて……久しいわね、エヴァ」
「はい。ルルクス様も壮健で……壮健ですか?」
「見ての通りよ」
微笑みながら闇のマリアンヌは俺の背中から抱き着く。
闇マリそれ好きだよね。
俺も包まれてる感じがして好きだけどさ。
あと背中に闇のマリアンヌのおっぱいが付いて柔らかくて興奮するのと同時に、マリアンヌの身体を弄んでいる邪神をどうにかせねばという気持ちに駆られてしまうのだ。
「俺は女神様にオモチャにされる日々だが、そちらはどうなんだ?」
「わたくしはもうとっくに飽きられていますので、直接何かをされることはもうないですわ。その代わり弄ばれる中で植え付けられたモノが多く、もう狂ってしまっていますの」
困った表情でエヴァンジェリンはそう言った。
「みなさまご覧になったでしょう? わたくしには男性器が付いておりますが、これは女神エスペランサ様に植え付けられたモノの一つになります」
一瞬、彼女は己の衣服に手をかけて、ハッとした表情になり手を離した。
ううむ……こんなに美人でスタイルもいいのに、股間には明らかに異物が浮き上がっている。
ローブ越しに見えてるんだよなガッツリと。
マリアンヌは頬を赤らめて気まずそうに顔を逸らしており、アリーシャは先程のことを思い出して不快になったのか空を見ている。
「ふ、ふたなり……!? マジかよ、リョナエロゲとはいえ何でもありすぎんだろ……!」
アニカが呟く言葉の意味は大半がわからん。
だがエロという単語だけはわかる。
きっとエッチな話だ。
「それと、数千年単位でたっぷり仕込まれてしまいましたので、性の昂りがどうしても抑えられなくなりました。今も、興奮しているんですよ?」
そう告げるエヴァンジェリンの頬は赤く染まり、瞳もギラついている。
「……それでいて不死身か。なるほど、気が狂って当然だな」
彼女の境遇全てが本当かどうかはさておき、闇マリも女神エスペランサによって陵辱され魔を生み出す邪神に墜ちた。その過去を考えればそれくらいしてもおかしくはない。
何より、今こうして魔を撒き散らし世界を塗り替えようと壮大な計画を目論んでいる闇マリでさえ元々民は慈しんでいたと言う。それはカルラやアストレア、マリアンヌへの態度である程度信用出来るものだ。
「長寿と不死は似て非なるもの。わたくしも何度も何度も自刃を試しましたが、死ねません。昔は痛みで泣き叫んでおりましたが、喪ってしまいました。かえって残っていれば、正気を失えたかもしれませんのに」
「なっ……」
い……痛みを喪失した、だと……!?
そ、そんなの、辛すぎるッ……!
痛みというのは生きている証でもあるのだ。
人は痛いと感じるから危機を察知し次に生かせるのだと師匠が昔教えてくれた。俺はマゾだったので熱湯に突っ込んで火傷を負い師匠に何してるんだと説教されることが度々あったが、普通はあそこで『熱湯に手を突っ込んだら痛いんだな』と避けるようになる。
それに痛みがあるから悦びもひとしおなんだ。
それだというのに、痛みを、人から剥奪するなんて……ッ!
しかも何度も死を目的として自傷してしまうほど追い詰められている女性の痛みがなくなってしまえば、それは、そんなのは、人生が灰色どころか暗闇に閉ざされたようなものだ。痛みだけじゃなくもっといろんなものを喪失しているだろう。
「おにーさん……」
「ん? どうしたアリーシャ」
「……んーん、なんでもない」
ジト目のアリーシャに声をかけられた。
ムッ、な、なんか変なことしたかな。
もしかしてエヴァンジェリンの身体ジロジロ見てるの見抜かれた!?
ま、俺は見抜きさせてもらいますがね。
お○んちんが付いていようがエヴァンジェリンは美女だ。
そなたの傷、俺が埋めて見せよう。
さ、俺の穴に飛び込んでおいで。
「死ね」
「ごあああああっ!!」
「!?」
「!?」
「!!?」
ぐ、グフフッ!
突然不意打ちとは卑怯なり、闇のマリアンヌ。
だが幸いなことに他人の目があるためいやらしい部分へのいやらしい口撃ではなくシンプルに俺の目が片方潰れただけで済んだ。
「フィ、フィンさんっ! 女神様、一体なにを!?」
「ちょっ、おにーさん大丈──」
「ぐ、うううぅううぅっ♡」
「──あ、うん。そっか、そうだよね……」
し、しまった!
悦んでいることも見抜かれた!?
アリーシャは心底呆れたと言わんばかりの冷たい視線で俺を見下ろしている。それがまた更に俺の興奮を煽るスパイスとなって全身を駆け巡った。
「お、おいおいっ! 大丈夫か!?」
「へ、平気だ。こんなもの、屁でもない……」
片目を抑えながら勃ち上がった。
フゥッ、ハァッ、フッフッ、ホォッ、ヒィッ、オホォッ♡
「ふぃ、フィンさん、今すぐ治癒を……」
「……いや、マリアンヌ。今はやめてくれ」
「えっ……」
手を離せば、真っ赤に染まった掌。
んー……肉の感じからして、眼窩は砕けてなさそうか。
でも肉が弾けてるな。
闇マリ、目ん玉爆発させた?
「ひっ……」
「お、おにーさん……それ……」
マリアンヌは手で口元を抑え目を見開き、俺のマゾっぷりを知っているアリーシャですら引いている。【超滅】は言わずもがな、エヴァンジェリンも僅かに驚いた気配だ。
気を抜いたら抜いてしまいそうな状況。
必死に堪えながら、震える声で話し始める。
「そちらの事情はある程度察した。俺はあなたを尊敬するよ、エヴァンジェリン」
「えっ……は? い、いきなり何を……というか治療を……」
「子供の頃から俺は痛みとずっと付き合って来た。アリアに轢かれ、師匠にしごかれ、骨を砕かれ肉は弾け痛みで気を失いそうになることは日常茶飯事だった。俺の人生は、苦痛と常に隣り合っていた」
望んでその道を歩いて来たとも言う。
俺は弱いからな。
これしかなかった。
「女のように身体を犯されたことはないが、尊厳を投げ捨て無様に媚び諂い醜くもがいて生を繋ぐことの重さはわかっている。だからこそ、そのような目にあって、逃げることすら許されず、ひたすら神に弄ばれながらも己を喪失しなかった貴女を尊敬する」
俺が同じ目に遭ったらおそらく速攻で快楽マゾ墜ちする。
だからといって自我を喪失するかはさておき、間違いなくこんな強固に耐えようとすることはできない。アリシアさんへの対応を自覚しているからな。速攻で堕ちると思う。
俺の言葉を聞いて、エヴァンジェリンは一瞬目を見開き、すぐに戸惑った表情になる。
「そ、んな……わたくしは、負けて、犯され…………何も出来なかった無様な女ですわ。そんな、尊敬などと……」
「確かに、過去はそうだったかもしれない。女神様を守れず、敵に犯され、屈してしまったのかもしれない。だが今はどうだ。そんな敵に囚われ弄ばれながら、旧主を見つけ抗っているじゃないか。エヴァンジェリンは狂ってしまったのかもしれない。おかしくなってしまったのかもしれない。壊れてしまったのかもしれない。それでも、今ここにこうしてやってきた。それでいいだろ?」
闇マリもなんだかんだ責めたりしないしね。
裏切りものとか全く言わないので、闇マリとしても思う所はあるっぽい。
闇のマリアンヌは素直だが、女神ルルクスは素直じゃないのだ。
上のお口も素直な時はあるんですけれども笑
「ごああああぁああぁっ!!」
「!?」
「!?」
「!!!!!?!?!?」
残っていた片目が爆発して目が見えねェ!
ああっ目から俺の命が溢れ出てイクッ!
このままじゃ死んでしまう!
暗闇の恐怖と痛みのダブルパンチで気持ち良くなってイっちゃうよぉ!
おっと、死なないんだったな。
次は口でも爆発させるか?
いいだろう、俺は決して邪神には屈しない。
この程度の快楽で、決して墜ちたりなんかしない!
「うざ……」
「え、えっと、ルルクス様? あの……いくらなんでも、やりすぎでは……」
「エヴァ。今、私は使徒と愛情を育んでいるの。口を挟まないで?」
「えっ…………わ、わかりましたわ……」
震えた声で呟くエヴァンジェリン。
俺の周りから人の気配が遠のいた。
マリアンヌ、お前もか!
マリアンヌにすら見捨てられるのだけは無理だっ!
闇のマリアンヌ、どうか考え直してくれッ!
「我が使徒。あなた、我が巫女がいながら、なに敵を口説いてるわけ?」
「エッ……いや、口説いてはいないが……」
「じゃあなんでエヴァがあんなもじもじしてんのよ!」
「エッ……せ、性欲が抑えきれなくなってきたとか?」
「エヴァがそんなふしだらな女なわけないでしょうがッ!!」
「ウゴオオオオッ!!?!?」
あ、あひいいぃぃいぃっ!!?
頭が潰れるッ!
地面と闇マリに挟まれて潰れるッッ!
このままでは大地に咲く真っ赤な果実になってしまう!!
「ま、まあまあ、ルルクス様、そのへんで……わたくしには何もございませんから。あまりその、人前でやらしいことをするのはよろしくないですのよ?」
「やらしい!!?!?!?」
うわっマリアンヌ声デカッ!?
まぁ確かに全くやらしい行為には見えないので、その驚きも当然か。
「えぇ……こ、これがやらしい……? リョナエロ……この世界、終わり過ぎだろ……」
「……いや、アニカ。こんなの普通じゃないから。これを標準だと思うんじゃないよ?」
「お、おう。でもリョナエロゲ世界だしこれが案外普通なのかも……てか、デビュラやっぱそっち系か……?」
「あっ……んんっ! ね、話進まないし、一旦止まろ? ね?」
アニカの呟きを聞いて何かを察したアリーシャが、これ幸いと助け船を出す。
目ではみえないが、先程凌辱されそうになったとは思えないほどだ。
本当、頼れる子になったな。
アリーシャが必死に闇のマリアンヌを宥めこの場が落ち着くまで、およそ五分の時を要した。
その間俺はずっと足で踏まれ大地へ顔をめり込ませていたので、目玉が弾けて肉がむき出しになった部分と眼窩に土が詰まりそれを見たアニカが吐くハプニングが起きたが、ちゃんとほじくってマリアンヌに治癒してもらい事なきを得た。
やっぱり俺も治癒手段欲しいよなぁ。
不死身の対策法の一つを学んだよ。