ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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165 メスガキ無双

「──ってな感じで、おにーさんは生えてる聖女さんとマリアンヌちゃんと巻き込まれたカトリーナちゃんと一緒に祠にいるよ♡ 今頃みんなでくんずほぐれつかもね♡ 私も残ればよかったな〜♡」

 

 アリーシャの報告に場は鎮まっていた。

 

 ある者は顔を青褪めさせた。

 ある者は眉間を顰め熟慮した。

 ある者はため息を吐き額に手を当て天を仰いだ。

 ある者は犯されそうになったと気にしてないように告げるも内心気にして怯えている妹の気持ちを読み取り心配そうに見つめた。

 ある者は幼馴染のどうしようもない呪縛に自分が全く関与できていないことや幼馴染同盟(笑)を組んだ仲間が思い人と切っても切れない呪いを共有していることに加え女神に呪われ男性器を生やし過剰な性欲のせいで心を壊してしまった聖女すらも受け入れてしまう幼馴染の度量の深さとこれから訪れるであろう最悪な未来を想像して、死んだ。

 

「あ、あがが……フィ、フィンが……は、生えてる人と……えっち……受け攻め……あばばばーっ!!!!」

「あ、アリアっ!!」

「(考えすぎとも言えんのだな、これが……)あっちが淫らに交わっているかどうかはさておき、少々どころではない厄介ごとだ。どうする、アリシア殿」

 

 アリアが泡を吹いて倒れるのも別に初めてではないため過剰に心配することもなく場は進行する。

 

「そう、ね……。敵意がなかった、いえ、あったけどどうにか出来たのは幸運だった。アリーシャ、あんた大丈夫?」

「んー? ……うん。平気だよ」

 

(──嘘だってわかるのに、もう……)

 

 暴行を振るわれそうになった傷はそう簡単には癒せない。

 気にしないというのも無理な話で、アリーシャも気にしているし、拠点に戻ってきてからも一人になりたがらない辺りは顕著だ。グリセルダもそれを察してか常に側に控えている。それを察しつつも、アリシアはそれ以上深掘りすることはしなかった。

 

(あんたも守られるだけの歳じゃないものね。もう、立派な淑女。あんなものまで受け入れてるんだから、子供じゃないわ。……ま、まあ、巻き込んだのは私なんだけど……里に放置するよりはいいかなって……で、でもでも! まさかフィンくんがあんな変態だとは思わなかったのよ! 仕方ないじゃない! そうだとわかってたら大切な妹呼び寄せたりしないわよ!)

 

「…………なんか、アリシア姉さんもわかりやすくなったね。似てきた?」

「ちょっ……!! だ、誰が何に似てきたですって!?」

「え〜? わかってるくせに〜♡ 卑しいなぁ……」

「卑しい!!!?」

 

 妹からの容赦ない口撃にアリシアは半ば涙目になりつつ、話を元に戻そうと抵抗した。

 

「くっ……んんっ! そ、それよりも、フィンくん達のことよね。実際どうなの?」

「大丈夫だと思うよ。あの人もおにーさんと同じだもん」

「同じ……流石にフィンとてそのような色狂いではな──……ないが……」

「そういうことじゃなくて。もうどうしようもなく壊れちゃってるのに普通に振る舞えるところとかだよ」

「っ……」

 

 アリーシャの言葉に、カルラとアストレアは顔を曇らせる。

 

 初めからそうだったわけではない。

 フィンの全てのきっかけとなったのはアリアが轢いたことだが、彼が壊れたのは幾つもの段階を踏んできた結果だ。

 幼馴染と師に置き去りにされたこと。

 一人で王都にやってきて劣悪な環境で過ごしたこと。

 まだ十五にもなっていない少年が大人や年上の異性に囲まれ陰口を叩かれながら精進し続ける孤独を味わい続けたこと。

 極めつけには、最期の瞬間に至るまで己の力不足を呪い続けたこと。

 

 フィンを形作ったのは女神でも邪神でもなく、この世界そのものと言える。

 

「おにーさんがいる限り、あの人個人が暴れることはないと思うな」

「……そう? ならいいわ」

「女神様はわかんないけどね。エスペランサ様に関しては邪神じゃんとしか思えなくなっちゃったから、そっちがどう動くかはわかんない」

「エスペランサ様ねぇ……確かに昔から普通にあったみたいだし、爺さまの預言も一応あの女神様が告げてるって話だけど……」

「私も、女神様のことは何一つ知らない。まさかそのような所業を重ねていたとは……」

 

 ヴァシリが呟く。

 

 ヨハンの手記にも一切そういった情報は残されていない。

 アニカも同じ転生者であるが、彼女もまた世界設定などに詳しいわけではない。

 あくまで攻略情報をそれとなく覚えていただけで、決してこの世界を作った・何もかもを知り尽くした人間ではないのだ。

 

「…………アニカ。君はどっちだと思う?」

「どっちって……なにが?」

「──世界がそうだから、なのか。それとも女神がそうだからなのか……私には、わからない」

 

 ヴァシリの問いにアニカは察する。

 この世界を変えるため、運命を逃れるために転生者に受けた薫陶を発展させ文明を前進させたのがヴァシリだ。現代日本で教育を受けて歴史も学んできたアニカにとって、ヴァシリのやった偉業は計り知れないものである。

 

 そんなヴァシリですら、女神という桁外れの存在には苦悩している。

 

「……そうだなぁ。前者じゃねーのか? 後者のパターンだと、多分、世界はもうちょっと……終わってると思う。それこそアンタの存在が許されないくらいに」

 

 この世界はリョナエロゲ──女性が酷い目に遭い死んだり痛めつけられたりしながら犯されることに性的興奮をする男性のために作られたゲーム、その物語の舞台だ。

 

 だがその真実を知る者はこの世界にほとんどいない。

 この場にいるのは直接ヨハンによって教えを受けたヴァシリと、転生者であるアニカだけだ。

 

(神が世界そのもの。まぁ、あるにはある。でもここは鯨の体内でもなければ神々の座でもねぇ。同人リョナエロゲの世界だ。DLCの第一弾で邪神ルルクス様だったんだろ? なら多分、この世界の拡張が終わる……最終弾でエスペランサ関連ってところじゃねえか。まだあんのかよとは思うが、剣聖とか南方諸国の遺跡群とかまだ残ってる要素多いもんなぁ……)

 

「あくまでおれの予想だけど、しばらくは出てこない。ただ、いずれ出てくる。最後に相応しい奴が。それまでになにをどれだけ備えられるか、それが大事だと思うぜ」

「……なるほど。胸に刻んでおこう」

 

 アニカの答えにヴァシリは満足そうに頷く。

 

 転生者であるアニカは基本的に受けた教育水準が高く、それこそ当たり前のように知っている概念がこの世界ではまだ知られていないということが多々ある。そのため、彼女は農民出身でありながら明らかに高度な知識を有しているので『高明な師でもいたのか』と思われがちだった。

 

「まあ、それはまだこれから考えてけばいーじゃん。それよりどうする? 祠の近くに拠点構えるにしたってヴァシリおばさんの力が必要だよ」

「それに関しては手を貸すから問題ない。ただ、一人で放置はあまりしたくないな……」

「……でも、その、えっと、生えてるんでしょ? それでいて神の使途……あんまり油断すると、よくない流れになるんじゃない? それこそ、懸念の通りになりかねないわよ」

 

 アストレアの言葉に誰もが口を噤んだ。

 

 そう、彼女を受け入れるとして、どうするかが問題だった。

 

 一人で祠に放置などはできない。

 安全面でも心理的にも性欲を抑えきれない男性器を持った強い人間を置いておくのはリスキーで、そんな人物と女だらけのパーティーで監視するというのもこれまた難しい。

 

「下手すれば、手ぇ出されるわよ。そして……邪神に堕とされる。最悪よね」

「そ、そうだな。そのようなことになれば……ううむ……」

「あはっ♡ 案外それも悪くないかもよ♡」

「アリーシャ、あんた……」

「な〜に、アリシア姉さん♡」

「…………い、いえ、なんでもないわ……そっか、男の人としても見れるのよね……」

「……フィンは私達も付き合いがあったから気にしてないが、流石にそうなると不安が出るな」

 

 すでに関係を持つ者たちの懸念とヴァシリの懸念は違うのだが、アリシアは両者のすれ違いを悟りながら無視した。

 

「……フィンに任せるのは避けたいが、それが一番丸く収まりそうだな」

「ヴァシリ。それだけはダメよ」

「うんっ? そ、そうか? 確かにエヴァンジェリンは女性だが、男性器があるんだぞ?」

「…………だ、だからこそダメなのよ。フィンくん一人じゃなくてもう何人か一緒に居させないと」

「……まぁ、アリシアが言うならば……?」

 

(そうよね……! 常識的に考えてそうなのよね……! でもダメなのよ! フィンくんはなんでも受け入れる底なしなんだから!)

(あはっ♡ アリシア姉さん苦しんでて面白〜い♡)

(ううむ、フィンはそやつも加えるのだろう──フィンが咥える……? ええいっ! 消えろ邪心めっ!!)

(……どうせ一緒にする羽目になるんでしょうね。覚悟だけはしておこうかしら)

 

「うーん、うーん……むにゃむにゃ……ああっ、あばっ、うびび……!」

 

 皆がそれぞれのことを考えていた時、アリアが気絶したまま魘される。

 

 その声にふと場が静かになった。

 

「…………こやつはどんな夢を見てるんだ……?」

「寝てもいないのに寝取られてる夢よ」

「さっきの遺言的におにーさんとあの人がお×××で楽しんでる姿じゃない?」

「あ、アリーシャ様、そのような言葉口にしてはいけませんっ!」

「え〜? お口でするのに?」

「アリーシャ様っっ!!」

「やーん、怒られちゃった♡」

 

 アリーシャは楽しそうに言った。

 

 眉間に手を当ててため息を吐くグリセルダをみて、アニカとドレイクは冷や汗を垂らす。

 

「な、なんてメスガキっぷりだ……いるのか、こんなのが……すげぇ世界だ……」

「……エルフの耳年増なんているんだねぇ……いや、見た目通りの年齢じゃないことは知ってるけど……」

「お、おほほ……なんのことかしら、オホホ……」

「……わ、私知らないから。一緒にしないで」

 

 ハイエルフの竿姉妹は目を逸らした。

 

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