ハァッハァッ全身が痛い最高に気持ちいいッ一歩動くだけで激痛が全身にクるッ痛い痛い気持ちいい気持ちいい致命傷が一個もないから安心して味わえて最高もうたまらんてこんなんヴィオレットもっと俺のこと見てッ心配してッ死なないから安心して心配してッ折れた腕動かすの気持ち良すぎる折れた脚で歩くのだいしゅきいいいいぃぃっっっ!!!!
────…………ふぅ。
いかんいかん、あまりにも幸福すぎて趣味の領分を超えるところだった。
俺のドマゾはあくまで趣味。
金等級冒険者として、貴族のお嬢さんを預かる身として脅威の排除及び仲間を守る事は何よりも優先される。それこそ性癖なんて二の次だ。
それに今回は不可抗力だから。
あのままヴィオレットを離してれば間違いなく彼女は死んでた。
俺の手の届く範囲で人が死ぬなんてありえんことだからな。
──三年前、俺は未熟だった。
奇襲に対応出来ず合同で組んだ連中が死んで、即死を免れた数人を守ることで精一杯だった。それも守れたとは言い難く、相手が俺を嬲ることを愉しんでいたから結果的に誰も狙われなかっただけ。
まあ……俺とはめちゃくちゃ相性が良かったんだけど……
腹ん中抉られて内臓引き摺り出されて目の前で潰されるのとか『もう戻れない』ってのと『こんなんでも喜んでしまう自分に興奮する』ってのが合わさってほぼ逝きかけてた。
でも流石に死人出てるから大手を振って悦ぶわけにはいかないし……
人生で三本の指に入るほどの体験で最高に気持ち良かったが、大量の死者が出てしまったので甘苦い記憶として俺に刻まれている。
あの時、マリアンヌとアストレアが反撃に転じてくれなければどうなっていたことか。
間違いなく死んでたね。
「下がってろよ、ヴィオレット」
「ぁ…………う、うん……」
肩や膝など関節部を的確に破壊された所為で動かしにくいが、負傷した時の身体コントロールに関しては習得済みなので筋肉を強引に動かすことで何一つ不自由なく操作できる。
まずは転がってる盾を蹴飛ばして足場の確保。
メイスはとっくに吹っ飛んだのでもう気にしない。
バキバキに壊れた鎧を外していって、手と足部分だけが鎧を纏った状態になる。
左目が使えないのが厄介だが、死角があるなら見えないなりに知覚しておけばいいだけの話だ。
この程度、何のハンデにもならない。
俺は弱者側だからな。
出来ることは極力出来るようになってるんだ。
筋肉の操作くらい骨が砕けてようが出来るさ。
つーか、それしか出来ない。
師匠には才能ないからそれだけやってなさいと言われたくらいだぜ?
一歩踏み出す。
あ痛いッ動けるだけで普通に痛い気持ちいい。
もう一歩進む。
オッ♡
背中に振動がきてやっべ♡
これ背骨にも絶対ダメージ入ってる♡
これは不可抗力、不可抗力だから!
後ろのヴィオレットにダサい姿は見せらんねぇからな。背筋をピンと伸ばして威圧的に歩く必要があって、その代償に全身痛いだけだから。
うぅ……
ダメージあるのにそれをやせ我慢してかっこいい背中見せつける俺、最高に輝いてるなッ!
オッ……
あっ、うっ……
フッ、フーッ、フーッ、アッ、オオッ、オッ、おおおおっ♡
ダメっこれ以上はダメっイッちゃう出ちゃう声漏れちゃう守るべきお嬢様に大人の男が感じてる声聞かれちゃうのおおっ!!
…………ふぅ。
モンスターを見下ろせるくらい近寄ると、奴は苦しそうに顔を歪め立ち上がろうとしている真っ最中だった。
「流石はモンスター、羨ましい耐久力だな」
「グウウゥゥッ……! ガオオオオォォッッ!!」
跳ね上がった蹴り。
顔面に直撃する前にそれを手で触れて、抵抗せずにそのまま衝撃を受け流す。
手から肘、肘から肩、肩から腰、腰から膝、膝から爪先──衝撃を通すだけで目を剥くような激痛が奔る。
だが、それを食いしばって堪えた。
色んな意味で。
────ゴッッッッ!!!!
大地が割れる。
ただ受け流しただけでこの威力、まともに食らえば命はない。
「ガアアアアアアアアッッッ!!」
先程盾で受け流したような連撃。
一発でも漏らせば即死──だが、そこに技はない。ただモンスターの膂力に任せた甘い攻撃。そんなもの、何百回来ようが下手を打つことはない。
目で捉えられないような速度で放たれようが、それを知覚する手段などいくらでもある。
鼻で、耳で、肌の感覚で。
俺はこの身体を使って戦うことしか出来ないが……
逆に言えば、近接戦闘だけは十分戦える領域にあるんだ。
ガッ──ドガガガガガガッッ!!!
両手を起点に全ていなす。
もちろんヴィオレットの居ない方向へ衝撃が流されるように調整は欠かさない。彼女を庇う後方を除き、周囲の大地が割れて削れ吹き飛んでいく。
──アッ痛いですとても痛いでも気持ちいいッ膝壊れるッ肘壊れるッ!!!
「ッ!! ウオオオオオッ!!」
真上から両手を合わせた叩きつけ。
さっきまでいくらでも当たってた攻撃が全部いなされるようになって焦ったな?
まともに当たれば死ぬ。
巨躯を活かして放たれたそれを、左手で受ける。
そしてそのまま肘、肩へと衝撃を送り、流れるように身を捻る。
大事なのは回転だ。
一つも衝撃を逃さぬよう、威力を零さぬように身体を動かす。
そして半回転したあと、腕を逸らされバランスを崩し隙だらけのモンスターに対し──一気に叩き込む!
狙うは胴体一択!
お前の放った、自慢の膂力から生まれる一撃だ……!
俺も食らいたい素敵な一発、存分に浴びな!
────ドッ……ゴバッッッ!!!
轟音と共にモンスターの胴体へ穴が開く。
情け容赦なく上半身と下半身を分つ一撃は、奴が撒き散らすはずの血肉すらも空へ溶かした。
モンスターの力任せの攻撃ってのは恐ろしいもんだ。俺の攻撃じゃビクともしない奴が、たった一発で戦闘不能になっちまうんだから。
──だからこそ、戦い甲斐がある……!
命を奪うか奪われるか!
俺が死ぬかお前が死ぬか一体どちらが上回るのか!
俺は徹底的に痛めつけられながら常に反撃の機会を狙い、たった一手で逆転する!
本来逆立ちしたって勝てないような敵を!
俺みたいな矮小な人間がぶっ殺す!
いつ死ぬかもわからないギャンブルに全ベットして勝った時の快楽は絶頂より気持ちがいいッ!!
あぁ────やっぱり盾役、最高だ……!!
趣味と仕事どっちも満たせる最高の職業だ。
もうやめらんねえなぁ!
ピクリとも反応しない死体を少し睨み、確実にくたばったことを確認してから姿勢を崩す。
二の矢もない。
俺のところに来たのはこいつだけか。
あと一体くらいきても楽しめそうだけど、守る相手がいる以上来ないことに越したことはない。
「ヴィオレット、ポーションくれ」
「……………………」
「……ヴィオレット?」
後ろに振り向くと、口を半開きにして俺を見つめるヴィオレットが。
怪我したとかではないと思う。
全部ちゃんと流したから彼女に被害は一切ない筈。
近づいて──アッ近付くだけで痛気持ちいい!
手を目の前でぶんぶんすると流石に気がついたのか、顔を真っ赤に染めた。
「あ、あわっちょちょっと待って少し待ってぇ!!」
「いいけど、ポーションくれ」
「はいぃっ!!」
ポーチごとぶん投げられたので受け取る。
オッ♡
右腕痛った♡
追撃上手だね、結婚しよ。
中からポーションを取り出して、口の中に突っ込んだ。
「ウグッ……」
オゴゴッ、内臓がやっぱ傷付いてたな。
普通に食らいまくったからいつもより全身満遍なく負傷してる。マリアンヌと合流したら回復してもらわないと後に響くな。
ジュクジュク言いながら治る肉体。
そして迸る痛み──怪我をしたら治しても激痛を味わえるのが本当に最高。
一撃で二度美味しい。
帰宅後念の為神殿にも行こう。
俺の趣味は全身のケアが欠かせない。
何度も繰り返し痛みを得るためには、普段から肉体を健康で保っておかねばならないのだ。
内臓が弱くなったのはもうしょうがない。
あん時弄ばれて生き延びれたことを嬉しく思うしかないなぁ。
「ふー……よし。怪我はないか?」
「うん……怪我は、ないです」
「そうか。守れてよかったよ」
一応笑いかけておく。
これがトラウマになって戦えなくなるとかはあんまり好ましくない。あの状況で見捨ててくれって言える時点で有望な娘なんだから、これを糧にもっと強くなって欲しいね。
俺は決して最強ではないけれど、才能がなくたってこの程度はやれるようになる。
俺を参考にはしないで欲しいが、努力することの大切さは学んでほしい。
視線がぐるぐると巡ったあと、俺の身体を一瞬見て、真っ赤な顔のままヴィオレットは言った。
「うん……うんっ。えと、その……ありがとう……」
「おう。どういたしまして、お嬢様」
「おふっ」
?
変な声が出ている上に顔を両手で覆っているが、怪我をしてるわけじゃないし……あっそっか、俺の身体か。
インナーだから目のやり場に困るよね。
上下で隠してるタイプの奴だから腹とか足が露出してる。
でも隠せるものないんだよな……
…………。
貴族のお嬢様に肉体見せつけるの、たまんねぇ……!
これは合法! 合法だから! 不可抗力だからしょうがない!
湯浴み中にバッタリ出くわしたのと同じくらいしょうがないことだから!
ウヒョヒョヒョ!!
貴族のお嬢様に下賤な平民の身体、見せつけちゃうよ〜〜ん!
『アンタ、大真面目に気持ち悪いから』
はい。
すみません。
調子に乗ってました。
戦い終わったあとだから興奮が後を引いてたんだ。決して今のは俺の本心じゃない。俺は紳士だからな。
こんな変態みたいなこと、考えたこともないね。
ちなみに湯浴み中カルラに遭遇した時は普通にそのまま一緒に入った。
俺はめちゃくちゃチラ見してたが、カルラは全く動じず俺の裸を見ていた。
東方諸国だと男女一緒だから慣れてるらしい。
恐ろしい文化だと俺は心底震え上がった。
特に関係はないが、暮らすなら東方諸国がいいなぁと思った。
本当に他意はないんだが、文化的にも俺は馴染めると思うんだ。関係はないんだけどな。
────
──
────
「む。来たか」
「お疲れさま。無事みたいね」
合流地点では、すでにカルラとアストレア達が居た。
盾にインナー、手足だけ覆う鎧の変態スタイルだが二人は特に気にしていない。
クロエとルシール?
なんか固まってるよ。
フフ、お嬢様にこの姿は“刺激的”すぎるか。
「ちょっとアンタ、また鎧壊したの? 今年何回目?」
「これで五回目くらいか。はは、金が吹き飛ぶな」
「笑い事じゃないのよねぇ……! 身体を大事にしなさいよ!」
俺が壊したくて壊してるわけじゃないし……敵が強いから仕方ないじゃん。
決して俺の所為ではない。
「まあ、鎧がフィンの命を守っていると考えれば安いものだろう」
「そうだけど……んもー、しょうがないわね」
「金はまたコツコツ稼ぐさ。それよりアストレア、マリアンヌは?」
「あっち。もう近くよ」
指差した方へ視線を向ければ、確かにマリアンヌと殿下が歩いている。
手を振れば、殿下は嬉しそうに、マリアンヌはやや渋い表情で手を振り返してきた。
俺がそんなに焦ってなかった理由の一つにアストレアの存在がある。
彼女は風さえ通ってればかなりの距離まで音を拾えるのだ。
どこまでが限界かは知らんが、やろうと思えば〈瓦礫の山脈〉全体を探るのも容易の筈。いつもは『疲れるしめんどいからやらない』と言ってるが、戦闘時はその技術を惜しみなく使ってくれるのでいつも大助かりだ。
それに加えて彼女はめっちゃ強い。
当たり前だが俺の何倍も強い。
この理不尽さは師匠に似ている。
なので、本当にヤバければアストレアの援護が飛んでくるし、他二人も同じくヤバかったら彼女が率先して助けている筈だ。
俺のところに援護すら飛んで来なかったってことは余裕だと思われたか、彼女が援護する前に俺が終わらせたってことに他ならなかった。
少し待って、二人が合流する。
殿下は二人の女子と同じように一瞬こちらを見て目を細めたが、すぐに逸らした。
「皆さん、ご無事でしたか」
「当然よ。私があんな雑魚に負けるわけないでしょ」
「同感だな。〈剣聖〉は随分と甘く見られているらしい」
「俺の方も、強かったが相性が良かった。あのくらいなら問題ない」
やはりみんなも襲撃されていたようだが、この余裕っぷりである。
無傷のカルラ、無傷のアストレア、無傷のマリアンヌ、鎧が砕けて打撲やら何やらで負傷してる俺。
う〜ん、格の違い。
劣等感で若干もやるがこのモヤモヤもまた気持ちがいい。
くうっ、美人冒険者三人に寄生プレイする盾役と蔑まれる俺……!
今はまだ尊敬されているが、そのうち彼女達にもバレてしまうのだろう、俺が三人と比べて弱いということがッ!
『えっ、先輩ってもしかして弱い……?』
そう気が付いたリリーガーデンの四人は、フィン・デビュラへの対応が杜撰になっていく。
肉体でどうにかするしか芸のない盾役なんだから無理をしてでも守るのは当然でしょ? やがて彼女らは、盾としてしか活動できない俺を放置して……
……ちょっと違うな。
そんなひどい娘達じゃないし、ボツ。
「今治しますね。【上級治癒】」
アッ問答無用!
しかし、内臓やら何やらはさっきのポーションで処置が終わっているため大したことがない。骨折もさっきので治しちゃってるから打撲から痛みがすっと抜けた程度のものだ。
身体がすっと軽くなった。
「ありがとうマリアンヌ。いつもすまないな」
「そんな……フィンさんのお役に立てて嬉しいです」
かわい〜。
しかしマリアンヌはその笑顔を曇らせ、俯いてしまった。
「その……申し訳ありません。実は、取り逃してしまって……」
「……あれは仕方ないでしょ。事前に準備してたタイプの転移ね」
あー……
なるほど、そっちに首魁が居たか。
本命は殿下だったのか? てっきり俺達全員殺すために来たと思ったんだが。
「私のところは風使いだったわ。一瞬でぶっ潰したけど」
「こちらは斬っても分裂するモンスターだった。言語を扱えぬ、ただそれだけしか能力がない雑魚だったが」
「私の方は、【聖撃】が通じないモンスターでした」
「殴る蹴るだけの獅子だった」
「となると、仕込んだ逃走か。致し方ないな……」
傾向を察するに、しっかり対策自体はしていたみたいだ。
普通盾役なんてそれ以上の火力で殴り潰せばいいと思うよな。
気持ちはわかる。
でもまあ、俺はそういう相手に対して相性がいいから運が悪かったとしか言いようがない。
「逃したとなると……また来るか?」
「一応ギルドに報告しときましょ。今はそれでいいと思うわ」
「……ですね。不手際、申し訳ありません」
「止める暇もなく転移したんだろ? それはマリアンヌの責任じゃない」
相手が一枚上手だった。
そもそも不意打ちで襲撃されてるんだから、相手を取り逃す可能性は十分高い。しっかり対策して逃げる手段まで用意されてるんだからしょうがないことだ。
「だから気に病まなくていい。また襲って来るなら、その時確実に仕留めればいいさ」
ぐりぐり頭を撫でる。
マリアンヌはくすぐったそうに目を細め、頷いた。
────
──
────
「〈獅子王〉が負けたか……」
一人逃げ出した〈叡智〉は、転移先のセーフハウスで呟いた。
〈獅子王〉とは魔王の付けた名だ。
南方の熱帯エリアで王として君臨していたモンスターを魔王が屈服させ、名を与えたことで進化を果たした個体である。
魔王によって名付けられたモンスターは多く、〈獅子王〉のような強者から喋ることも出来ない低級モンスターまで天と地ほどの差があり、その中でも特に強力なモンスターには数字が振り分けられていた。
1から100までの数字で管理された彼らを〈
〈獅子王〉に刻まれたのは
正面からならば勇者とすら殴り合える魔王軍随一の力を持つ、近接戦における最高戦力の一角だった。
「〈変数〉を殺すには、より上位の能力が必須か」
物理における最上位で通用しないのならば、もっと別の方向から攻めねばならない。
貴重な戦力が失われたのは確かだが、それを補充する手立ては無数にある。
何も焦ることはない。
〈叡智〉はそう考える。
瞳に未来を映し、新たな場所へ転移しようとした、その時。
「────【聖剣抜刀】」
──ゴオオオォォォォッ!!!!
木々を薙ぎ倒し、大地を削り、極光が〈叡智〉を飲み込んだ。
──彼は、〈獅子王〉が負けるとは思っていなかった。
なぜなら、〈獅子王〉が負ける未来を観測していなかったからだ。
三年前も同じく、勝った後の未来が見え続けていた。
負ける未来が見えないのだから備えようもなかった。
それは変数、フィンと戦うことで起きる変化だと思っていた。
フィンによって〈獅子王〉が敗北し、たった今未来が変化したのだ。
故に気がつけない。
否、気が付いた時にはもう遅かった。
フィンと関わった時点で、彼の未来視が不完全なものとなったことに。
〈叡智〉はその瞳に、己の末路を見ることなく死んだ。
未来視を司るモンスターは、未来視の関与出来ぬ存在に干渉したからこそ死んだのだ。
「……どうかな?」
「命中。転移する暇もなく消し炭になったわ」
「よしっ。流石は【魔弓の射手】、バッチリだね!」
「仕留めたのは貴女でしょ、【勇者】さん」
光り輝く剣を鞘に納め、【勇者】は笑みを浮かべる。
一方で【魔弓の射手】は眉間に皺を寄せ、状況を訝しんだ。
「まさか人類圏に〈
「うーん、なんだろ。軍師っぽい奴だったし国に干渉してたのかも?」
「そうなると、とんでもなく厄介よねぇ……」
ハァ、と【魔弓の射手】がため息を吐く。
「師匠、何かわかる?」
「残念ながらサッパリだ。私の知識も完全じゃない。アリシアの言うように国に干渉してた可能性が最も高いと思うが……」
師匠──そう呼ばれたのは、銀色の髪と褐色の肌を持つ女だった。
ただし、その耳はエルフのように尖っている。
腕を組み豊満な胸を見せつけるように考えた後、首を横に振った。
「どのみち帰ればわかることだ。最悪国王が乗っ取られてるかもしれないし、十分警戒していこう」
「やだなぁ……敵はモンスターだけでいいのに」
「内ゲバは人類の得意技さ。諦めよう」
「うぅっ、いやだぁ〜〜。人はもっと輝けるし尊いんだからぁ!」
「ほんっっと拗らせてるわね……」
呆れる【魔弓の射手】アリシアに対し、【勇者】は答える。
「拗らせてないもん。私は知ってるだけだもんっ。希望に向かって走り続ける、本当の意味を……」
【勇者】の脳裏に浮かぶのは、一人の少年。
同じ村に生まれ、同じ環境で育ち、彼女と違い才能を有していなかった少年。
どれだけ辛い想いをしても、どれだけ苦痛に苛まれても、どれだけ現実に打ちのめされても、決して歩みを止めなかった。
ただ一人、勇者と称えられる少女が置いてけぼりにならないように。
血反吐を吐いて、苦しみながら共に居ると吼えた。
必ず追いついてみせると。
何度でも諦めず挑むと。
絶対に孤独にしないと言った、大切な人。
──一人の女の子を救った、たった一人の英雄。
「…………ふふ。早く会いたいなぁ、フィン……」
伝家の宝刀(銀髪巨乳)(最強幼馴染)