ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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182 カルラとマリアンヌ

 アリアが度し難い性癖をしているかもしれないという事実に目を瞑った三人は一旦解散した。

 

 ヴァシリは気絶し泡を吹いているアリアの介護。

 アリシアは疲労し休息をとる為に自室へ生き、マリアンヌはその足で仲間の下へ足を運んでいた。

 

「そうか……ついにそなたも知ってしまったか……」

「……その……正直言えば、まだ信じてはいないのですが……」

「致し方ないだろうな、それは。私だって実際に見せつけられなければ信じることなど出来なかったに違いない」

「み、見せつけられ……!?」

「なんだ、それは言われておらぬのか。私の時は、まあ、いつも通り風呂に入ったらフィンの肩に接吻の痕が残っていてな。問い詰めたらいい加減にしろと反撃を喰らい、それはもう猛り昂ったイチモツを腹部に押し付けられ今この瞬間ヤるぞと迫られてしまったのだ」

「いっ、いちも……それって、その、言わば……」

「こちらの言葉でち○こと申す」

「いいいいっ言わないでください!」

「……そなたは愛らしいな……」

 

 初めて自分がフィンの裸を見た時はどんな反応をしていただろうか。

 

 そもそも男の裸など見慣れたものだ。

 だが好いた男の裸など初めて目にしたものだから、不自然なほど凝視していたような気がする。なんならフィンも私の身体をじっと見ていた。今にして思えば、あの時もっと本気で迫っていればよかったのではないだろうか。

 

 今となっては何もかも遅い。

 それにフィンフィン見たくらいで慌てふためくような純情さはもうなくなった。ここにあるのはすっかり躾けられてしまった卑しい女である。昼は剣を握り夜は剣を磨く淫らな女剣士。父上、誠に申し訳ございませぬ。迦楼羅は男を知ってしまいました。

 

 もう取り戻せない青さを見せるマリアンヌに目を細めつつ、事細かく説明するために口を開いた。

 

「初めてフィンにそういう目で見られてると自覚したら、すっかり動転してしまった。何を血迷ったのか相手の女性と相談したいと言ってしまい、フィンもおかしいからなぜか相手の女性に共有し……」

「う、うわぁ…………」

「紆余曲折あっていざお相手の女性に会いに行ったら、アリシア殿だったというわけだ」

「…………あ、あの、その、すみません待ってください。当たり前のように言ってるんですけど、フィンさんが、えっと、その……もしかして、カルラさん、フィンさんと……?」

「うむ。何度も愛されておるぞ」

「ピッ」

 

 頭をガツンと殴られたような衝撃。

 

(な、何度も、あ、あい、愛され、愛されて…………?)

 

 いかにマリアンヌとてフィンの半裸くらいは見たことがある。

 

 冒険者として活動していれば泊まり込みの仕事なんかもあるわけで、水で濡らした布で身体を拭くだけで済ませて立つのは本当に嫌だった。臭いと思われてないか、不潔だと思われてないか。女として見られてなかったらどうしよう、だからといって積極的になるなんてことは出来ない……そんな葛藤に苛まれたことなど数え切れないほどだ。

 

 とはいえ、複雑な乙女心が発揮され、布で身体を拭うフィンの上裸をチラッと横目で見たりしていたのだ。

 

 流石に陰部までは見たことがないし見る気もない。

 嫁入り前にそんなふしだらなことをするなど言語道断。

 そんな彼女の清楚な価値観を全て吹き飛ばす衝撃発言は、それこそフィンがマゾヒストだという情報よりも深く彼女の脳を穿った。

 

 マゾヒストかどうかは本人が言わなければわからないが、肉体関係に関しては疑いようもないからだ。

 

「あっ、あああっああいあい愛されっ…………!!?」

「こちらの言葉でセッ○スと申す」

「う、う、う、う、うそっうそだっなんでもう抜け駆けしたのどうしてひどいなんでっ!?」

「……成り行きとしか、言えぬ……」

 

 成り行き。

 そんな、そんなもので、好きな人との初めてを奪われたの? ※別に奪ったわけではない。

 私、私がずっと密かに抱いていた想いは、愛は、成り行きなんてものに負けるの? 相手を想うことがいけないの? 嫌われたくないと想うことがいけないことなの? どうしてそんな淫らなことをした人が恵まれて、あなたの隣にただ居たいと思う私がこんな目に遭うの?

 

「そんなっ、そんな、そんなのっ、それじゃあ私がバカみたいじゃない!!」

 

 私だってフィンさんにもっと近付きたかった。

 

 そっと身体を寄せて、肩と肩が触れ合うような距離で歩いて、手と手が当たって互いに意識をして、躊躇いがちな私にフィンさんが珍しく強引に手を取って……そんな恋をしたかった。

 

 でも、出来なかった。

 フィンさんがどう思っているのか、怖くて、踏み込めなかったから。

 

「なんでっ、なんで私はっ!! こんなにも、臆病なの……?」

 

 勇気を出して想いを伝えていれば、今頃──後悔がマリアンヌに押し寄せる。

 

「……マリアンヌ。私からそなたに言えることなどありはしない。何を言ってもそなたにとっては憎き仇の言葉となろう」

「…………」

「だが、それでもあえて言わせてもらうとすれば──仕方なかったのだ」

「…………仕方……なかった……?」

「そうだ。そなたも知っての通り、私とアストレアもフィンに懸想していた。だが、踏み込めなかった。特に私は、色々やらかしすぎていたからな。今更好いているなどと言っても信じてもらえなかっただろうし、寧ろ、フィンに憎まれていてもおかしくなかった」

 

 カルラはその昔、フィンに横柄な態度を取り、更に依頼中に何度も何度もフィンに刃を当てている。

 

 今もフィンの身体にはカルラの剣先が生み出した古傷が刻まれているのだ。

 

「私が愛をどれだけ告げようが、フィンからすれば憎しみを抱くような相手。いっそのことこの身体を好きにしてくれと言えれば良かったが、それすらも拒絶されれば、私は消えることしか出来なくなる。…………そうするべきだった。だけど、出来ぬ。離れたくなかったのだ、【払暁】から……」

「…………カルラ、さん……」

 

 謝罪したとはいえ、そう簡単に忘れられるようなことではない。

 

 今でもフィンに憎まれていても文句は言えないとカルラは自覚している。

 

「実際、何度か身体を重ねた時、うむ、まあ、その……なんだ。こちらの肌にも傷が残るようなことをされたことがある」

「っっっ……!!?」

「何度も叩かれた。頬も、乳も、腹も、尻も……やめてくれと懇願しても、寧ろその手は早まった。フィンとて人間で、男だ。女に劣ると陰口を言われ続け、私とアストレアが積み上げた苦痛は今もしかとフィンの中で燻っている。縛られ鞭で叩かれながら、ようやくフィンを満たしてやれると思うと、中々よい気分になってくるものだ」

 

 嬉しそうな表情で語るカルラに、マリアンヌは背筋が凍り付く。

 

「やっと、やっとだ。やっとフィンのために生きていける。これでフィンのために命を使える。愛している。そなたもこれからは一緒だ。なあに、怖がることはない。そなたの胎に収まる大きさではないが、フィンのはものすごいぞ。内臓が丸ごと引きずり出される様な感覚がするのだ」

「ひっ……」

 

 立ち上がったカルラはマリアンヌの後ろに回り込み、指先でそっと彼女のお腹をなぞった。

 

 そのままゆっくり上にずらしていき、谷間をこえ、鎖骨近くまで登ってから止まった。

 

「ここ。ここだ。ここまで貫かれるぞ?」

「ひ、ひいっ……!?」

「ふふ。安心するがよい。我らがたっぷり解してやろうぞ。仲間ではないか」

 

 怯えるマリアンヌをカルラがそっと抱き締める。

 ビクッと身体を跳ねたマリアンヌは逃げ出そうとするが、純粋な力比べでカルラに勝てる筈もない。少しもがいてから、荒い呼吸になって力を抜いた。

 

「フィンを愛しているのだろう? それくらい、受け入れなければな」

「っ、はっ、ふ、ふっ、ふぅ、や、やだっ、そんなのっ……!」

「…………だが実際大真面目にこれくらい大きいしありえないくらい太いぞ。マリアンヌが耐えられるかどうか……いや、恐らく平気だろうが……アリーシャに挿入ってるし……」

「ひっ、ひっ……。……え!!!!!!?!?!?!」

「おおっ!? そ、そなた急に声が大きくなるな……」

「あ、アリーシャさん? う、うそでしょ? アリーシャ? なんで? 私とアリアンロッドさんが、触れられてないのに、アリーシャさんが?」

「…………ううむ、そなたが心配になってきた。そんなに愛らしくてはフィンに壊されてしまうぞ」

「フィッ、フィンさんはそんな乱暴しないもん!!」

「わからんぞ? フィンとて男だ。穢したくないと思っていた存在が、自分を愛している、好きにしてくれと言って来たら……それまでの鬱憤を晴らすかのように爆発してもおかしくない。うむ、大いにありえるな」

「そ、そんなぁ……!!」

 

 青褪めた顔とは裏腹に、マリアンヌは頭の中でその日を想像する。

 

 紆余曲折あって迎えた初夜。(※初夜ではない)

 身を清めた二人が向かい合い抱き締めあう。

 互いの体温、心臓の鼓動、ドクドクと早まる血流。

 二人は顔を見合わせて、ゆっくりと唇を近付け──瞬間、フィンの股間が隆起し喉元まで顕現する。男性器? 否、それはまるで腕のようだった。

 なんの前情報もなくそんなモノを見せつけられた日には、自分は正気ではいられないだろう──そこまで考えて、マリアンヌは顔を真っ赤にする。

 

「わ、わあああああっ!! 違う違うっ違うのぉっ! こんなえっちなのダメなのにぃっ!!」

「お、おおっ。こら、暴れるな!」

「こっこんなえっちなこと考えるだけで不純なのにっ! わたっ私はっ!! 聖女なのにっ!!」

「(いや、元々それなりに性欲見せてただろう……)まあまあ、マリアンヌよ。高潔・清廉、大いに結構。だがな、それを相手に押し付けてはいかんぞ?」

 

 フィンは確かに高潔で清廉かもしれないが、男だ。

 

 聖人君子の如き精神性をしているが、男だ。

 

 女が好きで、性欲もあって、度し難い性欲もある。

 

 これまでの自分達にとってのフィンがおかしかったのだ。

 寧ろとっとと手を出させてハーレムにでもしておけばよかったとすらカルラは思っている。自分からはとても言い出せないが、フィンが近付いてきていれば間違いなく受け入れていただろう。マゾヒストなのはともかくとして。

 

 フィンへの神聖視が崩れ、徐々にフィン・デビュラニ十歳男性として見れるようになってきたマリアンヌは、涙ながらに呟く。

 

「う、ううっ、でもっ、こんないやらしい女じゃ、フィンさんに……」

「うん? 聖女の肉棒を受け入れてる男がそんなんで怯むわけないではないか」

「………………………きゅう……」

「あっ。ま、マリアンヌっ! しっかりしろっ!」

 

 崩れ落ちたマリアンヌを抱き締めそっとベッドに横たわらせてから、カルラはふと思う。

 

「…………どちらかと言えばおかしいのは私の方だな……」

 

 常識的に考えて好いた男が複数の女と関係を持っていて度し難いサドマゾ趣味を持っていて現在進行形で男性器の生えた女性に犯されているというのに、それを受け入れてしまっている自分のおかしさに気が付いてしまった。

 

「ふ、ふふっ……もう、戻れぬのだな……」

 

 自分の常識がすっかりおかしくなっていることを改めて思い知り、険しい表情で溜息を吐いた。

 

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