ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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183 一方その頃、転生者は……

 エヴァとの大戦(おおいくさ)を終えて拠点に帰還し、汗やらなんやら諸々の液体と臭いを風呂で洗い流した俺は、専用のトレーニングルームでみっちり身体を苛めていた。

 

 昔は持ち上げるのにも一苦労だった器具をぐっと持ち上げ、下げて、上げる。

 

 師匠曰く、身体が完成してない内は強度を高めるのはよくないとかなんとかでガキの頃は制限されてたんだ。

 

 言われるがままのメニューをこなしていたが、王都に出てきてから筋肉どころか体力を保つことすら難しくなってしまった為に記憶にある限りどんな効果があってどんな結果を得られるのかを手探りでやっていたわけだが……

 

「っ…………ふぅぅ……」

 

 ドスン、と器具を床に置く。

 

 筋肉が引き攣るような感覚。

 じんわりと疲労が蓄積し動かすのも一苦労だが、それがなんとも心地いい。色んな意味で気持ちいい。

 

 いやぁ、やっぱり俺が自分で考えてやってたのとは大違いだ。

 

 意識しないと鍛えられない場所が刺激されて最高だぜ。

 普段から使ってる部分は日々の生活でも成長しててくんだが、そうじゃない部分はどうにかして鍛えるしかないんだよなぁ。

 

 盾役なんかやってると必然的に身体は仕上がっていく。

 というか、仕上がらないと死ぬ。

 内臓はどう足掻いても鍛えられないしどんな生き物にとっても弱点に他ならないので、如何に内臓を守るかが大事となる。

 

 それつまり、骨と筋肉そして肉。

 

 師匠にボコボコにされ続けて骨折も何度もした結果、俺の骨はかなり強くなっているし、筋肉も相応に硬い。ただまあ、王都での生活で十分な食事を摂れなかったからその分衰えた部分も多く……師匠が合流してからおよそ一年近く、みっちり鍛えた成果がようやく身体に現れ始めた。

 

 程よい脂肪と内側に隠れた筋肉。

 勿論こんなの巨豚人とかを相手にすればあまり意味はないのだが、賊やそこらの低級モンスターが相手ならばこれだけで強固な鎧となる。

 

 刃も牙も通さない脂肪と筋肉の鎧。

 これこそが盾役として最も適した肉体だ。

 

 更に言えば肉体を追い込むことで苦痛を味わい俺は気持ちいいし、身体は完成されていく。

 

 まったく、なんて素晴らしいんだトレーニング。

 一石二鳥、いや三鳥だ。

 

「うおおお……よくそんな重量普通に持てるな……」

「これくらいやんなきゃ皆に追い付けないからな。身体を追い込むのは得意なんだ」

「いやぁ……すげえ、いいもん見た。おれなんてこんくらいが限界だからさぁ」

 

 悔し気にそんなことを呟きながら、アニカは肩回りを育てる器具に座った。

 

 それはいいんだ。

 いいんだが────なぜアニカはそんなえっちなファッションなんだ?

 

 お腹が出ていてノースリーブ。

 さらに言えばズボンもとても短く、太ももがほぼ全て露出している。

 確かにトレーニングをする時は汗が尋常でないほど流れるし体温も上昇する。ぶっちゃけ日照りの砂漠を歩いているのと同じくらい辛い。辛いからこそやる気になる。

 

 とにかく、喉も乾くし全裸でやりたいと思ったことは一度や二度じゃない。

 

 気持ちはわかる。

 わかるんだが……え、えっちすぎる。

 アニカは普通におっぱいが大きいので胸がめちゃくちゃエロい! さらに言えば、そう、下品なんですが、あの、はい、形がわかります。具体的には言えない。言ったが最後、フィンフィンが新たな器具となってアニカの下へ飛び出してしまうだろう。

 

『おいおいデビュラ、これはなんだ?』

 そう言いながらアニカはフィンフィンを勃たせた俺を蔑むように睨み、ズボンを押し上げるフィンフィンへ足を伸ばす。『恥ずかしい野郎だな、こんなんでハーレム作ってんのか? マゾ野郎が』ペッと唾を吐き捨て濡れた顔をその足で踏みにじり、フィンフィンから溢れ出した液体と混ざり合って俺の顔面が穢されていく……

 

 むっ、むうううっ……!!

 

 す、素晴らしい……!

 アニカのかわいらしい声から男勝りな口調、こ、これはたまらんっ!

 恐らくアニカを受け入れてしまったら、おれは可愛い顔した男も性的対象になってしまうだろう。エヴァによって棒のすばらしさを知ってしまった以上、もうこれは避けられない変化だ。

 闇のマリアンヌ、俺を助けてくれっ!

 俺はっ、俺はまだ女の子だけを好きで居たいんだっ!

 

『イイ……』

 

 え?

 

『我が使徒。むさくるしい男とのまぐわいは許しませんよ』

 

 いやそれは流石に俺もちょっと……。

 

 仲間全員寝取られた後なら可能性はあるが、そんなことでもない限り堕ちる気はないぞ。

 

『しかし、細身の男ならば許しましょう』

 

 結局男じゃねえか!

 しかも細身の男限定? まァ確かに俺も最近前よりゴツくなって美少年なんてことはとても言えない見た目をしている。そこら辺の冒険者と比べても太いのだ。こんなのがむさくるしいおっさんとまぐわっていたらこの世の地獄と言っていい光景になってしまう。

 

 だがいくら細身でも男は男じゃないか?

 

 そんなの不潔だろ。

 

『は?』

 

 ヒイッ闇のマリアンヌの闇の部分!?

 

「よし。デビュラ、悪いんだけど補助してくれね?」

「む、わかった。さっきやってくれた感じでいいんだな?」

「ああ、頼んだ。いやぁ、まさか異世界転生したのにジムで筋トレが出来るなんて思ってなかったわ」

「いせかいてんせい……? なんだって?」

「……あっ、ああ、うん。こっちの話、うん。……め、女神様に聞かれてないよな?」

 

『……面白いから聞いてないことにしていいわよ』

 

「聞いてないことにしていいそうだ」

「……なぁそれ聞かれてるよな? 絶対聞かれてるよな? おいデビュラ。その変な口笛やめろっ!」

「ん゛ん゛っ! 俺にはよくわからないし大丈夫だろ、多分」

「大丈夫じゃねーよ! 一番聞かれちゃマズい相手だよ!」

 

 そうなの?

 

『んー……まぁ、うん。やろうと思えば外の世界と接続して魂引っ張るどころか直接召喚とかも出来るようになるから、退屈してる神が知ればあの手この手で遊ぼうとするんじゃないかしら。ああ、私はやんないわよ。外の世界なんてどうでもいいしね』

 

「……アニカ。安心しろ。俺も一緒だ」

「何が!? 全然安心できねえよ!!」

「それよりホラ、トレーニングトレーニング。実力は継続してこそだぞ」

「ぐううっ……! な、納得いかねぇっ!」

 

 ぷんすか怒りながら、アニカはゆっくりと両手でバーを握った。

 

 そして、そのままゆっくりと上へと上げていく。

 

「くっ……ふっ……」

 

 女性が扱うにはかなりの重量だが、見る限りアニカは無理をしている様子もない。

 

 一目でわかるのはおっぱいの大きさだけではない。

 俺と同じ農民出身で師匠のような存在に出会ったわけでもないのに、独学でしっかり鍛えてきているのだ。凄まじい努力をしたのと同時に、彼女自身の優秀さが伺える。

 

「四……五……六……七……八……」

 

 俺の補助なんて要らないんじゃねーかと思うくらい順調だ。

 

 フォームも綺麗でよりおっぱいが強調されている。

 

「九……十……十一……十二っ……十三ッ……」

 

 声に吐息が混ざり始めた。

 

 顔も赤くなってきた。

 辛くなり身体に刺激が入り始めた証拠だ。

 

「十四っ、十五っ、十六っ、はっ、十七っ、十八っ、じゅう、きゅうっ、に、じゅうっ……!!」

 

 二十回を達成し、彼女は大きく息を吐く。

 

「だはああぁぁあぁぁ~~~っ……!! ふっ、はぁっ、ひぃっ、き、きっつうぅ……!!」

「それじゃ、大体三分くらい休憩挟むぞ。タオルと水だ」

「さ、さんきゅ~~……」

 

 ヘロヘロになったアニカに水を手渡せば、ゴクゴクゴクっと勢いよく飲んでいく。

 

 魔導具のおかげでいつでも冷たい水が飲めるのは非常にありがたい。

 俺に魔力とかはほぼないに等しいので贅沢は出来ないが、幸いなことにこの拠点には魔力持ちがたくさんいるからな。おかげさまで便利な器具を扱えるってワケだ。

 

「ふぃ~~っ……かあぁぁぁ~~っ、これがたまんねえんだよなぁ!」

「おいおい、おっさん臭いぞ」

「いいんだよそんなこと気にしなくて。おれは冒険者だぜ?」

 

 タオルで顔を拭い、豪快に髪もバサバサと拭いていく。

 

 ふわっ……。

 

 ふおおっ、いい匂いがする!

 女の人のいい匂いだ!

 汗と混ざり合って非常に、その、えっちです。

 こんなにえっちなのに「おれ」とか言ってんの? フゥン、えっちだね。フィンフィンが元気になってきたよ。

 

「と言ってもなぁ…………」

「……お、おい。なんだよその目。やめろよ」

「すまんすまん。いや、しかし、実際そのスタンスは危ういぞ」

「はぁ、危うい?」

「ああ。俺は仲間で見慣れてるが、そこらの男が今のお前を見たら躊躇いなく襲うだろうな。性的な意味で」

「…………は、はぁっ!?」

 

 先程とは全く違う意味で顔を真っ赤にしたアニカが、手に持っていた水を溢して動揺した。

 

「まず顔が良い。性格も付き合いやすい。出自も気後れしない。それでいてスタイルが良くて無防備な姿を晒してくる……となれば、まあ、襲うだろ」

「お、襲うって、おまっ、お前!」

「いや、そのおっぱいでそんな否定されても……」

「おっぱ……!? さ、最低だぞデビュラっ!!」

 

 バッと胸を隠したが肌が露出している面積の方が圧倒的に多く、顔を真っ赤にして睨まれても全く恐ろしくないし、なんならフィンフィンに刺激が来る。

 

 が、今のトレーニングはプライベートでありながら仕事の一環でもあるので、ふざけたりはしない。

 

「真面目な話だ。アニカ、俺は今お前を性的な目で見ている」

「せっ、性的な目で!!!!!?!?!?」

「普段から周りを女で囲まれてハーレムパーティーだの肉張り形だの言われまくってる俺でも見るんだ。ちゃんと自分の魅力を認識して身を守らないと、いつか痛い目見るぞ」

「ぐ、ぐうっ……!」

 

 カルラなんかが一番わかりやすい。

 普段の服装からしてかなりエッチだからな……

 その分男にちょっかいをかけられやすいのだが、本人がすこぶる強いので男側がいつも酷い目にあっている。

 やっぱり俺も一回くらいお尻触って指折られとけばよかった。

 

 で、アニカがカルラと同じように出来るかと言えば……難しいだろう。

 

 カルラは東方諸国における良家のお嬢様だが、それと同時に卓越した剣士だ。

 

 一人で歩いてこちらまでやって来た時点で並大抵ではない。

 

 冒険者よりも危険がある賊狩りで路銀を稼いでいたと言うくらいだからな。人を斬ったり傷つけたりすることには慣れてるんだ。

 

 アニカも強いが、カルラ程じゃあない。

 

「い、いやでもっ、お、おれは、おれはっ……!!」

「……まぁ、無理にとは言わん。そういう恰好で居たいだけで男に魅力的だと思われたくないってんなら、それを貫き通すのもいいと思う。少なくとも俺はお前をそういう目で見ないし、見ても絶対に手を出さないと誓うさ」

「ぇっ…………お、おう…………?」

 

 アニカは無防備すぎた。

 

 俺に対して。

 あのね、確かに俺はカルラが風呂に入って来ても手を出さなかったけど、あれは普通に手を出す度胸がなかっただけだから。

 

 童貞捨てて複数の女性と関係持った今、そういう度胸もそれなりにあるわけで……

 

 単刀直入に言えば、フィンフィンが抑えきれません。

 

 だから頼む、アニカ。

 もうちょっと俺を男として警戒してくれ。

 仕事みたいなもんだから決して今襲ったりはしない。しないが! 焦らされてるみたいで興奮しちゃうのおおおぉっ!! アリシアさんっ! 今夜イキますっ! 鞭と蝋燭の用意をしておいてください!

 

「よし、それじゃあ大体三分経った。もう一回だ」

「え゛っ……ちょ、こ、この空気で? なあそんなこと言われてまともに出来ると思うか!?」

「仕事は仕事だろ。俺にだってそれくらいの分別はあるぞ」

「…………はぁああぁぁ~~~? ……しゃっ、釈然としねぇ~~……!!」

 

 まだ赤い顔のまま、アニカはタオルと水を俺に渡してバーに手をかけた。

 

「……………………」

「……………………」

「…………な、なぁ、デビュラ。めっちゃくちゃやりにくいんだけど……」

「安心しろ。俺は紳士だから決して襲ったりしないぞ」

「それが怖えんだよっ! て、ていうか、正面から『そのおっぱいで』とかさぁっ! デリカシーないって!」

「その乳房で性的な目で見るなというのは、無理だ」

「言い方の問題じゃねえよ! ったく、んだよもうっ! 変なこといいやがって……」

 

 ぶつくさ言いつつも、アニカは何度か深呼吸をしてからトレーニングを再開した。

 

 ……うん。

 このおっぱいで性的に見るなは無理でしょ。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 トレーニングを終えて汗を流した後、アニカはベッドで横になっていた。

 

 眠ろうとして目を瞑っているが、寝苦しいのか何度も見がえりをうって、最終的に起き上がり頭を掻きむしった。

 

(──だあああぁあぁっ!! くそっ! ね、眠れねぇっ……!! デビュラが変なこと言うからっ!)

 

 身体は疲れてるのに目が冴えてしまい、眠れない。

 

 その原因はフィン・デビュラとの会話にあった。

 

(あ、あんな真っ直ぐ性的な目で見てるとか……言うなよマジでっ!)

 

 確かに自分でも無防備な服装をしていたと思う。

 

 王都に来るまでは女性だけのパーティーで警戒するもクソもなかった為に今よりずっとラフな格好で過ごすこともあったが、王都に来てからはいつどこで男が現れるかもわからないエロゲ世界である為にちゃんとした服装をしていた。

 

 装備を決して手放さず、トイレに行くときすら一人では絶対に行動しない。

 

 ドレイクは警戒しすぎだと呆れていたが、リョナエロゲ世界の業を知っているアニカからすればそこまでやっても恐怖心が残っている有様だった。

 

 リョナエロゲ世界で、理不尽が降りかかってこないわけがない。

 

 元男ということもあり、男性の性欲を甘く見るなと言い聞かせパーティーで警戒していたのだ。それは【星天】と合流してからも変わらず、パーティーメンバーが初顔合わせでフィンに対して一瞬で仲良くなったのに対し、アニカだけは警戒して一線引いていた。

 

 それがいつの間にか、あんな下着同然のインナーで無防備に筋トレをする仲になって……

 

(ま、ままままずいって! いくらデビュラが紳士でもリョナエロゲだぞ! このままじゃまずいっ! おれが攻略されてる!? 他の連中相手にしろよ!!)

 

 そもそも邪神が憑りついた哀れな青年だ。

 原作改変を敢行したヴァシリによって人生がゴロッと変わったフィン。

 それに対して尊敬や哀れみを抱くことはあっても、敵意を抱くようなことは全くなかったのが良くなかった。

 

 この世界の男性が基本的に竿役で構成されていることを知っているアニカからすれば、フィンの気安さと紳士さは張りつめていた糸を自然と緩めてくれるような存在だった。

 

 自分のことを女として見てこない。

 だんだんと男友達と接するような感じになっていき、今となっては薄着になって、密室で、汗を流し合っている。

 

(おっ、落ち着け、おれ。いくらデビュラがいい奴だったとしても、あいつには推定ラスボスの邪神が憑りついてんだぞ。死んでも死なない、邪神のおもちゃ。まともなわけがねえんだ)

 

 アニカはこの世界のシナリオを知っている。

 本来の道筋から既にかけ離れているが、この世界を生きる人間が知る由もない情報を持っているのだ。

 

(ふーっ……よ、よし、落ち着いてきたな。後は、うん。デビュラは紳士だし、あれだってただの忠告でそれ以上でもそれ以下でもない。意識したら負けだ)

 

 ──まず顔が良い。性格も付き合いやすい。出自も気後れしない。それでいてスタイルが良くて無防備な姿を晒してくる……となれば、まあ、襲うだろ。

 

「…………~~~っ……!! く、くそっ……!!」

 

 自分が、そういう目で見られている。

 紳士で、たくさんの女に囲まれていて、その女達に恋慕を向けられている男に。

 

「くそっ、くそっ、お、おれは、おれはっ……!!」

 




なんだァ? てめぇ……(先行入力)
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