フィンと想いを伝えあったけど、私にはまだ理解が及んでない部分があった。
それは、その、フィンの……シモ事情に関すること。
〈聖剣〉は私に見せる記憶をかなり選んでたみたいで、私はフィンが複数の女性と関係を持ったという事実だけは確認したけど、肝心な本番行為を見てなかった。
見なくていいと言われたけど、そういうわけにもいかない。
フィンと想いを伝えあったってことは、つまりこれからフィンともえ、えっちするわけで……驚くべきことに、信じ難いことだけど、えっちしてない女は少数派になってるらしい。
マリアンヌちゃんすらしてるらしい。
裏切りだよねそれ。
許さないから。
と、とにかく、このまま私だけ処女で居たらどうなるか……
──ようやく結ばれた幼馴染。
想いを伝えあった男女は初夜を迎え、私は初々しく床に着く。
だけどフィンはもう何人もの女性と身体を重ねていて、今更女体なんて物珍しいものでもなく……慣れてない上に痛がったりする私はフィンを満足させることも出来ずに初夜を終えて、その日の翌日、フィンは慣れ親しんだ他の女性の下へ……ああっ、うわあああああぁぁっ!!?
そ、そんなのいやだああああっ!!
折角フィンと両想いになったのに、そんなっ、えっちの上手さで負けるなんていやだ!
だからと言って知らない男の人とえっちする気にもならないし、そんなのフィンからしても嫌だと思う。……たぶん。フィ、フィンなら興奮するかもしれないけど、これ以上フィンを苦しめたくない。
だから私は決意した。
フィンの記憶にあるえっちを見て、フィンがどうしてくれたら嬉しいかを研究するって……!
『うーん……ボクは止めといた方がいいと思うけど……』
〈聖剣〉は見たから言えるんでしょ!
私は見てないんだよ!? それでフィンが『アリアって思ってたよりつまんないな』とか言い出したらどうするの!?
『言わないんじゃないかな……』
い──や、い~~~や、甘い甘い!
フィンはそりゃあいい男だけどさ、いい男だからこそ今みたいにヤりまくりモテまくりになってるんだよ。それなのに幼馴染がいつまでも芋っぽい状態じゃあ、飽きられるに決まってるもん!
フィンを信じてないわけじゃない。
フィンと幸せえっちしたいの。
わかるよね、聖剣。
『……気持ちはわかる。でも、あの子はそのままのアリアが好きだと思うけどなぁ』
フッ、そんなんじゃダメだよ聖剣。
そんなのは女の幻想だよ。
化粧の厚い女よりすっぴんがイイだなんて言う男は嘘つきだってドレイクさんが言ってたからね。フィンだってえっちが上手な女の方が好きに決まってる!
『…………ま、まぁ、否定はしないさ』
ほら!
ほらそうじゃん!
やっぱりえっちが上手な方が好きなんだ! う、ううっ、く、苦しいっ、これがフィンの味わってた感覚なんだね……!? 幼馴染がッ、好きな幼馴染がいつの間にか都会でやらしい女に染められてっ、う、ううっ、うごごごっ!
と、と、とにかくっ!
私は決めたの!
これ以上フィンに関することで遅れを取らないって!
フィンのことは全部わかった。
フィンのことを支えていく自信はある。
でもね、私は一番大事な男女としての関係をまだ築けてない。こんなの、寝取られるでしょ……!
『寝取られるも何もアリアはまだ寝てないけど』
やかましいなぁ!
これから寝るんだよ!
フィンとイチャイチャラブラブえっちして初めての子供産むんだからいいの! そのために私は処女の床上手になるんだっ!
あなたは私の〈聖剣〉でしょ!
私と他の女、どっちの味方なのさ!
『……そんなに言うなら見せるけど、本当にいいんだね?』
もちろん。
私はフィンがどんな変態でも構わないよ。
寧ろ私のためこんだ性欲を舐めないで欲しい。こっちは十年近く欲求不満で今すぐにでもフィンを襲いたいくらいなんだから。
『はぁ……わかったわかった。ボク、止めたからね? 必要ないって言ったからね?』
それでいいよ。
これは全部私が必要だから見るの。
楽じゃないことはわかってる。
苦しくて辛いことだってわかってる。
でも、私はもうフィンの人生を乗り越えて受け入れたんだ。
私がえっちの記憶なんかに負けるわけないでしょ!
──意識が、希薄になっていく。
『それじゃあ、その間ボクが身体を預かっておくけど……気絶しても起こさないからね?』
ふふんっ、私だってもう二十歳なんだからそんなえっちの記憶くらいで気絶するわけ────
◆◇◆◇◆◇◆
「……というわけで今、アリアはフィンがエッチしてる視点を見て勝手に脳破壊されてるよ」
「お、おう……」
部屋に戻って来たらアリアが聖剣になっていた。
赤い瞳で呆れた顔をしている。
アリアと同じ顔でアリアらしくない表情。
なんだかイケない気持ちになりそうなのを堪えながら口を開く。
「なんというか、アリアも変な奴だな」
「……キミにだけは言われたくないと思う」
「いくら俺でも好きな女が他の男に抱かれてよがってる姿なんて見たくないぞ」
結果的にマゾ的快楽を受け取って気持ち良くなるのがいいのであって、妄想以外で寝取られるのはとてもじゃないが許せない。
だと言うのに、アリアは……自ら俺が他の女性陣とえっちしてる姿を見に行くなんて……。
俺にはとても真似できない。
これが、世界に選ばれた勇者と凡人の差なのかもしれない。
「いやぁ、全然耐えれてないよ?」
「耐えれてないのか……」
「うん。あっ、今ちょうどカルラとアリシアとの乱○見てるね。あっ気絶した」
「……まあ、アリアが積極的で何よりだよ」
見られて嬉しいもんでもないが、否定的じゃないならそれはそれで。
もう今更清廉ぶることなんて出来んからな。
かつて童貞だった頃の俺はもういない。
魂童貞と闇マリに罵られようが、現実としては複数人の女性と関係をもっている貞操観念ゆるゆる冒険者だ。娼館に行ってないだけの高級肉○である。アリア、幼馴染が女たちの慰み者になっててすまん……!
アリアァ!
俺とお前と師匠で三人幸せック○しようぜ!!
あと聖剣も交えて二人分の快楽を送り込んでやるッ!
オッオホオオオォオオォォオッ聖剣が俺の鞘に!!?
「とにかく、そんなワケでね。アリアが戻ってくるまでもうちょっと時間がかかるんだ」
「そうか……せっかくだし目の前で見せようと思ったが」
「……うん。キミのそういうところ、ボクは結構好きだよ」
「……? ありがとう……?」
びっくりした。
聖剣が急に好きって言ってきたのかと思った。
「でもちょっと待って欲しい。流石にアリアにその、生本番を目の前で見せつけるのは……どうだろう。ちょっと、ね? 厳しいんじゃない?」
「そうか? アリーシャとか受け入れてたが」
「それは……そうなんだけど……」
「それにアリアがガッツリスケベなのは知ってる。ガキの頃はどちらかと言えば俺の方が性的な対象として見られてただろ」
そう言うと、聖剣は目を逸らした。
「…………でも、アリアは泣いちゃうよ?」
「…………ならやめる」
それを言われると俺も辛い。
俺も禁欲出来れば一番だけどさぁ。
もう今更出来ないんだよ。
本当に情けない話だとは思ってる。
我慢しろって話なんだ、それだけなんだ。
わかってても、もう、無理なんだ。
だってずっと我慢してたことを気にしなくてよくなっちまったんだ。隠さなくてよくなったんだ。一度でも表に出してしまったら歯止めがきかなくなるってわかってた。だからずっと隠してたんだ。
でも……もう俺は、味を楽しんでしまった。
自分で味変をしてる。
もう、知らない生活には戻れない。
端的に言うと、もっとたくさんエッチなことがしたいです。
「ごめんね。アリアはキミを受け入れるよ。今はただ、心の準備が必要なんだ」
「……ああ、わかってる。こんなことで絶望したりはしないさ」
「……エッチの話なんだけどなぁ……」
エロいことが出来ないだけで絶望するなんて、実に俺は愚かだ。
だけどそれが俺の本質だ。
師匠の教えを胸に生きて来た。
胸を張って生きれるように必死に言い聞かせてきたんだ。
全部開放する気はないけど、それでもいいとアリアは言ってくれた。だから俺は俺なりに、醜くて嫌いな俺と折り合いをつけて生きて行きたい。
「それで、お前は?」
「…………え゛。もしかして、ボク?」
「それ以外誰がいるんだ?」
アリアが今なにをしているのかはわかった。
直接見せるのもよくないとわかった。
それじゃあお前は?
聖剣はどうするんだ?
「えっ、と…………ボクはその、アリアの後がいいんじゃない?」
「俺に聞かれても。それでいいのか?」
「もっ、もちろん。だってボクに身体はないんだよ。心はあるかもしれないけどアリアに身体を借りてるんだ。さっきはエッチしよっかなんて言ったけどあれは時間稼ぎであって本当にアリアより先にエッチなことをするつもりは、そんなになかったからね?」
「あるにはあった、と……」
アリアのことをエッチだのガッツリだの言っているが、聖剣も中々スケベである。
そもそも俺のエロい記憶を全部見てるっぽいし、アリアより間違いなくスケベだ。
というか当たり前のようにアリアのおっぱい見せつけてたの忘れてないか?
「あ、あれはっ、大事な話があるのにキミが止まらないから!」
「闇マリがいたら出来ない話だっただろ?」
「それは結果論でしょ!!」
闇マリは明日の朝には復活してるだろうが、暫く戻ってこない。
胃もたれするとかなんとか。
エッチだと思った。
「……まあ、やぶさかではないことがわかったら十分だ。俺からお前にしてやれることなんて何もない。逆にそれ以外にして欲しいことがあれば何でもするけど」
「……い、いや。保留でいいよ」
「保留……ククッ、なるほど……そういう腹積もりか……」
間違いなくアリアとのエッチの時に介入してくるつもりだ。
俺にはわかる。
アリアとの初々しいエッチが終わった瞬間、彼女の瞳の色が変化してあら一転攻勢! 先程まで生娘だったアリアの手に聖剣が握られ赤い瞳に見つめられながら俺を鞘とせんと真っ直ぐに挿入され……
「うん、変な妄想してるでしょ」
「!!?」
「そんな驚いた顔しなくてもわかるよ。これからはアリアもわかるようになるんじゃないかな」
「バ、バカな。アリシアさんくらいにしか見抜かれないのにっ……!?」
「見抜くも何も、ボクは君の中身を知ってるもん」
ふふん、と聖剣は得意げに胸を張る。
たゆんっ。
「……見てるなぁ、えっち」
「目の前で揺れたらそりゃ見るだろ」
「堂々と言わない。ボクだって女なんだよ?」
「女だから見るんだろ……?」
そう告げると、聖剣はやや面食らった顔をした。
「……えっと、一応、剣だよボク」
「……? それが?」
変なこと言ってるか?
「あー……ううん。変だけど、変じゃないね」
「そうか……? すまん、よくわからん。気に入らなかったら言ってくれ、改める」
「……ほんと、そういうところだよ」
ジト目で聖剣に見つめられてしまった。
しかし、興奮する訳にもいかない。
欲情しないように、しかし欲情してしまうような目を耐えろ、と。
ククッ……なるほど、そういうことか。
いいだろう、俺は屈しない。
そんな目付きで睨まれたってそう簡単に喘いだりするものか。
幼馴染の前だ。気張らせてもらおう……!
「…………はぁ。実際に目の当たりにすると、結構なもんだね、これ」
そう言って、彼女はパタパタと顔を仰いだ。