ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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205 塚本迦楼羅の贖罪

「……フィンの事情は理解した。仕方のないことだったね」

 

 師匠がため息交じりに呟く。

 これに関して、俺は間違えてないと思ってる。

 たとえどれだけ見た目が良くて富に恵まれてる男であっても家族に尻の穴に杖をぶっ刺せなどとは言えないだろう。

 

「自分を頼ってもらえなかったというマリアンヌくんの気持ちもわからなくはない。だけどやっぱり、デリケートな問題だ。そのまま放置してたと言うなら良くないけれど、神殿で治療を受けていたのならば私はフィンの選択を尊重したい」

「…………」

 

 ベッドに横になったマリアンヌはぷくっと頬を膨らませている。

 

 ほっ。

 よかった、あんまり怒ってないみたいだ。

 ここ最近、あんな風にかわいく怒ることがなかったからマリアンヌを苛立たせてしまったかと思っていたんだが、少し安心した。

 

「それに、治療行為とはいえ、その……下半身丸出しで四つん這いになる必要があった。見られたくはない」

「よ、四つん這い……」

 

 ゴクリ、と部屋中に息を呑む音が響く。

 

 エッ、な、なんですかみなさんじっと俺のこと見つめて。

 

「いや……そなたのイチモツを見てなお無感情で治療活動が出来るのは、紛れもなく神官の鑑だと思ってな」

 

 ぶんぶんとマリアンヌ以外全員が首を縦に振った。

 

 し、師匠まで!?

 

「セラフィーヌくんは聖女の中で最も高潔だとも言われている。神殿での治療の他に、個人的な時間を使い治療を受けられないような貧しい者の家を巡る活動もしていたそうだ」

「それほど高潔なれば……さもありなん」

 

 うんうんと頷きながらカルラが言う。

 

「……いや、普通に神官が治療中に邪なことを考えないのは当たり前じゃないか?」

「それは、そうだが……そなたのは普通ではないからな。一度目にすれば、夜眠れなくなるくらいには衝撃的だ」

「そんなに」

「逆に考えるのだ、フィン。もし乳が胴体と同じくらい大きくて、それが二つもついている女子(おなご)が歩いていたらどう思う?」

「そ、そういうことか……」

 

 確かにそんなのが居たら俺も思わず目で追ってしまうだろう。

 

 だけどもうそれは性欲とかではなく、単純な驚愕。

 

 なにをしたらそんな大きさになるのかと驚き見てしまうに違いない。

 

「んんっ! 話を元に戻そう。ええと、つまりフィンは、私のことはどうしたい?」

「どうって……これまで通りでいいだろ。何か困るか?」

「いや、困らぬが、そなたはそれでいいのか」

「いいに決まってる。カルラ、これまでお前は俺の身体に数え切れない斬撃を与えてきたし、数え切れない位罵倒してきたし、役立たずがと睨まれながら舌打ちをされた回数も何回かある」

 

 場の空気が凍った。

 

 具体的に言えば、師匠とアリアがカルラに向ける圧が増えた様に感じる。

 

「っ……そ、の通りだ……!」

 

 歯を食いしばってカルラが耐える。

 

 あの頃のカルラは苛烈だった。

 背中、脇腹、腕、足、ふともも……。

 全身いたるところに斬撃を浴びた。

 ここがお前の隙だと言わんばかりだったな。

 今でも夜になるとたまに古傷が疼くんだ。

 その度にゾクゾクッと心の底から気持ち良さが溢れ出して、オ、オオッ、オレもう!

 

「私はそなたの敵だと思われても仕方がない。わかっている。たとえ許しを得てもそなたにしたことは消えぬ。だから委ねたいのだ。身勝手にも愛してしまったからこそ、そなたが思う様に扱って欲しい」

「じゃあ、どこにも行こうとするな」

 

 即答した。

 

「あのな、カルラ。ずっと捨てられるかもしれないって思ってたのはこっちの方だ。今はこんな感じになってるが、どうしてわざわざカルラやアストレアみたいな美人を手放さなきゃいけないんだ?」

 

 本当に、どうしてみんなそこまで離れようとするのか。

 

「さっきも言ったが、そもそも嫌いな奴と一緒にいたりしない。そりゃあ、昔はさ、いくら気持ち良くても辛いときはあったよ。死にたいって思ったりもした」

 

 頭を下げたままのカルラが震える。

 

「心のどこかで、そのことを恨んでるのかもしれない。でも俺は、そうありたくないんだ」

「フィン…………」

 

 きっと俺の本質は、恨み妬み憎悪を抱く攻撃的な人間なんだ。

 

 だけど、俺は恵まれた。

 

 師匠に育てられ価値観を学べた。

 嫉妬を飲み込む術を得た。

 恨みを消化する術を得た。

 アリアに轢かれてマゾになった。

 セリナが居てくれた。

 マリアンヌが居てくれた。

 カルラもアストレアもずっと一緒に居てくれた。

 

「俺はアリアの幼馴染で、師匠の弟子で、【払暁】の盾役だ。決して仲間を裏切らない、見捨てない、堅牢な盾。例え魔に浸されようが、俺はこれを忘れるつもりは一切ない。だからカルラ、これからも俺の傍にいてくれ」

「っ……本当に、よいのか……?」

「いい。というか、ハーレム壊したがる男はいない」

「み、身も蓋もない!」

 

 アリアが耳元で叫んでイクッ!

 

 いや実際ね?

 実際考えたら当たり前なんだけど、ハーレム手放す男とかありえないから。前までの俺はそもそもそういう対象として見られてないと思ってたけどマリアンヌにすらエッチな目で見られてたと言われたことで自信がついた。

 

 そう────俺は、ハーレムを築いたのだと。

 

 こうなっては流石の俺も自己肯定感がほんのちょびっとだけ爪の先っぽくらいは出てもおかしくない。いつ寝取られるんだろうとドキドキ胸が痛んで夜も眠れないくらいだ。

 

 知らない男が周りに現れたら俺の精神は瞬く間に崩壊していくだろう。

 

 もしそうなったらどうする?

 俺の理性は保つのか?

 意味の分からない言いがかりをつけて男に攻撃しないだろうか。

 不安で仕方がない。

 そんな男ではありたくないが、自分の女が奪われそうになっても何もしない情けない男ではありたくない。

 

「フィン……。これまでずっと、すまなかった。これからも、そなたの傍にいさせてほしい」

「俺の方こそ、こんな奴でいいのか?」

「フィンがいいのだ!」

 

 カルラが涙混じりに叫ぶ。

 

 俺も、皆がいい。

 皆が居ないと生きて行けないんだ。

 

「……というわけでアリア、すまん。ハーレム出来ちゃった」

「で、出来ちゃったじゃないでしょ!! ノリノリじゃん!」

「ハハハ、もっと早く言ってくれればな」

「う゛っっっ!!!」

 

 アリアは呻くと、その場で胸を抑えてうずくまった。

 

「ど、どうしたアリア!? おっぱい揉むか!?」

「も、も、も、揉まなくていい!! う、ううっ、私が勇気を出していれば、うっ、うううっ……!」

「ワハハ、逃した魚は大きかったなぁ、勇者殿」

「む、むきーーっ!!」

 

 ニヤニヤとカルラがアリアを煽れば、いつも通り沸騰した幼馴染が唸る。

 

 ──ほっとしたのは、俺もだ。

 

 アリシアさんや師匠にはああ言っていたが、ハーレムなんて嫌だって言われたらどうしようって不安があった。

 

 いや、逆に考えてみろよ。

 複数の男に囲まれていて全員に愛を囁いている女とエッチなことをしたいか? 俺はしたい。なんなら他の男とまぐわりなさいなんて命令されてハイッ女王様ァッと地べたに這いつくばって男同士で不本意なエロを行い情けない盛り上がり方をするのもアリだ。

 

 だが、それは俺がどうしようもない変態だから成立するのであって、普通の男は嫌がるとわかっている。

 

 それでも皆、良いって言ってくれた。

 なんだかそれが、俺が少しでも愛されているんじゃないかって思える理由の一つになりそうな気がする。

 

「アリアンロッドさん……! 気持ちはわかります! 私もあの時さっさと告白しておけばッ!」

「マリアンヌちゃん……! うんうん、そうだよね! フィンは変態だけど「オホッ!」…………へ、変態だけど「ううっ♡」……!! 変態っ! 変態っ! すけべっ!」

「むほほほほっ!?」

 

 お、幼馴染が顔を真っ赤にして罵って来るゥ!!?

 

 お、おおおおっ!!

 

 なんて気持ち良さッそうだこれだッ俺はずっとこれを求めてたんだッ!!

 

 アリアに虐められてェ!

 絶頂して罵られてェ!!

 た、たまらんっっっ!!

 

「う、うわぁっ……ビクンビクンしてる……」

「……どれ。このまま勃ったままというのも、無作法というもの……」

「カッカルラさん!!!??!?!? なに脱いでんの!?」

「なにって、ナニするために決まっておろう」

「は、はああぁぁああぁぁ!!?」

 

 ん? なんか今扉の向こうからも声が聞こえた気が……

 

「クックック……フィンの傍にいてよいと言われたのだ。我即挿入可準備万端也」

「なに!? なんて言ったの今!?」

「これは東方諸国とこちらの間に存在する国の言葉だ。『私は準備万端ですすぐにでも挿入できます』という意味になる」

「ひ、卑猥すぎる!」

「いや、普通に東方諸国の言葉だったよね?」

 

 師匠の冷静な突っ込み。

 だがカルラは既に突っ込まない限り静止することはない。

 堂々と全裸になって俺を押し倒したカルラは、自慢の胸をぎゅっと腕で寄せて、淫靡な姿で言う。

 

「ふふ、フィン。目いっぱい愛してくれ。好きなだけ愛でてくれ。この身体も、心も、全て──そなたのものだ」

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