いやぁ、堪能したぜ。
姉御肌のドレイクとおれっ娘アニカによる同時責め。
辿々しいアニカに対しサドっ気全開のドレイクが主導し、泣き喚く俺を見て心の中の兄貴が爆発し始めたアニカによる男心をくすぐる甚振り。
素晴らしく甘美なひとときだった。
ただ、あと一歩でフィニッシュという段階でドレイクに呼ばれてしまったので残念ながらミッションコンプリートとはならなかった。今日はこれでいいや。
「アニカ。まずは謝らせて欲しい」
二人に頭を下げる。
ドレイクも同席しているが、元々下手なことを口にするつもりはないので問題ない。失言はしてしまうかもしれない。だが誠意を持って話し合えば分かり合えるのだ。俺がよくわかってなくてもなんか上手くいってばかりだったが、今回は俺がなんとかしなくちゃいけないからな。誠心誠意努力するつもりでいる。
「俺はアニカのことを可愛くて魅力的な女の子だと思っているが、きっと、こういう言葉自体が不快だったんだろう。すまなかった」
返答はない。
が、無視されているわけではないので、そのまま続けた。
「あくまで忠告という形で言っていたが、無礼だった。アニカが下着姿でいることに平然としすぎていたからこのままではよくない事になりかねないと思って言ったんだが、これも配慮に欠けていた」
「…………」
「…………」
頭を下げているので何が起きているのかわからんが、少し騒々しい気配がする。
「あと、俺がマゾだというのは事実だ。お前のビンタで興奮し、絶頂しそうになっていた」
「…………デビュラ。アンタ何しに来たんだい?」
「エッ、な、何って、謝りに来たんだが……」
呆れ声のドレイクに答えた。
「…………アニカ? どういうことだい?」
「……えっと……これは、なんつーか…………」
「……アタシは何を聞かされてるんだ?」
場を沈黙が支配した。
言われてみれば確かに、どうして俺は自分がマゾであることを口にしたんだ?
いや、謝る上では必要なんだ。
おそらくアニカには俺がマゾであることはバレていた。
そしてなんなら、行為に及んでいるところを見られていたか聞かれていたのだろう。いくら立派な拠点と言っても居住区は狭い。
扉越しに聞かれてしまったと俺は考えている。
俺がマゾであるならこれでも気持ちいいのかよ、とあの時ビンタの後言われたんだ。そしてそれに対し俺はマゾだぞと問い詰めるように言ってしまったから、俺に責められていると勘違いしたアニカは逃げ出してしまった。
うむ、やはりこれは口にしなければいけなかったな。
俺はマゾなんだ。
そして、そんな俺をマゾだと知り、同時に俺が複数の女性と関係を持っている事にも気がついてしまったからこそ、アニカと俺はぎこちなくなっていたのだ。
これを解決する方法は一つだけ。
全て肯定した上で、誠心誠意、アニカの不快になることはしないと伝えることのみだ。
「恐らくだが、アニカは俺が他の女性と淫らな行為に及んでいたことを知っているんじゃないか?」
「うぇっ!!!?!?!?」
「……エッ、し、知らない?」
「…………し、知ってる……けどよ……な、なんでそう思ったんだ?」
「今謝ったことと関係しているが、アニカにビンタされた後に『こんなんでも気持ちいいのかよ?』と言っていただろう。俺はそこで見られてたか、聞かれてたと思った」
そう言うと、アニカはあんぐりと口を開けて、その後に顔を両手で覆って俯いた。
「だから俺は、アニカに対して隠し事は無理だと思い告白した。俺はマゾだ。盾役としての仕事は天職だと思っている。腹を突き破る槍、噛みちぎられた腕、引き千切られた腑、流れ出ていく血……至福のひとときだ。俺は傷つき苦しむことで快感を得ているんだ」
「…………ひ、ひぇ……」
アニカのか細い声が響く。
隣に座っているドレイクは呆然としていた。
「とは言っても、これを表立って楽しむことはなかった。趣味は趣味で仕事は仕事だからな。そうやって生きてきたんだが、ある日を境に女性と密接な関係になった。それを皮切りに、今に至るんだ」
「…………い、いや、あのねぇ……あ、アタシは何を聞かされてるんだい!?」
動揺したのか、ドレイクが叫んで立ち上がる。
「アニカ! アンタ笑って話してたけど、下着姿で男と二人きりになるなんて何考えてるんだ!?」
「そ、それはそのっ、おれも不注意だったよ……」
「不注意で済むもんじゃないよ! デビュラがたまたま手を出さなかっただけで、その場で犯されても文句は言えないさ!」
その言葉に、アニカはビクリと身体を震わせた。
随分と過激だが間違いではない。
あんな格好で俺みたいな男の前にノコノコ現れれば襲われるのが世の常だ。
アニカは俺の前でしかやらないだろうが、その油断こそがまさに命取り。ゆえに、俺はアニカを言葉責め……じゃなくて、忠告する事にしたんだ。
「お、犯さ……っ!?」
「当たり前さね! 若い娘が肌を晒して無事で済むわけないじゃないか。しかもなんだい? そんなことがあったのにも関わらず、性懲りも無くまた同じような事をしたってのかい?」
「…………し、しました……」
「はぁ〜〜っ……!! この色ボケ小娘ぇ!」
「あだっ、あだだだっ!!」
ドレイクがアニカの頭をぐりぐりとし始めた。
なんつーか、親子みたいだな。
いや、そんなドレイクは年齢離れてるわけじゃないんだけど、どうにも世話焼きな感じがする。仲間としてってより、それ以上にアニカを大切にしてそうだ。
そんないい人でエロいSM妄想をするなんて……う、ううっ、自分の醜さが恨めしい!
どうかこの醜さをたたいてほしい。俺の身体をあなたに貸すぞ!
煮たり焼いたり好きにしてくれ。
俺はなんでも受け入れよう。
それこそが、罰なのだから。
俺が謝る雰囲気でもなくなったので、二人の絡みをしばらく見ながら妄想の続きをしよう。
「だいたいデビュラはどう見ても他の女達と身体の関係があるだろうに……! なにに惚れたんだ!?」
「ほ、ほれっ、い、いや本人の前でとか言えるわけねーだろ!」
「下着を晒すより恥ずかしいことかい!?」
「そ、それはそれっ! これはこれだっ!!」
「言い訳するんじゃないよ! どうせ顔と身体が良くて紳士的に振る舞ってきたデビュラが自分を女として見てるってわかったから気になり始めたんだろう!?」
「う、ォッ……」
アニカが黙った。
…•ドレイク、当たり前のように俺のこと褒めなかった?
俺って顔と身体が良いのか?
確かに身体はマリアンヌに性的な目で見られる程度にはイイっぽいんだが、顔は、これで良いのか? 貴族の貴公子みたいな奴らを見てきたから自信がない。
『益荒男は汚いから嫌だけど、我が使徒は綺麗なのでよろしくてよ』
あらそうなの。
闇マリがそう言うってことは、やっぱり清潔にするって大事なんだな。
師匠、ありがとう。
師匠が俺に身体を洗うことの大切さとか、毛を剃るとか、そう言うことを教えてくれたおかげでたくさんの女の人と関係を持てたよ……。
『……黒森人が聞いたら泣くわよ』
「全く……! デビュラ、巻き込んでごめんよ。アニカも悪い娘じゃないんだ。ただ、恋をこれまで知らなくて、女として未熟でねぇ……」
「いや、いいさ。アニカのような美少女が事件に巻き込まれることは俺としても不本意だからな」
「び、美少女……」
「……アタシ、口説くなって言っただろ?」
「……? 別に口説いてないが」
美人・美少女はただの褒め言葉で事実で口説くには値しないだろ。
そもそも言われ慣れてるでしょ。
カルラもアストレアも見た目が整ってるけど、そんなおべっか聞き慣れてるから交渉の場とかで言われても軽く流してるし。
俺のこれも軽く流してもらって良いんだが……。
「くっ……こっちにも問題があるんだった……!」
「……な、なんかすまん」
「い、いやね、褒めるのは悪いことじゃあないんだよ。ただ、そう、デビュラのそれとないお世辞がアニカにとっては慣れてない褒め言葉で、まるで口説いてるような効果になるのさ」
「お世辞……? いや、世辞ではないが」
そう言うと、ドレイクは口を閉ざした。
隣にいるアニカは顔を真っ赤にして俯いている。
あ、あれっ、これまた俺何かやっちゃった?
し、しかし、師匠から女の人を褒める時は素直に言うんだよと言われているし……その教えが間違っていたことはこれまで一度もない。少なくとも、好意的に返されることが多かった。
しばし場の空気が凍ったが、いつまでもそうしているわけにもいかない。
「……えっと、その。とりあえず、許してもらえるか?」
「……お、おう。おれの方こそ、ごめん。盗み聞きしたりして……」
ほっ。
──ここで、安堵したのが良くなかった。
アニカの様子をもっと気にかけていれば良かった。
冷静に話ができているから、彼女がまだ、正気だと勘違いしてしまった。
「いや、それに関しては俺の方こそ謝らないといけない。あまり他人に見せるものでもなければ聞かせるものでもない。不愉快だっただろうに」
「い、いや、そうでもねーよ。覗き見してたら、その、興奮しちまったし……」
「…………ほ、ほお、興奮……」
この娘は何を言い出してるの?
ていうか覗き見してたのかよ!
いつだ? いつのことだ? 全然思い出せない。行為中の俺ってそんなに隙だらけなのかよ。確かに責められてる時はいつもの数倍隙があるかもしれない。ゆ、由々しき事態だ……これは、今度からは気をつけないと……!
戦慄している俺をよそに、アニカはややぼやけた瞳のまま語り続ける。
「いや、おれも良くないことだとわかってたんだけど、ヤってるデビュラを見てたらさ、この、腹のここらへんが疼いてさ、手が止まんなくて…………お、おれ、男なのに、男だったのに、女になっちまって、もうおかしくて、あれからずっと、デビュラに、おれ、おれ…………」
「あ、アニカ? お、落ち着け」
「お、落ち着けねえよ。だっておれ、おかしいんだ。男なのに女みたいになっちまった。お前を見てたらさ、胸がドキドキしてさ、抱きしめて欲しくて仕方ねえんだ。こんな、こんなんになっちまった。こんなんになっちまったからには、もう…………」
アニカは立ち上がりジャケットを脱いだ。
それを静止する間もなく、ふらふらと歩いて、俺に、抱きつく。
そして耳元で、可愛らしくも淫靡な声で、囁いた。
「せ、責任…………とってくれよ。女にさせた、責任をよぉ……♡」