「というわけで、聖法国からやってきたフレデリカくんだ」
「おう、世話んなるぜ」
日が明けてから、師匠は皆を集めてフレデリカの紹介をした。
隣にはセラさんがいる。
彼女は一瞬こちらに目線を向けて微笑んだ。
ほわ~、セラさんかわいいです。
なんというか、聖女感がたまらんよね。
マリアンヌに匹敵する程の聖女感……! あ、でも待って。マリアンヌは俺のこと性的な目で見てたよね。つまりセラさんの方が聖女感あるのではないか?
なにせセラさんの前では以前から下半身を曝け出しているが、全くそういった視線を感じない。
極めて真剣に治療行為を施されている。
そりゃもうボロンとなっているわけだが、触られたことは一度もない。全て真っ直ぐ穴を穿たれ腸をかき回されているのだ。そして終わればすぐに薬を塗られて終わりである。
いや、だが、俺がわからないだけでセラさんもそういう目で……?
ぐ、ぐうっ、わからん!
マリアンヌが俺を性的な目で見てるとか言うから……!
もう世界中の女性が俺をエロい目で見てるんじゃないかとすら思える。だってあのマリアンヌが俺をエロい目で見てるとかまったく考えてなかったんだぞ。
マリアンヌですら俺をエロい目で見ているのならば、逆に一体誰が俺をエロい目で見ていないのだ。
「勘違いされたくねえから先に言っておく。名目上は邪教の調査で来たが、ここでそれをするつもりはねえ。どちらかといえばセラが変なことに巻き込まれてねえか確かめにきたんだ」
「えっ?」
隣にいるセラさんがきょとんとした。
「【天日の聖女】の行方もわからねえし、お前らが何かしたって考えることも出来るけど無駄だからな。お前ら全員が敵に回ったら私じゃ勝ち目なんてねえし、敵対するためにきたわけじゃねぇ。ただ、一つ警戒しなくちゃいけねえ懸念がある」
「ちょ、ちょっと、フレデリカさん?」
「お前ら────フィン・デビュラのことをどう思ってるんだ?」
…………えっ俺!?
なんで俺!?
ハッ……!! ま、まさか、いやこれは、まさかとは思うが、追放の流れじゃないか……? そうだ、前に聞いたことがある。外部からやってきた立場のある人が「このパーティーには不要な人間がいる……!」って晒しあげる奴だ!
ふ、フレデリカっ……!
どうしてだ! 昨日あんなに俺たち仲良くしてたじゃないか! そうやって俺の評価下げて追放しようとするなんて……!! う、ううっ♡ 久しぶりの寝取られ妄想が止まらない♡ あっそうか。みんな抱いたから本当に寝取られ妄想じゃん。今日はこれでいいや。
「ま、待て待てフレデリカくん。え、なんで? どうしてそうなった?」
「ヴァルバロッサ、お前は気が付かないかもしれねえけどな……こいつ、放置してたら絶対よくねえぞ」
指差しされた。
「お前からすりゃあただの弟子でそこそこ胸を張れるかわいいガキって感じだろ?」
「えっ、う、うん、ソウダヨ……それ以外に、何があるっていうんだい?」
「その認識がよくねえ。こいつ、歯の浮くような言葉を当たり前のように口にしやがるぞ。口説いてる自覚すらねえ。絶対ここの女の中で嫌な奪い合いが起きてるぜ」
「そ、そうかなぁ……そっそんなことないと思うよ?」
実際そんなことは起きていないので俺は全く動揺もしていないのだが、師匠は動揺を隠せない感じで言う。マリアンヌとカルラ、アストレアは顔を逸らした。アリアは呻き、アリシアさんはためいきを吐いて、超滅の面々もなんともいえない顔をしていた。
何をみんな動揺してるんだ?
そんなこと起きてないから普通に素直にいえばいいだけなんだけどな。
「おいおいフレデリカ、冗談やめてくれよ。俺を巡って奪い合いなんて起きるわけないだろ」
【払暁】だけだった時も起きてないんだ。
時折予定を合わせてそれぞれの都合に付き合うことはあったがそれくらいで、あんなのは奪い合いとは言わないだろう。極めて一般的な仲間としてのお付き合いにすぎず、男女関係などではない。
「……このボケの言うことは無視するぞ。お前ら、心当たりあんだろ」
ボ、ボケですか!?
この僕がボケ!?
お、おひいいいっ!!? 不意打ちの罵倒はらめえええぇぇえぇっ!! いきなりデザートは闇マリしかやってこない高等テクニックなのに、まさか、フレデリカはすでにその域に達していると言うのか!? どうしよう闇マリ! 俺この人のこと好きになっちゃう!
『……のうルルクス。こやつ、いつもこうなのか? あの時の鬼畜っぷりはどこにいったんじゃ』
『我が使徒はこういう男よ。面白い男でしょ?』
『全くおもしろくないが。頭おかしいじゃろおぬしら』
『…………』
『あ、あぎひいいいっ!!? す、すまぬのじゃぁっ!! 電撃はやめてたもれっ!!』
あの、人の頭の中で暴れないでくれませんか?
「え、えーっと……そのようなことは決してありませんよ……?」
「マリアンヌさん……そ、そうですよね。フィンさんはいい人ですけれど、そんな、皆さんで奪い合うなんて……」
「そ、そうよ。そんな不健全なことするわけないじゃない」
マリアンヌに続いてアストレアもキッパリ言う。
そうだよな。俺にそんな自覚は全くなかったし、二人が言うなら間違い無いのだろう。フレデリカの心配もわかる。セラさんいい人だからね。俺が変な治療させてることも知ってるだろうし、不埒なこと考えてるんじゃ無いかって思って遠回しにそういう結論になったんだろう。
でも安心して欲しい。
昨日も言った通り、俺はこれ以上新たな女性に手を出すつもりは一切ない。セラさん? 穢してはいけない存在だ。俺のお尻からでた血を浴びても嫌な顔ひとつせず心配してくれた聖女だぞ。
「おれ達は新参だからわかんねーけど、どうなんだ?」
「……してないんじゃないかしら……」
アニカの問いかけに、アリシアさんが俺を睨みながら言った。
……あっ、感情読んだのか。
それは申し訳ない。
俺も快楽で暴れてたしテイア様も頭の中で暴れてたし闇マリも暴れてたからな。そりゃうるさいよね。
「うむ。奪い合いなどしておらぬ。正々堂々、それぞれが得意分野でアピールしておるのみよ」
「ほー、アピールねぇ……それを奪い合うっていうんじゃねえのか?」
「言わぬ。例えば私は共に風呂に入っているが、それ以上でもそれ以下でもない」
なんで今それを言ったの?
フレデリカの目つきがスッゲェ鋭くなってんだけど。すんげぇ俺を睨んでるんだけど。
「……一緒に風呂? なんだ、もうデキてんのか?」
「いいや全く。東方出身ゆえ、異性との混浴は特別なことでもないのでな」
「ああ? そういうことも……あんのか……?」
「……江戸時代のあれって庶民限定だったろ……リョナエロゲ世界……」
カルラの言葉にアニカがため息を吐いた。
それと同時にフレデリカも呟く。
「……聞いたろセラ。深入りしたら喰われるぞ?」
「え、ええっ……フィ、フィンさん、その、本当ですか……?」
「まあ、その、嘘ではない。俺が風呂に入ってたらカルラが入ってきてな……」
やっぱり冷静に考えるとおかしいことだったのか……。
だってさァ、カルラは全く気にしてないし動じてなくて、さも当然かのように入ってきたんだよ!? そんなの童貞だった頃の俺に何かできるわけねーじゃん! ブヒッとか言わなかっただけ褒めて欲しいくらいだわ!
「そ、そんな……! フィンさんっ! えっちなのはダメですよっ!」
「は、はい。すみません。でもその、えっちな雰囲気とかはなくて」
「そういう問題じゃありませんっ!」
プリプリ怒っているセラさん。
心なしか顔も赤い。
う、ううっ、怒ってるよやっぱり。
セラさんに怒られちゃうなんて、ハァッ、う、心が切なくて、辛くて、気持ちいい……♡ いけない快楽なのに……!
「とにかくだ。お前らが裏で牽制し合うのは好きにすればいいが、セラを巻き込むなよ。こいつは教団の人間で、私と違って必要な存在だからよ」
そう言ってフレデリカが締めくくる。
なるほど。
まあ、大丈夫だな。
しばらくえっちしなければ何にも起きないってわけだ。そうすればフレデリカとセラさんは安心して王都に戻れるし、こちらも何事もなく済んでハッピー。
別に数週間えっちしないくらい余裕なんだが?
二人には納得して帰ってもらうさ。
俺が目指している紳士の姿を、今一度ここでお見せしよう。