──カルラってマジでスタイルいいよな。
それでいて美人で俺のことが好き。こんなに素敵な人は世界中探したって十人くらいしかいないだろう。カルラほどの女性に惚れたと言ってもらえることは、俺にとって誉高いことだ。
しかし、しかしね、闇人格諸君。
カルラがえっちな身体をしていることは認めよう。ではなぜ好意を向けられている俺がフィンフィンを気持ちよくしてもらってはいけないのか? 好きだと言ってくれる女性と性行為に及ぶことを禁じられているのはなぜか?
ありえない話ではないだろうか。
カルラ、師匠、アリア、マリアンヌ、アストレア、アリシアさん、アリーシャ、シャルロット……なあ。俺はこんなにえっちなことをできる女性がいる。全員目の前にいて手が届くんだ。
なのに俺は、その手を握ることすらできない。
こんなに、こんなにも、虚しくて切ないことがあるだろうか?
『クックック、そうだな、うむ、カルラもそう思うぞ』
最近闇のカルラは反抗期なのかな。
カルラは自分のことカルラって呼ばねえから! 再現度が低いどころか再現する気すらなくなってんじゃねーか! お前は誰だ!? 俺の中のカルラ!
『きも。死になさいよ』
闇のアストレアは変わらない心地よさをオールウェイズ出してくれる。世間一般的にはあんまりなのかもしれないが、少なくとも闇人格界隈ではトップクラスの辛辣さを誇っている。素晴らしい。至高の領域に近付けてくれるんだ。もっと言ってほしい。
いつもあまあまエッチをしたがるアストレア。しかし今回は闇のアストレアが評価したのか、かつての彼女の苛烈さが再現されていた。唸る暴風に激しい裂傷。全身傷まみれでフィンフィンにも細かい傷が出来てしまった惨状を見て彼女は嘲笑い、貶してくる。それが辛くて、でも気持ちよくて、俺のマゾ心をとにかくまたし続けるのだった…‥。
『……ねぇ我が使徒。私が言うのもなんだけど、一日何もしてないだけでそれは気持ち悪いわよ』
え?
おいおいマリアンヌ、冗談はよしてくれ。俺のこれはあくまでマゾ心を満たすための呼吸みたいなもんだ。性欲じゃないんだよ。生理的現象を終わらせているに過ぎず、約束を破ったわけじゃないさ。
「──それで我々は活動方針を転換し、〈深淵の森〉攻略に舵を切ったんだ。どうだい? できるだせわかりやすく説明したつもりだが……」
「特に文句はねえよ。セラはどうだ?」
「私も問題ありません」
真剣な会話が目の前で行われている。
やはりマゾ刺激妄想が一番捗るのはそういう時だからな。もちろん話は聞いている。聞いた上で妄想をしているだけなので見抜かれる心配はない。見抜きはさせてもらっている。
「ふー…………」
「アリシア? どうした?」
「なんでもないわ。オホホホ……オホホ……」
「あっ……そ、そうか。ならいいんだが」
そして間接的にアリシアさんへのサディスティック的すけべコミュニケーションまでできる! 合法的な見せつけプレイ! 誰にも知られることなく俺達は秘密のえっちができる……♡ サドマゾ二つの快楽を交互に得ることで、心が整うのだ。
アリシアママ~。
──はっ…………!
しょ、正気を失っていた。
危なかった、性欲を封じても純粋に心がおかしいからマゾの俺に侵食されつつあった。やはりマゾは異常。これを忘れてはならない。なぜかみんな受け入れてくれただけだってことを……。
「なるほど……詳しく説明を受けていませんでしたが、そういう経緯だったのですね」
「うん。元々魔王軍との戦いが終わった後はフィンを迎えに行くつもりだったんだ。だけどこの子は自分で居場所を作っていたから、それなら一緒に活動しようと思ってね」
「ハッ、よく【払暁】の女どもが反対しなかったな」
「そりゃしないさ。師匠もアリアもアリシアさんもとんでもない実力者だけど、ウチも負けてないぞ」
俺みたいな金等級が精々の盾役が居なければ三人は白金等級に昇格してる。
マリアンヌはモンスター相手に強すぎて、カルラは近接戦闘で世界五本の指に入る強者。アストレアはアストレア。決して負けてない。ただの金等級冒険者だったらネームバリューを利用するか、足手まといになって自然と関係解消するかだっただろうな。
「あー……いやそうじゃなくて……いや、そうでもあるんだけどよ……」
「フィンさん…………」
フレデリカは呆れ混じりに、セラさんは心配そうに俺を見つめる。
エッ、なんで呆れと心配が同時に?
俺てそんなにおかしなことを言ったか?
「……これ計算してやってるわけじゃねえんだろ? タチ悪い……」
「む……すまない、不愉快な思いをさせたか」
「そうじゃねえよ。ったく、やりにくいな……」
ガリガリ髪を掻きむしるフレデリカ。
「お前らこれで本当になんとかやれてんのか?」
「逆に考えてみたまえ、フレデリカくん。こんな有様で抜け駆けが出来ると思うかい?」
「…………」
押し黙るフレデリカ。
「……そりゃそうだな。ツカモトに関しちゃ裸で風呂に入ってんのに何も起きてねーんだろ? そりゃそんなこと起きるわけもねえか」
「っ……」
あっ、セラさんの耳が赤くなってる。
でもさ、セラさんって今更そんな話で赤面する程純粋なのか? だって俺普通にフィンフィンもお尻も見られてるんだよ? 見ちゃいけない部分に関してはカルラよりじっくり見てると思う。
『逆に見てしまっているから……その可能性もあるでしょう』
な、なんだと……。
だが、確かに俺にも覚えがある。
カルラは裸体を当たり前のように俺に見せるのだが、普段の服装の露出もすごい。服の内側がわかってしまうから余計エッチだった。
しかし、しかし!
セラさんだぞ!?
セラさんがそんな、エッチなことを考えるわけがない!
『我が巫女はドスケベムッツリだったわ』
マリアンヌ、嘘だよな……。
俺を性的な目で見てただけじゃなく闇マリにこれだけ言われるくらいだったのか……? いやまあ確かに、初エッチの時すごい興奮してたし俺の筋肉舐め回したりしてたもんな……。
ヌゥゥッ、じゃあなんだ。闇マリは聖女で清楚で俺の尻を穿り回して飛び出した血を顔に浴びても嫌な顔一つしないセラさんがエロいこと考えてるって言いたいのか。
そんなの、そんなのはッ、ありえない……!
だってそんなの、エッチすぎる!
澄ました顔で俺の治療をした後にエッチだったなぁって思ってたらそんなの、俺、俺もうっ!
「……話を戻すぞ。教団としちゃあ出来るだけ協力しても良いと思ってる。つーか、セラを中心に独立してもいいって考えがある」
「……ほう? そこまでの覚悟かい?」
「向こうに比べりゃ天国だぜ、こっちは」
あ、難しい話始まった。
セラさんの方を見ると、一瞬目が合う。
あっ逸らされた。
えっ…………
う、嘘だよな……。
き、嫌われた……?
清楚なセラさんにとってカルラと風呂に入っている、その事実だけで嫌われるには十分だったっていうのか……!?
う、うご、うぎぎぎぎッ!!
セラさんに嫌われ、きら、嫌われっ、オッ、オオッ、闇がっ、心に闇が生まれる!
「あ、フィ、フィンくん? ちょっといいかしら。えっと、アリーシャが呼んでるから、向こう行きましょ?」
「え、アリーシャが?」
「うんうん、そうなの。というわけで皆さま、ごめんあそばせ」
アリシアさんに連れられて部屋を出る。
扉を閉じた後、アリシアさんははああぁと眺めのため息を吐いた。
「あ、あのね、フィンくん。急に病むのはやめてちょうだい。すごく心臓に悪いから」
「えっ……あれ? 俺そうなってたか?」
「……ぁっ……え、ええ。そうなのよ……」
「そうか……全然そんな自覚はなかったんだが……」
そういうと、強張った表情になった。
「……そう。今はなんともないの?」
「ああ。普通だよ。闇マリに吸われたな。過保護な神様なんだ」
「…………そう……」
アリシアさんは俺の言葉を聞いて、ひどく傷付いた表情をしていた。