ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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29 【星天】④

「んふ~~……フィンんん……んががが、んごごご……」

 

 酒を飲み始めて数分、アリアが一瞬で泥酔して寝た。

 

 いびきまでしちゃってんも~。

 なんかマジであんまり変わんないのな。

 子供の頃のアリアがそのまま大人になったって感じで、大変よろしい。

 

 でもアリアはきっと俺が知らない所で男を知って女の悦びも知ってるんだよな……

 

 胸がきゅっとするぜ。

 そしてゾクゾクするし興奮する。

 くそっ、俺が一番初めに出会ってたのに! 俺が一番最初にぐちゃぐちゃにされたのにっ! 俺が一番アリアにボコボコにされてきたのにっ……!! 

 俺は童貞なのに! 

 お前はもう、経験済みだってのか! 

 同じ村出身、隣の家出身、同じ師匠に育てられたのに、一体何なんだこの差は! 

 

『顔です』

 

 顔!!!!?!?!? 

 い、言いすぎだろ……闇のマリアンヌ……

 マリアンヌが『いつ見ても不細工ですね、フィンさん』とか言って来たらもうその場で崩れ落ちる自信がある。もちろん絶望と歓喜の二つで心がギシギシしてるだけなんだけど。

 そんなんもうたまらんね。

 生まれた時から運命が決まってるなんて、俺は信じない……! 

 

「あーあ。いつまでもお子様なんだから」

「かわいらしくていいじゃないか。それよりもフィン、王都に来てからの話をしてくれよ」

「別にいいが……面白くもなんともないぞ。多分、そっちの方がずっと愉快だと思う」

「んー……私も聞くならフィンくんの話がいいかな」

 

 えっ、急にモテモテじゃん俺。

 な~んだ、闇のマリアンヌの見る目がなかっただけか。

 やっぱり俺の脳内在住闇人格は本物には敵わない。そうだよな! マリアンヌが俺のことを不細工とか言うわけないし、きもとか言わないんだ。

 

「ほー。なんだ、アリシアもフィンがいいのか?」

「そういうのじゃないわよ。ハイエルフとして、この子のことは知っておかなくちゃいけないから」

「その役目は妹君でいいじゃあないか。気になる? ん?」

「…………」

 

 師匠のめんどくさい絡み方にアリシアさんは口をぐにゃぐにゃに歪めた。

 

「うはは、そう嫌な顔をするな。自慢の弟子がこうも立派になっているから私もはしゃぎたいんだ」

「はあ……フィンくん、あんまりこの人甘やかしちゃだめよ」

 

 甘やかすもなにも、俺はただひたすらボコボコにされてるだけだったが……

 

「それで、フィン。王都に来てからはどうやって生活してたんだ?」

「ああ……二、三年ずっと馬小屋に泊まってた」

「へぇ、そうなの馬小屋に……ん? 馬小屋?」

「ああ」

「馬小屋に? 二、三年……?」

 

 頷き肯定すれば、アリシアさんは信じられないものを見るような目で師匠を見た。

 

「……い、いや。違うんだ。私もちゃんと世話しようとしたんだが、ほら、アリアのことで精一杯で……ふらぐ管理とか、ちゃんと再現とかしないといけなくて……」

「…………フィンくん、こいつぶん殴っていいわよ」

「うぐっ!!」

 

 師匠は胸を押さえて地面を見た。

 たゆんっと豊満な胸が弾み俺の心は有頂天。

 

「師匠がアリアを優遇するのは当たり前だよ。俺はただの凡人で、あいつは勇者。むしろ、俺のこともまとめて面倒見てくれて感謝しかない」

 

 本当にね。

 アリアに轢かれてドマゾに目覚めた俺はどうしてもあの快楽を味わいたくて、大怪我を治療しにきた師匠に頼み込んだんだ。

 

『おれも一緒にやりたい』って。

 

 最初は渋った師匠だったが、俺が熱心に両親を説得して折れてもらった。痛い思いをするんだよということで試験的に腕を折られた時も気持ち良すぎて死ぬかと思ったが、決して顔には出さなかった。

 

 まあ、師匠は悲しそうな顔をしてたけどな。

 だから受け入れてもらえただけでよかったんだ。

 師匠とアリアは世界を救いに、俺は自分のために。

 

「アリアには結局追いつけなかった。今だってこうして一緒にいるのが夢みたいだ」

 

 寝てるアリアの髪を撫でる。

 くすぐったそうにするが、ずっと親元を離れて暮らしてたんだ。あんまり甘やかされてないだろうし、俺くらいは甘やかしてやらんとな。

 

 決して俺の女にはならないけど! 

 

 それでも俺は、お前の幼馴染だから! 

 だから頼む、もし他の男と出来てるなら俺にそのことを報告してくれ! できれば幸せいっぱいに、俺なんて眼中にないって感じで!! 

 

「……あらま。こんなんいたらそりゃアリアもあんなんになっちゃうか」

「そうだろう? フィンはなぁ、本当に凄い男の子なんだぞ」

「なんであんたが自信満々なのよ……」

 

 そりゃまあ師匠に育てられたし。

 別れ際も抱きしめられながら『君を見捨てることになって本当にすまない、私は君のことを愛してるよ』なんて言ってくれるくらいに優しい人なんだ。

 

『そんな人に発情するなんて最低ですね』

 

 マッ……! 

 マッ……

 マッ…………

 

 闇のマリアンヌ、君の言う通りだ。

 

 俺はあんなにも世話になった恩師に性欲を向けているんだ。

 

 そもそも修行という名のドマゾ充実生活をしていた時点でその誹りを受けることは免れない。

 

 俺は最低だ。

 わかってる。

 だから俺は、誰にも悟られたくないんだ。俺がドマゾで、頭の中でずっと妄想してて、他人を自分の想像で好きにしてるってことを。

 

『わたしは……それでも構いませんよ。フィンさんがいいなら……』

 

 おお。

 まじですかマリアンヌさん! 

 やっぱ聖女は格が違うな! 闇に堕ちても彼女は高潔なんだ! 聖女マリアンヌ万歳! 闇の聖女マリアンヌ最高! 

 罵って! 叩いて! 

 縛って虐めて俺を殺してくれっ!! 

 

『きも』

 

 ウア!!!!! 

 アウ!!!!! 

 

「ふーん、そっか。フィンくんは本当にアリアの英雄なのね」

「そんな大層なもんじゃない。ただの幼馴染だ」

 

 俺はただの盾役で、強い仲間に寄生してる冒険者だ。

 

 特別な才能もない。

 特別優秀でもない。

 ドマゾと盾役の相性が良くて、仲間に聖女がいて、偶然死なずにやってこれただけなんだ。

 

 だから、俺は決して英雄なんかじゃないよ。

 

「……ねえ。これ、拗らせてる原因絶対あんたたちでしょ」

「……んむ。まあ、否定はしない。ちょっと……どうにも出来なくて」

「本人を前に言うなよ」

 

 拗らせてねーし! 

 アリアはアリア、勇者で特別! 

 師匠はなんかすごい特別! 

 マリアンヌは聖女でカルラは剣聖、アストレアはハイエルフの姫! 

 

 こんなのに囲まれてて自分を凄い奴だと思える方がすごいだろ。

 

「しかしね、フィン。君がなんと言おうが、アリアは君との思い出を支えに戦い抜いたんだ。あの日君が諦めなかった、この娘に追いつこうとしたからこそ、今がある。それは理解しておいてほしい」

「まあ……師匠がそう言うなら」

 

 あの頃の俺は今よりバカだったから、アリアと戦えれば合法的にボコボコにしてもらえると思ってただけなんだけどな。

 

 それはそれとしてアリアの様子もおかしかったから幼馴染として見過ごせなかった。

 

 それだけだ。

 

「……でも、なおさらそんな男の子を放置したのは罪深くない?」

「……………………これは私の秘蔵の酒で、今から200年前に帝国から奪ってきたものだ。これを今からみんなで空けよう」

「買収しようとしてんじゃないわよ!」

「ぐぅ……」

 

 ぐぅの音が出ている。

 

 しょんぼりしている師匠を見て、俺は感動していた。

 

 昔から結構めちゃくちゃなところがあった人だ。

 俺がドマゾだから耐えられたが、俺がドマゾじゃなければ耐えられなかったであろう事が多々ある。

 

 実力的にもこの人に逆らえる人なんて世界中探してもほぼ居ない。

 

 すげぇ……

 アリシアさん、師匠を叱れるのか……! 

 

 俺もついでに叱ってくれ! 

 

『もー、あんたは本当にダメな子なんだから』。そう言いながらアリシアさんは鞭を手に取り、俺の素肌に振るう。音の速度を超えた鞭が炸裂し、肉まで衝撃が響く。

 喘ぐ俺に対し、アリシアさんは優しく微笑みながら続けるのだ。

 本当は気持ちいいんでしょ? そう呟きながら……

 

「ひっ!?」

「ど、どうした? アリシア」

「いや……なんか、嫌な感じがして……気のせい?」

 

 周りを見ても特には何もない。

 魔弓の射手なんて呼ばれてるし、何かを感知したんだろう。

 

 この距離ならいざと言うときに俺が盾になれる。

 

 安心してほしい。

 

「まあ……彼女の言う通りか」

 

 そう言いながら師匠はまっすぐに俺を見つめてくる。

 

 そして何度か息を吸って、吐いて。

 

「フィン。何か、して欲しいことはあるか?」

「…………あんまり頼りたくはないが」

「そうじゃない。なんだっていいんだ。過去の恨みを晴らすでもいいし、これから先の人生で私を利用したいと言うなら好きにして欲しい。君には、その権利がある」

「……?」

 

 …………???

 

 えっと……

 俺は師匠にエロい話をされてるのか? 

 それとも何かしらの試験なのか? 

 

 ……アリシアさん! 

 助けてくれ! なんか師匠の目が怖い!

 

 アリシアさんは呆れた目で師匠を見ている。

 

 これは……どっちだ!? 

 どっちが正解だ!? 

 何を願えばいいんだ!? 

 何が正解だ? 

 わ、わからん! 

 助けて闇のマリアンヌッ!! 

 

『くたばれ、ハーレム野郎』

 

 目がキマってる人になんでも好きなことしてくれって言われるハーレムってなに!?

 

 しかも相手が師匠だし!

 

 どうすんのが正解なんだよォッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、フィン。

 君に出会えて本当に良かった。

 あの日あの時あの瞬間、〈知識〉に記された物語が始まったと悟った時、末路が確定した私の気持ちを君は知らないだろう。

 

 絶対不可避の預言であり知識であり運命。

 

 戦いの中で犠牲になる女。

 魔王軍幹部に敗北し、その肢体を弄ばれ残虐の極みを尽くされた後に苗床にされ最後には肉盾として死ぬ。

 

 ぷれいやーを興奮させ、絶望させ、悦ばせるための生贄。

 

 それを覆した者が居ると知った時。

 それが、他ならぬフィンだと知った時。

 この胸に湧きあがった感情は、とても言葉では言い表せないものだったんだ。

 

 君はアリアの英雄だ。

 けれど、私にとっても、英雄なんだよ。

 

 今から三千年前。

 森で燻っていた私の元に突然現れた預言者は……否。

 

 転生者はかく語りき。

 

『よりにもよって同人リョナエロゲ世界かよ』、と。

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