街に到着して、それから暫く歩いたところで大きな建造物が見えて来た。
王国だと街は壁に囲われているのだが、どうやら東方諸国は壁で囲われているというよりも地形を生かして要塞にするのが主流なのかな。
ぞろぞろと周りの目を浴びながら歩いて、ようやくたどり着いた城の門を小島が開けさせる。
東方諸国は身分制度が激しいって言ってたな。
門番も小島に言われるがままだし、道行く人も皆そうだ。
どうやら相当な人物を案内に寄越したみたいだが、ここで一つ疑問が残る。
──どうやって俺達が来る事を察したのか?
カトウはこちらに連絡をしていなかったようで、迎えが来たことに酷く驚いていた。これでは某の役目がないでござるよ、なんて言いながら真っ青な顔をしていたのだが流石にそこまで危険に思うほどじゃないと思うんだが……。
そんな彼女は小島にご苦労と言われ一足先に帰路についた。
これからの彼女の期待を祈りたい。
……関係ないことを考えてしまったので、話を戻そう。
カルラはこちらへ戻って来る事を伝えていない。
そして昔と比べて成長しているから一目見たカルラを特定できる人がいたとして、わざわざ管領? に伝えたりしないだろう。つまり東方諸国に入った瞬間から見張りでもいたのかと思うのだが、そうだとしたら、幾つか疑問点がある。
そもそも、そこまでして俺達が来るかどうか気にするのならばカトウ一人ではなく複数人派遣するべきじゃないか?
カトウは外注先だ。
王国で言えば、貴族が他国から人を呼ぶことを冒険者に依頼して確実に来るとは限らないのに、王国の国境に人を配置して逐一報告させていたようなものだ。
効率が悪すぎるだろ。
俺が考えても頭悪いなと思うんだから、こんな方法を取っているとは思えない。
そうなるとどうして俺達のことを察していたのだが──やっぱり怪しいのは、女神関連の話だよなぁ。
女神が俺達、というか俺に憑りついている闇マリのことを察知した可能性が高いんじゃないですか? どう思いますか、闇のマリアンヌさん。
『まあ、及第点ってところでしょうね。我が使徒なりに考えたと褒めてあげましょう』
お、おおっ……。
なんか普通に嬉しくなっちゃうな。
マゾも良いが、褒められるのは普通に嬉しい。こんなの認められないほど精神壊れてるわけじゃないから、素直に受け取ろう。
『一応言っておくけれど、向こうの気配はビンビン感じるわよ。流石に総本山と言ったところかしら、そこそこの力はあるみたいね』
ほ~。
今の闇マリって敗北えっちされた時より強いんでしょ?
その状態から見てそこそこの力ってどんくらいなんだ。
『アストレアが苦戦するくらいね』
アストレアは本当になんなの?
なんで神様と戦いが成り立つのかが本当に理解できない。強すぎるだろ普通にさ。一人だけ次元が違うんだけど。
『青髪の転生者風に言えば、レベルが高いのよね。魔を取り込んだ量が圧倒的で、本来あるべき枠組みを超えているのよ。この一団の中だと黒森人もその領域にいて、カルラと我が使徒は上限、我が巫女は上限にまだ届かずってところかしら』
へえ……ん?
なんか今、俺が上限だとか言わなかったか?
気のせいだよな? 流石に冗談だよね。
まさか俺が上限値に達してるなんてわけないよなまさかだって俺はまだまだ強さが足りてないんだから
『あ、残念だけど上限。我が使徒はもう成長限界ね。全ステータスカンストよ』
ホッ、ホホッ、ホヒヒッ、ホッ!?
俺が!? もう上限!? まだまだこれからなのに!? やっと師匠達が来たのに!!?
『でも大丈夫、そんな我が使徒でも私の改造手術を受け入れて魂を弄ればちょちょいのちょいよ。どう? 魔に堕ちきりたいと思わない?』
あ、それはいいです。
俺は確かに人間じゃないかもしれないが、それでも人らしくあると決めてるからな。そりゃもう、どうしようもない状況になったらそうなるのもいいんだけど、それ以外では基本的にやりたくない。
それが、育ててくれた師匠への恩返しって奴だ。
『──そう。それでいいのよ。それならいいわ』
そう言って、闇マリは嬉しそうに、悔しそうに言った。
しかしそうか、やっぱり俺はもう伸びしろがないのか。
なんとなくわかってはいたんだけどな。
どうにも、技術に変化が無かったんだよね。
普通なら身体の成長と共に技術も修正されていくから必然的に変わっていくんだが、長い間技術の修正をしていなかった。微妙な修正はしたよ? でもそれはコンディションにおける調整に過ぎないからさ。
そうじゃなくて、もっと根本的にフルスペックを発揮するための変化ってのがなかったんだ。不安だとは思いつつ、焦ってトレーニングしたところでいいことはない。
だから普段の調子を崩さないように保ってたんだが……。
なんていうか、悲しいな。
これが俺のピークなのか、そう思うと、自分の才能の無さにうちのめされる感じがするよ。
前を歩いていたらマリアンヌが心配そうに俺を見てきた。
平気、平気だよこんくらい。
別にぐにゃぐにゃしてるわけじゃないからな。
ちょっと悲しいなと思っただけで、決して闇マリに吸い出してもらうほどの状態じゃない。
そうだろ?
『まあ、そうね。諦めて受け入れてもいいのよ?』
いらない。
それがないと仲間を助けられないってんならともかく、そうじゃないなら必要ない。
俺は邪神の操り人形になるつもりはないんだ。
闇マリは俺の宣言に、うっとりとした顔をした。
『ふふ。……うふふふ。本当に、愛しい子なんだから』
アッ、や、闇マリママ〜。
チュッチュパッチャラチュパ! ヒェア!
「フィンさん?」
あっ、ご、ごめんマリアンヌ。
闇マリの母性を感じでバブバブしてしまった。でも安心してくれ、マリアンヌにこんなことしないから。
「……それはそれで、なんというか……はああぁ……」
『……我が巫女も哀れね。その気持ちがマーベラス。ご馳走様でした』
闇マリは空気に消えていった。
それを見つめるマリアンヌの顔は、正直言って、直視したくないくらい恐ろしいものだった。