ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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44 【払暁】と王女殿下②

【星天】と【払暁】が手を組みクエストに当たる。

 

 その報を受け取った王国上層部には激震が奔っていた。

 

 ただでさえ手を出してはいけないと言われている金等級冒険者パーティーが王族の派閥に参戦しどうするかで手を焼いていたのに、それに加え人類最強格を保有する白金等級冒険者パーティーが組んでしまった。

 

 最早貴族の派閥がどうとか言ってられない状態である。

 王位継承も怪しいが、幸いなことに渦中のシャルロットに野心はない。レオンも直接やり取りをして誓約書を結ばせているため、彼女がレオンを害し王位を簒奪しても正当な後継者とは認められない。

 

 レオンは自分が死んだ後はシャルロットに任せるしかないと覚悟はしているものの、当のシャルロットは王位などどうでもいいが役に立つなら使うか程度の認識である。【払暁】との関係を得たことで一皮も二皮も剥けていた。

 

「厄介極まりない……」

 

 レオンはため息を吐く。

 ようやく王女暗殺に関わった者達の処罰が終わり、現在は旧第二王子派閥の接収で忙しいところだった。トップを潰したからすぐに自分たちのものになるわけではなく、領地を収める上で根回ししなければいけないことは多々ある。

 

 自分が王位に就いた後も引き続き処理していかなければならないと意気込んでいたところにこれだ。

 

「知らんところでやってくれんものか」

「兄上、それは口が過ぎます」

「だが言わずにはいられん。全く……」

 

 同席する妹、シャルロット第二王女が苦笑する。

 

 暗殺未遂以降、金等級冒険者パーティーとの関係が密接になり枢機卿とも接触し繋がりを得たことで彼女は急速に価値を高めた。

 

 多くの貴族が取り入ろうと目論んだものの、シャルロットはそれら全てと曖昧な距離を保つことを選択。これはレオンが指示したことでもあり、貴族の力に頼らない独立した戦力としてシャルロットを扱いたいという合理的な選択だった。

 

 実際、シャルロットは以前のような何の力もない王族とはまるで違う一勢力の主として十分な力を得ている。

 

 本日呼ばれたのも、レオンにとって頭痛の種となる冒険者ギルドとのやり取りを一任するためだった。

 

「【払暁】と【星天】が手を組んだ。どう見る?」

「……正直なところ、想像もつきません。兄上もご存知の通り、【払暁】の方々は白金等級冒険者に分類されてもおかしくない方が所属しています」

「【暴風】だったか。嵐を指の一振りで終わらせたとか」

「はい。クロエ・クリアール伯爵令嬢が同行しましたが、王都を飲み込むほどの竜巻を操るモンスターを僅か数秒で屠ったそうです。私も【聖撃の聖女】様と共におりましたが、あのお方もまた凄まじい力を持っているのをこの目でしかと見ました」

「…………王国は対峙できるか?」

「……騎士団長が一万もいれば抵抗はできるかと」

「災害を相手に剣を構える方が愚かか……」

 

 幸運だったのは、【払暁】も枢機卿もシャルロットを通じて政治に干渉をしてこないこと。

 

 こちらが一方的に配慮することはあれど、献金を理由に有利な政策を推し進めようとはしてこない。レオンが考えていた通りそんなことをする気があるならとっくの昔にやっていた、というのが真実だろう。

 

 実際、枢機卿との対談ではあまり乗り気ではない様子だったことをレオンは思い出す。

 

(シャルロットはつくづく運がいい)

 

【聖撃の聖女】が進言したと枢機卿からは聞いていたが、本当にシャルロットと縁が出来たから守るために手を回しただけとは。孤児院に通い子供達の世話をして、己の得た報酬を使い生活環境を整えている。

 

【廻天の聖女】と言い、正真正銘、清らかな心を持つ聖女は実在する。

 

 魔王軍との前線に向かった王国軍から報告のある一部の教団関係者や聖女達とは大違いだった。

 

(あのような者だけで世界が回れば、この世は極楽になるのだろうな)

 

「兄上?」

「……【星天】との関係はお前に任せる。何せ相手が相手だ」

「……それほどなのですか?」

「お前は知らないか。王家には代々、〈天聖〉に関する話が遺されている」

 

 レオンは一冊の本を取り出した。

 古びて所々破損しているが、真新しい書皮に包まれたそれが長い年月をかけて使い込まれてきたことがわかる。

 

「ヴァシリ・ヴル・バルバロッサ。遥か太古からこの大陸に存在し、この世に無数の叡智を授けてきた賢人だ。彼女がこの大陸に現れたのは、少なくとも千年以上前になる」

「……それほどの人物が冒険者を?」

「そもそも彼女が冒険者ギルドを作った。初代冒険者ギルド長でもあり、今現在、この世界の脅威と戦う組織を作った偉人でもある」

 

 ──ダークエルフには逆らうな。

 

 王家に代々伝わる言い伝え。

 その昔、ここが王国になる以前の時代に、彼女は知恵をもたらした。

 貧困と略奪で争い続きのこの地で、小領主だった先祖に数多の手助けをしたとか。畑を黄金色に染め上げる穀物、冬場でも育つ根菜に育ちやすい芋。食糧事情を解決し、教育機関を作り、先祖が王国を作り上げ一端の文明となるまで手助けしたとの記録まである。

 

 シャルロットやレオンが通った学院も、創始者の一人として名を連ねている。

 

 尤も、これは大貴族の嫡男や王族しか知らないことだ。

 

「本来ならば俺が出向くべきだが、せっかく縁がある以上利用しない手はない」

「しかし、私如きが顔を見せて問題ありませんか? こう言ってはなんですが、【払暁】のおまけに過ぎません。場合によってはすり寄っていると見られます。王家との関係が悪化しませんか?」

「向こうもお前の立場は理解している筈だ。王族として相応な扱いをされていなかった姫だが、急速にその立場を高め地盤も固めつつある。行事にも俺と共に出席し始めたことで無下にはされてないとわかる。寧ろ、【払暁】を介して関わりのあるお前が行くからちょうどいい」

 

 シャルロットは貴族との関わりも薄く教育を満足に受けていないこともあり、政治的な思考にはまだ甘さが目立つ。

 

 本来ならば国の行末を左右するような相手へ繋がせるには経験が浅すぎるのだが……

 

(〈天聖〉は無礼を働かなければ問題ない。【払暁】との関係も良好なシャルロットなら致命的な失敗はしない。脅すような形になって悪いが、これもいい経験だ)

 

 ヴァシリのことはある程度耳にしているため、レオンは問題ないと判断した。

 

 そもそも彼女は絶対的な力を持つ個でありながら、その知恵や経験を人類のために惜しまず注いできた賢人にして偉人。暴力性よりも社会性を評価されるのは当然であり、初代冒険者ギルド長としての立場や各国に関わってきた権威を利用して問題のない立ち回りをしていることは知っている。

 そこらの冒険者とは文字通り格が違う。

 

 レオンが非道な行為を働きこの国で悪逆を尽くす愚かな王子だったのならばまだしも、相応に出来る限りのことはしているつもりだ。

 

 それでダメだと言われるのならばそれまで。

 王族であっても逆らえない相手が世には無数にいることを知っている彼は、己の中で折り合いをつけるのも上手かった。

 

「支援や関係を持つのではなく、ただの挨拶でいい。それ以上は望んでいない」

「……承知しました。必ずや」

「ああ。まあ、気負わずに行け」

 

 頭を下げたシャルロットが部屋を出る。

 

 彼女を己の派閥に入れたのは気まぐれだ。

 妹であるし、腹違いと言っても身内は身内。

 弟は明確に野心を持っていたし、誰から仕入れたのかは知らないが、よくわからない話でレオンより功を立てて国王になると意気込み敵意を持っていた。

 

 それと比べればシャルロットは自分の立ち位置をよく見ていた。

 立場を弁え、それでいて出来ることは可能な限り行なっていた。

 有力ではない落ち目の令嬢と関係を築いていたのも悪くない。

 レオンから見て、抱えてもいいと思える程には優秀だった。

 

 気まぐれで助けた妹。

 冒険者ギルドや教団との関係を強くさせ王国の立場をより強固なものにするとは、全く思っていなかった。貴族たちも慌てている。

 

 金等級冒険者とは、それほどアンタッチャブルな存在なのだから。

 

「人の情は、捨てるべきではないな」

 

 

 ────

 ──

 ────

 

 

「なるほど、【星天】への挨拶ですか」

「ああ。果たして私のような若輩者が行っていいものか……」

「私からヴァシリさんへ話しておきます。私達もまだ話し合いの途中なんですよ」

「そうなのか? もう手を組んだと兄上が言っていたが」

「大枠は決まりましたが、細かい契約が難航していましてね」

 

 マリアンヌが苦笑する。

 

「早ければ明日には顔合わせが出来るかと。身内が多いので既存の合同パーティーとは少し違いますし」

「アストレア姫は姉君がいるんだったか」

「そうね。姉さんと、あと妹を里から呼んでるわ」

「……エルフの里との関係も考えた方がいいか、これは」

「好きにしたら? 姉さんと繋いで欲しいならそれくらいはやってあげる」

「頼む。……はぁ、やることが多いな」

「冷遇されるよりいいじゃない。それがアンタの道ってことね」

「はは。それもそうか」

 

 和やかな雰囲気で行われている会談。

 

 流石は師匠だ。

 まさか王族が直々に挨拶しに行くための根回しをしてくるとは……目の前で政治劇が見られて感激だ。当然よくわかっていない。

 

「ハイエルフの姫が三人も王都に集まる。エルフ向けの施設でも増やすべきか?」

「必要ないわ。進んで里から出てくるようなエルフはそもそも外に興味があるの。ありのままの姿で見せた方がいいのよ」

「ふむ……そういうものか」

「ええ。王太子はそこら辺理解してるでしょうね」

 

 エルフにありのままの姿を、ねぇ。

 俺はありのままのエルフの姿をよく見ているが、根本的にヒトを嫌っており見下し下劣なものだと思っている。アストレアのようなエルフが稀だ。エルフの王族であるハイエルフの方が外に理解があるっていうのは、なんか面白いな。

 

 でも待てよ、出会った当初のアストレアは非常にツンケンしていた。

 

 つまり新しくやってくる彼女の妹もツンケンしてる可能性があるのでは……?

 

 おそらく風と弓を扱うんだ。

 やっぱり風でシュビッと肌を斬って脅しとかしてくれるのか?

 あの美しい顔で蔑まれるだけでたまんねぇ……!

 アストレアには申し訳ないが是非とも俺を貶してくれる娘だとありがたい。

 

 ここ一週間、ドマゾ欲求が満たされなさすぎてずっと自分の中で気持ちよくなってばかりだ。

 

 そろそろ本格的に攻撃されたい。

 あくまで趣味だから無理強いはしないが、闇のマリアンヌに罵られるばかりでは限界がある。先日のセラさんの健康診断も直腸一気がなかった。どうせなら新しくやってきた神官のお姉さんにも悶絶してる俺を見て欲しかったのに!

 

 セラさんが杖をぶち込む。

 俺が悶絶し喘ぐ。

 ぬるりと血まみれで引き抜かれる杖を見ると、ゾッとするのと同時にどうしようもない快感が湧き上がる。

 治療行為であるが故に下半身は丸出しにならざるを得ない。

 他人の目があるところでさ、冷たい空気が当たると……気持ちいいんだよ。

 

『人の業とは、罪深いものですね……』

 

 マリアンヌ……

 俺もそう思う。

 やはり人は欲望のままに生きてはいけないよな。

 

『欲望のままに生きることは、魔と同じです』

 

 その通りだ。

 人は、理性があるから人なのだ。

 ほんっと許せないですよねモンスター共!

 マリアンヌさんの魔法で粉砕しちゃいましょうよ!

 

『はい。まずはフィンさんからですね』

 

 え俺!!!!?!??!

 

「懸念となるのはアリアンロッドさんでしょうか。あの方は、その……フィンさんの幼馴染ですので……」

「……フィン殿は何者なんだ?」

「【星天】の弟子で【勇者】の幼馴染でハイエルフの姫や東方諸国出身の剣聖に聖女と付き合いのある金等級冒険者。まあ、英雄には相応しいでしょ」

 

 おお、俺の株が上がっている。

 でも師匠の名を背負うには俺は弱すぎるからな。

 あんまりそういう持ち上げ方はしてほしくない。俺にとって師匠の名は、命をかけてでも守らねばならないものだし。

 

「アリアが何か言ったときは俺がなんとかする。殿下に迷惑をかけるつもりはない」

「……ま、守ってくれるのか?」

「当たり前だ。俺は盾役だからな」

「ほわ……」

 

 昼は守り夜は貫かれる。

 あんなにも頼れる背中がこんなにも縮こまり情けない。男を屈服させている快感、痛みに喘ぐ情けない成人男性を椅子にしている興奮、そういうので昂れる女性に、私は出会いたい。

 

「ぐぬぬ……フィンさんは私のものなのに……」

「あんた最近隠しもしなくなってきたわね」

「急にこんなに出てきて平気でいられますかっ! 殿下! 抜け駆けしたら許しませんからね!」

「あ、ああ。……案外、可愛らしい人なんだな」

「知らなかったのか? マリアンヌは可愛いぞ」

「かわっ……、え、えへへ、そうですか?」

 

 抱きしめてちゅっちゅ!

 

 んも〜〜可愛いんだから〜。

 そんな顔しちゃっても〜。

 食べちゃうぞ〜?

 

『きっっっも……』

 

 オアアッ!!

 いつもより心がこもってる!

 

『ですが、悪くありません。そのままでよろしい』

 

 え、まじで?

 俺この路線で行くべき?

 流石の俺も気持ち悪いと自覚あるんだけど……

 

 ま、まあ、闇のマリアンヌが言うなら……ん゛んっ。

 

 うっふ〜んちゅぱちゅぱちゅっ!

 闇のマリアンヌかわいすぎ。

 俺の子猫ちゃん……甘えていいんだぜ?

 聖女を癒せるのは俺だけなんだから……

 

『黙れ』

 

 びええええっ!!

 ひどいじゃん! それでいいって言ったのに!!

 理不尽だ……!!

 理不尽すぎる……!!

 う、ううっ、気持ちいい……♡

 

「…………」

「どうしたのよ殿下。そんな顔して」

「いや……こんな露骨な人相手に、私は正面から挑もうとしていたのかと思ってな」

「…………最近余裕ないの。私達」

「あ、アストレア姫……」

「ふふ……奪おうとしなくて良かったわね、殿下」

 

 微笑むアストレアに、殿下は顔を青醒めさせた。

 

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