「……というわけで、これ、妹。これから【星天】に参加するんだって」
「なんかアストレア姉さん雑じゃない? ま、いーけど。初めまして、お兄さん。アリーシャ・ラ・アエラスで〜す。よろしくね?」
「ああ、よろしく」
ヌウッ奇怪な。
巨乳お姉さんのアリシアさんに美人完璧スタイルのアストレアに続いて現れたのは小柄ツインテールハイエルフ。全員見事に見た目が違う。でも目とかは似てるから、やっぱり姉妹なんだなぁ。
差し出された手を握る。
おほっ柔らか♡
スベスベでもちもち♡
アストレアの手もスベスベしているが、彼女の手も同様になんとも良い触り心地……まさかエルフはみんなこうなのか? 風と友達だからカサカサしないのか? 少し気になる。
「わ、ゴツゴツしてる。男の人が硬いって本当なんだ?」
!!!!!!!?!?!?!??
この方は何をされてるの!?
急に俺の手を両手で撫でくりまわしてきたんだけど!?
え!?
一応ハイエルフの姫様だよね!?
男との距離が近すぎんだろ……!
童貞にそんな距離で近づくな!
好きになっちゃうから。
体を触らせてくれる女の子を好きにならない男なんて、いないんだよ。
「何してんの。困ってるでしょ、離しなさい」
「え〜? お兄さん、困った?」
困ってないよ〜ん。
そのまま俺の相棒もニギニギしてくれないかな?
そうそうそのまま、ゆっくり手を下に向けてくれる?
ハァッハァッいたいけな美少女エルフ(百歳以上)が俺の身体を触って喜んでる……っ!
やばい!
気持ちいい!
男の優越感が刺激される!
ドマゾとはまるで違う快楽だッ!
耐え難いッ!!
『死ね』
死ね!?
「チッ……離さないなら帰らせる」
「ちぇっ。ごめんね、お兄さん」
「いや、問題ない。ただいきなりはやめてくれ」
「は~い」
しかし、アストレアの妹か。
前に聞いた話だと婚約者がいるんじゃなかったか?
え、それなのに俺の手を平然と握ってきたりしたの……?
これは……
まさか、とんでもない淫乱なのか?
俺は別に潔癖症じゃないから、相手が経験あろうがなかろうが気にしない。
無論、あったらあったで微妙な気持ちになるし、俺以外の男を知っている女性という前提でドマゾ的悦楽に浸るのだが、流石に不倫はいただけない。
かわいそうだろ普通に。
俺はドマゾだからやられても耐えられるが、常人には耐え難い屈辱であり苦痛だと思う。マリアンヌやカルラ、アストレアが知らない男とくっつく妄想をしてもこれだけの痛みなのに、愛し合ってから「実はこの人が好きになって……」とか言ってきたら多分、その場で暴れて死ぬ。
『では、見知らぬ男性も一緒に愛していると言われたら?』
なっ……!!
それは……。
女ひとり男ふたり?
そんな背徳的な関係が許されるの? まあでも棒は一人につき一本だけど穴は一人につき二つ以上あることを考えれば合理的か。
アリだと思います、闇のマリアンヌ。
『そうですか……』
何を納得したの?
ねえ! 一体何を納得したの!?
うわあああああっ!! 闇のマリアンヌも俺の知らないところで男を見繕ってるんだ!! 頭の中にすら裏切られるんだ! 俺はそんなにも魅力がないんだ! もうおしまいだっ! しぬっ! しんでやるっ!
そして死んでも見向きもされない俺に興奮するんだ……♡
『フィンさん。私はあなたのことが好きですよ?』
──えっ。
それは本当です?
じゃあ死なない。
俺は君と添い遂げるよ、闇のマリアンヌ。
「あーもう、喧嘩しないの! ごめんなさいね、フィンくん」
アリシアママ〜。
はいですの! 喧嘩しません!
ハッ……まずい、この感情も読み取られるんだった。
やべっ顔が思いっきり引き攣ってる!
すいませんすいません!
そんなつもりじゃなかったんです!
伝われ俺の謝罪!
アリシアさんに母のような感情を抱いたのは気の迷いなんです! どちらかといえば性欲です! いかがですか、姉妹丼なんてのは。三姉妹、三者三様のいたぶりが俺を待っている! 好きに虐めてください! 俺は何でも受け入れます。ほんとごめんなさい!
「ふぅ〜〜……んんぅ〜〜……!!」
「あれれ。何だかいい雰囲気?」
「バッ……!! ないない! ありえない! 私はないから! いいわね!?」
「あ、うん。ごめん」
アリーシャの言葉を全力で否定したアリシアさん。
その剣幕にはちょっと小生意気なアリーシャが真顔で頷くほどの勢いがあった。
そんなに……そんなに俺が、嫌なのかよッ!
まあ嫌ですよね、わかっておりますとも。
ところ構わず妄想して知り合いの女性から虐められ興奮してるドマゾの童貞なんて嫌われて当然なんだ。
それでも俺は、ドマゾであることに折り合いをつけて生きていく。
師匠とアリアが、特別でいいんだって言ってくれたから。
「はぁ、はぁ、ハァッ……! フィンくん! お茶!」
「あ、どうぞ」
アリシアさんも大変そうだな。
身内が増えるって結構気まずいもんね。
アリアと師匠が来てから俺もちょっと気まずいもん。マリアンヌはそういうのあんまり気にしてないけど、俺は結構気にしてる。
がんばれアリシアさん。
俺には応援することしかできないけど……!
「……え、ええ、ありがとうね、フィンくん」
ピクピクと顔の至る所を痙攣させながらアリシアさんが言った。
「きゃははっ、でも仲良く見えちゃうよ〜?」
「アリーシャ……それ以上言ったら、アストレアの前に私がやるわ」
「え!!!!!??」
「だから金輪際私とフィンくんの関係で揶揄わないでちょうだい。いいわね?」
コクコクとアリーシャは頷いた。
おお、アリシアさん……
妹には結構厳しいんだな……
そう思うと、俺にはかなり甘い対応をしてくれている。これからは妄想に巻き込まないようにしよう。
闇のマリアンヌ、覚えといて。
「ね、ねえアストレア姉さん。アリシア姉さんなんかやさぐれてる?」
「あんたが来たからでしょ」
「えぇー!? ひどい!! 二人が来ていいって言ったんじゃん!」
「迷惑かけてたらそりゃ怒られて当然だもの。ここは里じゃないのよ」
「う……はーい」
唇を尖らせて不服そうにするアリーシャ。
これでも百歳超えてるんだよな。
そう思うとエルフは、長命種は見た目で測ることが不可能だ。そこらへんの少女にしか見えないもん。
「まあ、とにかく。これからたまにフィンくんにもちょっかいかけるかもしれないけど、何かあったら言ってね。すぐに追い払うから」
「わかった。無理のない範囲で頼むことにする」
こういう子供の理不尽も結構楽しいからね。
孤児院の子供達に馬扱いされたり敵扱いされたりするの気持ちいいんだよ。純真無垢な遊びで虐げられ、それで興奮している己にさらに興奮する。まさに興奮の掛け算。ククク、アリーシャ姫、あなたはどんな手段で俺を扱ってくれるんですか?
まあそれをやった子供はその後マリアンヌにやんわりと叱られてるんだけど。
別に子供のやることだしいいんだけどなぁ。
お馬さん発進!
フィン・ドマゾ・デビュラ号です!
種付けですか?
ハイよろこんで!
『去勢しますね』
女の子になっちゃう!?
「あ、でも普通に連携の練習とかはしたいかも。ヒトと組んだことないから戦い方わからないし」
「そこは真面目なのね……」
「一応防人やってたんだしそれくらいはわかるよ~。ね、お兄さん付き合って?」
お付き合いですか?
構いません。
結婚を前提によろしくお願いします。
私は童貞でドマゾなので、良い感じにしてもらえると嬉しいです。
「わかった。俺でいいのか?」
「お兄さんが一番前なんでしょ? なら私は後ろだから邪魔にならないようにしなきゃだもん」
「それは助かる。いつにする?」
「えー……んふふ、今からは?」
「問題ないが……」
二人の様子を窺う。
アリシアさんは諦めた様に力なく頷き、アストレアも不満そうな顔をしているが文句はないっぽい。
「どこでやる? 相手がいた方がいいならフィールドに出るか?」
「そうだなぁ……うん、そうしよっか。じゃ、姉さんたち、お兄さん借りてくね?」
「……ほどほどにしなさいよ」
「は~い」
そう言ってアリーシャは立ち上がり俺の隣までやってきて──普通に腕を組んできた。
!!!!?!?!?
ううわうわうわ浮気!?
俺にそんなつもりはない!
エルフの里の婚約者さん! 本当にすまん! 俺がやりたくてやってるわけじゃないんだ! 許してくれ!
「それじゃ、行こ? デートに!」
「…………チッ」
デデデデート!?
まずいですってデートなんて!
アリアといいアリーシャといいどうなってるんだ最近の若いのは! けしからん! やわらかくていいね!
これもハニトラなのか?
エルフの里から送られて来た罠なのか!?
だとしたら捨て置けん!
俺は絶対に屈しない!
積極的に近付いてくる女の子に負けたりしない! 誇り高き理性在るドマゾ童貞である俺が誘惑に堕ちたりなんてしないんだ!
見ててくれよ、マリアンヌ、カルラ、アストレア、師匠、アリア、アリシアさん……!
俺は絶対この娘を好きになったりしないからな!