ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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49 【メスガキ】アリーシャ・ラ・アエラス②

「ねえねえお兄さん。私とデートに来ちゃってよかったの〜?」

「物騒なデートもあるもんだな」

「だってこんなのお散歩と変わらないでしょ? それとも、二人で死力を尽くすような場所に行くの? もしそうだったら……きゃっ、お兄さん大胆〜♡」

 

 そう言いながらアリーシャは俺の胸元をツンツン突いてくる。

 

 くそっこの女!!

 イカれてやがる!! やはり淫乱で間違いない!

 言葉の選び方がもうすでに淫乱! わかってないとできない! マリアンヌやカルラの言動で強引に妄想しているのとはまるで別物だ! 警戒しろっ全ての脳内闇人格!

 

「ねえねえ、お兄さんは誰が本命なの?」

「最近よく聞かれるんだが、別に誰でもないぞ」

「え〜? またまた、冗談やめてよ。里でも話題になってるよ? 姉さんたちを侍らせてるヒトの男がいるって」

 

 侍らせてるならどれだけ良かったか。

 その実情は俺が寄生しているだけで、むしろ俺が侍らされてると言った方が正しい。皆様の奴隷で盾役として人生頑張らせてもらってます。家のお金も俺が入れてる分は少ないです。装備でお金かかるからってみんな遠慮してくれてぇ……俺は情けない! 家賃すらまともに払えない俺は情けないんだ! 

 

 でも無理に払おうとしたら全員で止めてきて……

 ううっ、男として俺は本当にダメなやつなんだ。

 いつかみんなを養えるくらいのビッグな男になりたいよ。

 

「少なくとも俺じゃないな」

「ふ〜ん……お兄さん、近くにあんなに女の人いるのに相手されてないんだ。かわいそ〜♡」

 

 お前ッお前お前お前お前!!

 言いすぎだろ……

 わかってんだよそんなこと!

 俺が誰にも相手されてないってこと! 

 神官に尻穴見せて悦んでるドマゾ童貞なんて誰も好きになってくれないって、わかってるんだ! それでも夢は見させろよ! 俺の方が先にみんなを知ってたのに! 俺の方が先にみんなと出会ってたのに! 知らない男が夢に出てくるんだ! 

 

 悲しさと切なさと悔しさ……

 男としての屈辱……

 それら全てが快感になって押し寄せる、俺のどうしようもない頭をどうにかしてくれっ!

 

 ハァッハァッ、くそっ、この女ァ……!

 

 俺の痛いところを的確に突いてくる……!

 俺が自分の妄想で嫌なものとして扱ってる部分を、悉く……!

 許せねぇ……! 

 許せねぇよ……!

 

「あーあ、今頃アストレア姉さんもアリシア姉さんも知らない男の人と会ってたりするのかなぁ。お兄さんが相手じゃないってなると、そうなっちゃうよね〜。かわいそ〜♡ 一人惨めなお兄さん、かわいそ〜♡」

 

 がああああああっ!!

 脳がっ、脳が壊れるっ!!

 やめてくれぇっ、俺以外の男を連れてくるのはやめてくれっ! そんなに俺はダメなのか!? そりゃあ確かに最初は田舎少年だったけど、そこそこ見た目に気を遣ってきた自信がある! 男らしさだって負けてない!

 

 俺の何がダメなんだああああああっ!!

 うわあああああっ!

 うううううっっ♡ 

 

『あなたの顔です』

 

 あんまりだろうがマリアンヌっっ!!!

 

 …………ふう。

 

「そうかもな。でも、俺はみんなが幸せならそれでいいよ」

 

 これは本音。

 俺が全員幸せにしてやれるなら、それか、全員の幸せなんて考えないような男だったら今頃パーティーの誰かに手を出そうとしてたと思う。

 でもそうは思えなかった。

 ドマゾは趣味で、俺は己を普通の人間だと思ってる。

 師匠に育てられた男として無礼な振る舞いはできるだけしたくないし、他人に迷惑をかけるような行為もしたくない。

 

 嫌われたいと思わないっていうかな。

 関係をわざわざ崩したいと思わない。

 嫌われたり、俺の方が先に出会ってた女性が軒並み知らない男とくっついたりしたとして、それはそれで味わうが、積極的に味わいたいとは思わないんだ。

 

 俺はドマゾ趣味があるだけだから。

 

「えー、絶対うそ。全員俺のものくらい言いなよ」

「全員俺より強いのに……?」

「……あー……それは…………ざぁこ♡」

 

 ウギギギギギギっっ!!

 うううッ、ううううっ……♡

 

 マリアンヌっ、緊急招集だ!

 闇人格を全員集めろ!

 このままでは俺はこの娘を好きになってしまう!!

 

『気持ちわる……』

 

 見捨てないでくれぇっ!

 だって考えてもみろよ!

 妄想で自分をなじって興奮してる俺に、現実でなじってくれる女が現れたんだぞ!? こんなの運命だ! もう結婚したい! 毎日俺のことを小馬鹿にして好き放題命令してくれっ!

 

『…………きも』

 

 あぁんっ伝家の宝刀!

 やっぱこれだね。

 マリアンヌのおかげで冷静さを取り戻せた。

 ありがとうマリアンヌ。

 やっぱり君は最高の女だ。

 

『全然うれしくないです』

 

「ざーこ、ざーこ♡ 周りの女の子みんな強い男に取られちゃう間抜けさん♡」

「ぐ……」

「こんなに言われても言い返せないんだ♡ わかってるんだ、もうみんな取られちゃってること♡」

 

 くそっクソォっこの女!

 好き放題言いやがって!!

 何も言い返せねぇ……。

 女の子に好き放題なじられるのが気持ち良すぎて言い返せねぇ……! それに寝取られ妄想も加わってもう頭がおかしくなっちゃいそう! あっやばっ気持ちいいっ♡ 脳みそ壊れるっ!

 

「くふふ〜♡ でも安心していいよ。私がお兄さんもらってあげるから♡」

「……!?」

「三食ご飯つき♡ 布団もふかふか♡ 暖房完備♡」

 

 三年前だったら揺れ動いてたかもしれないほどの好条件……!

 

 流石はエルフの姫。

 今の俺だから耐えれたが、三年以上前だったら断れなかったかもしれない!

 

『えぇ……』

 

「でもその代わり〜〜……ペットになってもらおうかな♡」

「なっ……」

 

 は、はひいいいいぃっ!!

 ぺぺペットですか!?

 いいんですかそんなの!

 衣食住完備でペットですかぁ!?

 すまんマリアンヌ、俺はもうダメかもしれない。

 こんな夢のような条件があっては俺のドマゾ部分が肥大化し膨れ上がりいつしかフィン・デビュラという男を飲み込んでしまうだろう。俺は、俺に負けたんだ。

 

『元々ダメな方ですし、頭もおかしいですよ』

 

 ンォ〜切れ味がすごい!

 すごいね闇のマリアンヌは!

 俺の心をバターみたいに切っていく! 

 痛みと快楽が同時に湧き上がる感覚はいつ味わっても極上だな〜。

 

「ね〜え、どう? お兄さんがかわいそうだから、私がもらってあげるよ?」

 

 ぐう……!

 

 俺は今、人生の岐路に立っている。

 

 どうするべきだ?

 みんな寝取られて、残ったのは生意気なアリーシャ一人。

 だが彼女は俺の性癖を全て理解したかのような言動をとってくる、この世界にただ一人の逸材だ。その素晴らしさは闇のマリアンヌに並ぶほど。

 

 このチャンスを逃したらもう次はないんじゃないか?

 

 次の瞬間には彼女も知らない男を連れてきて「もうお兄さんなんていらない♡ 死ね♡」くらいのことは言ってきてもおかしくないっ!

 

 考えろ、考えろ俺……!

 捨てがたい……捨てがたいんだっ!

 どうすればいいっ、教えてくれ、闇のマリアンヌ……!

 

『好きにしてください』

 

 見捨てられたァッ!?

 

『フィンさんと私は、どこまでも一緒ですから』

 

 …………。

 

 そっか……そうだよな。

 

 俺とマリアンヌは、ずっと一緒か。

 金等級パーティーになった時もあらためて誓ったよな。

 俺達四人、死を分つそのときまで共にいるって。

 

「悪いが、断る」

「……え?」

「お断りだ、アリーシャ。確かに俺は甲斐性もないし寄生してるし世間での評判も悪いし同業者には嫌われてるしギルドの犬で王家の犬だが……」

「そこまでは言ってないかな〜……」

「それでも、あいつらとずっとやってきたんだ。今更違う道を行くことなんてありえない」

 

 結局、そこに行き着く。

 

 ドマゾ趣味も、童貞捨てたい欲も、俺にとっては二の次だ。

 

【払暁】が俺の居場所だ。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 

「……ふぅ〜ん。そうなんだ」

「まあ、もし俺が捨てられるようなことがあったら拾ってもらうのは悪くないけどな」

「あははっ、冗談だってば。お兄さんが捨てられるわけないじゃん! 不安になっちゃった? かわいい〜♡」

 

 冗談……?

 おい、これは冗談でもなんでもないぞ。

 俺が捨てられた時は是が非でもお前に拾ってもらうからな。アリーシャ……お前の靴を舐めて足を舐めて指の間に至るまで舐めてペットにしてもらう。

 

 覚悟しとけよ。

 

『無様晒す前に私が殺しますね』

 

 そ、そんなぁっ! 

 俺のセカンドライフが!

 

『フィンさんの人生は私のものなので』

 

 えっ怖っ……

 急に闇みたいなこと言い出してどうしたの?

 話聞こうか?

 

『…………』

 

 最近そういうの上手になったよね闇のマリアンヌは!

 怖い沈黙はやめてよ!

 普通に怖いのは興奮もできねえから!

 

「身体は大きくて強そうなのに心が不安なんだ〜♡ ──かわいそ……」

「あ、もう着くからそろそろ終わりにするぞ」

「あ、うん。…………えぇ……?」

 

 なぜか釈然としない表情で俺を見てきたアリーシャ。

 

 なんだよ、〈不浄領域〉近辺でふざけるわけないじゃん。

 

 俺はドマゾの趣味がある以前に冒険者だからな。

 

 そこは真面目にやる。

 そうでなきゃ、俺みたいな盾役が金等級冒険者になれるわけもないだろ?

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