妹をよろしく。
これはもしかして姉公認で妹さんと結ばれてもいいという言葉ではないだろうか?
アリーシャは散々な評価をされているが、公私を分ければ俺は彼女を非常に高く評価している。
生意気な態度。
小賢しい口調。
触れて欲しくない部分に平然と触れてきて人を逆撫でして楽しむ性格は、まったくもってけしからん。
素晴らしい……
まるで俺に出会うために生まれてきたかのようだ。
いや、俺が彼女に会うために生まれてきたのか?
罵ることで快楽を得るアリーシャ、罵られることで快楽を得る俺。
これほど優れた相性は存在しない。
ごめん、マリアンヌ、カルラ、アストレア……俺、アリーシャのペットになります。買われちゃうよ。飼われちゃうとも言うね。
キャハッ♡
俺ざこ~い♡
よわよわ~♡
寝取られちゃったんだ~かわいそ~♡
それは本当にかわいそうだろうが……!
『フィンさん、私が何を言いたいかわかりますか?』
うん。
言わなくてもわかる。
俺も自分で気持ち悪いなと思った。
『ならいいです。きも』
何が良かったんだよ。
しっかり言ってるじゃないか、ありがとう。愛してるぜ。チュッ!
『失せろ』
失せろ!?
「やあ、久しぶり。元気だったかい?」
ムッ、巨乳男装エルフの気配。
またの名をグリセルダは相変わらず貴公子のような見た目をしてるが巨乳をまったく誤魔化していないので一瞬何を見ているのかと錯覚する。
「ああ。久しぶりだ。そっちこそ元気だったか?」
「もちろん。君に助けられてから、すっかり私も反省したよ。種族で差別するなんてバカらしい。エルフにもヒトにも優れた者がいて、そうではない者もいる……一つの集団でずっと生きていくのは、あまりよくないことなのかもしれないとね」
「巡り合わせが悪かっただけだ。俺だって偏見を持ってるだろう。知った後どう咀嚼して変わっていくか──それが大事じゃないか」
「……うん。そう思う」
グリセルダもすっかりいい奴になってしまって……
もう俺を正面から虐めてくれるエルフを探すのは困難を極める。
いっそのこと里に三姉妹全員くださいと言いに行けばボコボコにしてもらえるんじゃないだろうか。ああでもアストレアの態度的に全然逆らえないとかありそうだな……やっぱナシ。虐められる為に他者を巻き込むことは許さない。
「それと、アリーシャ様のことも。私がしっかり言い聞かせておくべきだった」
「仕方ない。前にアストレアと色々やってた事から察するに、ハイエルフに逆らえなかったんだろ。それくらいは察せる」
「……すまない」
謝るなんてとんでもない!
あんなのご褒美以外の何物でもないんだが。
あれほど正面からメタクソに煽られるのなんて久しぶりすぎて帰還後に余韻に浸ってたもん。なんていうか、小馬鹿にされるだけのとは違ったんだよね。
もう愛すらある気がした。
闇のマリアンヌに助けられてなかったら俺はもう彼女のペットに成り果ててただろう。
「それで今はどこに?」
「とりあえず、冒険者ギルドの管理してる部屋を一つ借り受けた。ああ、それなりに良い所だから安心していい」
「銀等級冒険者、だったか」
「うん。もう少しで金等級に昇格出来るかなってくらいだ」
実力的には本当にちょうどいいな。
俺の見立てだとアリーシャは金等級冒険者になれるかどうかってところ。
銀等級冒険者としてなら満足のいく実力だ。
実際伸びしろはある。
ただ、外での経験がなさすぎる。
〈不浄領域〉での振舞いに関してはいずれ矯正出来るだろうしそこまで不安に思っていない。身に付かないなら諦めるしかないが。
「元々外に出てたわけじゃないんだろ? よくそこまで鍛えたな」
「あ……う、うん。まあ、なんていうか。ホラ、私はその、ちょっと男っぽいだろ?」
いや全然。
そのおっぱいで男は無理でしょ。
「男…………?」
「お、おいっ。見てるのわかるんだぞっ」
「おお、すまん。冒険者だからつい」
「まったく……
「そうか。苦労したんだな」
「……そうだね。でも、悪くなかったよ」
やべえやべえおっぱい見てるのバレたやばいこれは流石に言いふらされたら殺されるどうするどうやって秘密にするどうすれば口封じ出来るもう俺の人生捧げて脅して黙らせるしかないのか!?
『フィンが乳を見てることなどとっくに見抜いているぞ』
エッ!!?
カ、カルラさん!?
そんな……う、うそだ!
確かに風呂で出会った時はガッツリ見た。見なければ失礼かなと思って目を逸らしながら見た。
だってめちゃくちゃ堂々としてた!
なんか恥ずかしがってる俺が悪いのかなって気持ちにすらなった!
女があれだけ堂々としてるのに男の俺が股間隠すわけにはいかねェだろうが……!! 無論、視線もずらさぬ。誉れある生を過ごすためにも仕方なかったんだ。
『すけべ、えっち、変態』
むほほっ闇のマリアンヌそれは悪手!
正規の興奮を得てしまうだけだ。
性器を見られて正規の興奮ってか!
『…………』
はい。
「意外だね。君ってそういうの興味あったんだ」
「ないわけない。そうじゃなきゃ冒険者なんてやってないぞ」
「ふふっ、確かに」
「エルフ的には嫌だろ」
「まあ、見知らぬ輩にそういう目で見られるのはあんまりいい気持ちではないさ。でも……」
そう言って、グリセルダは俺を見て微笑む。
「君がどうしてもと言うのなら、やぶさかではないよ……?」
なっ……!!
こ、これを断るなんてとんでもない!
みんなごめん、俺もうここでゴールする! グリセルダッ俺と結婚してくれぇーっ!!
『許しません』
あ、わかりました。
そうですよね。
俺には闇のマリアンヌがいますもんね。
「気持ちは嬉しいが、やめておく。まだ互いを知らないしな」
「頭の片隅にでも入れておいてくれればいいさ。みなさんの勘気は買いたくないしね」
本気じゃなかったってこと?
それともなに、俺は保険ってことか。
フッ……所詮俺は保険だ。
本命にされるような男じゃないってこと。
『私は本命ですよ?』
んも~闇のマリアンヌは本当に俺のことが好きだな!
本物のマリアンヌは別に俺のこと好きじゃないんだけどね。
あ、やべ、心が痛気持ちいい。
ズキズキキュンキュン……これが恋なんだな。
でもやっぱり不健全な気持ち良さだと思うんだ。
もっと健全で真っ当な気持ち良さが欲しい。
『もう手遅れです』
そっか……。
聖女が言うならもうどうしようもない。
やっぱり俺の引き取り手は君だけだ、闇のマリアンヌ。
『はい。ずっと一緒です』
「それよりも、フィン……えっと、フィン、くん?」
「好きに呼んでくれ」
「わかった。それじゃあフィン。アリーシャ様をどうするか決めてるのかい?」
「大まかには。冒険者としての教育には冒険者ギルドを使う。実力のステップアップは、順当に積んでいけば問題ない」
アリーシャの教育は急ぎじゃないしな。
急ごしらえで〈深淵の森〉に連れて行くなんて危ないことはしない。
将来的に師匠の助けになればいい。
それに俺としても貴重な相手だ。
あれだけボコスカに言ってくれるのは重宝せねばならない。
そう……自分に素直でいいんだと諭す感じで……
『自分に素直なのはいいことですからね』
そうだよな!
俺もそう思う。
表に出せば怒られるとしても、自分の在り方を変える理由にはならないんだ。
『限度はありますけどね』
すみません、反省してます。
「そうか。私にできることはなんでもする。何かあれば言っておくれよ」
なんでも?
なら今すぐあの時みたいに俺をなじってもらえるか。
出来ることならアリーシャも一緒に、言葉攻めと物理的な攻めが合わさり素敵だ。
『いい加減にしろよ』
はいごめんなさい!
ここまでにしておきます!
「ああ。頼りにしてるぞ」