ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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66 【不憫】アリシア・ラ・アエラス

 

 世界がこんなに眩しかったなんて、知らなかったマゾ。

 美しいマゾ……

 俺は世界を守りたい。

 こんなに美しく煌びやかな世界を汚させるわけにはいかない。

 誓うよ、マリアンヌ……

 俺は必ずこの世界を守るんだマゾと……

 

『そうですねぇ』

 

 も〜興味なさすぎ!

 闇のマリアンヌが興味ない間に俺が童貞卒業してたらどうするんですか?

 止まれと言われてももう遅い! 

 俺の童貞? 美人なエルフお姉さんに捧げました。

 

『あの、普通にずっと見てるので嘘ついてるのわかってますよ』

 

 ……。

 普通に恥ずかしいやつじゃん。

 やめてよ、それはあんまり嬉しくないから。普通に恥をかくのは恥ずかしいことなんだよ?

 

「はぁ……良いわね、フィンくん。今日のことは全部秘密。誰にも言っちゃダメよ?」

「わかってる。言えるわけがない。言って全員にボコボコにされるのも嬉しいが……」

「だめだから。もしそんなことしたら……」

「そんなこと、したら……?」

 

 ゴクリ。

 自然と唾を飲み込んでしまう。

 普段は優しくて頼れるお姉さん。しかしその裏の顔は過激にして苛烈、夜の帳が下りた後のアリシアさんは女王様に大変身! 『変な興奮するなって言ったでしょ、ゴミクズ』そう言いながら振るわれる鞭には風の刃が纏ってあり、肌を裂き肉を割り骨まで穿つ。苦しむ俺に対し追撃の蝋燭が垂れて傷口を燃やし強引に塞いでいく。『ほら、治してあげたわよ? 嬉しく思いなさい、マゾ豚』……ぶ、ブブヒィッ! ヒヒーンッ! あぁっ出るっ! 濃いの出るっ俺の命が流れ出ちゃう! 全身の穴という穴から液体吹き出して死ぬッッ!!

 

「……………………」

「…………」

「フィンくん。私が何を言いたいか、わかるかしら」

「はい。すみません」

 

 こめかみに青筋を浮かべたアリシアさんには逆らえない。

 

 ううっ、こうやって無理やり従わされていずれは脅されるようになり……ゴクリ。

 

「はぁ……前途多難ね……」

「はは、まあ、諦めても俺は一向に構わんが……」

「諦めないわよっ! 諦めたら人類がやばいから!」

 

 どういうこと?

 俺の気持ち悪さで人類がやばいの?

 そこまで……そこまで言わなくても良いじゃんっ! アリシアさんっ! ひでえよ、あんまりだ!

 

 素敵だ……。

 俺はあなたにマゾバレするために生まれてきたのかもしれない。

 小一時間に満たない会話でここまでの順応性!

 俺のツボを的確に刺激するワードセンス。

 マリアンヌ、ごめん。

 アリシアさんのペットになります。

 魂はマリアンヌのものだけど、身体はアリシアさんのものになるね。

 

『そう……』

 

 無関心やめてね。

 

「ウ〜〜〜〜〜〜ン……フィンくんの頭の中ってどうなってるの……?」

「……ノーコメントで」

「……私も聞きたくないから大丈夫よ」

 

 アリシアさん、俺に興味がないんだ……!

 

「もうっ! 何しても興奮するじゃない! どうすれば良いのよ!?」

「そりゃもう、平手打ちして地べたに這いつくばらせて醜い豚、鳴いて媚びろと言ってくれれば」

「やるわけないでしょうがっ!!」

 

 そう言ってアリシアさんは頭を抱えた。

 

 やべ〜〜……

 素で好きになりそう。

 いや、だって俺童貞だもん。

 童貞で、自分の性癖をずっと誰にも言えないまま過ごしてきて、頭の中に生まれた闇人格をお人形遊びして気持ちを紛らわせてる成人男性だ。

 

 普通にイチャラブとか女友達との程よい距離感からの恋愛関係への発展とかに興味があるのにその道を全く歩むことができず、元々おかしい奴だったのに更におかしくなってしまった正真正銘言い逃れのできない怪物。

 

 それなのに、そんな俺を否定せずに付き合ってくれる女性が現れた。

 

 現れてしまった。

 俺の妄想通りに軽蔑し甚振りやがて距離を取り寝取られるという展開はないが、普通のイチャラブも愛している俺にとっては最高の出来事だ。

 アリシアさん、俺を愛して……

 

「それはやめてね」

「え~」

「……からかってるわけじゃないのが、ほんとよくない……」

 

 アリシアさんは胸元を押さえて呟く。

 

 俺はいつだって本気だ。

 冗談をいうことはあるが適当こいてることは殆どない。

 いつだって誠実と本音がモットー。

 怪我してる時も嘘ついてないからね。

 死んでなきゃ問題ないから。

 

「んんっ! よし、いいわねフィンくん。私達には何もなかった。合同クエストに挑むただの仲間であって、それ以上でもそれ以下でもない。いいわね?」

「もちろん。だが本当は?」

「誰にも言えない秘密の……ってなに言わせんのよ!」

「すまんすまん」

 

 アリシアさんに対する好き度が上がっていく……!

 

 これはまずいっ、非常にまずいぞ!

 このままではアリシアさんを好きになってしまう。

 何がよろしくないって、アリシアさんが望んでないってところ。そもそもとっくの昔に振られているのでこの人が俺を好きになることはありえない。

 

 好きでもない男に対して、パーティー崩壊を避けるためにSMプレイまでしてあげると言うのだ。

 

 こんな聖人他にいるか?

 思い当たるのはセラさんくらいだ。

 好きでもない男の尻の穴に杖をぶち込み悲痛な顔をしながら治癒をする姿、あまりにもそそる……。

 

 !!!!!?!?!?

 

 まて。

 今気が付いたが、二人合わせれば最強なんじゃないか?

 尻の穴に杖を突っ込む担当のセラさんと、鞭で叩いて蝋燭を垂らす担当のアリシアさん。う、うおおおおっ! すばらしいっ、素敵すぎる……!

 パラダイスはここにあった!

 師匠っ、俺っ、生きててよかった!

 

『で、どうやって実現するんですか?』

 

 はい、無理ですね。

 多分セラさんは俺を本気で軽蔑すると思う。

 どれだけの聖人だろうが、自分から尻を弄って気持ち良くしてくださいと懇願して来る男は気持ち悪いだろ。

 

「だめ……だめよアリシア、フィンくんはどうしようもないの……決して望んでこうなったわけじゃないのよ……」

 

 言い聞かせるようにアリシアさんは呟く。

 

 まあ、確かに。

 俺も別にこんな無様な男になりたかったわけではない。

 特別な勇者のアリアと並んで共に旅をして、師匠に褒められて流石はフィンだ、なんて言われながら世界を救う旅とやらに同行したかった。

 

 俺は、特別になりたかった。

 

 特別なら、劣等感を抱くこともなかっただろうから。

 

 そんな本音を感じ取ったのか、彼女は不安そうな顔をして俺を見る。

 

「……私、今でもフィンくんことをはわからないわ」

「…………」

「でも、やっぱり君は、普通の男の子でもあるのよね。心が強くて、それでも、どうしようもないくらいに傷付いてしまい、狂いが生じてしまった……」

 

 そっと、アリシアさんは俺の頬を撫でる。

 

「いつでもどこでも、とはいかないけど……これからは、私のことを頼ってちょうだい。あ、でも、罵ってくれとかはあんまり……自信ないから出来ればやめてもらえると……」

「……アリシアさん、好きだ……」

「うっ……も、もう。おばさんを揶揄うんじゃないの」

 

 ……振られちまったな。

 でも、しょうがない。

 元々、私はそういうのじゃないからって言われてた。それに対して優しさを見せられただけで好き好き言い出す俺の節操のなさが悪い。

 

 ……んふっ、んふふっ、ふほっ!

 振られる切なさ、哀しさ、心地よさ……

 そして俺を振った女性が選んだ男に優越感駄々洩れの中馬鹿にされながらラブラブする姿を見る、敗北者の俺……あかんっ!

 やっぱりこの快感はよろしくない!

 アリシアさん、どうしてくれるんだ!

 

 俺は、こんな、どうしようもない快感の味を知ってしまった。

 

 もう戻れない。

 最悪だ。

 寝取られマゾ、俺が先に好きだったのにマゾが誕生してしまった。

 祝ってくれアリシアさん。

 

 やはり今日が、俺の人生を終わらせる最初の一日だったんだ。

 

「はいはい、もう終わらないからそこまでにしてちょうだい。ほら、いい加減帰らないと怪しまれるわよ?」

 

 はいアリシアママ~。

 オンギャオンギャ!

 ええい退けい! アリシアママのお通りであるぞ! 

 興奮も何もしてないからこの思考は伝わっていないようで、アリシアさんはほっと安堵のため息を吐いた。

 

 ドアから顔を覗かせる。

 気分はさながらお忍びデートだ。

 なお、内容は俺が性癖を見抜かれ人生の終わりを迎えかけただけである。

 

「よし、誰もいな──」

 

 そこまで言ってアリシアさんはピクッと身体を強張らせる。

 

 なんだと思い俺も同じようにドアからひょっこり顔を出せば、そこには笑顔のアリーシャが居た。

 

「あはっ♡ やっと出てき」

 

 アリシアさんはドアを閉めた。

 

 そして天井を見たかと思うと、そのまま顔を手で覆い隠した。

 

「…………終わった……」

「それは俺の台詞だぞ」

「なんで君はなんとも思ってないのよぉ……! おかしいでしょおっ!!」

 

 今日だけで何回も人生終わったと思ってるから、このくらいじゃ動揺もしない。

 

 そもそも動揺したところであんまり表に出ないしな。

 アリシアさん相手に隠しても意味ないから素で対応してたけどもうその時間は終わった。ここからは、フィン・デビュラの時間だ。

 

 コンコン、コココン。

 

 ドアを開ける。

 

「あっ♡ お兄さん、アリシア姉さん♡ えっちなことしてたんだ~♡」

「してないぞ。ちょうどいいし中入れよ」

「え~? そうやって私にも口封じ代わりのえっちするんだ♡ けだもの♡ きちく♡」

「あ、あ、ああああぁぁ……! そっか、そういうことだったのね……! アリーシャとは相性最高じゃないの……!」

「……え、私と相性最高……?」

「俺とアリーシャはベストコンビだって話さ」

「……んふっ。ちょっと、……えへ、照れるかも」

「オオッ! んんんんんっ!! んああああああっ!!」

 

 頭を抱えたアリシアさんの叫びは、ドアの向こう側には響いてないことを祈ることしか出来なかった。

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