ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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三章
72 マゾバレエンジョイ勢


 

 脳内闇人格、集合。

 俺は今猛烈に悩んでいる。

 苦悩といっても差し支えない難題に直面しているのだ。

 

『はいはい、どうしましたか』

 

 いやさ、アリシアさんにマゾバレしたわけじゃん?

 

 マゾバレしてアリシアさんの性奴隷にされると思っていたんだが、そうはならなかった。寧ろ暴走しないように発散してあげるなんてえっちすぎる宣言までされてしまった。

 

 たとえ君がマゾであったとしても、フィン・デビュラを嫌う理由にはならないと。

 

 こんなの好きになってしまう……。

 アリシアさん好きだ……。

 両手足を縛って身動きの取れない状態で鞭で叩いて蝋燭たらして水車に固定して水責めしながら苦痛と快楽で絶叫する俺を嘲笑いながら『無様ね♡ 気持ち悪い英雄さん♡』って罵って蔑んでくれぇっ!! 

 もう我慢できない!

 アリシアママは初めて俺にSMプレイをしてくれるかもしれない女性だ!

 今すぐイクぜっ星天の拠点で!

 師匠ォーっ!

 無様に裸で縛られた状態で絶頂する俺を見てドン引きしてくれぇええぇっ!!

 

『あのエルフに発情しているのはわかりましたが、それはいつものことですよね』

 

 んも〜ノリが悪いなぁ。

 俺が伝えたいのは、アリシアさんにマゾバレしたことで最近タガが外れつつあるってことだ。

 

 マゾバレしてもいいんじゃねーかという感覚が頭の中のどこかにある。

 

 これは……由々しき問題だぞ!

 もしもマゾバレしたら終わるんだ!

 それを、どうにかなるだろうと受け入れる覚悟ができてしまった。これは良くない、全くもってけしからん! 

 

 もし、もし全員に囲まれながらSM責めをされるなんて事態になったら俺は幸福で死んでしまうだろう。社会性を失いまともな大人としての立場を喪失し尊敬を全く得られなくなるかもしれないのに、性癖が満たされているから、なんて理由で満足するんだぞ?

 

 そんなのは人とは言えない。

 俺は人でありたいんだ。

 師匠に育てられ、両親からも愛をもらって生きてきた。

 実家は兄貴が継いでるから今更どうこうするつもりはないが、迷惑をかけたくはない。寧ろ、誇らしいと思って欲しいんだ。

 

 俺は、俺のそんなくだらない性癖に人生を変えられたくない。

 

 どうすればいい、マリアンヌ。

 俺はドマゾではない方がいいんじゃないか?

 いや、そもそも今の俺は人と言えるのか?

 恋仲でもない女性でえっちな妄想を繰り返し虐げられる日々で興奮し、仕事と言い張りながら身体を張って大怪我を受け入れて悦に浸る……。

 

 本当に俺は、人と呼べるのか?

 これでは畜生以下ではないか……

 

『私は、そんなフィンさんでも受け入れますよ』

 

 ううっ、闇のマリアンヌ……!

 もうこんなんになっちゃったしさァ、今更性癖変えれないからさァ、最悪闇のマリアンヌと逃避行かなァ……だって俺を受け入れてくれる唯一の女性……ではなくなったんだが、もう三年もずっとにいるしね。

 

 んちゅっ♡

 闇のマリアンヌすきすき♡

 大きくなったら闇のマリアンヌと魂で結婚してアリシアさんと身体で結婚する♡

 

 フィン・ドマゾ・デビュラと申します!

 お義父さん!

 僕をお姉さんのものにしてください!

 

「──ゆえに、我々としては一度攻略を止めて〈不浄領域〉そのものへの調査を……どうかしたか?」

「お、……おほほ、なんでもないわ。目にゴミが入ったのよ」

「そうか。一気に畳みかけたのも良くないな。一度小休止を取るから、整理してくれ」

 

 目頭を揉むアリシアさん。

 師匠とアリアが二人で西方に足を運んでる最中、アリシアさん一人で【星天】のあれこれを処理してたっぽいしなぁ。

 

 疲れてるんだろう。

 エルフと言っても疲労度合いは人間とあまり変わらないのだ。

 無理はしないで欲しいが……

 

「〈不浄領域〉の浄化……【聖剣】だと可能だというのは納得できます」

「マリアンヌくんはどう思った?」

「やはり【聖剣】は女神様の手によって作られたものだと伝わっていますから、特別性なのではないかと」

 

 〈不浄領域〉そのものへの影響。

 実際、どうして発生するのか、なぜ消えないのかは全くわかっていない状態だった。マリアンヌの魔法はモンスターを消し去るが、〈不浄領域〉に影響を齎したことはおそらくない。

 

 ある日突然生まれ、それは周囲の環境を飲み込みモンスターが発生する領域へと変化していく。

 

 〈不浄領域〉がやがて世界を飲み込む、なんて話は子供の頃からよく聞いた話だ。

 

 それをまさか【聖剣】が覆せるとなれば、文字通り世界がひっくり返るだろう。

 

 ついでに俺の性癖もひっくり返してくれないかな。

 ドマゾからドサドへと大変身! 手に握るのは盾ではなく鞭。女性向けSM娼館最高の男として夜の色街に君臨したのはフィン・ドサド・デビュラ。師匠が館の前で泣いていても、アリアがドン引きしても構わない。

 

 俺はドマゾからドサドへ転職したのだから。

 

『地獄ですね』

 

 普通にこんだけいい体格してるやつが「俺、人をいじめるのが好きなんだよね」とか言ったら憲兵に捕まりかねんな。そもそも人としてどうかと思う。

 

 アリーシャは小生意気で俺を平然とバカにしてくるが、あれは美少女エルフだからいいんだ。

 

 美少女エルフに罵倒されて悦ばない大人の男なんていないんだよ?

 

 小さくて美しい、守るべき立場の少女が、大人の男をバカにして煽ってくるんだ。怒り、手を出せないことへの苛立ち、己の人生への攻撃に対する憎悪……それら全てがぐちゃぐちゃになり、臓腑が沸騰するような怒りへと昇華される。

 んも〜これがたまらんよね!

 彼女は具体的に否定してくるからたまらんのだ!

 俺が日夜浸っている妄想が『現実になっちゃうよ〜♡ 哀れ♡ 無能♡ 無様♡』と心の底から馬鹿にしてしてきてぇっ……!

 

 ハァッハァッ…………!!

 

 あ、ああああああ!

 ダメだ達する! 絶頂する! みんなの前で突然イクッ!!

 

『恐怖以外の何者でもないですね……』

 

「は、はひ、ヒィッ……!」

「!? ど、どうしたアリシア……?」

「あ、あああ! ま、窓の外に何かいた気がしたけど、気のせいだったわ!!」

「……? なんもいないね。大丈夫? 疲れてるんじゃない?」

「そ、そうかもねぇ……おほほほ……」

 

 ふぅ…………。

 

 青褪めた顔のアリシアさんが俺を見ている。

 

 ふふ、怯えているな?

 俺の性欲と被虐欲はこんなもんじゃないぜ。

 俺が暴走しないように相手してくれるんだ。こんなに嬉しいことはない。アリシアさんが嫌がっても俺は嫌じゃないからどんどん罵ってもらいたい。大丈夫、初めては誰だって怖いもんね。力を抜いて、受け入れてほしい。まずは優しい悪口から始めよう。ソフトタッチで緊張をほぐすのは前戯の正当な手順だから。

 

「ですが疑問もあります。〈不浄領域〉を消し去ることによる影響です」

「スタンピードだね?」

「はい。それに、〈不浄領域〉は経済の根幹でもあります。迂闊に手を出せば多方面に影響が現れるでしょう」

「それに関しては西方地域を使わせてもらおうと思っている。悲しいことだが、魔王軍の支配下にあった場所は荒廃していてね。数年で復興できるような状態じゃなく、何世代にも亘ってやっていかないといけない。政治的にもどの国家がどこに手を伸ばすか、なんてことも決まってない今がチャンスだ」

 

 くううっ、アリシアさんの冷たい目が心地いい!

 でも俺はアリシアさんのこと好きだよ?

 あっ目を逸らした。

 アリシアさん、こんなに美人なのに好きとか可愛いとか滲ませると結構照れるんだよな。かわいすぎる。俺と結婚して欲しい、本当に。

 

 だってそうなったらアストレアとアリーシャが妹になるんだろ?

 

 アストレアは本気で俺のこと嫌いそうだけどアリーシャは小馬鹿にしてくれそうだからなぁ。

 

 ハッ……!

 い、いかん。

 精神がドマゾに支配されていた!

 正気に戻れてよかった。

 アストレアに嫌われるとか、考えたくもない。

 

「そうですか……枢機卿にお話ししても?」

「するしかないだろうね。教団としても無視できないだろ?」

「はい。出来る限りこちらで主導権は握れるように致しますが、最悪、他の聖女の介入もあるかと」

「まあ、それはなんとかする。顔は広いんだ」

「存じております」

「では決まりだな。枢機卿に話す前にどういった内容にするか、詰めていこう」

「はい。よろしくお願いします」

 

 あ、終わった?

 

 難しい話だからわかんないぜ。

 政治の話だなぁとは思うが、それがどこまで影響を及ぼすのかがさっぱりだ。背後関係とか知らんからなんだろうなぁ。

 

「……フィンくん。アリーシャが話したいって言ってたから残ってくれる?」

「お。わかった」

 

 アリーシャが?

 ふふっ、願ってもねぇ!

 ドマゾモード発動! アリーシャ・タイプメスガキ! イカれ性欲小悪魔です! ヌウッ俺の防壁が破られるだと!? 快楽が直接脳内にっまずい! ウオオオオオオオオっっでるでるでちゃうっなんか出ちゃうううぅぅっ!!

 

「ン、ン、ン、ン、ン〜〜……」

「どうした? アリシアさん」

「なんにも、ないわよぉ……!」

 

 あっ痛あっ!

 気持ちいい……♡

 みんなの見てない背中つねられてる。

 痛いのが気持ちいいとわかってるのにやるなんて、これはもうキスみたいなもんだよな。

 俺とアリシアさんは相思相愛なんだ……!

 

『だまれ』

 

 だまれ!?

 

「悪いけど、フィンくん借りてくわね?」

「はい。行ってらっしゃい」

「うむ、行ってくる」

 

 あっ♡

 そんな方向転換でつねりなおしたら気持ちよくなっちゃう♡

 

 アリシアさんに先導される形で部屋を出る。

 みんなが真面目に会議してる間、俺はエルフの姉妹に虐められて悦ぶ……なんて最低で背徳的な行い……!

 

 癖になりそうだ……♡

 

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